召喚とかいう無から生物が出現する現象を個性の一言で片付けるのやばない?   作:そるしあ

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本作に有るまじきシリアス感。



ゆるせねえよなあ

 

 

 

「脳無と一緒だ」

 

一瞬、手のヴィランの告げたその言葉の意味が理解できなかった。

 

何が一緒なのか。

 

直前にそのヴィランが語っていた内容について思い出す。

 

驚異的な再生能力、所謂 “超再生”。

 

紗守名翔華の眷属であるれむちゃんの、相澤自身も把握できていなかった能力の一つ。

 

それを持つれむちゃんと脳無が一緒、という事は。

 

 

 

 

 

ふと、先程まで脳無が倒れていた場所に視線を向ける。

 

 

 

 

 

そこに、脳無の姿は無かった。

 

 

 

 

 

まずい。

 

そう思い至った相澤は咄嗟に周囲を見渡し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳無によって頭部を破壊され、砕け散る直前のれむちゃんと目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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+.゚・*ㅤ快適な空の旅をあなたにお届けㅤ*・゚.+

 

どうも。ゆにちゃん航空、機長の紗守名翔華です。

 

快適と言うには向かい風がエグすぎるんだよな。

 

メーデー! 目の砂漠化が深刻でーい!

 

急いでるからといって飛ばしすぎたかもしれない。

 

おめめがしょぼしょぼします。

 

もーなんも見えん。

 

勢いよく飛び立ったはいいが、まともに目を開けてられないせいでどっちが広場かもわからん。

 

これはちょっと速度を緩めてでも着実に広場に向かった方が良さそうだ。

 

それにしても。

 

この間の個性把握テストの時といい、ゆにちゃん騎乗時の向かい風強すぎ問題はどうにかならないものか。

 

次からはコスチュームにゴーグルか何かも付け加えた方がいいのかもしれない。

 

それと、頭痛薬を常備できるように頑丈なポーチなんかも欲しいところ。

 

分かっちゃいたが、眷属を三体同時に顕現させておくのは未だに厳しいようで、現在進行形で酷い頭痛や目眩が襲ってきているのだ。

 

ばりつらたん。

 

つらすぎて紀貫之になりそう(?)

 

あかん土佐日記のネカマ要素が失われて文化的価値が損なわれてしまう!

 

いや、前世は男だしギリギリセーフか?

 

そうなると俺は “前世が男の転生者で、今世の体と貞操観念は女だが心は男のネカマ” になるわけか。

 

うーん、複雑怪奇。

 

ジェンダー論研究者もびっくりのニュータイプトランスジェンダーだ。

 

どう考えても最後のネカマが余計すぎる。

 

というかそもそも文化的価値のあるネカマ要素って何?

 

日本最古の日記文学がネカマものとか日本極まりすぎだろ。

 

そんな国に生まれたならTS転生しても不思議じゃないってか。

 

不思議でしかないんだよなぁ!!!

 

俺はさっきから一体何の話をしているんだ。

 

「おい紗守名」

 

我ながら酷く支離滅裂な思考をしている気がする。

 

やはり脳のリソースを使いすぎて頭が回らなくなっているのかもしれない。

 

───支離滅裂な思考はいつものことなのでは? ボブは訝しんだ。

 

ボブって誰だよ。

 

「・・・・・・紗守名?」

 

というか、そんな事をぼんやり考えている場合じゃない。

 

れむちゃんがピンチなのだ。

 

れむピンなのだ。

 

可及的速やかに支援に向かわねばなるまいて。

 

俺の大切な家族に手を出したらどうなるか、ヴィラン共に思い知らせてやる必要があるのだ。

 

具体的には、まず油性ペンで額に「肉」と書き、髪の毛にガムを絡ませた上でグシャグシャにし、眼鏡の両面を素手でベッタベタに触って───

 

「おい!!!」

 

「へわぁ!? ぇ、な、なになにどしたのぉ!」

 

びっくりした。

 

そういや紅白男子も乗せてたの忘れてたな。

 

「どうしたはこっちのセリフだ。さっきから呼び掛けても反応無かっただろ」

 

「あぇ、それはごめんよぉ」

 

なんと。全然気が付かなかった。

 

うーむ。

 

この至近距離でも気が付かないということは、いよいよもって脳のリソースに余裕が無くなっているのかもしれない。

 

「それにだいぶ顔色悪ぃぞ、お前」

 

「む、誰の顔が悪いってぇ?」

 

「言ってねえ。体調悪ぃならこのまま広場に向かうのは危険だろ。俺はここで降りるからお前は出口に向かえ」

 

「大丈夫さぁ。こう見えて体は丈夫なんだぁ」

 

「そういう問題じゃねえ。病人は足手纏いだって言ってんだ」

 

「ボク病気したことないよぉ」

 

「そういう意味でもねえ。いいか、あのオールマイトをどうにかしようって考える連中だ。少なくともそこらのチンピラよりかは───」

 

「あ、そろそろ広場が見えてきたよぉ」

 

「・・・・・・」

 

なんかめっちゃ冷たい視線を感じる。

 

ごめんて。

 

謝るから視線に氷の個性を乗っけてこないでくれ。

 

ほ、ほら、そんなことよりも、だ。

 

今は広場の状況を確認するのが先決なのではなかろうか。

 

ね? ぴこちゃんもそう思うよね?

 

翔華はぴこちゃんの様子をちらりと窺った。

 

ぴこちゃんはこちらをジト目で見つめていた。

 

ちょうどぴこちゃんも氷の性質をコピーしていたためか、その視線にも氷のような冷たさが備わっていた。

 

・・・・・・。

 

ほら、ぴこちゃんもそう思うって言ってる*1

 

そうと決まれば早速行動!

 

さて、我が愛しのれむちゃんは・・・・・・と・・・・・・。

 

 

 

「───え?」

 

 

 

一瞬、翔華の頭は真っ白になった。

 

その光景を目にした瞬間、彼女は理解してしまったのだ。

 

恐れていた、考えないようにしていた事態が起きてしまったことを。

 

時間にしてみればほんの数秒。

 

だが、翔華にとっては長く感じる時間をかけて、彼女の心を現実が少しずつ蝕んでいく。

 

それと同時に呼吸は乱れ、視界が狭まる。

 

無意識に飲んだ息の音がどこか他人事のように耳に響く。

 

 

 

「だって、そんな」

 

思わず零れた小さな声は、弱々しく震えていた。

 

 

 

須臾の間、翔華の思考が巡る。

 

 

 

きっと勘違いだ。

 

───だが、個性から伝わっていたれむちゃんの位置はあの場所だったはずだ。

 

 

 

まだわからない。

 

───とは言え、今思えば頭痛と目眩はいつの間にか治まっている。それはつまり、そういうことだろう。

 

 

 

不可能では。

 

───れむちゃんの身体に対して再構築が必要な程の損傷を与えられる相手だ。それが可能なだけのパワーを持っていても何らおかしくは無い。

 

 

 

“それ” を認めたくなくて否定の言葉ばかりを紡ぐも、目の前の光景と己の理性が事実ばかりを突きつけてくる。

 

その目に映るのは、平然と佇むヴィラン二人と、右腕を抑えながら身構える相澤先生。

 

 

 

それと、散らばった大量の岩石の破片のみであった。

 

 

 

ふと、そのすぐ傍に居たヴィラン───脳無に目が付く。

 

何の感情も示していないその表情が、遠く離れたこの場所からでも何故かはっきりと見えた。

 

あいつか。

 

あいつが、れむちゃんを叩き潰したのか。

 

れむちゃんだって殴られれば痛いし苦しいのに。

 

今や元の形が分からないほどにバラバラに砕かれて。

 

ああ、痛かったろうな、苦しかったろうな。

 

れむちゃんが抱いたであろう感情を推し量る度、胸が痛いほどに締め付けられる。

 

・・・・・・許せない。

 

あいつは、俺の大切な家族に手を出した。

 

あいつは、あいつだけは、俺の手で。

 

仄かに黒く濁った胸の内が、あのヴィランを捕らえよと義心を掻き立てる。

 

幸か不幸か、翔華にはあの憎きヴィランの無力化が望めるだけの手段があった。

 

だが、それは諸刃の剣だった。

 

ひとたびその柄に手をかければ、自分の身をも滅ぼすことになるだろう。

 

そして何より、周りにも被害が及ぶ可能性がある。

 

それは翔華としても望むところではない。

 

では、ぴこちゃんやゆにちゃん、他の眷属達の力に頼るのか。

 

それもだめだ。

 

相手はれむちゃんの堅牢な身体さえも粉砕するほどのパワーを持っているのだ。

 

我が子達の実力を疑う訳では無いが、万が一ぴこちゃんやゆにちゃんにまで危害が及べば、いよいよ俺は正気を保てなくなってしまうだろう。

 

では、この手であいつを捕まえることを諦めるのか。

 

それは、嫌だ。

 

れむちゃんの無念は何としてでも俺の手で晴らしてやりたい。

 

それが独善的な思いであることは重々承知している。

 

だが、大切な家族が傷つけられたという事実が胸を焼く度、その思いが自分では制御できないほどに膨れ上がっていくのだ。

 

幼子の癇癪にも似た直情的な怒りが熱を帯び、全身に巡る。

 

体が小刻みに震え、目には涙が滲み、手綱を掴む手が痛い程に握り締められる。

 

そして。

 

翔華の強く握られた手を、他の誰かの手が掴んだ。

 

「紗守名」

 

不意に自分の名前が呼ばれ、意識が現実に引き戻される。

 

狭まっていた視界が徐々に開けていき、心配そうにこちらを見つめるぴこちゃんと目が合う。

 

・・・・・・少しずつ、頭が冷えていく。

 

「復讐してえ気持ちはよく分かる」

 

だが、その言葉に再び頭に血が上った。

 

君に何が分かるんだと、そう言ってやるつもりで振り返り───

 

「あいつが憎くてしょうがねえ。そうだろ」

 

───その瞳の奥にギラついた “熱” を見た。

 

ああ、やっぱり君は。

 

それに何も言えなくなった翔華は、ばつの悪そうな顔をして目を逸らす。

 

「だが今はその時じゃねえ。一旦は先生の加勢に入るか、もしくは状況を見て先生と共に退くべきだ」

 

道理だ。

 

今優先すべきことは復讐などでは無い。

 

紅白男子の言う通り、危機的な状況にある相澤先生に加勢し、その判断を仰ぐことが今できる最善の行動だろう。

 

「・・・・・・状況的に、お前の眷属が命と引き換えに先生を守りきったんだと思う。ならそれを無駄にするべきじゃねえ。分かるだろ」

 

分かってる。分かってはいるんだ。

 

・・・・・・だめだな。この場で冷静であるべきなのは実質的な大人である俺の方だったというのに。

 

まさか、紅白男子に諭されてしまうとは。

 

それでいて未だ胸の内で燻る衝動に心が揺れ動いてやまないというのだからどうしようも───

 

・・・・・・ん?

 

いや、待て。

 

先程、紅白男子は何と言ったか。

 

命と引き換えに?

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、れむちゃんは───」

 

「紗守名!」

 

突然に張られた大きな声に、翔華の体がびくりと跳ねる。

 

「こんな事を言うのは酷かもしれねえが、現実を見ろ」

 

「い、いや、そうじゃなくてぇ」

 

「お前の眷属は死んだ。もう手遅れなんだ。なら今は───」

 

「だから死んでないってばぁ!」

 

鬼気迫る様子の紅白男子に負けじと、翔華も大声を張って言葉を返す。

 

なんてこと言うんだこの子は。

 

「・・・・・・どういうことだ」

 

「眷属達はボクの個性そのものだから、死ぬとかそういうのは無いんだよぉ」

 

「・・・・・・じゃあ、なんでそんな」

 

「大切な家族をボコボコにされて許せるわけないよねぇ!」

 

「・・・・・・」

 

なんでそんな複雑そうな顔してるんです?

 

そりゃ大切な家族に手を出されたら怒りもするし、復讐にだって駆られてもおかしくはないだろうに。

 

・・・・・・まぁ確かに、まるで大切な人を喪ってしまったかの如く思い詰めていたような気がしないこともないけど。

 

だってあんな悲惨な目に遭わされてるなんて思わないじゃんかぁ!

 

あんな、あんな・・・・・・やっぱあいつ許せねぇわ!!!

 

怒りが物凄くぶり返してきた。

 

今すぐにでも感情に任せてあのヴィランに殴りかかりたい。

 

耳を思い切り引っ張り*2、鼻を摘んで捻り*3、頬が真っ赤に腫れ上がるまで往復ビンタしてやりたい*4

 

世の中には復讐は何も生まないなんて言葉があるが、そんなのは世迷言だ。

 

復讐してもしなくても何も変わらないというなら復讐した方がスッキリするに決まってんだろ!

 

相澤先生を助けに行くついでに一発殴ったりとかできないかな。

 

というかあのヴィラン達は今何して・・・・・・。

 

 

 

じぃっ。

 

 

 

めっちゃこっち見てたわ。

 

そりゃあんだけ騒いでればバレるわ。

 

じゃあなんで手を出してこなかったんだ。

 

結構な高度を飛んでるために手を出しにくいのか、そうでなくても得体の知れない生徒二人と生物二体とくれば流石に警戒して様子見、ということなのだろうか。

 

見るからに手負いの相澤先生に襲い掛からないのも、こちらに隙を晒さないためか。

 

何にしてもこちらから仕掛ける必要がありそうだ。

 

紅白男子に目配せし、お互いに頷き合う。

 

既に冷静さは取り戻した。

 

捨て置けぬ思いはあれど、今はこの状況をどうにかすることだけを考えよう。

 

翔華達はゆにちゃんに合図を出し、勢いよく相澤先生の元へと向かった。

 

 

*1
言ってない

*2
脳無に耳はない

*3
鼻もない

*4
頬もあるとは言い難い





シリアスとは。
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