召喚とかいう無から生物が出現する現象を個性の一言で片付けるのやばない? 作:そるしあ
前回のあらすじはどうしたのか、だって?
あいつは死んだよ・・・・・・。
───第五種目:ボール投げ
ぼけーっと、自分の番が回って来るのを待つこと数分。
麗らかな日和に、翔華がうとうとし始めた頃。
麗らかな名前の女子が円の中心に立ち、ボールを構えていた。
「えい!」
麗らかガールが投げたボールは、その直線軌道を維持したまま空へと飛んで行き、お星様となった。
お星様になりまスターってか。
わはは。
こいつぁひでぇや。
彼女の個性は確か
ということは、ボールは宇宙まで飛んで行ったのだろうか。
なんて恐ろしい個性なんだ。
第二宇宙速度なんて無かった。
・・・・・・待てよ。
宇宙にさえ飛んで行くということは。
その考えに辿り着くのと時を同じくして、先生が端末の画面をこちら側へと向ける。
予想通り、そこに表示されているのは “∞” の文字だった。
「また無限だ!」
「やっぱヒーロー科はすげぇな! こりゃ負けてらんねぇ!」
ほほう。
どうやら
ならば、先人たる我が労ってやろうではないか。
ついでに、同じ
無邪気に喜んでいる麗らかガールの服の裾を、くいくいと引っぱってやる。
「ん?」
麗らかガールが振り向く。
「えへへぇ。仲間ぁ」
そこにあったのは、満面の笑みであった。
麗らかガールはやられた。
彼女は、翔華の圧倒的威厳*3によって格の違い*4を分からせられてしまった。
ああ、なんという哀れな子羊。
彼女は翔華の悪魔的所業の餌食となってしまったのだ。
ナンテオソロシインダー。
ついでに、それを見ていたクラスメイト達も大いに餌食となった。
一方の翔華は、なんだか仲良くなれそうな雰囲気を感じてホクホク顔をしていた。
「仲良くなれそう、やねぇ」
なんとなく、関西弁を真似てみたりした。
口に出して言うのはちょっと照れくさい。
麗らかガールは再びやられた。
隙を生じぬ二段構え!
ワザマエ!
ちなみに、彼女の名は麗日お茶子というらしい。
もちろんお友達になりました。
オチャコ、マイ、フレンド。
急速に距離を縮めた二人は、その場のノリで “インフィニティズ” なるチームを結成するまでに至った。
百ちゃんがちょびっとだけ嫉妬した。
そうこうしてる間に、翔華の番が回ってくる。
今回は、れむちゃんに投げてもらうことにした。
れむちゃんは素早い動きが苦手だが、それでも150.6メートルの記録を出してくれた。
上位では無いが、堅い記録だ。
ゴーレムだけに、
うぷぷ。
もはやトータル成績最下位の目は完全に無くなったことだろう。
とりあえず一安心ではあるが、この中の誰かが除籍処分になってしまうことを思えば、手放して喜ぶことはできない。
今までの記録を見るに、現状の最下位はもじゃ髪の男子あたりだろうか。
彼はまだ個性を使っていないため、これといった大記録を残せていないのだ。
彼と面識があるというお茶子ちゃんも、心配そうな表情をしていた。
何かしら個性が使えない理由があるのだろうか。
個性を使うと服がパァン! って弾け飛ぶとか。
確かに、女子もいる前でそれはあかんな。
そんなことを考えてたら、彼の番が回ってきた。
大きく振りかぶり、投げる。
「46メートル」
やはり個性を使っていないようで、記録もそれ相応となった。
どうしたんだろう、と考えを巡らせようとした時。
ふと、先生の様子がおかしいことに気付く。
なんか、先生がもわもわしている。
何それ・・・・・・こわ・・・・・・。
「個性を消した」
先生はそう言って、もじゃ髪の男子を睨みつける。
なんだか険悪な雰囲気だ。
だが。
そんなことよりも。
個性を、消す?
「つくづくあの入試は合理性に───」
徐々に、周りの音が遠ざかっていく。
個性を消すとはどういうことだろうか。
周りが何か話しているようだが、もはや耳に入らない。
翔華は一つ、嫌な想像をしてしまった。
もし、もしもだ。
俺が個性を消されたら。
そんな考えが頭をよぎり、額を冷たい汗が流れる。
個性を消すと言っても、おそらく一時的なものではあるのだろう。
それは理解している。
でなければ、教師が生徒に使うはずがない。
それは分かっているのだ。
問題はそこではない。
個性を消されている間、眷属達はどうなる?
眷属達は個性そのものだ。
翔華の個性によって生まれ、翔華の個性によって存在している。
つまり。
俺の個性が消えるということは。
その間、眷属達は。
愛しの、我が子達は。
「───さん! 紗守名さん!」
・・・・・・ぁえ。
百ちゃん?
「ん・・・・・・百ちゃん、どしたのぉ」
「どしたの、じゃありませんわ! またぼーっとして! ほら、次行きますわよ!」
そう言って俺の手を引く百ちゃん。
いつの間にかボール投げの種目は終わっていたようだ。
なんだか、頭がふわふわする。
・・・・・・少し、考えすぎていたようだ。
たとえ、個性を一時的に消されたところで、我が子達に二度と会えなくなるという訳ではないのに。
そも、ただ単に喚べなくなるだけかもしれないのに。
やはり俺は、我が子達の事となると過剰に反応してしまうきらいがあるようだ。
今朝の百ちゃんの言葉がリフレインする。
───『眷属達を我が子のように可愛がるのは結構ですが、ちゃんと線引きはしないといけません。でないと、いざと言う時に戦いに出せなくなってしまいますわ』
ううむ。
全くもってその通りだ。
これは思ったよりも切実な問題かもしれない。
先程までの俺は、前後不覚と言えるほどの状態だったように思える。
幸い、百ちゃんに気づかれていないようなので、表面には出ていなかったみたいだが。
天然な割に何かと機微には聡いからね、百ちゃん。
なお、実際のところは翔華がぼーっとしてるのはいつもの事だと判断されただけである。
知らぬが仏。
とにかく、これは火急の問題だ。
あの先生のことだし、この問題が露見すれば最悪除籍処分になり兼ねない。
とは言っても、我が子達への溢れるラァブは抑え切れるものでも無い。
ううむ。
どうしたものか。
・・・・・・戦闘訓練とか、大丈夫かなぁ。
───第六種目:持久走
うっひょぉおおお!!!
見よ! このゆにちゃんの速さ!
目がカラッカラで前が見えねぇ!!!
翔華を背中に乗せたゆにちゃんは、誰にも先頭を譲ることなく全速力でコースを駆け抜ける。
圧倒的じゃないか、我が軍は。
軍(一騎)である。
うるせ〜〜〜!!! 知らね〜〜〜!!!
一騎は一騎でも、一騎当千じゃーーー!!!
やーーーーー!!!
ぱわーーーーー!!!
今まで、これ程の長い距離を全力のゆにちゃんに乗って駆け抜けたことは一度もなかった。
故に、翔華のテンションはちょっとおかしくなっていた。
ゆにちゃんが加速する度に、気分も高揚していく。
最高に「ハイ!」ってやつだアアアアア!!!
圧倒的な疾走感と躍動感に、翔華のテンションは振り切れていた。
先程までのシリアスは既に遥か彼方だ。
温度差で風邪引きそう。
もはやこれは単なる持久走では無い。
レースである。
雄英競馬場、第一レース。1ーA
天気は晴れ。良馬場。
互いにしのぎを削り、ただ一つの勝利を目指してぶつかり合う、熱きレースなのだ。
ゆにちゃんは間もなく最終コーナーを抜ける。
雄英の直線は短いぞ!
さぁ、先頭は11番。紗守名騎手が手綱を握るユニチャン。
その後ろ、21番のヤオノモモタロウが続いている。
そしてその後ろ、4番のイイダテンヤワンヤはこの位置だ!
ヤオノモモタロウ、イイダテンヤワンヤが懸命に追いすがるも、先頭ユニチャンは悠々一人旅!
速い速い!
これは決まったか!
ゴールは目前!
ユニチャン! ユニチャンが来た!
ユニチャンが今!
ゴールイーーーン!!!
今年の1ーA
11番の!
ユニチャンだーーー!!!
いやー、他を寄せつけない圧倒的な走りでしたねー。
ええ。これは次のレースが今から楽しみですよ。
───第七種目:上体起こし
紗守名翔華、十五歳。
只今、燃え尽き症候群を患い中である。
燃え尽きたぜ・・・・・・真っ白にな・・・・・・。
当然、結果が振るうことはなかった。
───第八種目:長座体前屈
いくぞ! 必殺!
ゴムゴムの! 伸びーーー!!!
しかし、残念ながら翔華にそんな能力は無い。
変な実を食べたことも無ければ、カナヅチでも無いのだ。
もちろん、その腕がゴムのように伸びることは無かった。
同様に、記録もゴムのようには伸びてくれなかった。
翔華には、この結果に気後れすることなく、のびのびと頑張っていって欲しいと思う。
おあとがよろしいようで。
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「んじゃパパっと結果発表」
ふぃー。
いろいろあったが、ひとまず全八種目を無事に終えることが出来たようだ。
結果は上々だ。
気分も上々↑↑だ。
ん? 上体起こしと長座体前屈?
何それ美味しいの。
まぁ、一位と二位を二回ずつ取っているので、まさか最下位なんてことにはならないだろう。
がはは。
「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ」
そして翔華は気付く。
自分が今まさにフラグを立てたことに。
───慢心して息をするようにフラグを立てていくお馬鹿さんがいたんですよぉ。
───なぁーにぃー!? やっちまったなぁ!!!
例の如く幻聴が聞こえてくる。
どんな幻聴だよ。
うむむ。
自業自得とはいえ、なんだか嫌な予感がしてきたぞ。
ぼーっとしてたから除籍処分な、なんてことにはならないと思いたい。
おめーの籍ねぇから! ってか?
やかましいわ。
「口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する」
え、もう結果出るの。
ま、待って! 心の準備させて!
翔華はギュッと目を瞑った。
おちつけ、おちけつ。
流石に最下位になることは無いだろう。
あれだけの記録出してたし。
・・・・・・無いよな?
あるはずが無いよな?
頼むぞ、おい!
俺には我が子達との素敵な家庭を築くという使命が───
「ちなみに除籍はウソな」
───ここで夢敗れるわけには・・・・・・。
え?
ウソ?
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「「「「「はーーー!?」」」」」「はぇー!?」
あ、惜しい。
今回は翔華もちょびっとだけシンクロできた。
ヤッタネ!
言ってる場合か。
なんだ、合理的虚偽って。
“合理的” って付けたらなんでも許されると思ったら大間違いやぞ!
合理的号泣するぞ! ええんか!
「あんなのウソに決まってるじゃない・・・・・・ちょっと考えればわかりますわ・・・・・・」
言うねぇ!!!
いーや、あれはマジの顔だったね!
眷属達の意図を表情から読み取ってきた俺が言うんだ、間違いない。
「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」
なんだか納得がいかない翔華であった。
だが、これで誰も除籍処分にならずに済んだのだ。
良しとしようではないか。
ちなみに、翔華の総合順位は二位だった。
全然大丈夫だったやないかい!!!
また二番目だし!!!
むすー。
翔華はちょっと不貞腐れた。
気付けばお気に入りが1000件を超えてました。
あ、ありがてぇ・・・・・・!
高評価もこんなに沢山・・・・・・涙が出るっ・・・・・・!
感想、ここすき・・・・・・染み込んできやがる・・・・・・体に・・・・・・!