まだ二話目なのにホントありがとうございます
「反逆者ギラ。ラクレス王の命により、貴様を連行する」
剣を突き付けたカサスは一歩ずつ、ゆっくりと距離を詰めていく。それに合わせ周りの兵士も包囲の網を狭め始めた。
対する反逆者ギラは、呆然としたといった様子でその場から動く素振りを見せないでいた。
(どうして………なんでなんだ!)
口には出せない悲痛な叫びが、心の中で霧散する。
傍から見れば堂々と兵士達に立ち向かっているように見えているが、実のところ今のギラの精神状態では、立っているのがやっという状況だった。その要因となっているのは、目の前に立つ男に他ならない。
先ほどこの男はコガネを助けてくれた。その姿はまさしく、自分達の知っているカサス本人だった。しかし今目の前に立つ男は、そんな片鱗など一切見せず冷徹な視線ばかりを向けてくる。
それに先ほどの言葉はどういう事だろうか?カサスがギラの事を忘れるなどあるはずがない………そう信じたい。
理解が追いつかない。だが一つ、分かっていることはある。それは、このままでは自分は捕まり死ぬということ。それだけは何としても回避しなければならない。
グッと、オージャカリバーを握る力を強める。本音を言えば、彼と戦いたくはない。だが、それでも─────
『どけ、スカポンタヌキども!』
「「‼」」
突如上空から降りてきた怒鳴り声。そしてその直後、青い飛行物体がギラとカサスの間を翔け抜けた。
「っ速い!」
その様はまさしく閃光。青い稲妻と共に強烈な旋風を発生させた守護神は、つまらない争いを行う者達を見下ろしていた。目の覚めるような群青のボディーに、全てを見通すかのように巨大な翠色の瞳、そして風を切り音をも置き去る一対の羽。
テクノロジーの国ンコソパのシュゴッド、ゴットトンボがこの場に降臨したのだ。
『オラオラ。どいたどいた!』
「うおおおお!な、なにをするぅ!」
「ちっ、ヤンマ・ガスト………!」
空中にてホバリングを行っていたゴットトンボは、突如ギラ目掛けて一直線に急降下。地面すれすれまで接近し頭を上へと向けると同時、その金属製の体内にギラを収納した。、そして、またも超スピードで急上昇。兵士達の包囲網から抜け出した。
「痛った!」
しかし、そう簡単に事は進まない。
現在のゴットトンボは、最高速度にも遠く及ばないスピードで移動している。しかしそれでも、ゴットトンボのスピードは他のシュゴッド達に比べて大幅に優れていたのだ。慣そんな速度で動く物体の中に、慣れない者が入れられでもしたら、どうなるかは言わずとも分かるだろう。
現に強引にゴットトンボの操縦室へ叩き込まれたギラは、まともに受け身を取れなかった上に、体験したことのないスピードを味わらされ、その場で倒れ込んでしまった。
「大丈夫か。スカポンタヌキ」
その場でうずくまるギラに、ゴットトンボの操縦を行っている男が声を掛けた。リーゼントの効いたヘアスタイルに着崩した衣服。いかにもな不良のイメージを詰め込んだようなこの男こそ、現ンコソパ国王ヤンマ・ガストであった。
ぶつけた頭を抑え痛がっていたギラは、ヤンマの姿を視界に入れた途端、水を得た魚のように飛び上がった。そして先ほどまでの様子は何処へやら、早速ヤンマに食い掛った。
「貴様。どういうつもりだ⁉」
「おいおい。助けてやったってんのにその言いぐさはねえだ─────っ!」
鈍い衝撃が、ゴットトンボを襲った。
ドゴン!という腹に響くような衝突音が、シュゴットの機械の肉体に響き渡る。
その拍子にギラはまたもバランスを崩し、ヤンマも少し足元が揺らいだ。そしてそれと同時に操縦席に広がる警告表示。そこにはゴットトンボの腹部辺りにダメージを受けたとの報告が入っていた。
「今度はなんだ⁉︎」
「あの騎士サマの仕業だろう」
「騎士………カサスの事か!」
ギラの声に反応するように、新たなウインドウが開いた。そこに映っていたのは、民家の屋根に立つ鎧を纏った一人の戦士。仮面に隠れその表情は伺えないが、見せつけるように手に持った剣をゴットトンボに向けてきた。
敵意がある。と受け取って良いようだ。
「ったく。最高速度じゃないとはいえ、コイツのスピードに追いつくとは、相変わらずイカれた体してんな」
ヤンマが呆れたように笑ったと同時、カサスは上空へと飛び上がった。たった一度の跳躍。しかしそれは、ただ舞い上がったわけではなかった。
「っ高い!」
一瞬視界からカサスがいなくなったその刹那、空中をホバリングするゴットトンボの高度よりもさらに上に、その姿はあった。完全に相手の上を取ったカサスは、続いて自由落下に入った。左肩に装着されたマントをはためかせながら、剣を真下に振り下ろす。
「そう簡単には、やらせねえぞ!」
剣先がゴットトンボのボディーに触れる寸前、ヤンマが操縦桿を乱暴に倒し紙一重で回避した。そして勢いそのままに、高速機動へと移行した。
「ずらかるぞ。しっかり掴まっとけよ!」
「うおおおお!次から次に何なんだあー!」
神速の守護神は帰路へと舵を取る。羽が轟き、閃光が迸る。
経過したのは僅か刹那。始まりの国の城壁を越え、広大な草原を翔け抜け、雄大な海をも、あっという間に制覇した。
そして次に目を開けた時、ギラの前には、ハイテクな高層ビルの数々が広がっていた。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦
「ギラの様子はどうだった?」
「『俺様が世界を支配する!』だとさ。俺が来た途端に顔が曇ったけど」
「昔馴染みに命を狙われたんだ。無理も無いだろう」
バグナラクの侵攻をなんとか退ける事は、出来た。しかしその代償に俺たちは計画を少しばかり、いやかなり修正する羽目になっていた。
「ヤンマ・ガストはンコソパに入ったか」
「ああ。奴は元々、キングオージャーを自身の支配下に置きたいと考えていた。となれば、」
「ギラを利用するのは当然か………」
「だろうな」
玉座に座るラクレスは、思い詰めた表情で天を仰ぐ。
ギラの身柄は現在ヤンマが握っているが、彼の性格からしても捕まえた獲物をそう簡単に逃がそうとはしないはず。中々に手を焼かせる事をしてくれるものだ。
しかし、ただギラの身柄を取り返すだけならば、そう難しいことではない。軍事力ならシュゴッダムの方が圧倒的に有利であり、正面からやりあえば九割九分勝てるだろう。それが通常時のンコソパであればだが。
現在のンコソパには、キングオージャーを操れるギラがいる。もしギラがヤンマの口車にでも乗せられて、彼らの側に着きでもしたら、勝率は大幅に下がるだろう。おまけにあのキングオージャーを復活させたヤンマ本人がいるのだ。後付けで改造を施すなどの、小細工をしてこないとも限らない。
では交渉ではどうだろう?こちらもまた厄介だ。これがトウフやゴッカンあたりだとまだ幾分か良かったのだが、ンコソパと言うのが問題だ。あの国のシュゴッダムに対する印象は、すこぶる悪い。過去の扱いなどを鑑みれば当然ではあるのだが、驚いた事に奴らに嫌われているのは、ラクレスではなく俺らしい。まあ、心当たりがないとは言い切れないのが悔しいところだが、この話は一旦置いておこう。
「先ほども言ったが、私としてはギラを中心とした計画に修正するつもりだ。そしてそのためには、ギラ本人の成長が必要不可欠」
「だから俺たちがギラと敵対する事になると?」
「そうだ。しかしヤンマ・ガスト以外の王達も、指を咥えて見ているだけではないだろう。何かしらの妨害は入ると考えた方が良い」
「じゃあどうする?個人的にはいっその事、トウフ以外の全部を敵に回すのもアリだと思うが?」
「………カサス。それは少し、過激過ぎじゃないか?」
「冗談だよ冗談…………おい、マジで引くなよ」
「お前とも長い付き合いになるが、そのノリには相変わらず付いて行けんよ」
「失礼だな。俺は空気を読めるいい男だぜ?」
フフッと、僅かではあるが、ラクレスは頬を緩ませた。それからコホンと咳払いを一つ。そして、デフォルトの王の顔に戻った。
「まずはギラの身柄の確保を最優先にさせてもらう。ただし少し時間を掛けてだ。多少の試練を与え、それなりに力が付いたところでこの城に向かい入れる」
ようするに、俺たちはしばらく悪役ごっこをしておけばいいという事だ。ただし、ギラがぎりぎり越えられるようなハードルを与えながら。
確かに過酷な経験を積ませれば、ギラの急激な成長は見込めるだろう。しかしギラの精神が、その過程で壊れる事も充分にあり得る。そこらのカバーは、俺の仕事だろう。それを見込んで、こいつも話を進めているのだろうし。
「分かった。でも、お前が王の立場から退くとなると、俺も姿を消した方がいいんじゃないか?俺の忠誠心が高い事は、国内外問わず知れ渡ってる。民達が疑問を抱いても、おかしくはないだろう」
「それについては問題ない。私が、とびきりのシナリオを書き下ろしてあげよう」
ニヤリと、ラクレスが口を上げる。まるでいたずらを思い付いた子供のように。こいつがこんな表情をするときは、だいたいロクな事が起きないし、面倒事を押し付けられる。しかしそういう時に限って、こいつの立てた作戦が成功するのが何とも言えないのだ。別に解せないわけではないし、かなり合理的な流れで立てられてはいるのだが、一つ不満点がある。
それは俺のやる事が多い事。もちろんラクレスに手駒が少ない事も、その他諸々の事情も分かっているつもりではあるのだが。
「脚本家ラクレス先生の新作、期待させてもらうよ」
「ああ。歴史に残るほどの大作を待っていてくれ」
「それじゃあ、俺も肉体労働に励みますか」
大広間からの去り際に、ラクレスが「ボシマールとドゥーガを応援としてよこす」と言ってきた。暗に、何かあれば後ろに下がれとでも言いたいのだろう。あいつは人のことを、馬鹿のように前にしか進めないイノシシか何かと思っているんだろうか?
確かに俺は、策略などを考えるのは得意ではない。しかし一人の戦士として、引き際を間違えるようなことは絶対にしない。………と言ってもラクレスは、絶対に俺を放し飼いにすることはしないだろう。
心配性になるのも分かるのだが、ギラにもそれがうつるのは勘弁してほしいところだ。
「まあ、何はともあれギラを連れ帰らないと、話は始まらないよな」
誰に聞かせるでもなくポツリと呟いた俺は、胸元へと手を伸ばす。少しゴソゴソと物色すると、掌に収まる程度の
黄金の膜に包まれた輝きの中には、カブト虫を模したような意匠が刷り込まれている。
こいつとの付き合いもそれなりに長い。俺も最初は嫌われていたがあいつなら、ギラならきっと、心を通わせてくれる。いやもしかすると、あの二体も………………
「やり遂げるかもな。あいつなら」
城の前方、シュゴッダム全体が見回せる広場へと出た俺は、右手を頭上に掲げる。晴天の中、陽の光を受け輝きを透き通らせる一滴の雫。
それはまるで、こんな殺伐と混沌とした世界など関係ないと言わんばかりに─────
いや、それでも。
「頼んだぞ。
ゴットカブト洗脳回避です!
本来ならラクレスが洗脳しようとしてましたが、カサスが待ったをかけ、某獣電戦隊の勇者様達のように生身で挑んでったら認められました
時間があったら過去編などで書いていこうと思います