ラクレス王の騎士   作:傘葉

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ネオンの下での暗躍

俺には友がいる。かけがえのない友が。

 

そして彼には、望みがある。全世界の人々を救いたいという望みが。

 

俺はその考えに共感し、彼と同じ道を選んだ。未来の、この星の人々の幸せを願って。

 

だがある時、気付いてしまった。その願いが叶った世界で、彼は、俺の友は、笑っているのだろうかと。

 

彼がどのような覚悟で、どのような人生を歩んできたか。俺が一番近くで見てきた。だから、どうしようもないくらいに、分かってしまった。

 

彼が、どんな道を選ぶのか。

 

ああ、嘆かわしい。なぜ彼が、その身を焼かねばならないのか。なぜ俺は、それを見ていることしか出来ないのか。

 

怒りが湧いた。やり場のないくらい、強大な怒りが。彼がなぜ、そんな道を歩まねばならない。王を継ぐ者として生まれたからか?それともあの日、無力故に何も出来なかったからか?

 

どちらにしろ、間違っている。こんな世界は。

 

だから俺は、決意した。彼がどう思うと構わない。ただ、彼の笑える未来の為に、俺は───

 

 

彼の望みを奪う。

 

 

 

♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 

 

 

「バグナラクの宰相カメジム。いや、今はこう呼んだ方が良いかな。

宇蟲五道化が一人、虚飾のカメジム」

 

─────うーむ。どうしたものですかねぇ

 

 彼、カメジムが仮初めの主デズナラクに与えられた任務は、シュゴッダムでのスパイ活動。その一環として、シュゴッダムの最高戦力と噂されるカサスの周りを嗅ぎ回っていたのだが、想像以上に厄介な存在だった。

 

─────先ほどの攻撃。二撃目はともかく一撃目は、全く動きが読めなかった。これほどの力を持つ者とは、正直……

 

 脳裏に思い浮かぶは、彼の本来の主の言葉

 

『シュゴッダムの初代国王にあげたんだよ、ちょっと失敗したお人形。お片付けに使おうと思ったら、壊れちゃってさー。まあ、勝手にして良いよ。壊すもよし、使い潰すもよし。どーせ大した事ないからさー』

 

 幼稚な言動が目立つのはいつもの事だが、見通しが甘いのは考えものだ。彼が直々に作った人形は、もう既に死んでいるとしても、その子孫ということは、宇宙最強の力の一部を内包しているということ。下手をすれば、寝首を掻かれる事態になりかねない。だというのに放置とは、危機感が足りな過ぎだ。

 

─────しかし、今の彼の実力は、私には遠く及んでいない。私の考えすぎでしたか。ならば、この場でも問題なく対処出来る。しかし、わざわざ彼は、自分から私に近づいてきた。なにか考えがあるのか………

 

 カサスの『剣の腕』は、確かにカメジムから見ても相当なものだ。しかし所詮は、下等生物の中にいる一匹の個体の話。

 

─────まあいいでしょう。ムシケラ一匹、後で殺しても支障はない

 

 カメジムは判断を下した。だがその中には、本人も自覚していない慢心と驕りが、混ざっていた。

 

「ウッフッフ……まさかこんなに早くバレてしまうとは。一体いつからお気づきに」

「この国に入った時から、奇妙な気配は感じていた。最初は気のせいかとも思ったが、あまりにしつこく追ってくるんでな」

「なるほど。しかし、()()()を知っているということは、何か理由がおありで?」

「それは企業秘密ってやつだ」

 

 ハスティー家の家の者は、代々宇蟲王ダグデドに仕えてきた。それは、現国王ラクレスも例に漏れずだ。彼らはダグデドの『お片付け』の手伝いとして、このチキューで力を振るってきた。バグナラクと人類の生存競争という、宇宙規模の壮大な茶番を行う為に。

 

 しかし、この事実を知らされるのは、シュゴッダム国王に即位した者だけだ。無論それを他人に言いふらすことは、ダグデドとの約束を破る『ルール違反』になる。そこに例外はない。だが、ここにいるカサスは違う。

 

 王でもない身でダグデドの正体を知り、その上で関係者であるカメジムに近づいてきた。そこで残るのは、一つの疑問。

 

 この男の目的はなんだ?

 カメジムの事を知っているとなると、言動にちぐはぐな部分が多い。ダグデド達が『神の怒り』を起こしたのだと知っているなら、不用意に近づくのは、あまり褒められるものではないだろう。いくら下等生物の人間とはいえ、相手との力量差を考えられない者ではないはずだ。だとするならば、他に何かがあるのか。

 

 

「何が目的でしょうか?わざわざ私に近づくなど、殺してくれと言っているようなものでしょうに」

「目的、目的ねえ。そう言われると、少し返答に困るというか何というか」

「…………まさか、何も考えてなかったと?」

 

 驚いた。いくらムシケラといえども、相手との力量差が分からないとは。生物としては、下も下だろう。そんなヤツが大国家のトップの側近とは、冗談にしてはふざけすぎだろう。しかし目の前に立つ男は、冗談を言っているようにも、空気を和ませようとしているようにも見えない。これでは、先ほどまで慎重に分析していた自分が、馬鹿のようだ。

 

 カメジムの中で、カサスに対する警戒度が、ガクンと下がった。

 

「いや、そういうわけじゃない。ただ一つ、聞きたいことがあってな」

「ウッフッフッフ。いいでしょう。一つ、だけなら」

 

 わざとらしく、『一つ』を強調する。

 

「じゃあ聞きたいんだが、強いのか?あんたたち五道化は」

 

 何かと思えば、そんな事かと落胆する。直前のやり取りでこの男の底は知ったつもりだったが、まさかこのような事を聞くことになるとは。ただ、反応は面白そうなので、答えさせてもらう。

 

「ええ、強いですよ。このチキューの誰よりも、何よりも。なにせ、宇宙一の戦闘能力ですから」

「そうか…………ならお願いがあるんだが」

「内容次第、ですかね?」

 

 手に持つ杖の先を、カサスの首へ向ける。無論、本気で殺しにいくつもりはない。ちょっとした脅しだ。別に彼をここで殺す必要はない。だが、ここで生かしておく理由もない。いやむしろ、宇蟲五道化の事などを知っているとなると、僅かではあるが、殺す理由の方が上回るかもしれない。

 

 しかし何はともあれ、ひとまずは話を聞いてからだろう。特段面白いことでもないだろうが─────

 

「俺を、あんたらの仲間に入れてくれないか?」

「はあ?」

 

 訂正しよう、予想外だ。

 

 カメジムも思わず、素っ頓狂な声が出た。しかしこれでも歴戦の猛者、直ぐに脳が言葉の意味を噛み砕く。

 

「オホン。失礼、少し取り乱してしまいました。それで、先ほどの言葉は?」

「そのままの意味だが」

「そのまま………ではあなたは本気で?」

「ああ。宇蟲五道化とは言わずとも、宇蟲王の近くに身を置きたい」

 

─────何者だ、このムシケラ

 

 命乞いならまだしも、仲間に加わりたいだと?今までこうしてコンタクトを取ってくる相手でさえも希少であったのに、このような事を言ってくる輩がいるとは、本当に予想外だ。

 

「あなたは長年、ラクレス・ハスティーの騎士を務めていた。それがこうも簡単に。どういう風の吹き回しですか?」

「俺は別に、忠義や忠誠なんぞに興味はない。そんなもの犬でも食わねえよ。もしそんなモンを本当に信じてる奴がいたとしたら、そいつは、犬以下の畜生か何かだろう」

「ウッフッフッフッフ!これは中々に薄情な御方だ!」

 

 てっきり、歴代のシュゴッダム国王達のように命乞いをしてくるかと予想していたのだが。こんな相手は初めてだ。呆れよりも何よりも、興味が湧いてきた。

 

「俺は力が好きだ。権力、威力、暴力、何でもな。だから今まで、ラクレスにも馬鹿正直についてきた。あいつが、この星で一番強い権力を持っていたから。だが、もう終わりだ」

「なるほどなるほど。ひとまず、あなたの良い分は分かりました。しかし、あなたがこちら側に来ることで、我々に何かメリットがあるのでしょうか?」

 

 カサスは嗤った。どうしようもないくらい歪んだ顔で。

 

「ああ、あるさ。とびっきりのがな」

 

 

 

♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 

 

 ンコソパに夜が訪れた。街中に張り巡らされたネオンの鮮やかな輝きが、闇夜の夜空の中で、眩いコントラストを生み出す。今のネオンは、ンコソパの国旗と同系色の青色。これは決して屈しないというヤンマの挑発か、或いは意地なのか。どちらにしろ、直ぐに真意は分かるだろう。

 

 まあ大方、

 

『ピーピー喚くな三下がァ!俺は媚びねえ、へつらわねえ!誰が相手になろうとも、意地とドタマでブッちぎる!それがンコソパ総長、ヤンマ・ガストだ!』

 

 予想通りにはなったのだが。

 

「本当に後先考えないな。あの男は」

 

 交渉役として訪れたドゥーガとボシマールに差し伸べられた手を跳ね除け、堂々と国民に宣言したヤンマ・ガスト。もう後には引けないだろうに、国民はだれ一人として、暗い顔をしていない。むしろ、希望で満ち溢れている。やはり王としては考えものだが、人の上に立つ上では、生粋の才能を持っているだろう。

 

 ただ、それはあくまで身内の中での話。外の人間から見れば、色々な意味で厄介だ。

 

「癪には触るが、ギラの為だ。少しばかり力を借そう」

 

 

 

 

 

 数分後、街中にバグナラクが出現した。しかし昼間のような大部隊ではなく、首領であるデズナラクとその側近のカメジムのみだ。デズナラクが問うた。秘宝を明け渡すかどうか。ヤンマは答えた『NO』だと。

 

 そしてその報復と言わんばかりに、バグナラク側は一体の巨大な兵ボダルジームを、ンコソパの街中に放った。

 

 対するヤンマ、そしてギラはキングオージャーを出現させ、撃退へと向かう。

 

「おおっ!なぜ飛べる!?」

「ほう…乗ったやつのシュゴッドの力が使えるってことか」

 

 ヤンマが搭乗したことにより、ゴットトンボの飛行能力を獲得したキングオージャーは、暴れ回るボダルジームを追跡する。

 

 高層ビルが並び立つ街中を、超スピードで飛行する二体の巨人。時にビームや斬撃の応酬、また時に激突や衝突を繰り返しながら、華麗で熾烈な演武を繰り広げる。またその余波により、周りの建造物にも、少なからずダメージが入る。しかしキングオージャーの、ギラとヤンマの勢いは止まらない。

 

 ビルを貫き、熱線を潜り抜け、ボダルジームを追撃する。そして、

 

「俺は引かねえ!」

 

 追跡の末、ついに正面にボダルジームを捉えた。距離は目と鼻の先。空中ゆえ、障害物になるようなものも何もない。だが、

 

「やっべ…!」

 

 それは、ボダルジームとて同じこと。キングオージャーの目の前で、チャージした光線を、今にも発射せんと待機していた。

 

「ウソ~ン!」

「死ねや、シャバ僧が!」

 

 回避運動は間に合わない。

何とか耐えようと、ギラ達が防御体勢に入ろうとしたとき、ボダルジームに光り輝くビームが命中した。

 

「なに⁉」

 

 衝撃により吹き飛ばされたボダルジームは、体勢を崩し急降下。そのまま地面と熱いキスを交わした。

 

「何だかよく知らねえが、助かったぜおめえら!」

 

 窮地を脱することが出来たのを、ンコソパの民の協力のおかげだと合点したヤンマは、労いの言葉を言葉を掛ける。

 

『ああ?んだよそれ。俺たちなんもやってないぞ』

「ああん?」

 

 しかし返ってきたのは、疑問の声。モニターに映る周りの人々も首を縦に振り、賛同の意を示す。

 

「どうなってんだ。じゃあ今のは誰が………」

 

「…………」

 

─────あれは、一体………

 

 困惑するヤンマの横で、ギラは思案する。

 

 先ほどボダルジームを吹き飛ばした一撃。ほんの一瞬ではあるが、その光の発生源を、ギラの瞳は捉えていた。その正体は、ンコソパのビル群よりも遥か遠く、夜空の中で羽ばたいていた一体のシュゴッド。

 

 黒いボディーに、所々でその存在を主張する黄金の装甲。そして、光り輝く翠色の一対の瞳。まるで、伝説に伝わる三大守護神の人柱のようなそれ。幸か不幸か、ヤンマは気付いてなかったようであるが。

 

 直ぐに飛び去っていったあのシュゴッド。味方のようではあったが、ンコソパの人々は何も知らない様子だ。ではアレは一体?

 

「なにボーっとしてんだスカポンタヌキ!」

 

「あっ、ああ!」

 

 ヤンマの怒声が響き渡り、思考の海から抜け出す。ああそうだ、今は目の前の敵に集中しなくては。

 

「ウスバ!」

 

『対象の移動予測、計算終了!』

 

「マユタ! アッカ!」

 

『エネルギー転換ルート、構築完了!』

 

『発動可能時間、マックス3.58秒!』

 

 ヤンマの指示の下、対ボダルジームの即興戦術が瞬く間に織り込まれていく。そして、一体のダンゴムシ型シュゴッド───ガーディアンローリングが、姿を現した。

 

『でかダンゴムシくん、お待たせっす!』

 

「上出来だ、シオカラ!」

 

 届けられたガーディアンローリングは、ローリングハンマーへと変形。キングオージャーの左腕部に接続される。

 

 そして、ンコソパ中から届けられた電力(思い)を腕に、キングオージャーが再び飛び立つ。

 

『『『『ぶちかませーっ!!』』』』

「「ひざまずけーっ!」」

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事に撃破出来ましたっと」

 

 ンコソパの都市部より少し外、所謂郊外………というには騒がし過ぎる場所で、俺は一部始終を目撃した。無事に出現したバグナラクは撃破。怪我人なども出ていないようだ。

 

─────良かったのか?

 

 カブタンが不思議そうに問い掛けてきた。その言葉が示すのは、先ほどのバグナラクを吹き飛ばした一撃の事。少々苦戦するかと思い、お助け程度に一発ぶっ放してやったのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。あの様子なら、俺が介入せずとも、あいつらだけで勝手に終わらせていただろう。

 

「大丈夫だよ。流石にあそこからじゃあ、まともに見えないだろう。それより、どうだった?ギラ(アイツ)の様子は?」

 

─────悪くない

 

「それだけかよ。もっと他にほら、あるだろ?」

 

─────悪くない、それだけだ。…………今はな

 

「くっくっく………素直じゃないな」

 

 カブタンの言葉に苦笑を漏らす。俺は三大守護神の奴らとしか交流したことはないが、シュゴッドとはこういう奴らしかいないのだろうか。まあ確認のしようもないし、放置で良いか。

 

 とりあえず一件落着だ。戦闘も終わったようだし、ボチボチ様子を伺いにでも………

 

『え? ええーーーっ!?』

 

 

「マジかー」

 

 モニターに映像が出る。そこにいたのは、先ほどまでキングオージャーに合体していた一体であり、イシャバーナの守護神となっているシュゴッド。鮮やかなイエローに、万物を切り裂く一対のツメ。名を、

 

「ゴッドカマキリ………ってことは、あのワガママ女王!」

 

 ギラとヤンマを前にも止まらぬ動きで回収したゴッドカマキリは、優雅ともいえる動きで、颯爽と飛び立つ。

 

「追えるか?」

 

─────難しいな。それに、人間の目もある

 

「だよなあー」

 

 まさかここまで動きが早いとは、危険な目に合うことはないと思うが、如何せんバグナラクという心配もあるのだし、

 

『カサス様』

 

 通信が入った。ドゥーガの背後の風景から察するに、既に輸送ようのシュゴッドに乗り込んでいるようだ

 

「ドゥーガか。どうした?」

『ラクレス様よりご命令です。直ぐに、イシャバーナへ向かうようにと』

「…………分かった。ところで、お前たちには何と言っていた」

『一度本国に戻るようにと。本丸の守りが手薄になってもなりませんから』

「帰路には気を付けろよ。到着次第連絡すると、ラクレス様に伝えておいてくれ」

『分かりました。そちらもお気を付けて』

 

 通信が切れる。他の人間を帰らせているのを見るに、後は俺に任せるといったところであろうか。国から国の大移動で若干疲弊気味ではあるが、この程度、どうと言う事はない。

 

「カブタン。行くぞ」

 

─────了解した





別にBLが好きってわけではないんですけど、「男同士がお互いにクソデカ矢印向けてる」みたいな関係性が好きなんですよね(隙自語)

最初の方、若干怪文書っぽくなってるけど……ヨシ!
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