息抜きに書く寄せ集めの短編です。

全くもって怖くは無いです。多分。

一応、作品通してのストーリーがありますが、最後まで書き切るかどうかは分かりませんし、そもそも息抜きでしかないので、ただでさえ遅い投稿頻度が更に遅く…。

なので、純粋にゴルシちゃんの軽快な口調で語られる不思議な噺を楽しんでいただければ幸いです。
私はそれが見たくて書いたのだ。

転生オリ主タグは、ウマ娘の世界観的に一応付けただけですので、ほぼその要素はないと思ってください。
そこからアクセスした方には申し訳ないです。

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なんでもない

 

 

 

 

なんかついてねー時ってあるよな。

レースはスランプ、もしくは怪我、やることなすことろくな方向に行かねぇ。

そんな時は、この木の虚で叫ぶんだよ。

 

 

 

『ーーーーーーーー!!』

 

 

 

まつわる話を一つ。

 

実はな?この虚、新月の丑三つ時に、底なしの穴に変わるんだと。

 

で、落ちたら二度と帰って来れないんだと。

 

 

 

『…昔、どうしようもないくらい悩んでたウマ娘が居て、取り敢えず気持ちを晴らすために、木の洞に不安を吐きに行こうと新月の丑三つ時に寮を飛び出した。

 

けれど、着いていざ洞を覗いた時、そいつの底がなくなっていた。

 

彼女は驚いて、よろけて、そのまま暗闇に落ちて行ってしまったという。

その行方は誰も知らない…。』

 

 

 

ま、そう言う話があるんだよ。

 

しかし、これだけじゃあ大雑把過ぎて、どうも信憑性に欠けるし。

ほら話だとしても、ぼんやりとし過ぎているのは面白くねぇよな。

 

だから、ゴルシちゃんなりに、この話を考察して、補完してみたんだぜ。

 

…ってなわけでー、語る話は、謎の怪談のゴルシちゃんリミックス。

 

まあ、楽しんでってくれよ。

 

 

 

 

「…今から何年、何十年前だったかなあ。

とあるウマ娘が居たんだ。

そいつは、そこそこ強かった。

 

重賞常連とまではいかないが、まぐれではあれど一度だけG3を勝ち切ったこともある。

程々に注目もされず。程々に稼いで。

人並みに友達も居て。人並みに恋人も居た。

なんだかんだ幸せだった。

 

代わりに、という程では無いが、そいつはそこそこ頭が良かったんだ。そこらの奴なら「天才」と謳う程には頭が良かった。

 

というか勘が良かったのか。

学力とかそう言う話じゃなくて、感性とか発想力とかそういう面での話。

 

ただ、ちょっと判断力がねぇっつーか。

 

レッドラインが分かんねぇっつーかな〜。

 

…その日の夜、そいつは寮が消灯下しても尚、ある問題を頭に巡らせていた。

テーブルライトの下、自分自身に課した宿題を楽しんで。

 

大胆に「私ってなんなんだろう」って。さ。

 

その内容を、アタシが説明できる範囲で言うならばこんなものか。

 

ま、思春期辺りの子にはありがちな悩みだよな。

答えの無いような問い、哲学を、理論的に紐とこうとしていたんだ。

 

 

そいつはちょーっと違ったが。

 

どっちかつっーと、自分の価値とかそういう独りよがりなモンじゃなくて、ウマ娘という存在について、と言ったとこかな。

 

 

やー、なまじ頭が良い、つーか勘が鋭いなからなあ?すげぇよな、

 

そいつは「答え」を出したんだよ。

賞賛に値するぜ。

 

 

 

…んでま、その後「気づいちまおうとした」そいつは寮を飛び出した。

 

 

な、トルストイって知ってるか?

「戦争と平和」とかを書いた偉人だ。

アタシは湿っぽくないし堅苦しくない「イワンのばか」の方が好きなんだが。

 

まあ、それは関係ねぇんだけどさ…。

 

じゃなくて、そいつは今際の際に家出を決行したんだって。

今までの数々の名著を「くだらねぇ」とかなぐり捨てて、売上を恵まれない身分のやつらにバラまこうどしたんだってよ。

 

世界に嫌気が差したんだと。

 

 

 

…まー、同じような気持ちだったのかもなあ。

 

 

 

…行き場のない悩みを「とりあえず」吐き出そうと、おもむろに走り始めた。

 

不気味な程透き通った消灯後の月下に、恐れて、また脚を回す。とにかく、止めたら「気づいちまい」そうだったから。逃げる。

 

 

 

 

ーーーーんな意思はここで引き止められたんだ。

 

何故か、意味もなく、その木の洞が気にかかつた。そこに吐き出せば、この懊悩も終わる気がした。「忘れる」気がしたから。

 

一歩、一秒、しきりに呼吸を整えて、やがてそこに近づいてゆくのだ。

 

 

 

 

すぅ、はぁ。

 

 

 

 

 

すぅ、はぁ。

 

 

 

 

 

…背の裏が見えかかった時だった。

 

刹那、月明かりに照らされた影が映る。

 

後ろに何かが「いる」ことを悟った。

 

獣の感は敏感なのだ。時に酷く正しい。

 

普通に考えれば警備員なのだろうが、明らかにそれとは違う不気味さを感じたのだ。

 

時の隙間に頭をまた巡らせる。

 

 

誰だ。誰だ。敵意はあるのか。

 

人か。ウマ娘か。動物か。

 

そもそも生物なのか。もしくは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま、無駄だよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風に靡く耳と、薄らな髪が、ちらり見えた気がした。」

 

 

と、

 

 

木の洞に落ちていったとさ。

 

 

…んだと。

 

正直に言って話の内容自体はあまり面白くはなかった。が、作り話にしてはどこかひたすら引っかかる不気味さというか、リアリティがある。そんな話だった。

 

こういうものの類は、基本、信じない主義なのだが、なんとなく、やけに節々に人間味を感じるというか。

 

まるで実際にその場に居合わせたかのような、鬼気迫る語り口。

 

…上手ではあるが、何か、ゴールドシップらしくないような気もする。

 

俺が偉そうに感想を考えていると、遮るようにゴールドシップがどこからともなく出した扇子を床を叩いた。

 

扇子を置いた後、礼をする。

 

 

『お後がよろしいようで。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー抜かすものだから、不気味な話だと言うのに何故かくすりと笑ってしまった。

 

それとともに、今、笑い話の記憶もどこかへ飛んでいってしまったようで。さっきまで考えていたハズの感想も、曖昧に…

 

『ん、どうしたんだトレーナー?そんなにアタシの話がつまんなかったか?』

 

ああいや、七不思議らしく、ちょっぴり不思議な、良い話だったよ。

 

『そりゃあ良かった。七不思議じゃなくてゴル不思議だがな。もっとも、56個もねーんだけど。…でも、なんかまだ浮かねー顔してるような気がするぜ?どうしたんだよ。』

 

いやなんか、なんというか、話を聞いていて凄い違和感を感じた、ような…。

 

『…ほー。』

 

でもなんか、話の内容が覚えていられなくて、あれ、なんだっけ…ってずっとモヤモヤしててさ。ごめんな、一丁前に感想述べてる割に、ちゃんと聞いてなかったのかも…。

 

『ふーん。』

 

『ま、”良かった”んじゃねーの?』

 

不敵に微笑んだような顔と、薄らな髪が目につく。

 

どこからともなく風が吹いた。

 


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