龍騎外伝 仮面ライダーヒルツ   作:巽★敬

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※ 今回は非常に過激な暴力シーン、不快な言動、またはショッキングな表現を多量に含み読者様の気分を害する場合が有ります。
以上の注意点を了承出来る方のみ拝読して頂けると助かります。


第7話 「無敵」

その日は雲一つない快晴だった。

 

昼休み中であるxxx小学校の運動場は和気あいあいと遊び回る生徒達で活気づいている。

砂浜では2人の男子生徒が大きな泥のトンネルを作ろう難儀していた。

 

「おーい、持ってきたぞ」

「サンキュー。そこ置けよ」

 

片方の少年が泥細工に使う水の入ったバケツを重そうに持ってきてくれた。

 

「こんなに水要るのかよ~?」

「要るよ。これからすっごい傑作つくるんだ!」

「傑作って、たかがトンネルだろ?」

「その上に城とかタワーとか作るし」

「はいはい、お前って変にこだわ.....ぐっ.....」

 

ここで少年はバケツを落としてしまい、派手に友達の作るトンネルへと盛大に水が掛かってしまう。

 

「ああ!何やってだよもう......」

 

自信作を台無しにされ憤慨せんと顔を上げる少年。

しかし彼の目に飛び込んだのはあまりにも異常な光景だった。

 

先ほどまで話していた友達が宙に浮いていたのだ。

正確に言うと、奇妙なスーツを身に纏った人物が友達の体を持ち上げていた。

しかもただ持ちあげてるのではない。

巨大な針の様な剣で友達を後頭部から串刺し高々と掲げている。

 

「.....え?....」

 

はじめ少年は全く状況を理解できず、ただ茫然と見上げた。

少年の友達は口からは貫かれた剣先が吐出しており涙を流しながら白目を向けている。

やがて鎧の人物こと、仮面ライダーヒルツはそのままヘルザバイザー振り下げ、友達の遺体を掃い飛ばす。

口の中から風穴があいた友達の遺体は地面に激突。

瞬間、飛散した血が少年の顔面に付着し少年はようやく目の前の恐ろしい事態を自覚した。

 

「うわあああああああああああ___」

 

ドス...

 

「あぐっ....」

 

絶叫途中の少年の首をヒルツは容赦なく貫き絶命させた。

運動場で遊んでいた生徒たちの誰もがこの光景を目のあたりにし、忽ちパニックを引き起こす。

一目散に逃げ出す者、恐怖で泣き出す者、腰を抜かす者と様々だったがそれらにも容赦なく凶器が振るわれた。

斬りつけ、貫き、時には首や胴体を強引に切断し、何度も突き刺し穴だらけにした。

子供たちを手にかける度に、ヒルツは飛散した返り血やモツを浴び続けボディを赤黒く染めていく。

ライダーの力を得た沼川から普通の子供が逃げるなど到底不可能。

15、16人、17人...

胴体を貫かれた遺体と切断された首、手足が散乱し運動場は瞬く間に血の海と化した。

 

《校庭で凶器を持った人が暴れています!! 皆さん直ちに避難してくださいぃ!!》

 

教員と思われる女性の悲鳴にも似た放送が学校中に響き渡る。

 

「♪~♪~♪」

 

ヒルツはそれを口笛を吹きながら聞き流した。

我ながらかなり狂ってると思う。だがもうここまで殺ってしまったのだ、完全に狂いきった方が清々しい。どうせ後で自分も死ぬのだから好き勝手させろ。

 

口笛を続けながら校内へと侵入するヒルツ。

休み時間だった事も有りここでもかなりの人数の児童で溢れていた。

全身を返り血で染めたヒルツを見て狂乱を極める児童達。

恐怖と混乱を押し殺しながらも必死で避難誘導する一人の男性教員に、ヒルツは飛び掛かりヘルザバイザーを突き刺す。そのままバイザーのレバーを引き、生き血を吸い取った。

万が一邪魔が入った時の為のエネルギー確保だ。

 

死ぬ予定ではあるがまだ足りない。

もっと殺さなくては。殺して殺して、歴史に名を刻まなくては。

 

その後も逃げ遅れた教員、及び複数の児童を次々と惨殺。

教室に飾られた習字、教科書、遠足、運動会の写真、

生徒等の思い出の品がみるみる内に血で汚されていく。

ある程度惨殺し終えると人の気配が途絶える。

皆別の場所に避難したのだろう。と思った時、「カタッ」と小さな物音を聞いた。

 

「あ?」

 

物音は直ぐ側の教室から聞こえて来た。

室内は既に無人で机や椅子や教科書が散乱し混乱していた事が伺えた。

ヒルツは静かに歩きながら教室内を探索する。

そして掃除用具のロッカーが目に入った。子供のかくれんぼには定番過ぎる隠れ家だ。

あの中に一人隠れている可能性は十分に有るだろう。

ヒルツは確認の為わざと大声で独り言を零す。

 

「やれやれ、ここにはもう誰も居ねえな。他をあたるかな」

 

そして確かに聞こえた。

「はぁ....」と言う小さな安堵の声を。

刹那、ヘルザバイザーで勢い良くロッカーをドアごと貫いた。

 

「……さーて……メインイベントだ……」

 

ヘルザバイザーを引き抜き、ヒルツは教室を後にした。

ドアの隙間から流血するロッカーを残して。

 

 

過去に清掃員で働いた記憶を頼りに、ヒルツは放送室へと向かう。

そこで彼はつい先ほどまで避難誘導の放送をしていた女性教師と鉢合わせた。

女性教師を適当に始末した後、ヒルツは血で汚れた手で放送機器を操作する。

使い方は事前にネットで熟知している。側には偶然にもテープレコーダーが放置されていた。

丁度良い。歴史的瞬間の記録は多いに限る。

そう思い録音状態にセットし放送を開始。

 

《あーあー、テストテースト。全校生徒の皆さ~ん聞こえますか~?

俺の名は沼川、沼川彰悟だ。

突然の事でさぞ盛り上がってるだろうが、今日は記念すべき日なんだよ。

知ってるか~?

この世界の鏡の中には~、人間を丸呑みしちまうおっそろしい怪物が潜んでるんだ。

今まで起きて来た不可解な行方不明事件、その犯人は全部ソイツ等な訳だ。

そして俺にはその怪物等を操る力が有る。

仮面ライダーって言ってな~、怪物から力を借りて殺しうんだ!

嘘だと思うよな~?

でも本当なんだなコレがー。

その証拠を..................今見せてやる》

 

そう言ってヒルツはデッキからカードを引き抜き、ヘルザバイザーに装填した。

 

《ADVENT》

 

途端に学校中の窓ガラスが揺らぎ、そこから大量の蛭の群れが湧いて出てきた。

分裂したヘルザリーチの群れだ。

定期的に人間を食わせた事でヘルザリーチの肉体は成長し巨大化、分裂出来る数が増大している。

避難の完了してない人間たちに容赦なく襲い掛かる小型ヘルザリーチの群れ。

一人の体に数十匹以上取りつかれた子供は忽ち血を吸われミイラの様に干からび絶命。同じような遺体がいくつも増えていく。

学校中に響き渡る絶叫は防音設備が整ってる筈の放送室からもひしひしと伝わって来た。

 

《はっはっはっは! どうだぁ、逃げろ逃げろぉ! 最後に面白い事教えてやる!

ミライなんとかって言うアイドルのリーダー? あれ殺したのはこの俺よぉ!

配下のモンスターに喰わせたんだよ! 極上と喜んでたぞ!? 

どうせババアになりゃ捨てられる女に心髄しきってる阿保共を夢から覚ましてやったのさ!

嘘だと思う奴は俺の部屋を調べて見ろ! 面白いモンが見つかるぞ!他にも喰われた奴が居るかもな~? 

"何時か帰ってくる"と寝言ほざく奴はとっとと葬儀でもしてろぉ! 遺体が無い分火葬費が浮くぞ? はっはっはっはっはっは!!!》

 

やがてヒルツは放送室を出て避難が完了してないだろう別の教室へと足を運ぶ。

千匹以上は居るだろう蛭の群れが素早い動きで蹂躙し阿鼻叫喚に包まれた校内を、ヒルツは何食わぬ顔でカメラに納め回る。

現実世界でミラーモンスターが活動できる時間は少ない。出来る限りこの瞬間を記録しておかなくては。

 

「報道ヘリまだですかーーー? 大事件ですよ~特ダネですよ~~マスコミさ~~ん??」

 

登山で山彦でもするかの用に大声で叫んだ。

 

(自由だ!人生の最後に、俺は究極の自由を手に入れたんだ!)

 

法も秩序もプライドも全て無視し好き放題暴れ回る。なんて清々しい気分だろう。

他人に誇れるイベントなど何一つ無く、道端に生えた雑草の様な下らない41年の人生で、今一番輝いてると実感した。

誰にも真似できない、誰にも出来ない事を自分はやっているのだ。

 

他人がいくら傷付こうが悲しもうが知った事か。

友達が死んだ? 恋人が死んだ? 家族が死んだ? 知るかそんなの。

俺は何一つ傷ついてない。

大切な物なんか作るお前が悪いんだ。勝手に悲しんでろ。

失うのが嫌なら最初からそんな物作るな。

辛かったら今すぐ自分でこの世から出ていけ。

俺がしようとした様に。

 

俺を差し置いて能天気に生きる奴らの幸せなんざ皆ぶっ壊してやる。

こんなクソみたいな奴らの為に忖度しなきゃならない社会なんざ破滅してしまえ。

 

......行き過ぎた力を手にし、超えてはならない一線を完全に逸脱し暴走を続ける沼川彰吾。

尚も人を刺し続け、歯止めが利かなくなった彼の思考は更に悪化して妄言まで吐くようになった。

 

(人を喰えば喰う程、ヘルザリーチは強くなる。そんな怪物を俺が操ってるんだ。って事は、俺を止めるヤツなんて誰も居ない....)

 

「じゃあいっそ、日本、いや世界中の人間でも皆殺しにするか~?

見てみたいなあ....世界が破滅する瞬間とか。それを俺が、俺がやってみせるんだ!!

今なら出来る! このオレが! あは…はははははははは!!」

 

 

キイィィィィン...イィィィン

 

「グオオォォォ!」

「!!」

 

しかしこの狂った優越感が仇となり、彼は別のモンスターの接近に気付けなかった。

側の窓からドラグレッダーが飛び出しヒルツの腹部銜え、向かい側の窓からミラーワールドに突入。

不意を付かれたヒルツはその場でカメラを落とし、強制的にディメンションホールを抜ける。

ミラーワールドに到着後、ドラグレッダーは銜えていたヒルツを勢いよく吐き出し運動場の地面にたたきつけた。

そして一台のライドシューターが現れ、中から赤いライダーがゆっくりと降りてきた。

龍騎だ。

 

「痛ぇな...あの時の若造か...」

 

ヒルツは悪態を付きながら体を起こす。

 

「何し来た? カメラもどっか落としちまったしよ。結構な額だったのに....どうしてくれんだ?」

「...............」

《SWORD VENT》

 

龍騎は無言でドラグセイバーを装備し斬りかかった。ヘルザバイザーで防御するヒルツ。互いの剣が激しく衝突し火花を上げる。

 

「あーあー、張り切ってちゃってまあ....」

「......何で......」

「あ? 何つった? もっとデカくハキハキ喋れよ、若いんだろお前?」

「何でこんな事したんだよ!?」

 

鍔迫り合い状態のまま龍騎は声を張り上げた。

声の調子からして泣いてるのが解った。震えながらドラグセイバーを握る手を見て沼川はせせ笑う。

優しき心、若さ溢れる正義感と言うヤツか。

 

心底反吐が出る。

こう言う世の中の不条理を知らないお花畑の馬鹿には、適当にイカれた言葉を投げれば余計動揺するだろう。

 

「あ~そうだな。すげえザックリ言うなら......目立ちたかったから?」

「....................は?........」

「あとまあ..........死にたかったから」

「......................」

 

 ??

 何だ? 今何て言った?

 

呆気にとられた龍騎を蹴って距離を取り、再び語り始めるヒルツ。

 

「人生やり直したいと思ってライダーになったが、俺は弱いしどーせお前らに勝てんと解った。

だからせめて、死ぬ前に歴史に名でも刻みたくなった訳よ。

正直誰でも良かったんだが、子供のほうが弱くて殺り易いし世間のショックも大きいわな」

「.........?」

「それにこの学校、前からムカついてたんだよ。毎朝毎朝通学路でギャーギャー餓鬼どもが騒ぎやがってよぉ。近所迷惑考えろっての」

「.................???」

「俺は弱い。弱い奴は更に弱い奴をサンドバックして憂さ晴らしするのがお似合いだ。俺はずっとそうやって生きて来たんだよ」

 

 .....................。

 

 何だコイツは?

 

 本当に何言ってるんだ? 

 

 理解出来ない。 心底理解出来なかった。

 

 そんな理由で人の命を奪ったのか?

 

 こんなに大勢の?

 

「イライラしたから」と言う理由で人に危害を加える人間を知っている。

だがコイツはそれとはまた別の何かを感じた。

理解が追い付かず棒立ちする龍騎を前に、ヒルツは両手を高々と広げ狂気に満ちた大声をあげる。

 

「何だ? 別に良いだろ? 子供は国宝、若い命は惜しいってか? 

おーれーはーそーはー思わなーーーーい! 夢も希望も若さも活力も、糞社会出て歳食えばぜーーーーーーーーーーーーーーーーーんぶ枯れ果てちまうのさ!そうなる前に可愛い、将来有望だの言われてる奇麗な内に俺が終わらせてやんだよ!」

 

今のヒルツ、沼川は普段と比べ物にならない程饒舌だった。一線を越え過ぎて思考回路が完全に麻痺してるのだ。最早自分が今何を喋ってるかすら記憶もしてないだろう。

 

「そうやって俺は名を轟かすんだ。誰もなし得ない事をやり遂げて、何も無かった俺を歴史に!世界に!刻みこんでやんだ! はー---はっはっは、あはははははっ!!」

「……………………」

 

龍騎はただただ無言だった。

ヒルツの戯言に耳を傾けてるのではない。

 

鏡の向こうでは現実世界の様子が写っている。

沢山の骸が散乱し地獄絵図と化した運動場。

その中で、ヒルツの襲撃から身を隠し奇跡的に生き残った少女が一人、顔半分が消失した友達の亡骸を前に座りこんでいた。

 

『加奈ちゃああん....加奈ちゃあああん......』

 

つい先程まで普通に遊んでいた友達が、突然訳のわからない奴に命を絶たれた悲しみと無念。

その慟哭はミラーワールド内に居る龍騎の耳にもヒシヒシと届いていた。

龍騎は、城戸真司は仮面の奥で血が出る程唇を噛み締め、ドラグセイバーの握る手をワナワナと震わせる。

 

彼がライダーの戦いに介入したのも、一人の子供がきっかけだった。

何も知らない内に親がミラーモンスターに喰われ、一人取り残され泣き崩れる少女の姿。

あんな悲しむ人など二度と見たくない。

その一心で彼は誰かを守るライダーになる事を決意したのだ。

 

目の前に居るこの怪物は、その思いを全て踏みにじっている。

常識とはかけ離れた、あまりに身勝手過ぎる理由で。

 

確かに人生とは生きていれば何度でも不幸な出来事が降りかかる事も有る。

望んでいても何かしら辛い思いをし生きるのが嫌になる事もあるだろう。

だが辛いことばかりが人生では決してない筈だ。

はじめは辛い事、孤独な事ばかりでも長い年月が経てば気の合う友人や面白い出来事があったりもするし、長生きしなければ経験出来ない事や解らない事だって多い。

 

それは人によれば無責任に慰める気休めの言葉になるかもしれない。だがそれでも悲しい思いをする人間も居れば幸せな人生を送る人間も居るのは確かだ。

自分が気に入らないからと言う理由で他人を不幸にして良い理由にはならない。

 

そもそもコイツの手にかかった人達が自死を望んだのか?

「将来詰まらなそうだから私を殺してくれ」と、一度でも頼んだのか?

 

あり得ない。絶対に。

コイツに他人の人生を語る資格など全くないのだ。

 

それに、何よりもこうなったのは。

 

こうなったのは......

 

 

「うああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

龍騎は怒涛の勢いでドラグセイバーを振りかざした。

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