龍騎外伝 仮面ライダーヒルツ   作:巽★敬

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第8話 「火宅」

ドラグセイバーを構え怒涛の勢いで迫りくる龍騎。

対するヒルツは大声で契約モンスターの名を叫んだ。

 

「ヘルザリーチ!」

 

すると校舎の窓から大量の小型ヘルザリーチの群れが這い出し立ちふさがった。

アドベントのカードは先ほど現実世界で使用したので叫ぶだけで援軍に来たのだ。

龍騎は立ち止まり直ぐにカードをドラグバイザーにセット。

《ADVENT》の音声と共に空からドラグレッダーが飛来した。

 

「グオオオォォォ!!」

 

蛭の群に火炎放射を浴びせるドラグレッダーだが、今回は初戦と違い大量の人間を捕食してパワーアップした為か中々数が減らない。

火炎放射を逃れた数体の蛭達が龍騎に迫る。

なんとか足蹴りしながらやり過ごすがこのままでは埒が明かない。

 

「クソぉ!」

 

龍騎は対処しながらドラグバイザーに再度カードを装填した。

 

《STRIKE VENT》

 

右手にドラグクローが装備される。唯一の飛び道具であるドラグクローファイヤーでヒルツごとヘルザリーチ群を攻撃するつもりだ。

しかしこれを好機と見たヒルツもすかさずヘルザバイザーにカードを入れ込む。

 

《STEAL VENT》

「!!」

 

するとスチールベントの効果により龍騎のドラグクローがヒルツの右手へと移動した。

武器を奪われ動きを止める龍騎をヒルツは鼻で笑いその場で構える。

 

「確か、こうやるんだっけか?」

 

右手を勢いよく突き出すとドラグクローから火球が放たれた。

これもドラグクローファイヤーだ。本来この技はドラグレッターと共闘して強大な炎を放つ技だがドラグクロー単体で火球を放つ事も可能である。

急いで横へ回避するが地面に直撃した火球は背後で大きく爆発。凄まじい熱気が龍騎を襲う。

所々小型ヘルザリーチも巻き添えを喰らってるが、今では多少の攻撃では全滅しない程の数なのでヒルツは気にもしていなかった。

 

「くぅ!」

「ハハハ! 良いなコレ、はっはっは!」

 

飛び道具を手に入れ調子に乗ったヒルツは次々と火球を飛ばし着弾時の爆発で龍騎を苦しめていく。

だがこの程度で怯んでられない。今の龍騎は多少の火傷よりも怒りの感情の方が何倍も勝っている。コイツだけは絶対に許されない。

龍騎は一瞬だけ動きを止めた。そして再度火球が飛んでくる瞬間を見計らって前方へ大きくジャンプ。

火球は寸での所で足元を過ぎ去り、背後の爆風を利用して一気にヒルツと距離を縮めた。

 

「!?」

「うおおおおおおおおお!」

「ぐああ!!」

 

そのまま降下しながらヒルツに縦斬りをお見舞いする。

胴体から激しく火花を散らすヒルツに対し、龍騎は何度も殴りつけた。

 

「ちぃっ、調子乗んじゃ....」

「させるかぁ!」

 

苛立ち始めたヒルツはヘルザバイザーを取り出し

ストライクベント・ヘルザニードルのカードを装填しようとするも、経験の浅い彼は相手の瞬発力と距離を見誤った。カードを取り出す行為は一瞬でも隙を見せる事になる。

これを逃さず急接近した龍騎はヘルザバイザーを力いっぱい蹴り飛ばし、何処かへと弾き飛ばしてしまった。

 

「なっ!?」

 

焦るヒルツ。カードの使用には召喚機が必要不可欠。

戦闘面の殆どを武器に依存してるヒルツにとって召喚機の紛失は致命的だ。

この隙に龍騎はヒルツの腹部に重いボディブローを食らわせる。

 

「うおおおおおおおおお!!」

「ぐおっ....」

「お前だけは....お前だけはあああああああああ!!」

 

体をくの字に曲げ吹き飛んだヒルツはドラググローを手放し地面に転げ落ちる。だがこれだけで怒りが抑えきれる訳がない。

再びドラグセイバーを振りかざし、追撃しようとヒルツに迫る。

だがその時、突然龍騎は足を止めた。

 

「!!....ぐうぅ!」

「?」

 

腹部を抑え、その場で膝をつき苦しそうに呻く龍騎。

あっけにとられたヒルツは龍騎が何故こうなったのかを考える。

 

(.....まさかコイツ、この間の傷が癒えてねえのか....?)

 

ヒルツの読み通り、龍騎は1週間前に緑のライダーのファイナルベントで負傷した傷が完治してなかった。

人は怪我をすれば当面安静にするのが基本だがライダーはそうはいかない。

ミラーモンスターに餌を与える為には中々休めない場合もある。

特に龍騎・城戸真司はドラグレッダーに餌を与える為だけでなく人を助ける為に戦う男である。

負傷した体が悲鳴を上げても、彼は定期的に戦闘を繰り広げていたのだ。

これ以上モンスターによる被害者を出さない為にも。故に傷が癒えるのに時間がかかるのは仕方ない事だ。

しかしそんな事情など知った事ではない。

好機と見たヒルツは体を起こして駆け出し、サッカーシュートでも決めるかの様に龍騎の腹部を思い切り蹴り飛ばす。

 

「オォラああっ!」

「がはぁっ!!」

 

勢いよく転がり悶絶する龍騎を見て、ヒルツは高々と煽った。

 

「お~お~どうしたぁ? 腹でも痛いのかぁ?? なら便所行ってこぉい!」

「ぐはあぁっ!!」

 

どうやら腹部に傷口が有るようだ。

弱点を見つけこれ見よがしに何度も腹部に蹴りつけるヒルツ。

 

「はっはっはっは、カッコつけてケンカ売っといてこのザマかよ? 体調管理も出来ねえサル以下のゴミクソが、偉そうにしてんじゃねえ!」

 

今度は顔面を蹴り上げ、再び転がる龍騎。ヒルツはそのまま龍騎の後頭部を鷲掴み、ガンを飛ばすように顔を近づけた。

 

「城戸真司。仮面ライダー龍騎、だっけか?」

「!!? 何で、俺の事を....?」

「んな事どうでも良いわ。最初に出会った時からお前の事は何か気に食わなかったんだよ。若いって良いよな~?余裕あってさぁ」

「.....何の....事だよ...?」

 

力なく返事する龍騎の額をヒルツは指でこんこんと突く。

 

「人を守るとか抜かしたな?  良いか? 他人を気に出来るのは心に余裕が有る頭バブル世代なヤツだけだ。まして見返りも無しに人助けなんざ、ただの自己満か完全にイカれてんな。

世の中な、お前みたいなお花畑が誰か助けた気になってヘラヘラしてる裏で、何者にもなれず悲しい~底辺人生生きてるヤツがた~~~~~くさん居んだよ。

そう言う奴はな? 生きる事自体が地獄なんだよ。この日本で毎年何人の自殺者が居るか知ってるか?孤独死や自傷行為してる奴が居るか知ってるか?そんなヤツの事まで考えた事有るか? ああ? 

要するにだ........テメエが助けてんのは命だけなんだよ!」

 

そして勢いよく龍騎の頭を持ち上げ、地面にたたきつける。

 

「ぐあっ!」

「助けるんなら責任持ってそいつの生涯まで保証しろや!それすら出来ん癖に生き地獄に放っただけで後は知らんぷり。所詮テメエは良い子アピールしたいだけ自己満野郎よぉ。解ったかこの若造!」

 

そして再び腹部を蹴りつけた。何度も何度も。

 

「テメエみたいに強くて充実してそうな奴は、俺とは別の生き物。

地面を這いつくばるだけの弱者の気持ちなんざ、1ミリも考えきれねえだろ? あぁ~???」

 

最後は多少助走をつけ顔面を蹴り飛ばそうとするヒルツ。

だが彼の動きは止まる。寸での所で龍騎が足を掴み受け止めたからだ。

やがて力任せに足を掴む手を右動かし、睨みつけた。

 

「弱い.....弱い弱い弱いって........!」

「う、うお!」

 

そして龍騎は勢いよく立ち上がり、バランスを崩したヒルツの顔面を殴りつける。

 

「さっきからお前は、あれこれ言い訳にして好き勝手してるだけだろ!

そうやって何かのせいにして、少しでも自分を変えようとした事有るのかよ!?」

 

お返しとばかりに顔面に何度も拳をぶつけた。何度も何度も、何度も。

 

「人助けは余裕のある奴だけ?!イカれてる!? 誰かの為に戦ってる人が、どんな思いで生きてるか、一度でも考えた事が有るのか!? 」

 

拳を振り上げる中で、龍騎・真司の頭に思い浮かぶのは骸と化し運動場に転がった子供たちの姿。

親達がどんな想いであの子たちを生み育てて来たのか。

真司自身も当然両親は居るし、社会で働きだしてから改めて親の苦労を実感した身だ。

まだまだ独身で育児経験も皆無だが、誰かを、命を育てると言うのはそれだでも尊敬に値する事だと思う。本気で子を想う親は、我が子が辛い思いをしない為にも必死で支えてくれてるのだ。

 

そして思い浮かぶのは、何だかんだで共に戦ってきてくれた男の顔。

はじめはいけ好かない奴としか思えなかったが、時には衝突もしたが彼が戦いで背負う物を知って以降は安易に戦いを止めるだけでは駄目だと思うようになった。

もしかしたら他にもライダーバトルでしか叶えられない譲れない、願いを胸に戦うライダーも居るかもしれない。

闇雲に戦いを止める事は彼らの思いを簡単に否定する事になる。そうれはどうしても嫌だった。

それでも一人でも多く犠牲者が出てほしくないと言う気持ちは拭えず今でも他の方法を模索してる最中だ。

 

だが目の間に居るこの男はそんな人々の気持ちなど一切考えない。考えようともしない。

あまりにも自己中心的な理由で踏みにじっている。命を奪っている。許せる筈が無かった。

 

「お前みたいな最低な奴が、必死で戦ってる人を、生きてる人を語るなぁ!」

「ぐがあああ!」

 

最後は渾身のアッパーカットを叩き込まれヒルツは大の字で倒れ込んだ。

 

「ぐ...ぅぅ....」

 

龍騎はそのまま膝を着いた。感情任せに暴れたので余計傷口に響いてしまったのだ。

何とか痛みを堪えようと奮闘する最中、

 

「ぃ..ぃ.ヒヒヒ....」

 

突然ヒルツが不気味な笑い声をあげる。

 

「ヒヒヒヒ.......ヒヒヒははははは.....」

「何が可笑しい!」

「いやいやいや.....どの口が偉そうに説教垂れてんだか......これだから白痴は.....」

「何ぃ!?」

 

白痴。

Wikipediaによれば「重度の知的障がい呼び方。差別用語とされる事も有り」とある。

当然の事だが身体に障がいを持つ者は意図して障がいを持った訳ではない。

様々な人間が居る様に、同じ人間である以上それは一つの個性だ。決して邪険に扱われて良い理由にはならないが、残念ながら世の中には他者を嘲たい人間がどうしても一定数存在する。

この言葉はそう言う汚れた者が障がいある無し関係無く手軽に罵倒出来る言葉として安易に使う傾向があるが、到底許される物ではない。

 

もしSNSが支流な時代で著名人がこの言葉を発すればどうなるか。

世界中から非難轟々、数時間後にはアカウント削除。住所まで特定され真面な人間から信頼を得る事は二度と無く、人生を台無しにするのは容易に想像出来る。

 

城戸真司はよく「馬鹿」と言われる事はあるがそれは基本自分に対してだけの罵倒だし、上司である人物からは「お前は真っすぐな馬鹿だ」と良い意味で使われる事もありまだ許せる部分はある。

コイツはそんな差別用語を息を吐くように使用し罵った。最早憤慨と言う表現では生ぬるい程腹を立てる龍騎に向き直って、ヒルツは更に話をつづけた。

 

「そもそもだ、こんな大事になったのはお前の責任でもあるからな?」

「!!」

「あの時、お仲間を引き留めず俺を始末させときゃ、こんな事にはならなかったろ?」

 

 途端に、龍騎は言葉を募らせた。

一理ある。いや、元から自分にも少なからず非が有ると認識していたのだ。

確かに初めてと会敵した時、あのままナイトの攻撃でヒルツが絶命してれば悪事はその場で終わっていた。

つまり自分が止めてなければ......

 

だからこそヒルツの世迷言にも反論出来なくなってしまった。

そんな龍騎を人の心などかなぐり捨てた悪魔は容赦なく嘲笑する。

 

「....何だ? 言い返さないって事は自覚有りか!? くっは~~はははははは!! こりゃ傑作だ、正義の味方が戦犯かつ確信犯ってか?  なら責任もってさっさと首でも掻っ切れや!はははははは!」

 

嘘だ....

嘘だ!

じゃあ殺せば良かったのか?

あの時コイツは命乞いをした。

それでも尚見殺しにすれば良かったのか?

許せない。自分の弱さ言い訳に傍若無人に暴れる回るコイツを。

龍騎は必至で首を横に降った。

自分の後悔を否定する為に。

 

「ふざけるな..........ふざけるなぁ! 命乞いまでしといて......自分でやった事すら全部他人のせいかよ!? お前みたいなヤツ人間じゃない! お前だけは、お前だけは絶対....」

「許さないってか? なら殺せ」

「.....は?」

 

またしても理解に苦しむ発言に困惑する龍騎。

 

「俺はお前と違って大切な物も、大義名分もな~んにも無い。生きててもど~せつまらんし、今ここで死んでもそれはそれで本望な訳よ。だからホラ、殺れ?」

 

ヒルツは両手を大々的に広げ殺傷を煽った。

弱い自分は何時殺されてもおかしくなかったし、元から人生など諦めてた身だ。

歴史に名を遺すのは重要な目的の一つであり、今回の行為は手っ取り早く確実に自死する為でもある。

好き勝手暴れれば必ず誰かが自分を始末してくれるだろう。

大量殺人もここまで被害を出せたのなら十分だ。

これで気兼ね無くこの世からサラバだ。

寧ろ殺傷させれば正義を気取るコイツの偽善が証明できる。

殺人罪は優しい人間が行う程重い十字架となる。

自分の命と引き換えにこの頭お花畑野郎の心を粉砕してやるのも面白そうだ。

上手く行けば罪悪感にさいなまれて自害してくれるかもしれない。何と気持ち良い結果だろうか。

そうなれば初めて自分は誰かに勝利した事になる。 この世界で一番嫌いなタイプの心を破壊する。

最高の栄誉だ。ヒルツは更に煽り散らしす。

 

「どうした、さっさと殺れよ? 今がチャンスだぞ、ホラホラホラ? じゃないともっと誰か死ぬぞ~?」

「............................................」

 

龍騎は無言のまま震える手でカードを引き抜いた。

取り出したのはファイナルベントカード。 直撃すれば確実に即死に追い込む処刑用の切り札。

こんな悪鬼羅刹な怪物を生かしておけば、また大勢が犠牲になる。憎い。たまらなく憎い。

 

「俺は......」

 

でも一度誰かを殺せば、二度と後戻り出来なくなる。

このライダーバトルの主催者の思う壺だ。

それだけじゃない、自分は耐えられるのか。

人の命を奪ったと言う十字架に。

 

ドラグバイザーにカードを入れる手が止まる。

殺すか、殺さないか。龍騎は2つの選択に阻まれた。

 

「それともアレか~? 正義の味方面して、所詮ただの殺人童貞の腰抜けか? あ~??」

「俺は...........」

 

そうだ殺るんだ。

相手だってそう望んでるじゃないか。

奴は人間じゃない。モンスターだ。怪物だ。あんな奴を生かした所で良い事など何もない。

 

「.................俺はぁ...........」

 

いや、このまま始末したらコイツの思い通りじゃないか。

罪の意識を自覚させる為に敢えて生かすか?

いや、最早コイツが罪悪感など抱く保証はない。ここで殺さなくては。

 

いやだが、しかし、でも......

小刻みに震える手。

何度もカードを装填しようとするも、手が硬直する。

そしてこれまで死んでいったライダー達の姿が走馬灯の様に蘇る。

最早頭の中はぐちゃぐちゃだ。

そんな必死の葛藤に苦しむ龍騎を、ヒルツは何処までも冷笑した。

 

「どー--なんだー--? こ・し・抜・け・く~ん? あはははは、はははははははははははははははー-------!」

「俺はあああああああああああああぁ!!」

 

遂に意を決し、カードを入れたドラグバイザーの上部カバーを閉じようとした........

 

その時。

 

 

グシャリ

 

 

と、鈍い音がヒルツから響いた。

 

「え?」

「......あ?」

 

あっけにとられた龍騎、そして背中に何か熱い物を感じるヒルツ。

 

ふと何かが背中を伝いポタポタと地面に落ちる。

 

血だ。

 

夥しい量の血液がヒルツの背中から流れ落ちている。

 

何かが貫いたのだ。

 

ゆっくりと振り向く。

そして予想外の事態に頭が真っ白になった。

 

一人の男が居たからだ。

 

有り得ない。

とても馬鹿げた話だ。

何故コイツが居る?

見間違いでなければこの男は多量の血を抜かれた上に、大規模砲撃が直撃し火達磨になった筈?

何故こうして平然と生きてるのだ?

その人物はヒルツの後頭部を鷲掴みにし、背後からゆっくりと顔を近づけた。

 

「…………探したぞ……」

 

 その男、仮面ライダー王蛇は背中に突き刺したベノサーベルを勢いよく引き抜き、ヒルツを蹴り飛ばす。

 

「お……お前……何で……生き…がはっ」

 

ヒルツの話も遮り王蛇はヤクザキックをお見舞いした。

そして血で汚れたベノサーベルをズルズルと引きずりながら静かに言い放つ。

 

「……この間は世話になったなぁ?……………たっっぷり礼をさせろぉっ!!!」

 

王蛇は仰向けに倒れたヒルツにベノサーベルを何度も叩きつけた。

ヒルツはもがき苦しみ何とか転がってやり過ごそうとするが、

再び後頭部を鷲づかみし顔面に膝蹴りを繰り出す王蛇。

 

「ゴはっ....!?」

 

苦しそうに悶絶するヒルツ。王蛇は後頭部を掴んだまま建物の側まで引きずりヒルツの頭を何度も壁に打ちけた。コンクリートの壁が陥没する程強い衝撃により意識が朦朧とする。

更にベノサーベルで追い打ちをかける。必死で受け止めようと抵抗するヒルツだが、王蛇はその手を掴み勢いよくへし折った。

 

「がああああああああああ!!」

 

あまりの激痛で耳をつんざく程の絶叫を上げるヒルツ。だがこれでも王蛇は止まらない。

 

「足りない! 足りないんだよこの程度じゃ!!! もっとブチのめさせろぉ!!!」

 

こうして、激痛で動けず無抵抗なヒルツに対し王蛇は洗礼を浴びせ続けた。

この間の遊ぶような戦い方とは全く違う、どの一撃にも明確な怒りと殺意が籠っており、最早戦闘とは程遠いただのなぶり殺しである。

 

 

 

それから暫しして。

 

「ぐ.......が....はあ....」

 

力無く倒れこむヒルツ。

どれほどベノサーベルを叩きつけられたのだろうか。

ボディと仮面はベコベコに拉げ穴だらけになり肩が砕けちりあらゆる箇所から煙を上げてる。

強く殴られたショックで右耳は聴力を失い、骨折した左腕は明後日の方向に折れ曲がり動かない。頭部も強打したことで記憶の一部が抜け落ちている。

辛うじて意識を保ってるのが不思議な状態だ。

 

「まだだぁ! 簡単に死ねると思うなあぁ!」

「ぐあああ....」

 

既に満身創痍なヒルツを、王蛇は力いっぱい蹴り飛ばす。

ヒルツの体は放物線を描きながら運動場を校舎の裏側へと飛んで行く。

これだけやっても怒りが収まらず追撃しよとする王蛇。

そこへ分裂したへルザリーチの群れが現れ、王蛇の全身に群がった。

 

「っちィ、邪魔するなあ!イライラするんだよぉ!!

うおおおおおおおあああああああああああああああっっ!!」

 

王蛇は雄叫びを挙げながら大量に纏わりつく蛭の群れに奮闘した。

その一方で激痛で苦しみながら王蛇とヒルツの戦いの一部始終を見ていた龍騎だったが、ヒルツが飛んで行った方向を見てある事に気づき焦った。

 

「ま…マズイ……あっちには、確か……」

 

龍騎は悲鳴を上げる体を何とか動かし、王蛇の代わりにヒルツを追跡した。

 




ドラグクローファイヤーってドラグレッターから放つのかドラグクローから直接出すのかどっちなんでしょうね?
一応この作品ではどっちも出来る事にしてます。

あとサバイブは出ないです。
あれならヒルツなどアッサリ始末出来ますがそれじゃ面白くないし、
かと言って如何なる理由付けがあってもサバイブが沼川如きに苦戦するのは自分でも見たくないので。

因みにタイトルの火宅(かたく)とは
煩悩と苦悩に満ち溢れたこの世を燃える家に喩えた仏教用語だそうです。
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