つまりそれで遅くなった上に短くなった。
あー、心が小学生の頃に戻るんじゃー
朝になった。
窓から入ってくる日差しから天気も良いことが伺える。
今日の予定は近所を歩くだけだけど、やっぱり晴れの方が気持ちいい。
「……ん、ふぅ」
グッと体をそらせるように伸ばす。
首を動かせば小さく一度コキリと鳴った。
最後に大きな欠伸をすれば、ベッドから抜け出す踏ん切りもつく。
そしてシャワーを浴びて眠気と一緒に寝癖を無くしてやるのがいつものルーチンワークだ。
脱衣所に行き、脱いだ衣服を洗濯籠に放り込む。
風呂場の窓から入る光だけで、照明をつけなくても十分に明るい。
ボロボロの古い家だけど、風呂場はリフォームしたから綺麗である。
正直前の家では朝にシャワーを浴びる習慣なんてなかったが、この風呂場になってからはほぼ毎日浴びている。
なんだかとても贅沢してる気がして気分が良い。
さっぱりして風呂場から出ると、寝起き姿のひとりちゃんと目があった。
あっ、やばいと思ったが、股間を隠すよりも彼女の視線が下に落ちる方が早かった。
「ドゥフォっぷぁ……あふ」
「ひとりちゃん?……ひとりちゃーん⁉︎」
ひとりちゃんは盛大に鼻血を噴き出すと、まるで完成したジグソーパズルが崩れるかのようにバラバラになった。
スライムやツチノコみたいに変態するのは何度か見たことがあるが、バラバラになったパターンは初めてである。
人間の体って物理的にバラバラになっても大丈夫なものなのだろうか?
なんか服も肉体パーツと一緒にブロック状にバラバラになってるけど。
まぁひとりちゃんだしな。
考える前になんとかしてみるか。
とりあえずタオルで股間だけ隠して、ひとりちゃんを組み立てていく。
ジグソーパズルというより、立体パズル?
なんだか子供の頃に作ったプラモデルみたいな感覚。
途中右腕と左腕を間違えてしまったりもあったけど、なんとか1時間くらいで終えた。
全てのパーツを組み終えると、継ぎ目も自然と消えて元の可愛い寝巻姿のひとりちゃんになった。
完成した彼女は、鼻の穴に血止め用のティッシュを詰めて幸せそうな顔で眠っている。
少なくとも息はしているため、自分の服を着てから彼女をリビングのソファへと連れていく。
手のかかる子ではあるけど、今回の件は俺が変なもの見せてしまったからもあるし、仕方ない面もあるかなぁ。
逆のパターンもあるかもしれないし、間違いが起きないように今度脱衣所に鍵取り付けるか……今まで一人暮らしだった弊害だな。
結構余裕を持って起きたつもりだったが、何だかんだでもう11時前だ。
これはもう朝食を作ってもすぐ昼になるな。
外で朝昼兼用な感じで出かけついでに食べてしまう方が楽だろう。
そろそろ起きないかなぁ、とひとりちゃんの頭を撫でる。
こうしてみると、本当に普段の奇行が無ければ美少女なんだけど。
身内贔屓なこともあるが、こうしてソファで寝息を立てる彼女の顔は非常に絵になる造形をしていると思う。
まぁ着ているものが寝巻な上に鼻にティッシュ詰めてるから絵にはならないが……
「……お兄ちゃん」
「あ、起きた。大丈夫?」
「うん」
上半身を起こして座り直す彼女。
俺もその横に座り直して、とりあえず謝る。
「さっきは変なモノ見せてごめんね」
「あ、や、別にお兄ちゃんが悪いわけじゃ……むしろ私がごめんなさいっていうか、ありがとうございますっていうか……」
うん。ありがとうございますはちょっとわからないな。
あぁ、パズルを組み立てた事に対するお礼なのかな?
この話題はあまり長引かせてもよくないだろうし、まぁ怒ってたり引かれたりしてないならいいか。
「外を案内するついでにお昼食べよっか」
「あ、はい」
「ひとりちゃんはナポリタンとか好き?」
「あ、好きです」
「パンケーキは?」
「あ、好きです」
「じゃあ良いところに案内するよ。きっと気にいると思う」
喜んでくれるといいなぁ。
店長さんは癖が強いけど、それもまた味がある隠れ家的な喫茶店だ。
普通の女の子なら気にいるだろうし、おしゃれな所に興味が無くとも美味しい料理が嫌いな子はいないだろう。
「えっと……ありょ、ど、どどどどんな所ですか?」
「どんな所だと思う?」
レストランを想像して純喫茶だと驚いてくれるか、と少し期待してみる。
親戚の大人達が、子供にサプライズとかして喜ばせたがる気持ちが少しわかる。
「えっと、お、お、お……お城?」
「んー、お城ではないかなぁ」
パスタとパンケーキが出てくる場所がお城ねぇ、想像が小学生というか。
それぐらい彼女にとってはご馳走なのだろうか?
実家では美味しいものがあまり出ないとか……はないな。
だって美智恵さんって俺の母さんより料理上手いし。
単純にひとりちゃんの好みが子供っぽいだけかね。
結果からいって、ひとりちゃんはかなり喜んでくれていたように思う。
リスかハムスターのように料理を頬張っているのを見ると実に微笑ましかった。
普段口数が少ない分、キラキラお目目が如実に喜びを物語っていたというか、背後に見えたあのギターに手足が生えたような生物が「美味しい!」とミュージカル調に歌っていたから美味しかったのだろう。
……あれ何だったんだろう?
ひとりちゃんのスタンドとか?
ひとりは唐突に思い出した。
アナコンダという名作を、そしてアナコンダ2〜の迷作を。
きんじょのおしろにはるーむさーびすになぽりたんやぱんけーきがあるんだよ