大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

130 / 210
本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

ロナルド・エミール(16)


74年目-1 ロナルドの戦い

 アメリカにおけるモンスターハザードの兆しは、当然ながらニューヨークのスラムに住まうロナルド・エミールにも大きな影響を及ぼした。

 町中で平然とモンスターが跳梁跋扈し、探査者達が対応するもののどうしても手が回らない状況が多くなってきたのだ。

 

 これを受けてロナルドに二丁拳銃型のAMW、マキシムとミレニアムを譲渡した謎の美女エマ・オーウェンは少年に対して、一つの依頼を行った。

 探査者達では対処しきれないスタンピードを人知れず対処せよ、と。モグリの能力者たるロナルドに頼むには意外な内容である。

 訝しむ彼にエマは、いくつかの理由を説明してみせた。

 

 まず第一にロナルドのレベルアップの場を設けること。

 彼のレベルは未だ低い。ろくにダンジョンに潜らず、モンスターとの交戦経験も乏しいことからまずは自力の底上げを図る必要があった。

 スキル《氷魔法》の威力と、マキシムやミレニアムとの相乗効果はエマをしてロナルドに託したことを大正解だと思わせるものがあったのだが、さりとていつまでも素人に毛が生えた程度で満足されていても目的は達成できない。

 それゆえの思惑であった。

 

 次に、これが一番の理由だが件のモンスターハザードにおいては──ロナルドとエマ両方にとっての標的、ノインノア・ジェネシスの存在が見え隠れしていた。

 スタンピードの起きる地点に、組織の研究員らしき者を見かけるという情報がエマに寄せられていたのだ。加えてモンスター誘導液の存在も、ここまでの代物を加工できるのは例の組織くらいしか思いつかないというのが彼女および、彼女の所属するとある企業の見解だった。

 

 そうした理由からスタンピード鎮圧に乗り出したロナルドであったが、彼にとってもこれは一つの契機であったのは間違いない。

 この時の戦いを皮切りに、彼も本格的に第七次モンスターハザードに参戦。数多の英雄達と共闘する中で、人々から"アイオーン"と呼ばれるほどの人気を博すことになるのだから──

 

 

 

 ニューヨーク内に今日もモンスターが跋扈する。ここ半年ほどではすっかりお馴染みとなってしまった地獄絵図だ。

 

「グガァァァァァァッ!! グゴエェェェェェェッ!!」

「ギョピィィィィッ! ギョピィィィィィィッ!!」

「うわあああっ! 逃げろ、モンスターだぁぁぁっ!!」

「いやぁぁぁっ!! こ、殺されるぅぅぅっ!!」

 

 D級モンスター、ゾンビフルドッグとミステリーキャットが人々を追いかけ回す。サイズこそ普通の犬猫の域を出ないが危険度は極めて高い。

 非能力者にとっては最下級のF級モンスター、ゴブリンやスライムですら人知を超えた膂力に殺傷力を備える恐るべき存在なのだ。それより二階級も上のD級ともなれば、一噛みで腕を食い千切り、尻尾を振れば分厚い鋼鉄であってもたやすくひしゃげてしまう有様だった。

 

 何よりモンスターのもっとも恐ろしいところにその凶暴性が挙げられる。

 どういう思考回路をしているのか、人間と見るや他のすべてを差し置いて向かってくるのだ。それも明確な殺意を持ってである。

 今もニューヨークの都市内を、逃げ惑う人々をまるで獲物のように追い立てる二匹のモンスターの目には、疑いようもない殺意と憎悪が渦巻いていた。

 

「誰かっ!! 誰か助けてぇぇぇっ!!」

「神よっ! 神よぉぉぉっ!!」

「────助けてやるからちょっと騒ぐな。《氷魔法》」

 

 阿鼻叫喚の中、人々の波を掻い潜って一人の少年がモンスターへ向かい、スキルを発動した。

 《氷魔法》。魔法系スキルの一つであるそれが、瞬く間に大都市の気温を一気に引き下げて雪を降らせていく。季節は未だ冬でないにも関わらずである。

 

 敏感に異常を察知したゾンビフルドッグとミステリーキャットが、向かってくる少年を向く。しかしすべてはもう遅い、用意は初めから終わっているのだ。

 手にした二丁拳銃を左右手にして狙いを定める。否、定める必要もない。

 

 マキシムとミレニアム。

 対モンスター用機械兵装、通称AMWであるこれら武器にはスキルブーストジェネレータと呼ばれる謎のエンジンが搭載されている。

 これにより今しがた発動した《氷魔法》の一部が増幅されて充填される。彼──ロナルド・エミールの力を最大限引き出すように作られた、特別製だ。

 

 弾丸は必要ない。込めたスキルの強さに応じて、それは力を発揮する。

 銃口を向け、ロナルドは引き金を引いた。

 

「マキシム・ミレニアム……コキュートスバスター!!」

 

 同時に解き放たれる、銃内にて増幅された《氷魔法》。それは青白い光の、そして凍てつく絶対零度の波動となってモンスター二匹を襲った。

 いわゆるビームだ。目にも止まらぬ速さで、モンスターが回避行動を起こすことさえできないほどの一瞬で直撃する。

 

「ぐご、え──」

「ギョ、ぴ、ぴ──」

「…………アブソリュート・エンド」

 

 決め台詞でもないが、なんとなく思いついた彼なりの気の利いた言葉を告げて、モンスターは呻きを微かにあげるだけで氷漬けとなり砕けていった。

 キラキラとした光の粒子がニューヨークの空を舞う……スキルによる雪の光景と相まって、幻想的な様相を呈していたのである。

 

「ふう……」

 

 一息ついて、マキシムとミレニアムをガンホルスターに戻す。気分はさながら西部劇のガンマンだ。

 モンスターが消えたことを受け、人々が戻ってくるのを尻目にさっさと引き上げる……変に長居して捕まったら厄介だ、モグリの能力者の身に人々の目は堪える。

 

「あっ、ちょっと!? 君、ちょっと待って──」

 

 呼び止める周囲に構わずロナルドは踵を返した。

 ──このようなことを繰り返していくうち、彼はニューヨークの英雄、称して"アイオーン"なる二つ名で呼ばれるようになるのであるが。

 それはまた少ししてからの話であった。




ブックマーク登録と評価のほうよろしくお願いいたしますー 

 モンスターとの熱い戦いが繰り広げられている「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー
 https://syosetu.org/novel/273448/
 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。