大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

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本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

ロナルド・エミール(28)
サウダーデ・風間(45)
エマ・エミール(34)
フローラ・ヴィルタネン(45)


86年目-2 S級探査者アイオーン

 渡洋以降、太平洋ダンジョン攻略のための三大クランの一角"レッツゴー太平洋"のリーダーとして頭角を現してきた探査者ロナルド・エミール。

 持ち前のスキルと何より改造兵器人間としての特異体質たるモンスターへの変身能力を駆使して数多の凶悪モンスター相手に戦う彼は、第七次モンスターハザード以来の渾名であるアイオーンの呼称にふさわしい実力者となっていた。

 

 それゆえに当然の話だったのだろう、彼がS級探査者として認定されたのは。

 WSO本部から全探組太平洋支部あてに届けられた通知は瞬く間に客船都市中に広まり、そして大いに宴をもって迎え入れられた。

 

 太平洋にて二人目、サウダーデ・風間に続いてのS級探査者誕生!

 各先進国がこの頃、客船都市の産業に関わり始めていたこともあり、ますますその文化文明が栄えるだろうタイミングにあっては最高のニュースであった。

 

 

 

 "祝! S級探査者ロナルド・エミール"。客船都市の至るところでこのような垂れ幕なり横断幕なり看板なりが設置され、人々が毎夜熱狂の中で祝宴を行う太平洋。

 S級探査者として認定されることが決定したロナルドの周辺でもまた、盛大な祭りが日夜行われていた。

 

「うおおおおロナルド・エミール! サウダーデの旦那に続いて太平洋二人目のS級探査者! こいつぁ果てしない快挙だぜぇっ!!」

「しかもあのサウダーデさんがS級になった時よりもずっと若い! さすがリーダーだ、一生ついていくぜ俺は!」

「俺もだ!!」

「私もよ!!」

 

 太平洋ダンジョン攻略クラン"レッツゴー太平洋"の面々がよく利用する、拠点とも言える酒場にて。

 しかしこの日ばかりはクランの垣根さえなく、数多の探査者が集いロナルドを祝っている。

 

 サウダーデ・風間率いる"太平洋攻略隊"、ならびにフローラ・ヴィルタネン率いる"ダンジョン聖教太平洋支部"。

 いずれも大将たるサウダーデやフローラも当然参加しており、ロナルドやその妻であるエマと四人で、騒ぎに明け暮れる面々を見ながら食事を楽しんでいた。

 

「おいお前ら、失礼な口は慎め! サウダーデさんは俺にとってもお前らにとっても到底、足下にも及ばないような偉大な先輩なんだぞ!! 分かってんのか!?」

「まあまあ、待ってくれロナルドくん。彼らの気持ちはよく分かるし、そうでなくとも俺と君はもう肩を並べるS級だ。そんなに謙遜しないでくれ」

「そ、そうは言いますけど……」

 

 酒やテンションの勢いに任せ、先輩たるサウダーデに対して失礼なことを言ったクランメンバー達へとロナルドの叱責が飛ぶ。

 いくら祝の席でも言って良いこと悪いことがあるのだ、と礼儀正しく先輩後輩意識の強いロナルドらしい物言いだ。

 

 しかしてそこに、当のサウダーデ本人からやんわりと宥めが入った。そもそも失礼な発言でもないし無礼講の席、何より祝の場だ。自分のことで盛り下がられてはたまらないと、彼としても割合慌てて止めに入ったところがあった。

 そんな二人を見て、クスクスとフローラが笑う。

 

「タイプは違ってもお二人とも、とても真面目なのですね。まるで兄弟みたいです」

「ふふ、本当ですね。ロナルドもサウダーデさん相手には、まるで兄か父のように甘えて」

「エ、エマ!?」

「さ、さすがにロナルドくんと親子扱いされるほど老けてはいないと思うが」

 

 彼女から見て、サウダーデとロナルドの関係性はまるで家族のようなものにも見える。サウダーデは至って普通に応対しているのだが、ロナルドのほうが彼に対してまるで、年長の身内のような慕い方をしているのだ。

 それはロナルドの妻、エマからしても同感らしく、女二人でくすくす笑えば、生真面目な気質のサウダーデが困りきったように頭をかく。

 

 彼からしてみればロナルドは弟子、ベナウィと同年代でありともに太平洋ダンジョンを攻略する同士という関係以上のものは特にない。それなのに妙に慕われるのは、どうにもむず痒くなってしまってたまらないのだ。

 二年前に結婚した妻にも相談したのだが、フローラやエマ同様クスクスと微笑まれるばかりだ。どうにも不器用な男が年下から慕われて慌てふためく姿が面白く感じる女性ばかりらしいと、ついため息を吐くばかりである。

 

 そんな彼に、やはり懐いた犬のようにロナルドが気さくに話しかけてきた。

 

「す、すみませんサウダーデさん。エマが失礼なことを」

「ああいや大丈夫、失礼などとは思わないよ。ただ弟子とも親子みたいな年齢差と言われるのは、さすがに疑問符がつくが」

「弟子……ベナウィ・コーデリアさんですね。アメリカで頭角を現してきた、うちの師匠と同じ系統のスキルを使う」

「うむ。アランの《極限極水魔法》を光属性にしたようなスキル、《極限極光魔法》をベナウィは使う。アランも言っていたが、実力だけで言えばもはや俺にも匹敵するだろう。俺の先生もそう言っていたしな」

「サウダーデさんにも、匹敵する……!!」

 

 前から気になっていた、サウダーデの弟子について知ってロナルドは息を呑んだ。

 彼自身の師匠、大探査者アラン・エルミードと似た系統の探査者な時点で実力は疑いようもないが、あのサウダーデやマリアベールでさえ太鼓判を押すほどの実力者だというのだ。

 

 ベナウィ・コーデリア。きっとその男も、近いうちにこの領域にまでやってくるのだろう。

 S級探査者になってもうかうかと堕落してられないなと、まだ見ぬ偉大な男の弟子たる存在を強く意識するロナルドであった。




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 「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー
 https://syosetu.org/novel/273448/
 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー
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