大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

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本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

アンジェリーナ・フランソワ(15)
マリアベール・フランソワ(77)


95年目-1 アンジェリーナ・フランソワ15歳

 御堂将太との今生の別れを済ませることとなり、多少は意気消沈もするマリアベール・フランソワであったが、すぐに立ち直る、立ち直らざるを得ない状況になった。

 フランソワ家はフランソワ家で大変な騒動が起きたのである……エレオノールの娘、つまりは孫娘のアンジェリーナが能力者として覚醒したのだ。

 

 探査者の身内がさらに能力に目覚めることは、シェン一族のように例がまったくないというわけでは無いにしろ相当レアであるのは間違いない。

 少なくともイギリスにおいては前例のない話であり、アンジェリーナ覚醒のニュースは瞬く間に英国全土に知れ渡ったほど、珍しいものなのである。

 

 余談だが一族内に幾人も探査者がいるシェン・ランレイやシェン・フェイリン、曾祖父や祖父祖母が探査者である御堂香苗や早瀬葵にアンジェリーナなど……

 現代の若手探査者の中にはこうしたレアケースにあたる探査者がこれまでの世代にない数、存在している。

 

 あまりに示し合わせたかのように密集していることから、なんらかの陰謀であるとか能力の覚醒がやはり遺伝子によるものだとか、根拠に乏しい論を主張する個人や団体さえも存在するほどだ。

 とはいえ真相は未だしれず闇の中。単なる偶然だろうという論が大多数なこともあり、そうした者達も細々とSNS等で訴えるに留まっているのが現状だった。

 

 さておき、フランソワ家についてである。

 能力に覚醒し、さっそく探査者として登録したアンジェリーナだが、祖母マリアベールをして頭を悩ましめるところが一点あった。

 モンスターとの戦闘に執着し、ひたすらに己の強さを追求する……いわゆるバトルジャンキー気質の本性を持っていたのだ。

 

 いくら可愛い孫娘とて、これにはマリアベールも本気で閉口した。命懸けのバトルを楽しみ好む質だったなど、よもや思いもしなかったからだ。

 しかして彼女の周囲の人々はみな、揃ってそんなことはないと首を横に振って否やを唱えた。

 

 それも当たり前だろう。

 アンジェリーナの言動こそはドラゴン戦までの、今に比べればまったく若かりし頃のマリアベールとそっくりそのままだったのだから。

 

 

 

「あっははは! 《ステータス》! 《ステータス》ぅ!!」

 

 

 名前 アンジェリーナ・フランソワ レベル1

 称号 ノービス

 スキル

 名称 剣術

 

 称号 ノービス

 効果 なし

 

 スキル

 名称 剣術

 効果 剣を使った戦闘術の習得が早くなる

 

 

 天真爛漫そのものの満面の笑みを浮かべ、アンジェリーナは飛び跳ねて喜んだ。イギリスはロンドン、フランソワの屋敷の自室内である。

 ステータス、ステータスとしきりに叫んでは何か覗き込むようにしているあたり、自身が得たソレを確認してははしゃいでを繰り返しているのだろう。

 

 その様を見て、孫娘がスキルに覚醒したことを受けてすぐさま駆けつけた祖母マリアベール・フランソワは痛む頭を手で押さえ、どうしたものかと考えを思い巡らせていた。

 何もかも、予想外の事態だった。

 

 そもそもアンジェリーナが能力者になるなど、かつて生前の夫ヘンリーと戯れに話をしたくらいのもので実現するとも思っていなかった。

 それが現実のものになった上に、見ての通り本人が浮かれきってしまっているのだ。

 

 さしもの歴戦のWSO特別理事もこれには閉口するしかなかった。探査者すなわちモンスターとの戦闘に従事する仕事を心底から楽しみにするような気質が、よもやこの孫にあったとは!

 ……若かりし頃の自分を完全に棚に上げ、マリアベールは困惑しきりにつぶやいた。

 

「い、一体誰に似たんだいこんな……アンジェったらついこないだまで、そりゃわんぱくだったがここまでじゃなかったと思うんだが」

「誰に似たって、それはもちろんお母様でしょう?」

「自分で言うのもなんだけど、どう考えてもおばあちゃんからの受け継ぎものだと思うわ! あっははは!!」

「わ、私かい!?」

 

 アンジェリーナ本人に加え、彼女の母親でありマリアベールの娘でもあるエレオノールも一緒になってそのつぶやきに答えた。

 すなわちすべて、元を糺せばマリアベールの遺伝だと……知らぬは本人ばかりなり。アンジェリーナ自身でさえ自覚的なまでに、マリアベールは孫娘に強い影響を与えているのだ。

 

「馬鹿言うんじゃないよエリー! 私ゃたしかに荒っぽかった時期はあるがね、そりゃアンジェが生まれる前の話だよ! それに何よりこんな、あちこち飛び跳ねてまでモンスターとの戦いを喜んだことなんざァ一度も──」

「……チャールズおじいちゃんから子供の頃、聞いたわよお母さん。お母さんも13歳で初めてスキルを授かった時、モンスター相手に戦いたいって言ってはしゃいでたって」

「んなっ──お、お父様から!? い、いつの間にそんな」

 

 顔を真っ赤にして否定しようとした矢先、まさかの実父の名を挙げられて途端にマリアベールの言葉が詰まった。

 チャールズ・フランソワ。マリアベールの父親であり、エレオノールの祖父、アンジェリーナの曾祖父にあたる人物だ。

 

 彼自身はすでに30年ほど前、第六次モンスターハザードがあったあたりに亡くなっているのだが……

 どうやら自分の預かり知らぬところで生前、娘にいろいろ吹き込んでいたらしいと今さら知って、マリアベールは盛大に顔をひきつらせた。

 

 事実である。マリアベールははるか64年前、13歳でステータスを得た際、今のアンジェリーナと瓜二つのはしゃぎ方をしていた。

 なんならチャールズの伝もあり、すぐに知り合いの探査者を呼び出して武器を選んだほどである。そんな、まったく孫娘のことをとやかく言えない事実を突きつけられて、彼女は──

 

 完全に知らぬ存ぜぬを貫き通して、すべてを笑って誤魔化すことを選択した。

 

「ファ、ファファファ〜。知らんねえそんな昔のことは。もう70年近くも前だよ、覚えてるわけないじゃないかえ〜」

「あっ、おばあちゃん逃げたっ!」

「大人げないわよ、お母さん!」

「ファファファ〜。そんなことより良いから落ち着きなよバカ孫! まったくはしゃいじまって、もう!」

 

 もちろんきっちりと当時の自分は覚えているものの、都合が悪ければ忘却の彼方へと消し去るのがマリアベール流の強かさだ。

 そんな祖母、はたまた母にアンジェリーナもエレオノールも呆れ返って、場の空気はひとまずの平静を取り戻していくのであった。




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 祖母孫揃って大活躍の「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー
 https://syosetu.org/novel/273448/
 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー
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