大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

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本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

エリス・モリガナ(93)
早瀬葵(18)


98年目 能力者犯罪捜査官コンビ、エリスと葵

 師弟関係を結んで数年が経過する頃。

 早瀬葵は能力者犯罪捜査官ライセンスを取得し、WSO傘下組織は国際探査裁判所に所属することとなった。高校を卒業してすぐのことだ。

 

 未だ未熟ながら、エリス・モリガナの下で修業を重ねてこの頃にはB級探査者になっていた彼女。

 師匠がS級探査者であると同時に捜査官であることから憧れと興味を示し、その後を追うように同じ道へと進んだ形だ。エリスたっての申し入れもあり、すぐさま二人はコンビを組んで、世界を股にかけて活躍することとなる。

 

 それと同時に、葵の持つスキルに目をつけて、とある企業がWSOを通じた正式なルートで接近してきた。

 ウラノスコーポレーションの、AMW開発部門だ……最近完成した第三世代対モンスター用機械兵装に搭載されたスキルブーストジェネレータに、彼女の保有する《雷魔導》が適合するとのことだったのだ。

 

 "フーロイータ"。今や葵の代名詞とも言える、身の丈を大きく超える三叉槍。

 能力者犯罪捜査官への就任とともに葵に譲渡され、引き換えにウラノスへの戦闘データの引き渡しをする。そんな契約もまた、成されていたのだった。

 

 

 

 対モンスター用機械兵装は第三世代機、その銘をフーロイータ。ウラノスコーポレーションが満を持して組み上げた、大ダンジョン時代に関連する各工学技術の粋を結集した傑作機である。

 ……そう、聞かされてもエリスはいまいち、葵に手渡された新型機とやらを信用する気は抱けないでいた。

 

 複雑な思いで訓練する弟子を眺める。

 今いるここはオーストラリア、広大な自然が広がるランセリン大砂丘にできたダンジョンの中だ。

 難度はB級の葵に合わせつつ、けれど馴染まない武器を扱う都合、一段下げてのC級だ。最奥部を目指す中で現れるモンスターを相手に、ひたすら葵はフーロイータを取り入れた新たな戦闘スタイルを確立すべく立ち回っていた。

 

「せぇいっ!! だぁぁっ!! サンダーボルト・ブレイカー!!」

「たしかに増幅はされてるね、《雷魔導》。葵ももう素人じゃないってのに、調節に手間取るレベルの出力までブーストされている」

 

 フーロイータに内蔵されている、特定スキルを増幅させる超技術機構スキルブーストジェネレータ。

 一基につき一つのスキルしか適合しないそれに、どういうことか葵が持つ《雷魔導》が当てはまったらしい。

 

 AMWの製造元、ウラノスコーポレーションがWSOは事務総長グェン・サン・スーンを通して取引を持ちかけてきたのだ……葵にとってまさしく天佑ともなろう武器を預ける代わりに、その戦闘データをウラノスに引き渡す、と。

 正直なところ、ウラノスという企業については第七次モンスターハザードの折にもアイオーンことロナルド・エミールを利用していた節が見受けられていたため胡乱に見ていたエリスだが、当の葵がそれでも構わないと言ったため、ひとまず問題が起きない限りは弟子の決断を尊重することとしたのだ。

 

「スマッシュチャージ! からのサンダースプレッダ・ブレイカー!!」

「葵が元から描いていた技……後は出力の問題だけだったのも解消された。そもそもどちらかというと技巧派だし、技さえ使えれば一気に実力も跳ね上がるよね、そりゃあ」

 

 そうして今、フーロイータを手にした葵の実力は、手にしていない時よりも明らかに倍以上の高まりを見せていた。

 単純な出力向上ももちろんだがそれに伴う恩恵、これまで出力不足で扱えず構想だけだった技の数々が一気に使えるようになったのだ。

 

 手から電撃を放つ。雷を纏いて突進する。周囲一帯に電気を拡散して放つ。

 いずれも現段階の葵では、素の状態だと実力的に使いこなすことのできない机上の空論めいた技の数々。それがフーロイータのスキルブーストジェネレータがあってこそ、初めて成立しているのだ。

 

 そしてそれにより、引き出しをすべて開けられるようになった葵の戦闘力は……今の時点でもすでに、A級探査者に近しい物となっていた。

 18歳を迎え、高校も卒業していよいよ大人になっていく頃合いにしては驚異的な実力だ。もちろん世界を見れば同年代だけで見てももっと格上の相手はいるのだが、それにしてもエリスは舌を巻く思いである。

 

 もっとゆっくりと強くなっても良いんじゃないかなあ、と内心、複雑な気持ちさえ抱きつつも葵に話しかける。

 黒髪のボブカット、すっかり大人びた体格の彼女はもう、いつの間にかエリスより背が少しばかり高くなっていた。そのことに時の流れが早いことを再認識しながらの呼びかけだ。

 

「葵ー。そろそろ切り上げてお昼にしよっかー」

「はいはーい! それじゃあ最後に必殺行きます! ──雷槍技! プラズマチャージ・アクセルライトニングッ!!」

 

 元気よく返事しつつ、最後にありったけの雷を身に纏い、《俊足》など他のスキルやエリス仕込みの体術をフル稼働させての超速突撃殺法、プラズマチャージ・アクセルライトニングを披露する葵。

 実質的に彼女の奥義だ。これもまた見事なもんだと、愛弟子の力を引き出してみせたフーロイータにやはり怪しさを感じつつも、その性能だけは認めざるを得ないエリスなのであった。




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 https://syosetu.org/novel/273448/
 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー
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