大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

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本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

早瀬光太郎(16)
ヴァール(???)
妹尾万三郎(42)


27年目 モンスターハザードを終えて

 途中、ヴァールがエリスと再会するなどのできごともあったが──

 第三次モンスターハザードは発生の翌年、年末を迎える頃に首謀者組織の壊滅をもって完全解決へと至った。

 

 日本各地の反社会的勢力が結集して創られた組織、反能力者連合による一連の人為的スタンピード事件ともいえるこの騒動。

 それに対抗したWSOや、全探組の指導を受けて結束することを学んだ地元探査者が中心となっての一大攻勢の末、見事解決へと導かれたのである。

 

 その中でもやはり特筆すべき活躍を見せたのが早瀬光太郎だろう。彼は3年前のエリス同様、戦いの中で探査者としても人間としても大きな成長を遂げていた。

 バラバラに動きがちだった地元探査者達をまとめ上げ、率い、ヴァールや妹尾、ラウエンをして唸らせるほどの一団にしてみせたのだ。

 

 早瀬会──ここより後、日本の中部地方における探査者活動を牛耳ることになる大クランの前身がこの時、誕生していた。

 現代から遡ること5年前、光太郎の85歳での死をもって会は分裂。後継者と見込まれていた孫娘の葵が祖父の縁でエリスを師匠とする形で能力者犯罪捜査官入りしたことをもって解散の憂き目になっているものの。

 

 今でも現地においては様々な英雄譚が語り継がれる"地元の雄"たる早瀬光太郎のはじまりは、たしかにこの時から始まっていたのだった。

 

 

 

 モンスターを扇動することで能力者を駆逐し、焼け野原となった日本を自分達の手で掌握する。

 そんな反社会的勢力の連合組織たる反能力者連合の本拠地施設が今、燃え盛る焔の中に消えていた。

 

 日本は中部地方の山間地区。第三次モンスターハザードの最終決戦となった土地なのだが、もはや焼け野原に等しい様相を呈している。

 敵首魁の切り札として用意されていた各種火炎放射器や爆弾、地雷、果ては戦車や戦闘ヘリ、ミサイルなどの兵器による余波だった。

 

「無茶苦茶をするな……この国の者は敵も、味方も」

「まさか最終的に近代兵器を持ち出すなどとは。戦車だのミサイルだの一体、どこから仕入れたのやら」

「反社会的勢力同士のつながりか。こればかりはWSOというよりは警察機構の領分になる。おそらく密輸ルートの摘発等も今後、これを機に行われていくだろうさ」

「い、いやあ……ははは」

 

 呆れ返った様子で炎上するアジトや、その付近に散らばる兵器の残骸を見てコメントするヴァールや妹尾に、光太郎はもはや笑うほかない。

 モンスターハザードということでモンスターを相手取ってきたこれまでなのであるが、最終決戦はまさかの対人、というより対兵器戦が主だった。戦争でも起こすつもりかと言いたくなるような戦車や戦闘ヘリ、機械化歩兵の群れに探査者達が突っ込む地獄の様相となったのである。

 

 どうやらけしかけるモンスターもこの近辺にいなくなっていたのが原因らしく、首魁たるどこぞかの反社会的勢力のボスが顔を真赤にして怒鳴り散らしていたのが光太郎にとっては印象的だ。

 WSOなり全探組なりの助力を得てからの現地探査者達が、これまで以上のペースでモンスター達を狩り続けていたのが主な要因なのだろう。

 

 集団的な行動原理まで身につけたこの地の探査者達はまさしく理性ある狂戦士軍団。

 うちに秘めた闘争心はいささかの陰りも見せることなく、しかしより効率的に、連携を意識しての動きをも行えるようになっている。

 ヴァールはじめ多くの外部協力者達による指導の賜物と言えよう……当初は反発する者も少なからずいたのだが、目に見えて実力が高まっていく日々にすっかり納得したようで、今ではいわゆる舎弟さながらの従順さを見せている始末だ。

 

 そういう調子の良さもまた、この地域の探査者達の特徴なのかもなあーと遠い目をする光太郎に、ヴァールは無表情のまま労いの言葉をかけてきた。

 

「何はともあれ早瀬。一年半にも亘り我々とともに戦ってくれたこと、感謝する。キャリアも浅いうちから、ずいぶん変なゴタゴタに巻き込まれたものだと同情するが……結果的に君にとっても多少得るものはあったと信じたいところだ」

「エリス嬢もそうだが、才覚ある若者が成長していくのを観るのは、なんだかこちらまで成長できそうな気がしてとても楽しかった。君は立派な探査者になれるだろう、この妹尾万三郎が保証する」

「ヴァールさん、妹尾さん……!」

 

 モンスターハザードなどに巻き込まれたこと、それ自体は間違いなく災難と言えるだろう。しかし、光太郎にとってこの期間に得たものは数多く、そして計り知れない価値のあるものばかりだ。

 友人、知人といった人脈。現地探査者達をまとめ上げる中で発現したカリスマ。そして何よりヴァール達とともに戦ったことによる著しい実力の向上。

 

 総じて一年と半年近くも前、平和だった頃の光太郎とはまるで別物だ……大きく成長してみせたのだ。

 そのことは周囲以上に自分自身がよく理解している。彼は爽やかに笑い、己の胸を張った。

 

「ありがとうございます! お二人にも、ここにはおられませんがラウエンさんにも大変なご指導ご鞭撻を賜りました! おかげさまで無事に生き残ることができたばかりか、探査者として、人間として飛躍させていただけました! これからも精進を怠らず、己の使命をまっとうしていきます!!」

「うむ……力強い言葉は、自分だけでなく周囲の人にも元気や活力を与える。君はこれから、周りの人々を率いていけるような存在になっていくと良い」

 

 若き英雄の卵、とでも言うべき早瀬光太郎の姿は、見かけこそ18歳だがもう数百年と生きているヴァールにとっても眩しいものだ。

 妹尾も彼の姿をやはり好ましく思い、自身の連絡先をメモして渡す。これほどの若手とはぜひ縁を結んでおきたいという思いからだ。

 

「困ったことがあればいつでも言いなさい。ソフィアさんやヴァールさんは難しかろうが、私は基本国内にいるから何かあればいつでも対応できる」

「…………はい!」

 

 尊敬できる先輩達に温かい言葉をかけられ。今また、一つの区切りを迎えた達成感をも抱き。早瀬光太郎は満面の笑みを浮かべて、元気よく答える。

 第三次モンスターハザードの終局。第二次の時と異なりそれは、どこまでも未来への光に溢れた明るいものなのであった。




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 光太郎の孫娘とエリスがオモシロコンビを組んでいる「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー
 https://syosetu.org/novel/273448/
 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー
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