大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

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本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

マリアベール・フランソワ(19)
御堂将太(40)


37年目 御堂とフランソワ・1

 マリアベール・フランソワの人生において常につきまとってきた、ある一つの謎がある。

 己のファースト・スキル《ディヴァイン・ディサイシヴ》についてのあらゆることだ──その効果も、封印の意味も、どうすれば解除できどのように使用するのか。

 

 そもそもこれは、なんなのか。

 13歳で獲得し以来70年もの間、何一つ真実に至るヒントを得られなかったそれはまさしく神秘と謎のスキルだ。

 スキルフリークの中では現代においても熱く議論が交わされており、マリアベールの探査者としての偉業と併せ、何かしらの神からの啓示であるのだと主張するダンジョン聖教信者も少なからずいるほどだった。

 

 マリアベール自身もこの謎について追求し続ける人生を辿っており、第四次モンスターハザード以降に世界中を旅して回ることになるのだが……

 その目的の一つに、件のスキルの謎を説き明かすというのがあったのは後年、自著による自伝の中でも語っているところだ。

 

 さてそんな彼女であるが、真実へのヒントを得られず今日まで至ったのはたしかなのだが、さりとて彼女の周囲にそのヒントらしきものがなかったわけでもない。

 彼女がよく知る人物の中に二人、まるで同様の性質を持つ封印中のファースト・スキルを持つ者がいたのだ。

 

 一人はベナウィ・コーデリア。

 彼女が後年取ることになる弟子、大探査者サウダーデ・風間──本名クリストフ・カザマ・シルヴァの弟子でありマリアベールにとっては孫弟子にあたるS級探査者である。

 彼は《メサイア・アドベント》という封印中のスキルを獲得しており、マリアベールを驚かせることとなる。

 

 そしてもう一人。彼女が若い頃から知り合い、そして世話になりさえした人物がいる。

 御堂将太。日本からソフィア・チェーホワの伝を辿りイギリスへと武者修行に来ていた彼もまた、《究極結界封印術》なる詳細不明の、そして封印中のファースト・スキルを持っていたのである。

 

 

 

「失礼。君が、マリアベール・フランソワさんだね?」

「はぁん?」

 

 いきなり話しかけられ、食事中のマリアベールは野獣さえ怯み逃げ出しかねない異様な眼光でその男を睨みつけた。

 場所は全探組の談話室、食事提供もされているコーナーの一角。フィッシュアンドチップスにたっぷりのビネガーをふりかけて頬張っている中でのことだ。

 

 空腹で餓えた獣のようになっているところを邪魔され、ただでさえ気の短いマリアベールの怒りはすぐさま沸点に到達している。

 声をかけてきた男は見るからに歳上で、概ね20代なかばといったところか。優しげな顔立ちの東洋人で、以前にも何度かこの近辺ででも見た顔だ。

 

 たしかその時はどういった関係だか、同じく東洋人の女を一人連れていた。今はその女はいないようで、男一人きりだ。

 まさかナンパとでも? ……下らない用事なら殴り飛ばして終いだと若干の警戒を示しつつ、マリアベールはミネラルウォーターで口内をさっぱりさせてから口を開いた。

 

「いかにも私がマリアベール・フランソワ様だけどよ……なんの用だい? 見た感じアジアのほうから来てるみてぇだが」

「御名答。日本から来たんだ。御堂将太と言うよ、よろしく」

「どーでもいいよアンタの名前なんざぁ。いいから言えよ用件を、腹ぁ空かしてんだこっちゃよ!」

 

 呑気な、のほほんとした空気を纏わせてふんわり笑う男……御堂将太。まるで少年のような童顔ぶりに、どことなく毒気を削がれる心地にさえなる。

 しかして関係なし、さっさと話を聞いて答えてやってどっか行けと怒鳴りつけてやろうとマリアベールは急かした。相変わらずの乱雑ぶりであるが、それにも将太はまるで動じず、やがて穏やかな笑みを浮かべたまま、言うのだった。

 

「ソフィア・チェーホワさんからの紹介を受けてやって来たんだ。君の持っているらしい謎のスキル……《ディヴァイン・ディサイシヴ》について話をお聞きしたくてね」

「! ソフィアさんから……?」

「そう。実は僕スキルマニアでね。あ、これソフィアさんには内緒ね? この話を蒸し返すとあの人いつも怒り出すんだ、元はと言えば自分が発端なのにねえ?」

「あ、ああ? 何言ってんだよ、あんた」

 

 しーっ、と人差し指を唇につけてジェスチャーする将太に、マリアベールは戸惑いを隠せない。

 あのソフィアからの紹介。ということは単なる好奇心からのものでないのは明らかだろう……少なくともソフィアなりヴァールにとっては何かしら意味があることなのだ、この二人の邂逅は。

 

 先輩や年長の探査者を極端に嫌う傾向にあるマリアベールが、それでも尊敬する数少ない格上の相手の紹介とあっては無碍にもできない。

 多少歳上だろう男に、少しだけ態度を柔らかくして彼女は着席を促した。

 

「……まあ良いや、とりあえず座んなよ。ソフィアさんが寄越したってことは、なんぞあるってことなんだろうしよ」

「あはは、ごめんねフランソワさん。食事時に」

「マリアベールでいいよ、御堂さん。あんたも食うかコレ? 追加で頼むけどよ」

「いや、遠慮しておくよ。40歳にもなると、そろそろ油物がキツくて」

「ほーん、そんなもんか────って、よんじゅうっ!?」

 

 どうせなら一緒に飯でも食うか、と誘ったところ衝撃の事実が発覚し、マリアベールは硬直した。

 多少どころでない。自分の父親とほとんど同い年ではないか、この童顔の東洋人は!

 

 唖然とする彼女に、どうせそんなことだろうと思ったと将太は苦笑いする。どうにも渡英して数年、常に誰かしらを容姿と実年齢のギャップで驚かせている彼は、そうして席につくのだった。




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 将太のひ孫がヒロインでマリアベールとも仲の良い「攻略! 大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─」は下記URLからご覧いただけますー
 https://syosetu.org/novel/273448/
 書籍化、コミカライズもしておりますのでそちらもよろしくお願いいたしますー
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