大ダンジョン時代ヒストリア   作:てんたくろー

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本エピソードの主要な登場人物
()内は年齢

ソフィア・チェーホワ(??)


12年目 大ダンジョン時代を牽引するモノ

  第一次モンスターハザード。

 能力者大戦の最終盤にて引き起こされた人為的災害は、ソフィア・チェーホワと仲間達の奮闘によってひとまずの解決を見た。

 

 "委員会"を名乗る謎の組織を相手に、幾人もいた幹部格から構成員までほぼすべてを見事打ち倒し捕縛し、世界各地でのモンスターの地上進出を終わらせたのである。

 無論、それは彼女一人によるものでない。シェン・カーンに代表される当時最強クラスの能力者達が一致団結して、力なき人々が多く住む市町村をモンスターの魔の手から防ぎきって得た成果だった。

 

 そしてモンスターハザードの終結をもって国連組織、WSOはその活動を本格的なものとした。手始めに統括理事として公の場に姿を見せたソフィアが、交戦状態だった各国間を仲介した上で和平条約に調印させる。

 すなわち能力者大戦の終結を、事実上ソフィア・チェーホワ主導で執り行ったのであった。これをもってWSOは新設組織でありながら国連の中でも特に存在感と権威権勢の強い、大ダンジョン時代社会を牽引する一大組織へと変貌していくのである。

 

 

 

 能力者大戦の終結および第一次モンスターハザードの終息から一年ほどが経ち、ソフィアは国際能力者連携機構の統括理事として日々、能力者に関する世界規模での取り決めを行っていた。

 これまで無法図、または国によって異なっていた能力者の扱いを世界共通の規格に沿う形とすることで、彼らをあらゆる国家や組織から切り離した独自の存在にしようとしていたのだ。

 

「────それでは国連能力者連携機構……いえ、国際探査者連携機構や各国の探査者管理組織への登録を義務付けし、彼らを"探査者"と呼ぶことにしましょう。そして登録しない者は引き続き能力者と呼称し、取り締まるのです」

 

 この時期、3年前に発足された国際能力者連携機構は国際探査者連携機構に名を変え、能力者と分別して"探査者"と呼称するよう取り決めが成された。

 そして探査者をある種の専門職とし、ダンジョンを探査してモンスターを倒し、最奥にあるダンジョンコアを持ち帰ることで高額報酬を受け取れるようにしたのだ。

 

 これにより探査者は一般的に高給取りと言われるようになり、またモンスターが倒された時に時折落とす素材も高額で取引されるようになったことからいわゆる億万長者となる探査者も今後、多数生まれるようになった。

 

「各国政府には、WSOの下請けとして国内探査者の管理運営を一括して行う国営組織を設けてもらいます。全国ダンジョン探査者組合協会の発足ですね」

「下請け……ですか。それはWSOの下部組織という形になるのですか?」

「いえ、政府組織ですよあくまで。ただそれはそれとして、国際法上はWSOの傘下でもあると解釈できるようにはいたしますが。国家の恣意的な運用がされた時、抑止が利かないのでは困りますものね。うふふ」

 

 他の理事からの質問に、花が咲くような笑みで答えるソフィア。美しくもたおやかな笑顔は見る人すべてを魅了するものだが、この場に居たWSO役員の多くはどこか寒々しいものを感じて背筋を凍らせた。

 基本的な性質はもちろん善性なのだが、さりとて必要とあらば、内政干渉めいた無理をも通せるように初手から備えておく強かさも併せ持つ──ソフィア・チェーホワとはそうした人物でもあった。

 

 ともあれこのようなやり取りを経て、WSOの傘下でありつつも本質的には各国の政府組織である全国ダンジョン探査者組合協会が組織されることとなる。

 通称"全探組"。通常、探査者達は誰もがこの組織に登録し、この組織を通じてダンジョン探査依頼を受け、そして踏破後にはダンジョンコアや素材を換金する一連の探査活動を行う。

 つまりは探査者の拠点、ホームグラウンドとなる組織の発足であった。

 

「ふう……」

 

 ──ひとまずの方向性を話し合いの中で決め、ソフィアはデスクに座り温かな紅茶を口にした。甘やかな味と芳醇な香りが心を安らげてくれる。

 窓を見ればスイスはジュネーヴ、WSO本部施設の最上階層の統括理事室から望む自然が素晴らしく美しい。この景色を独り占めにしてしまえるのはなるほど、統括理事ならではの報酬かもしれませんねと彼女は内心、独り言ちた。

 

「これでようやく、大ダンジョン時代の基盤は整ったというところでしょうか? やっとの思いで辿り着いたのがスタートラインだなんて、先は果てしないわね。ヴァール……」

 

 身体を共有する相方、ヴァールへと静かに語りかける。当然だが返事はない。

 ソフィアとヴァールはコインの表と裏だ。表からでは裏を見ることはできないし、逆もまた然り。人格が表層に出ている時こそ意識はあるが、そうでない時は寝ているのと変わらず意識がない状態に陥るのだ。

 

 つまりはお互いに、もう二度と相方の顔を見ることもなければ言葉を交わすこともできないのだ。

 できることはメモに書き置きを残して人格を入れ替え、相手へのメッセージを残すくらいのことだけ。覚悟はしていたけれどそれがどれだけ寂しいことか、何度目になるかも分からない孤独感にソフィアは身を震わせた。

 

「……それでも、やらないと。私達は私達の責任を、使命を今度こそ果たさなければ」

 

 強い覚悟を込めて、つぶやく。

 大ダンジョン時代を牽引する者。WSO統括理事ソフィア・チェーホワの戦いはまだまだ、これからなのだった。




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