お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
#101→♪14.5 Dual_JuneBride_Moment(あるいは新たなプロローグ)
ー*ー
ユキコシ地方、ワカナエシティ。
青々と田が輝く平野に、摩天楼がそびえ立っている。
この地方を代表する名家の当主にして、ポケモントレーナーとしても最強クラスであることで知られる令嬢、アオバ・フロックス(25)。
純白の髪をたなびかせ、袴から覗く足取りも優雅に、イーブイを連れ大通りを歩いているアオバ。だが、彼女にはひとつ、大きな秘密があった。
「今日は陽射しが心地よいですわね/この世界は温暖化してないからつくづく快適だなあ。」
日本からの転生者、中橋蒼玻。TS異世界転生者が恋人となって、その魂をアオバとダブらせているのだ。
数々の困難を乗り越えた蒼玻/アオバは、悠々と日々を楽し…めるわけでもなく、名家として国際企業グループトップとしてトレーナーとして、忙しい日々を今日も送っていた。
「「っ…!?」」
だから、突然蒼玻/アオバが頭を押さえうずくまったとて、妹のカグヤが過労の祟りを疑ったのも無理からぬことであるーいくら8年同居していようと蒼玻の魂は男のそれであり、生理痛が酷い時はアオバともども苦しんでいたのも確かだったし。
「お姉ちゃん!?大丈夫!?」
「いえ、頭が…というより/なんか、世界が、廻って、目眩が…」
蒼玻/アオバを抱え起こそうとして、カグヤは目を疑ったー純白の令嬢の姿がぼやけ、2重に見える。
「これは/わたくしたち/俺たち/別れようとして」「いるのかもですわ」「だな」
世界が震えたように感じられた。
1秒にも永遠にも思われた。
「貴方は…」
瞬きの次の瞬間、アオバの網膜には、これと言って特徴のない冴えない青年が、アオバと同じように座り込んで映っていた。
「…なんだかわからないがまたトラブルらしいな…
…現実で会うのは初めてか。蒼玻、中橋蒼玻だ。」
「こちらこそ、アオバ・フロックスですわ。
あまり目立たないほうがいいのではないかしら。急ぎ本社へ戻りますわよ。」
「え、ええ…?お姉ちゃんも蒼玻くんも順応早すぎない…?」
ー*ー
「原因は不明、原理も不明、戻る方法も不明、と…」
もともと「二重魂魄」もわりと理論なく勢いで実現したフシがあるだけに、蒼玻は何もわからないでいる。
「ところで、アオバちゃんは何してるんだ…?」
先程まであちこちに話を通しアオバのスケジュールに余裕を作りさらに姉妹の私室の改装までしていたー蒼玻と一緒でないと今さら落ち着かないとアオバが言うのでーカグヤが戻ってきたのを見て、蒼玻は声を掛ける。
「式場の手配。」
「…なんて?」
今日はよくよくアスピリンが欲しくなる日だな、蒼玻はそう思った。
ー*ー
「あの、アオバちゃん、これは?」
「見てわかるのではなくって?タキシードですわ。」
いや、そりゃ、わかるけど。
「ポケモンたちにはカグヤがドレスを着せていますわ。
あ、あらもしかして、緊張してますの?」
それもあるけど、そうでもなく。
「大丈夫ですわ。公式には誰もいないことになっていまして、わたくしと蒼玻くんとカグヤだけで、貸し切りですわ。
…本当はみんなに祝福されたかったのですけれど、大ニュース間違いなしになってしまいますものね…」
…安心したような、ちょっとがっかりしたような…いやなんで式に納得してるんだ、俺。
「いやいやいや。
アオバちゃん、結婚式やってて、大丈夫なのか?なんで俺たちの身体が別れてしまったのか、どうやったら、いつ、元に戻れるのか…全然わからないのに。」
「ああ、そういうことでしたのね。
でしたら蒼玻くん、それこそ勘違いですわ。理由も解決策も期間もわからない、だからこそ、今、結婚式なのですわよ。」
「アオバちゃん...
…ごめんな…」
アオバちゃんのことを、まだまだ俺は、わかってなかったみたいだ。…アオバちゃんにも、普通の女の子らしく、結婚式を挙げたい気持ちがあったんだな…
「もう、そんな湿っぽい返答をしないでくださいな。
魂の重複した貴方と恋をする、その時点で、普通の幸せなんて投げ捨てましたわよ。けれどわたくしはお嬢様、欲張りというだけですわ。」
…やっぱりアオバちゃんはアオバちゃんだなあ。俺が焦がれ愛するとおりの。
「アオバちゃん、指輪を。」
そういう想いなら、せっかくならちゃんと、嵌めてあげるべきだ。
「そうですわね。ディアンシーに預かってもらってきますわ。」
ー*ー
イーブイが講談の上に座って、大粒のダイヤモンドがキラリと光る指輪を両手で持つ。
ディアンシーが講談の前に浮かび、
最前列の4席では蒼玻/アオバのシャンデラ、ブロスター、クリムガン、
黒いタキシードを着て待つ蒼玻のもとへ、いつもの赤いドレスを着たカグヤが、珍しく洋装ーユキコシの初雪のように白いウェディングドレスで透明感を見に纏ったアオバをエスコートしてくる。
カグヤがそのまま脇へ見届け人として立つ。
まぼろしの音楽ポケモン、メロエッタの手になるとされる聖歌が流れる。
ディアンシーがテレパシーを発する。
”「『人間は儚く、社会は移ろいますが、託した想いはきっと受け継がれるはずです。それが人間の力なのですから。』
初代フロックス様は仰せられました。
人の愛、人の絆、人の想いは、もっともかたちがなく、もっともちからとなるものです。
人の愛、人の絆、人の想いは、もっとも壊れやすく、もっとも壊しがたいものです。
『ですから私も、私の一族を以て、あなたの子々孫々に盟を約しましょう。』
初代様は仰せられました。
他者を敬い、己に誇りを持ち、そしてかけがえなき唯一無二の仲にはその敬意と矜持をともに抱いて、この壊れやすく壊しがたい想いは永遠のものとしてください。
そして、直視能わざるほど燦然たる至宝として、あまねくユキコシを照らしてください。」”
蒼玻とアオバが、ともに深々と頷く。
”「両者、誓いの言葉を。」”
「わたくしアオバ・フロックスは、この男蒼玻を夫とし」「俺蒼玻・フロックスは、この女アオバを妻とし」
「「良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつその先までも、愛を誓い」」
「夫を想い」「妻を想い」
「夫のみに添うことを」「妻のみに添うことを」
さすが普段一心同体なだけあって、誓いの言葉はいっそ気味が悪いほどにシンクロできていた。
”「貴家の
「「
”「誓いますか?」”
「誓うわ!」「誓うよ!」
ポケモン達が頷く。カグヤが涙をふく。
”「それでは両者、指輪を。」”
蒼玻が、ディアンシーの頭の上から盟約の指輪を。
アオバが、イーブイの手の上からダイヤの指輪を。
そして、指輪は厳かに、お互いの左手薬指に嵌められたのだった。
「蒼玻くん、愛してるわ。」
「愛してるよ、アオバちゃん。」
-ちなみに、いつか魂の中でそうしたように唇を触れあわせても、特に2人が物理的に1つになったりはしなかった。
ー*ー
秘密の結婚式から1日後。
「何事もなく戻りましたわね/胡蝶の夢じみたトラブルだったな…」
寝て起きてみれば、蒼玻とアオバは再び同じ身体に戻っていた。ほっとしたような、肩透かしをくらったような、そんな気分で蒼玻/アオバは朝食を口にする。その胸元には(蒼玻としての肉体が消えたため収まるところを失っていた)ダイヤの指輪がネックレスとなって輝いていた。
「お姉ちゃん!」
「何かしらカグヤ。というか、朝から騒いでいささかはしたないですわよ。」
「
お姉ちゃんと蒼玻くんに何らかの工作をするためワカナエ市中に潜伏していたスパイを発見、これを拘束!」
蒼玻/アオバが、椅子を思い切り引いて立ち上がる。
「賊の所属と背景は!?」
「自決したため不明だけど、所属は持ち物から、南部山岳地帯で間違いないって!」
「南部山岳...一度出兵までしたというのに…/アオバちゃん、俺たちの人生、つくづく騒動に恵まれてるらしいね。」
-かくて、フロックス家の視線は、転生ポケモン令嬢のその後の物語は、ユキコシ地方の南の山々にて騒乱を繰り広げる、