お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
ー*ー
「あれは『凶兆の星』です。
あの星が落ちた時、この世界は、終わります。」
あまりにも唐突に、なんでもないかのように、ハナツメは、世界の終わりを示唆した。
「世界が終わる…世界が終わる…!?」
「…それ、は…」
隕石、そういうことか?
「お姉ちゃん!すぐにワカナエに戻って迎撃作戦を!」
「…ッ!そうですわね!」
「無意味ですよ。『凶兆の星』は黙示録の象徴に過ぎませんし、それに…
実在していないものは迎撃できませんから。」
なんのごまかしもなく輝いている「凶兆の星」を睨み、ハナツメは吐き捨てた。
ー*ー
「実在、していない…?」
「正確には、実在している可能性と実在していない可能性が重複している…ですね。」
「それは、量子力学的な話、かしら?」
ハナツメは、微妙に首を横に振った。
「観測されるまで、箱の中のニャースが生きていてかつ死んでいる…のは思考実験の中だけ。
矛盾する2つの可能性は両存することはないのが世界の摂理。
シンシューとコーシューで流行っているEX・GXオーバーラップも、そう…とされています。」
「…本当は違う、のですわね。
「『EXオーバーラップは、現実とパラレルな可能性を現実に汲み上げ重複させる』…あくまで仮想、例え…それだけだったらどれほど良かったでしょうか。
たとえパラレルな可能性の現実化が実際のパラレルワールドの存在やその消費を意味しなくても、ポケモンEX、あるいはGXとしてパワーアップが起きている以上、オーバーラップは何かそれに値するものを代価にしています。」
十数秒のフリーズ…そして、フロックス姉妹は、世界の終わりを告げられた時に倍する恐慌状態に陥った。
「お、お待ちくださいまし!それは、ポケモンEXは、パラレルワールドを犠牲にして…!?」
「『パラレルな可能性の重複』って、本当に、『この世界とは異なる可能性を持つパラレルワールド』の…!?」
「そのとおりです。
ポケモンEXやポケモンGXの強化は副次的。EXオーバーラップの真の効果は、ミシャグジ神の権能の劣化コピー…
すなわち、都合の良い可能性を持つパラレルワールドを現実とするものです。」
ー*ー
パラレルワールド。タイムパラドックスによってできるものや選択によって分離するもの、量子論的なものなど様々なものが仮想されているが、この場合で言われるのは…
「例えば、今、目の前で、ボールが窓ガラスを割ったとします。
ボールは赤か青か黄色か?割れる窓ガラスは右か左か上か?ボールを投げたのは人かポケモンか?そもそも窓ガラスは割れるのか割れないのか?窓はあるのかないのか?無限の可能性がこの単純な出来事に秘められていて…
…しかも、それがどんなふうであろうと、世界には何の影響も与えません。」
そりゃそうだ。令嬢姉妹は頷く。
「ですからパラレルワールドが統合されても、あまり問題ではないのです。ボールの色が赤だったり青だったり黄色だったり白だったり黒だったりするパラレルワールドを全部汲み上げて束ねていっしょにしたところで、誰も何も変わりません。」
だから、EXオーバーラップがパラレルな可能性を現実へ汲み上げる…否、異なるパラレルワールドを統合することは、問題にならない…
「GXオーバーラップの発明で、状況が変わったんです。
ポケモンGXは、パラレルワールドの自分を重複させて能力を上げるというポケモンEXの性質とともに、汲み上げた可能性を収束させて放つGXワザを…
…パラレルワールドのそれぞれの差を束ねて放つ、究極の一撃を、持っています。」
パラレルワールドどうしに、本来大した差はない。わずかな可能性の異なりで無限のパラレルワールドが発生しているから。…ただ、総体として見た時に大きな差があるように無数のパラレルワールドを汲み上げた時は別だ。
「GXワザは無数のパラレルワールドを消費します。無数の可能性の分岐が生む差、それがGXワザの原動力ですから。
その結果、パラレルワールドどうしがどんどん、この世界に一つに統合されているんです。」
「…パラレルワールドは一つの分岐の可能性ごとに無数に分岐する…だったら、少々GXワザでパラレルワールドを浪費したって、別に枯渇したりはしないんじゃないの?」
「さっき言ったはずですよカグヤさん。
些細な可能性の異なりで分岐した程度ではパラレルワールドはほとんど違わない。統合前の多くのパラレルワールドで、同じトレーナーが同じポケモンのGXオーバーラップをすることになるんです。」
数え切れないほどのパラレルワールドで、同時に行われるGXワザの発動。すると、それぞれのパラレルワールドが、ある程度の差異を持つ無数のパラレルワールドを統合しながら一つに収束し、発生したパラドックスが膨大なエネルギーと化してGXワザとして放たれる…そんなイメージを、蒼玻/アオバは脳裏に描いた。
「わかりやすく言えば、ポケモンGX、アレは現実の安定性を破壊しながら、
ーその結果として現れたのが、あの「凶兆の星」。
「『凶兆の星』が落ちた時に世界が終わる…具体的には、何が起きるのかしら?」
「ああいうのは、滅んだ世界の象徴なんですよ。
…どんどん可能性を統合して、近い可能性で分岐したパラレルワールドは生まれたそばから消えて。
ボールの色が違う可能性、ボールが投げられなかった可能性、そもそもボールがここになかった可能性、ボールが作られなかった可能性…そうやって、どんどん、消費できる可能性のパラレルワールドは遠ざかっていって…
…そうして、ついに『すでに滅んだ世界の可能性』をも統合してしまえば、この世界は滅亡と重複して。」
「あ…だから…じゃああれは、ホウエン隕石…」
「その他もろもろ。もっとも、隕石が関係する中で一番この世界に近いパラレルワールドは、ホウエン隕石で滅んだ世界になるでしょうが…」
隕石が落ちてくるから世界が終わるのではない。「隕石が落ちて世界が終わった可能性」がこの世界に統合されるから世界が終わるのだ。そして、今隕石が見えるということは、「隕石によって世界が滅びそうな可能性」はすでに現実世界へ統合されているということ。
「本家なら、つかんでいるのではありませんか?他にも、滅びの可能性、その予兆を。」
ー地震が増えた。
ーアブソルがよく山から下りてくる。
ー大雨や日照りが増えた。
ーウルトラビーストの出現率が上がった。
ー息を吹き返している悪の組織がある。
ー四災ポケモンの目撃情報が増えた。
「「ッ…!」」
それらの「滅びへと至る可能性があるパラレルワールド」はすでにいくつも統合されている。そしてそれらが尽きた時に、次は滅んだ可能性の世界が統合され、世界は終わる。
「この前のカナサシ湖のネクロズマが決定的でした。もともと、ミシャグジ神なんていう、ポケモンがいないであろう世界の可能性すら恣意的に汲み上げている伝説ポケモンです。それが、特大のGXワザを乱発したのですから…」
だから滅びの可能性の世界が近づき、「凶兆の星」として見えるまでになった。
「その上で、私とお姉ちゃんに頼みがある…それってさ、そういうこと、だよね?」
「はい。…2000年ぶりのフロックス本家の皆様。
お願いです。シンシュー、そしてコーシュー地方を征討してください。
ポケモンGXを生み出すGXマーカーをすべて差し止めて。元凶の、シンシューカナサシ湖とコーシューナデシコシティの伝説ポケモンをゲットして。」
あと1話で「転生ポケモンアイドル」に戻ります