お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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卒論終わり!俺の勝ち! ...学会発表の準備?まずは実験?なんのことやら...




能登モデルの地名出しても誰も元ネタわかんないだろうな〜と思っていたら予期せぬ形で有名になってしまい、さすがに悲しいです。石川の特産品ネタや観光地ネタ仕込んでせめて観光行きたくなるように…と思ってもポケモン世界化するとあんまり成分残らない…




#10 無敗BREAK

ー*-

 

 石川県珠洲市...と言われても、多くの日本人はどこにそれがあるのかイメージするのも難しいだろう。当然、蒼玻も、そうだった。

 

 ただしこの世界、ユキコシ地方では、人口密度がさほど重要な指標とされていないこともあり、さほど珠洲にあたる地域(いわゆる能登半島先端部)ことアカマツタウンはそこそこには有名である。

 

 青い海が広がるその隣で、数百軒の家々からなる街並みが小さくたたずんでいる。潮の香りをかぎながら、蒼玻は長い髪を風に流した。

 

 「うーん、まだまだお姉ちゃん気品が足りないかな…」

 

 (余計なお世話だ。)

 

 自分ではそこそこさまになっているつもりでいただけに、蒼玻は不機嫌を隠さない。

 

 「それで、ここからヌレバタウン、ですわよね?」

 

 「うん。もちろん、徒歩でね。」

 

 (...うすうすそんな気はしてた)

 

 人が一日に歩ける距離は4キロ/時×24時間でだいたい100キロ...というのは後先を考えなかった場合で、旅として毎日歩くのならせいぜい30キロが限界、慣れない身体と慣れない服では半分の15キロ進めれば御の字だろう。ところで能登半島だけでも100キロ以上の長さがある。

 

 「野生のポケモンと出会い、時に戦い時に協力することも旅の醍醐味であり鍛錬なんだからね。」

 

 「…気が遠くなりますわね…」

 

 「それに、イーブイのこともよくわかってないし。」

 

 進化を安定させられず些細なことで進化する代わりに一瞬で退化してしまうユキコシイーブイの中でも特殊な「環境の変化にあわせて念じることで進化するイーブイ」、ただでさえ諸刃の剣だが仕様を理解できずに使い続ければいずれ足元をすくわれることは確かに間違いない。

 

 「でもまずはお姉ちゃん、いったん街から離れるよ。」

 

 「どうしてかしら?」

 

 「いや、それ、話聞いた感じだと、今のお姉ちゃんにはとてもじゃないけど扱えないからね?」」

 

 海上で捕まえたばかりのブロスターの入ったノブレスボールを指さし、カグヤは言った。

 

 「それ、暴れるよ?それはもう盛大に。」

 

 (...頭痛くなってきた...アスピリン欲しい…)

 

ー*-

 

 そんなわけで、山の中。

 

 ため池を囲む小さな公園といった趣の草地で、蒼玻はそっと、ボールを開いた。

 

 光とともにブロスターが飛び出し、左右を見て、怪訝そうに首を傾けた。

 

 振り向き、蒼玻を見る。

 

 黄色いブロスターの目と、透き通るサファイアのような蒼玻の目が、合った。

 

 たっぷり、5秒の沈黙。

 

 ブロスターの右腕が開く。

 

 ーピカチュウの10まんボルトは、カントーではギャグで済むが、ユキコシで人がくらったらまず間違いなく死ぬのだ。

 

 「お姉ちゃんっ!」

 

 言われるまでもなく、さすがの蒼玻も慌てて飛びのいた。こんなことであっさり死ぬのも嫌だし、そもそも女の子それも御令嬢なのだから傷一つ肌に付けるわけにはいかない。

 

 銀色の閃光が、木々を消し飛ばす。

 

 「うっわ、これリミット超えてる...

 

 ヒヲマトウハネ、お願いっ!」

 

 ぺたん、半分サイズのウルガモスのようなポケモンが、地面にバチュルかのようにへばりつき、分厚い羽毛と赤く輝く6枚の翅を赤く輝かせた。

  

 「なんかあったらまもるととびつくで阻止して。」

 

 危なっかしくて仕方がない…カグヤが眉を顰める。

 

 「お姉ちゃん、こうなったらもう理解らせるしかないよ。」

 

 (その言い方は下品じゃないか?)

 

 「ですわね。イーブイ、おいでなさい。」

 

 結局、ポケモンに言うことを聞かせる最善の手段はいつだって、上下関係の教育だ。

 

 (一度「ロックオン」を使わせたら一撃必殺される、狙いをつけさせず削るしかない!)

 

 「さてブロスター、少々、しつけの時間ですわよ…

 

 イーブイ、でんこうせっか!」

 

 イーブイが、身体を輝かせながら走り回る。

 

 ブロスターはただでさえ鈍重な上に陸上で取り回しの悪い身体をイーブイを狙って動かすことができず、右腕を掲げてあたふたと慌てる様子を見せた。

 

 「ヒットアンドアウェイですわ!背中を狙うのです!」

 

 ブロスターの波導系のワザは強力だが、すべて右腕のハサミから発射されるだけあって、ブロスターは死角が多いポケモンなのだ。海上で機動戦を仕掛けてきたのでもなければ、てこずるべき相手ではないのである。

 

 ...もっとも、それはベテラントレーナーに限るわけだが。

 

 ブロスターの身体が水に包まれる。右腕の後ろから水が噴き出す。

 

 「っ、イーブイ、いったんでんこうせっかやめっ!」

 

 アクアジェットで高く飛び上ったブロスターを、歯噛みして眺めることしか蒼玻とイーブイには許されない。

 

 空中に描かれる水の飛跡が、地上を向いた。

 

 「イーブイ、走り回るのですわ!」

 

 このブロスターは空中から砲撃する技能を持っている。止まっていたら良い的だ。

 

 (はつげんちょうせいで有利を取りたいところではあるが…)

 

 はつげんちょうせいは自分か他者か周囲の環境によって一瞬だけ進化できる特性だが、一対一のバトルでないと対等に負かして認めさせることはできないし、うそなきの悪タイプを使ってブラッキーになっても大して攻撃力は上がらないし、池に飛び込んでシャワーズになったところで井の中のケロマツみたいなものである。

 

 (都合よく雷が落ちてサンダースになるか花畑が咲いてリーフィアになるかすれば楽だが…!)

 

 はつげんちょうせいは強力だがいつでも切れる手札ではない。

 

 ブロスターに捉えられたーそんな第五感に、イーブイは身体を震わせた。

 

 赤い光線が空中に走り、地上をなぞる。

 

 「でんこうせっかを使うのですわ!」

 

 イーブイが再び光に包まれ、地上を駆けずり回った。その後を、前を、赤いターゲットビームがなぞる。やや不毛なチェイスだ。

 

 (アクアジェットで飛び回っている限りは正確に狙えるわけじゃない、それにいつかは力尽きて下りてこざるをえない、狙うとしたら、そこ...!)

 

 ーそう思っていた時期が、蒼玻にもありました。

 

 「ヒヲマトウハネ、まもる!」

 

 最初に気付いたのはカグヤで、切羽詰まりの極みのような叫びをあげた。

 

 同時に、空中を飛び回りながら左腕からビームを掃射し続けるブロスターの右腕が開き、抵抗が増大してアクアジェットの軌道が揺れる。

 

 (ロックオンが、ブラフ!?)

 

 十数の水弾が、迸った。

 

 大地をえぐり、木をなぎ倒し、土煙がすべてを覆う。

 

 「イーブイっ…!」

 

 景色が晴れ渡り「まもる」が解除された瞬間、蒼玻は駆けだし、ボロボロのイーブイを抱きしめた。

 

 (大丈夫、まだ息はある…)

 

 ブロスターは依然として我が物顔で空を飛び回っている。対して地上は惨憺たる有様だ。

 

 「お姉ちゃん、イーブイを回復させてあげて。

 

 それと...」

 

 いよいよ手が付けられないと、ボールにブロスターを戻そうとする蒼玻を、カグヤは片手で押し止めた。

 

 「お姉ちゃんの美しい身体が傷つくところだったのも許せないし、お姉ちゃんに...中身違うけど従わないのはもっと許せない。

 

 私は、売られたケンカは買うことにしてるから。

 

 蹂躙して、マハリハグルマっ!」

 

 世界に、亀裂が奔った。

 

ー*ー

 

 歯車のかみ合わせから空間にヒビを入れて回り続ける、ツヤを失ったギギギアルーそうとしか形容できない、言いようのない違和感をまとうポケモンは、見えているのかも怪しい虚ろな空洞でできた目を空中のブロスターに向けた。

 

 空間に入っているヒビが、枝分かれし、這うように伸びていく。

 

 ブロスターの噴き出すアクアジェットが、さらに太く、勢いよくなる。空中高くから水塊をまとい逆落としに落下するブロスターに対し、マハリハグルマは回避するそぶりはおろか視線を向けるそぶりすら見せない。

 

 水塊が歯車を打ち砕こうとするその瞬間、深淵のような闇でできたヒビが大きく拡大し、マハリハグルマの頭上を覆った。ブロスターが衝突し、大きくはじき飛ばされる。

 

 ポンポンと地上をバウンドしていくブロスターへ、どこからともなく突然出現した空間のヒビが、手のようなカタチをなして何度も何度も殴打をくわえる。

 

 ブロスターが尾を地面に立てて止まり、ヒビで「かげうち」されるのも構わずに右腕から数十もの水弾を途切れなく機関砲かのように撃ち出した。だが、そのすべてがマハリハグルマが前面でいくつも枝分かれさせていくヒビに吸い込まれて消えさる。

 

 外れたみずのはどうが、再び木をなぎ倒し、地面をえぐる。

 

 「…長引かせたくないんだよね。マハリハグルマ、シャドーダイブ。」

 

 空間のヒビが広がり、ちびギアがヌッと吸い込まれる。そして、ブロスターの直上にヒビが出現し、ちびギアが何度も何度も出たり入ったりしながら執拗にブロスターの背中を打ち付ける。

 

 しかしブロスターもさるもの、尾で地面を叩いて跳ね上がり、右腕を掲げ、頭上に飛び出してきたちびギアをがさっと挟んだ。

 

 ハサミにがっしり掴まれたちびギアがもぞもぞ暴れるが、逃れられる気配はない。そして、ほとんど閉じられたハサミの中で、銀色の光が輝き始める。

 

 「最大火力で撃てば抜ける…とでも思ったの?

 

 残念ながら、チェックメイト、だよ。」

 

 マハリハグルマの正面が、つかの間、極光を発する。光線は真横に展開されたヒビに吸い込まれ、そして、ブロスターの斜め後ろの木の影から噴き出した。

 

 極光がブロスターを呑み込む。

 

 力尽きたブロスターのパカッと開かれたハサミから、ちびギアが逃げ出していった。

 

ー*-

 

 「ブロスター、もう暴れちゃダメですわよ?

 

 …こらっ!なんでそっぽ向くんですの!?」

 

 「そうだよ!ちゃんとお姉ちゃんの言う事聞かなきゃ…ってええ!?なんで私にすり寄るの!?

 

 だめっ、ドレス汚れるっ!」

 

 「…いや、露骨にしょんぼりしますのね貴方。さあ、わたくしのほうに...

 

 こらっ、ハサミで叩かないでくださいまし!」

 

ー*-

 

 結論から言えば、ブロスターは、ボールから出した瞬間に暴れこそしないが、依然として蒼玻に従う様子は全くない。蒼玻がポケモンフーズを与えても知らんぷりをしてカグヤにねだる有様である。

 

 「今にして思えば、フィールドをブロスターが使わなかったのは、ブロスターなりにわたくしたちを試す意図があったと思うのですわ...」

 

 イーブイがBREAKワザを使わなかったのはタイミングの問題であり、ファイアローBREAKを使わなかったのはカグヤがキレていたからだ(もちろん、BREAK進化してなおタイプ相性が不利ということもある)。だがブロスターがBREAK進化を選ばなかったことは、ブロスターなりに公平な勝負を仕掛けていたのだという解釈がしっくりくるのだ。

 

 (縛りプレイで負けてたら、従ってくれなくても無理はないよな…)

 

 「だからってさ?

 

 私はお姉ちゃんを大事にしてる、ブロスターは私に従う、だったらブロスターがお姉ちゃんに従ってもいいと思うんだけど?」

 

 「世の中そう三段論法でうまくいくわけではありませんわ...」

 

 (それに大事にしてるのは身体であって魂までもじゃないだろ!)

 

 「…アスピリン欲しいですわ…」

 

 蒼玻は頭を押さえた。





ヒヲマトウハネ むし/ほのお

 かつてパルデアに生息し、チヲハウハネと仮称されたポケモンは、山脈と海で半ば閉ざされたようなユキコシ地方に遺存した。ただし、ユキコシの厳しい冬の寒さに耐えるため、大幅に体を縮めて翅と羽毛に熱を蓄えることで適応したことで、原種とは異なり子どもほどの大きさしかなく、また太陽光を吸収できるように翅は水平に定位する。

 ウルガモスを小さくしたような姿であるためかつてはウルガモスのリージョンフォルムと思われていた。なおチヲハウハネともウルガモスとも異なり、飛べはするものの、自力で飛翔しているわけではなく翅と羽毛の熱で上昇気流を生み出して集団で舞い上がり滑空する。自らの熱で耐えられないほど寒くなることが予想される年には山脈から集団で舞い降りてくる。




 カグヤにとって、ファイアローは正式なバトルで先手必勝を取って着実に勝つため、ヒヲマトウハネは攻防ともに高い能力で継戦や様子見のため、マハリハグルマはその不可解な挙動を活かして一方的に蹂躙するために使っています。

 ちなみに「空間のヒビで殴り、空間のヒビで守る」マハリハグルマ、最強そうに見えるけれど察知できない素早い攻撃にはヒビの展開が追い付かないしヒビは全周防御はできないので範囲攻撃や接近戦をされるとキツイです(ほのお系のワザに身体丸ごと呑まれようものなら一撃KO)
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