お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
言うは易く行うは難し。
それからの一週間、蒼玻もカグヤも、もちろんササユリも、多忙を極めた。
確かにナノハナ線はポケモンバトルに対応した規格であるー外から野生ポケモンに殴られた時のためという意味だが。さすがに脱線や横転のリスクは外からの襲撃に際してどうしようもない(だからこそ警報を受けたら停車してバトルすることになり、駅長も鉄道員も強者が集まる)のだが、内部でのバトルならわりあいどうにかなりはするのだ。なによりササユリには切り札があった。
「ゴジノヤイバ、バリアの用意は万全ですか?」
白くくすんだ青緑の刃を持つギルガルドは、コクコクと頷いて見せた。
「カグヤ、あのポケモンはなにかしら…?」「ギギギアルと同じでギルガルドもユキコシだとちょっと違うんだよお姉ちゃん。古代系のポケモンなの。
ー鉄製の歯車を持つギギギアルが存在するほど発達していた古代ユキコシ文明がこの地を離れ消え去った後、今のユキコシ人の祖先が初めて、荒れるユキコシ地方に入り一から開拓をしたころ、彼らの武器は鉄ではなく青銅でできていた。ジョウトやカントーの古代文化とも共通するそれら青銅武器から、ユキコシのギルガルドは生まれた...とされている。もっとも、ジョウトやカントーにギルガルドがいない以上、遠い祖先は盛んに交易をしていた古代ユキコシ人が大陸から持ち込んだ個体なのかもしれない。
「カロスの原種ギルガルドよりも圧倒的に強い霊力を持ち防御力に優れたゴジノヤイバなら、列車内部でのバトルから列車を守れます。なにしろ原種ギルガルドでさえガラルでダイマックスバトル時の観客防護に使われているのですから。」
もっとも武器が青銅剣なのではがねタイプとしての性能は原種ギルガルドに劣る。切れ味が悪すぎるのだ。青銅の性質上、衝撃にも熱にも弱く本体の耐久が低い…ソードフォルムはあってないようなものである。
「ゴジノヤイバ、『
バトルサブウェイー
「カグヤさんはカメラの配置の模索をお願いします。それが一番大事なので...」
-車両そのものは防護できるしトレーナーは自己責任にせよ、乗客までは守り切れない。バトルサブウェイでも車両はバトルのために貸し切られる。その貸し切り1両から利益を出す方法は、「連結した2両目にバトル目的の乗客に乗ってもらい、次々交代してもらう」こともそうだが、「中継し、配信料を得る」こともなのだ。
この世界に於いてポケモンバトルとその観戦は一大娯楽、そして走行中の鉄道内でのバトルはほとんど例がなく、ローカル線からの生中継ともなると世界初だろう。配信利益も、それを見てやってくる挑戦者もいくらでも見込める。
「さて、バトルを始めさせていただきましょうか。」
ササユリが手袋を強くはめなおす。蒼玻が袖口に手を入れる。
「これより、ナノハナトレインバトル試験試合を始めます。
ステーションマスターササユリ対挑戦者アオバ、試合形式は1対2、交代・アイテム等の使用はあり、BREAKワザ及び進化の使用はなし...
…バトルの準備はよろしいでしょうか?」
-BREAKワザ・進化の使用禁止はバトルトレインならではの仕様である。一回のBREAKワザでのオーラ使用範囲は数十~数百メートル、鉄道だと一瞬で通過してもう一度BREAKワザを撃てるようになりただの早撃ち勝負になってしまうし、そもそもいくらなんでも車両が保たないからだ。
「はい」「はいですわ。」
「それでは、バトル開始!」
-10分後。
「ま、負けましたわ...完膚なきまでに...」
蒼玻は天井を仰いだ。
「1対2は鯖を読みすぎと思いましたが」「お姉ちゃん、なんでサーバー?」「…コホン、強気に出過ぎと思いましたが、1対3でもハンデにならないくらいですわ...」
認められるためにおみや巡りで強くなったと言っていたが、むしろ強いトレーナーだからこそ若くして認められたのではないかとすら思える。
「そうでしょうか?私などアテぐうじやナノハナの侍のみなさんに比べればまだまだと思うのですが…」
「いや、ササユリさん、あのハツラツじいちゃんや武士団と比べる方がおかしいよ…?」
(ナノハナキャッスル、これよりヤバいのか...)
これは自覚のない強者だ...姉妹は埋もれた才能を発掘して戦慄した。
ー*-
そして、ついにその日がやってきた。
「緊張しますわね…」「そうだね…」
どこに余っていたのか、ホウオウ駅の待合室にデカいモニターがおかれ、人々がぎゅうぎゅうづめに集まっている。蒼玻はそのうちの数人がポケモンを膝や肩に乗せたりモンスターボールを身に着けているのを見て、まずは第一段階は成功だなと思ったが、重要なのはここからなのだ。
ー「それではナノハナ鉄道バトルトレイン、本日の第一戦を始めさせていただきます。
ステーションマスターササユリ対挑戦者...」
ナノハナ駅からホウオウ駅まで33㎞。ナノハナ駅でトレーナー6人+付き添いを待機列車に乗せ、往復約2時間、トレーナー1人あたり10分としてササユリが迎え撃つ。「走るポケモンジム」のようなもので普通に考えればいくら特別運賃でも経費をペイできないが、バトルに使うアイテムも駅施設で売るマッチポンプだし、独占中継だし、もともと集客がメイン目的なのだから問題はない。
ー「お願いしますよ、レパルダス。」
ー「行けっ、アブソル!」
「わたくしが知っているアブソルとは違いますわね…毛が深いし爪が長いですわ。」「コンジキに近いからね…アブソル持ちは多いと思う。おおしらやまに祖先をもつ由緒正しいユキコシアブソルだよ。」
(...あれ?でも、ヌレバタウンで見た時は...)
画面の中で、アブソルが鋭い爪を活かして車両の壁面に張り付き、車両の中を飛び回り、斬撃を四方八方から飛ばす。それをレバルダスは最低限の動きで踊るように避けていく。
「…ユキコシアブソルの未来予測能力は天候や災害に限らず、限定的にはバトル中に未来が見えている、だけど、ササユリさんが7おみや巡りを成就しているならそれは悪手だよ。」
ー「レパルダス、でんじはです。」
瞬間、僅かに画面が乱れた。
ー「こんなに効くはずが...」「電車は通常、ポケモンのワザの影響を受けないように電磁遮蔽されていますよ。ですから電磁波が逃げない。車内はこうなるわけです。」
アブソルは動くことができない。鉄道の性質を理解しているササユリならではだーもっとも中継されているからいずれは対策されるのだろうが。
ー「アイアンテール」
「だってコンジキシティのぐうじの手持ちがユキコシアブソルなんだもん。」
あーそっか、もう最強個体を知ってるのか...少しばかり、蒼玻は挑戦者を哀れに思った。
ー*-
「さて、次の挑戦者の方は...」
思ったよりもペースよくバトルが進むな、希望者にリベンジ戦してもらってもいいかもしれない...そう思いながら、ササユリは連結車両への扉が開くのを待っていた。
「俺たち、だなァ...」
「お客様、1人ずつ、そう申し上げたはずですが…?」
「付き添いが飛び入り参加しちゃいけないなんて聞いてないぜ?」
ガラの悪そうな2人組の男は、そう言いながらボールを...6つずつ放り投げた。
「てめえら」「大暴れの時間だぜ。」
ー*-
「なっ...!?」
(いくらササユリさんが強くても、閉鎖空間で12体を相手にできるはずがない!)
-「レパルダス、でんじは。ゴジノヤイバはバリアを重ねてください。それから...
...アヤシシ、お願いします。バリアーラッシュでゴジノヤイバの手助けを。」
ササユリの表情からは苦渋が透けて見えた。
(そりゃそうだ。乱入者の12体はどれもそんなに大きくないけど、それでもぎゅうぎゅうづめに近いのに、ましてアヤシシまで出したら狭くなりすぎる...)
事実上、レパルダス1体だけで戦わなくてはならなくなる。
ー「…何が目的ですか?」
ー「目的?そりゃあ決まっているだろ。
金儲けだよ。こんなカスみたいな路線でもやりようはあるってこった。」
ー「…お客様、ゴフク屋ですね?」
ー「おう、そうともさ。」「俺たちはゴフク屋旧ロケット団。金と力で支配する者だ。」
「カグヤ、助けに...」
「できないよ、お姉ちゃん。みんなも。」
今にも飛び出していきそうな蒼玻や地元民を、カグヤが待合室の入り口で制した。
「ヒヲマトウハネ、人が出たら無理やりにでも止めて。」
「カグヤ!?」「なんだお前!ゴフク屋の味方をするってのか!」「そこを通しなさい!」
「ダメなんだって!
あのゴフク屋がナノハナ線を欲しがってるとして、ササユリさんに卑怯なバトルで勝っただけでナノハナ線に何かできるわけないじゃない!」
「だからってお前、何もしないで見過ごせってのか!?」「俺たちのナノハナ線を!」
今にも胸倉をつかみかからんばかりの勢いで、男たちがカグヤに詰め寄る。
ー「…正気ですか?そもそもこれはポケモンバトルイベント。ステーションマスターを名乗ったからにはそうそう負けはしませんが、だからと言って私が負けてもそれでこの路線がどうにかなるわけではありませんよ?
無体をすれば駅に到着次第ジュンサーに逮捕される、それだけです。」
「車両はいずれ駅に着く、いざとなれば待機車両にもトレーナーがいる、走る拘置所みたいなものですわよ。会社に実害がなくても、ササユリさんにあの男たちが何をするかは...」
-「おう、じゃあ逮捕されないためには1つだァ」「その
「ほら見ろよ!あんなこと言ってるじゃねえか!よそ者は口を出さないでそこをどけ!」「あたしたちがナノハナ線を守るのよ!」
「…じゃあ、普段から乗れば、ゴフク屋と戦える強いトレーナーなんでしょ!貴方たちが乗っていれば、そもそもナノハナ線は経営難にならなかった!」
「っ...」「それは...」
「それに...
...ササユリさんは、勝たないといけないんだよ、ひとりで。だって、この様子は動画サイトに今も上がってるんだよ?」
ー*-
@hipicka1456
これマ?
@78rankurusudaisukii
マジでしょ、だって鉄道会社の公式垢やぞ
@hipicka1456
これマ?
@j64323zxfc
うーんこれがロケット団(ユキコシのすがた)か...いや無茶苦茶やるな!?
@trainlover227
ただでもナノハナ鉄道バトルの話を聞いた時、「ヤバい奴が中で暴れ出したらどうするんだ」とは思ったんだよな。
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@life900asa
普通の鉄道だとどうするん?
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@trainlover227
だから鉄道員ってガチトレーナー多いんだよ。少なくとも、そういうことになってる。
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@dwesad64532dc
ユキコシ地方はポケモンが危ないって聞いたんだけど、ってことはあの子超強い?
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@78rankurusudaisukii
そらそう、だって1対2でもう5人倒してる。
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@dwesad64532dc
ふぁ~~~!?
@trainlover227
野生のポケモンも危ない地方らしい。ってことはポケモンが車両を襲ってきたときのためにも強いトレーナーを雇ってるはず。はずなんだけど...さすがに12体は...
ごめん、バトル有識者いない?
@78rankurusudaisukii
そらそう、だって1対2でもう5人倒してる。
@apockemonteacher
某ポケモンスクールで教員をしている者です。ジムリクラスでも無理だと思います。あのポケモンたちは明らかにラッシュバトルに適したレベルではないです。
@trainlover227
野生のポケモンも危ない地方らしい。ってことはポケモンが車両を襲ってきたときのためにも強いトレーナー を雇ってるはず。はずなんだけど...さすがに12体は...
ごめん、バトル有識者いない?
@trainlover227
ですよね...クロバットにフリージオ、シザリガー、ドリュウズ...デカヌチャンもいる...
@apockemonteacher
某ポケモンスクールで教員をしている者です。ジムリクラスでも無理だと思います。あのポケモンたちは明らかにラッシュバトルに適したレベルではないです。
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@kusoripper
お前全然バトル詳しくないなんてことないだろw
@trainlover227
となると問題だな。もしナノハナ線の職員があの乱暴者を止められないと面倒なことになる…
@monomousu3424
なんで?賭けてるわけでもないし、チーターに負けても痛くもかゆくもないでしょ。
@trainlover227
となると問題だな。もしナノハナ線の職員があの乱暴者を止められないと面倒なことになる…
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@trainlover227
いいえ、違います。今からツリーで解説します。
ー*-
「鉄道会社は、乗客の安全を預かってるんだよ。会社の信頼を担保に。だから鉄道員...ナノハナ線は駅長までも、鍛えられたトレーナーで構成されてる。
自分の実力でなんとでもできる自信がある
カグヤはアオバほどではないが経営者教育を受けている…だからわかるのだ。バトルの腕が必要である職種で、バトルの腕を飼われている職員が衆人環視の中ーそれもフルスペックでもBREAKでもないポケモンにー負けて資産と顧客の安全を損なう、それが如何に御法度か。
「ここで負けたらナノハナ鉄道が顧客に対して負う安全責任と株主や銀行、出資自治体に対して負う会社の資産維持責任はどうなるの?
『安全に走り続けるための実力』、それを担保に信頼を得ているのに、いくら精鋭でもならず者に負けたら信頼が崩壊しちゃう。」
誰もが、押し黙った。
「待機車両の人をササユリさんが呼ばないってことは、彼女には信頼を守り通す覚悟がある。邪魔しちゃ、ダメなんだよ…」
ー*-
「くっ...イオルブ、戻ってください。
お願い、アイアント!シャドークロー!」
「タルップル、デカヌチャン、奴を食い止めろ。ベラカス、まだ戦えるな?アヤシシとギルガルドを叩け。」「ゴジノヤイバって言うんだよここでは。マリルリ、シュバルゴ、アイアントを攻撃だ。残りは車両の床を壊せ!」
(列車はあと10分もすれば定刻通りにホウオウ駅に着く、あと2体耐えれば...)
「あと3体、10分遅延プレイすれば...とでも思ってる顔だな?」「そろそろ終わらせようぜ。イツカネズミ、来い。」
(まずいっ、ネズミざんに車両が耐えられない!)
統計上はワザ「ネズミざん」の命中率は9割ーだがこれはあくまで回避できるポケモン相手だ。(相対的に)動かない車両の床面相手では当然100%。ゴジノヤイバのバリアだって各バトルごとにゴジノヤイバを回復させ、かつゴジノヤイバ本体が攻撃されていない前提でしか車両を守り切れない。アヤシシのバリアーラッシュは地面には展開できない。
「アイアント、まもりなさいっ!」「マリルリ、はらだいこ」
まずい…ササユリは直感し、早くも次のボールを握り締める。次の瞬間怒涛の十連撃がアイアントを襲いーそれはバリアで防いだものの、バリアが消滅した瞬間の「アクアブレイク」まではどうにもならなかった。
「戻ってください、アイアント。
それでも列車は走り続けます、マッスグマ、イツカネズミにしんそく。」
(本当は「はらだいこ」「みがわり」を使いたい…でも...どうせみがわりは保たないしそもそも相手が多すぎて積みワザを使う余裕がない…!)
「…いやけっこう列車曲がってるよな?」
過ぎ去る車窓を眺めながら、男は言った。イツカネズミが貫かれぱたりと倒れる。
「デカヌチャン、
すぐには止まれないし回避もできないマッスグマを、その一撃は打ち抜いた。ササユリの背後で、べちゃりとマッスグマが壁に磔にされ倒れ落ちる。
「マッスグマ...っ!」
同時に、ゴジノヤイバが苦しそうな声を上げた。本体にもベラカスからの攻撃を受け、床面のバリアにも攻撃を受けている中での「しんそく」の勢いが乗った「デカハンマー」の運動エネルギーをもろに受けたのだから、そろそろ限界なのだ。
「アヤシシ、攻撃に回り」「させねえよ、シザリガーハサミギロチン、フリージオぜったいれいど。」
一撃必殺ワザの命中率は30%-では2体同時なら?その一発命中率は51%にまで上昇する。そして、アヤシシが抜かれれば次は車両防護中のゴジノヤイバだ。アヤシシに受けさせてお祈りするしかない。
「お願いします、エモンガ、デカヌチャンにほっぺす」
「だからさせねえって言ってんだろ?」
ーササユリはこおりついた。男が掲げているのは
ー*-
カグヤは画面へと叫んだ。
「うそでしょ!?」
ただのバトル勝利ではない、車両を守り抜いて勝利しなければならない...誰だってクソみたいな勝利条件だと思うのに、これはあんまりである。
(「はんえいのいしずえ」のワザとしてのダメージはインゴットの撃ち出しによって与えられるけど、地面の溶融そのものはよりしろさまを祀る祭事!たかだか一般ポケモンのゴジノヤイバの
床下には台車がある。駆動装置と車軸支持装置を搭載した台車が。それがもし、金鉱石をも融かす1000℃の加熱を受けたら、走行中の車両はどうなる?
ー「エモンガ、受けてっ!」
滑り込みでデカヌチャンのハンマーと車両の床面の間に挟まったエモンガが、ハンマーの一撃を背に受ける。
ほぼ同時に、とうとう一撃必殺ワザが命中したアヤシシが倒れる。
ー「…BREAKワザが、来ない...?」
ー「ったりめぇよお。脱線したら俺たちも死ぬんでなァ。」
(良かった...ブラフか...)
ガラスのオブジェが、男の足元で砕け散った。
「だがこれはハッタリじゃねえ。ドリュウズ、じしん。」
衝撃が、車両を襲う。そのダメージのわずかでも、車両本体に与えるわけにはいかない。
目いっぱいのダメージをバリア越しに吸収したゴジノヤイバが、デカヌチャンにハンマーで押さえつけられたまま床越しにもろにダメージを受けたエモンガが、力尽きる。
「さァ、てめえの手持ちは残り一体だ。俺らにはまだ5分ある。どうする?」
ー*ー
(今でも、脳裏に、鮮明に思い出せます。)
ー「ササユリ、覚えておきなさい。
このポケモンはね、爺ちゃんたちがホウオウ線を通すのを協力してくれた、すごいポケモンなんだ。
トンネルも橋も、危険なポケモンの住処も、彼が開通させてくれたようなものだ。そんなすごいポケモンだからこそ、ホウオウタウンのために...」
「絶対に、バトルに出してはいけないよ、でしたね、おじいちゃん...
...お願いします。」
モンスターボールが、ころころと足元を転がり、何かが這い出した。
「な、なんだァ...?」
「青空に虹掛け夜に星空浮かぶ、ここはホウオウ渡りし町!
シチセイノカゲ、シャドースチールをBREAK!」
車両が、金色の輝きに包まれた。
拳の影が何度も何度も、わずかに視界の隅によぎる。
殴打音が、途切れることなく黄金の世界に響き渡る。
すべてが終わった時、2人の男とポケモン達が倒れ伏し、それを成し遂げたナニモノかの姿は、ついに映ることがなかった。
ー*-
@trainlover227
ヤッバ。いや、あんな奥の手持ってるならそりゃバトルイベントできるわ。ってかサブウェイマスターとバトってほしい。
@apockemonteacher
あの影ってもしかして...いや、なんでもないです。正式名有名じゃないから知らないのかなぁ...それとも知られたくないから呼び名変えてるのかな…だったら黙っとこ。ってか鬼強いですね。
@998253rgtegrfs
あんな強いポケモンがいるならナノハナ鉄道は安心だね。
@trainlover227
ヤッバ。いや、あんな奥の手持ってるならそりゃバトルイベントできるわ。ってかサブウェイマスターとバトってほしい。
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@trainlover227
それはそう。「お客様は神様」とか言う連中もビビるだろうな。キョダイマックスカビゴンが寝てても定刻運航できそう。
ー*-
「おめでとうですわ。見ごたえあるバトル、悪人打倒の爽快感、そして車両と乗客を一人で守り抜ける実力を見せたことでの信頼の確保...大成功でしたわね。」
「いいえ、そんなことはありません。
そう見えるかもしれませんが、イベントとしては成功でも企画としては失敗なのです。」
「…なんで?」
「
本来は鉄道員にも交代してもらうつもりでした。けれど、ゴジノヤイバやアヤシシにも限界があること、私がいなくては危ない場合がありえることを考えると...
...そんなに頻繁にバトルトレインは走れません。週末一回数往復のイベントの集客では、足りない。」
ポケモントレーナーという目の付け所は良かったけれど、自分が現場にいなくても運営できるイベントが、必要です…ササユリは浮かない顔で、言った。
「…それでは、こういうのは、いかがかしら?」
そして蒼玻の言葉を聞いて、顔を上げた。
ゴジノヤイバ、前作の「転生フラダリ」でも出てきたなお前!(ただしあちらは形代:神剣天叢雲剣というチート武器が世界のポケモン化でギルガルドになった一体きりの特殊個体です。こちらのゴジノヤイバはただの古代青銅剣によるリージョンフォームなので他人の空似かつ下位互換となります。
位置づけ的には、ギルガルド系列は「かつて人が使っていた剣に太古の魂が宿りヒトツキが誕生した」という設定ですが、この剣が西洋の鉄剣ではなくユキコシの青銅剣になるとゴジノヤイバ系列になります。前作では六条母が「国体護持の刃」から命名していましたが、今作では「古墳などを護持しているかのようにして出土・棲息していることが多い」ことから命名されています。
シャドースチールのBREAKワザは七星奪魂腿にそっくりなものです。ただし威力は若干劣ります(影による遠隔パンチでダメージを与える仕様が、空間が金色の光で満たされて影が薄まるBREAKワザの仕様とかみ合っていないため)。にもかかわらずなんとかできてしまうのは、幻のポケモンの別格たる証左です。