お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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前回までの戦況

 ラスト団に圧倒されて城から落ち延びたハル姫は、筆頭家老ツグミツの裏切りによって襲われ、切り札のメガクチートで渡り合う。そのさなか、恐怖と痛みで震えていたクリムガン(ヌシの子)に蒼玻が通話越しに発破をかけ、ツグミツは敗北する。

 一方そのころ城では、アマモアイランドから攻め上ってきたホープ団ウキクサが、城を占拠するラスト団コンフリーと戦い始める。メガラグラージ対メガアブソルはコンフリーのメガアブソルに軍配が上がったが直後にウキクサのオムスターBREAKがメガアブソルを瞬殺した。

 敗残兵をかき集め城へ反攻するハル姫は、げんきのかたまりやきずぐすりを持ってきたフロックス姉妹率いる救援部隊と合流、ウキクサVSコンフリーが行われている山城山頂へたどり着く。

 ちょうどそこでは、コンフリーが、オムスターBREAKを倒すためフラージェスを強化していた。BREAK進化のように金色の身体でありながらも、ドス黒い粒子を撒き散らす、矛盾と限界を超えた状態、フラージェス_BROKENに、カグヤが立ち向かう。そして蒼玻とハルもまた、ウキクサへと戦いを挑むのだった...


#21 ナノハナの変(急) 天攻の山城

ー*-

 

 コンフリーは、シニカルでニヒルな笑みをたたえ、カグヤに向き合った。

 

 「BROKEN進化個体に対して1人で立ち向かおうなど、俺も舐められたものだね。

 

 フラージェス、ムーンフォース_BROKEN」

 

 ミルク色の光球が金色の粒子をまとってフラージェスの頭上に形成される…が、次第に金色の粒子がドス黒く変色し、月の力を月蝕させていく。

 

 「ヒヲマトウハネ、まもる」

 

 カグヤの前へとふわふわと飛んできた太陽の虫が緑色のバリアを張るーが、黒い粒子を撒き散らしながら光球がバリアに衝突した瞬間、圧倒的なパワーは数ミリ秒でバリアを破砕し、ヒヲマトウハネを呑み込んだ。

 

 ボロボロにされたヒヲマトウハネが、ゆっくりと墜ちていく。

 

 「…フルスペック(殺意マシマシ)の上に火力はバケモノ、反転暴走と違って人の指示を聞く…ちょーっとゲームチェンジャー過ぎるんじゃないのかな…?

 

 でもタイプはチェンジできてないはず。蹂躙して、マハリハグルマ!」

 

 ボールから飛び出した瞬間、歯車の噛み合わないギギギアルから、幾筋もの空間のヒビが入る。次元を割くその亀裂が、フラージェス_BROKENが撃ちだすなんらかのエネルギー弾を空間の断絶によって阻んだ。

 

 「ふむ、ふむ、それが壊れた歯車(マハリハグルマ)

 

 いい!いい!実にいい!上の上だ!

 

 フラージェス_BROKEN、接近しろ。」

 

 不審者にしか許されないだろうオーバーリアクションを取ったかと思えば賢者タイムになるコンフリーにカグヤはドン引きした。

 

 「マハリハグルマ、懐からラスターカノン!」

 

 不協和音とともに、世界とつながる歯車が、花畑の女王の真下へと滑り込む。

 

 銀色の閃光がヒビの中に吸い込まれる。

 

 フラージェス_BROKENが、無造作にマハリハグルマへ腕を振り下ろす。

 

 マハリハグルマから伸びるヒビが、フラージェス_BROKENの背後へと分岐し伸びていく。

 

 ヒビに閃光がまたたこうとしたまさにその時、フラージェス_BROKENの腕がマハリハグルマのメインギアに触れるすんでのところで空間のヒビによって受け止められ…金に光る体全体にまとうドス黒い粒子が、ヒビの中へと落下し、あるいはヒビとヒビの間をすり抜けてマハリハグルマの鋼の身体に触れた。

 

 ーガチャ、ギガ、ガガガガガガガガガガッ

 

 マハリハグルマが回転とともに立てる不協和音が、耳をつんざくような悲鳴じみたものに変わり、そして際限なく高くなっていく。

 

 モスキート音と化したそれに蒼玻、カグヤ、ハルが少しだけ耳をふさいだが、それもつかの間、音は人類の可聴域を超えてフェードアウトし、そして。

 

 -ギゴガシャーンッッッ!

 

 カグヤの脊髄を、脳天を、悪寒、怖気、生理的恐怖が駆け巡る。

 

 (い、今の”声”は、あのヒビの、向こうから...?)「戻って、マハリハグルマ!」(あのヒビはただの空間の切れ目、時空の存在しないスペース、枝分かれする選択的なブラックホール兼ホワイトホール…それに過ぎないはずなのに...!?)

 

ー*-

 

 「…いや、今、『亀裂』の中から、声、しましたわよね...?」

 

 「マハリハグルマなんぞしょせんはうっかり空間を挟みこんでうまく回れなくなったギギギアル、そう証明されとる。ユキコシのギギギアルはみんなマハリハグルマじゃがあんな現象記録に残っとらんのう...」

 

 「よそ見してる場合か?オムスター、もう一度クチートへだいちのちから。」

 

 地面が震え、地中から不可視の波動がメガクチートを襲う。たまらずメガクチートは膝をついた。

 

 「ちっ、そちらがその気ならこちらもやり返すまでですわ。ブロスター、準備はよろしくって?」

 

 ブロスターBREAKの小さい左腕から伸びる赤いターゲッティングビームは、とっくにオムスターをとらえ済みだ。そして蒼玻は、懐から正12面体の結晶を取り出した...それも3つ。

 

 「おいおいそいつァ反則だぜ?」

 

 「あいにく悪党相手に卑怯もラッキョウもなにもありませんわよ。」

 

 ”ヌレバおみやのカケラ”それがもたらすBREAKワザは「サンドスローイング」。イーブイとランプラー、ブロスターBREAKの腕の先に金色の粒子がまとわりつき、そして、オムスターBREAKの足元に砂煙が舞い上がる。

 

 「すいすいを持ちあまごいとからやぶり使用済みのオムスターBREAKを、融通の利かないBREAKワザで仕留められるとでも?」

 

 金色の身体をテカテカにぬめらせ、オムスターBREAKは地面をぬるぬると高速で這いまわる…が、その身体の周りに舞い上がる砂煙は徐々にその視界を閉ざしていった。

 

 「だから必中(ロックオン済み)にしたのですわ。」

 

 1本の見上げるほどの砂柱が、ナノハナタウン最高峰の山頂に立ち上がり、オムスターBREAKを彼自ら生み出した雨雲の中へと突き飛ばした。そしてその頂点で、さらに2本の砂柱が立ち上がり、オムスターを雨雲の上へと突き上げる。

 

 「やるのうそなた」「感心してる場合じゃございませんわよ。あれデバフとしては優秀ですが」「ダメージは見掛け倒しみてえだなァ!オムスター、上から『しおみず』撃ち下ろせェ!」

 

 空中から、わずかに泥水となって、金の輝きをまとった水流が地面を掃射する。ランプラーが撃ち落とされ、すでにかなりダメージを受けていたメガクチートが倒れ伏してメガシンカが解除される。ブロスターBREAKがアクアジェットで逃げ回る。

 

 「『あぶないしょくしゅ』で引き寄せろ。」

 

 逃げ惑っていたブロスターBREAKの金色の身体を、ろくろ首か何かのように不気味に伸びたその長い触手が捕らえ、締め上げる。そして、砂柱の崩壊とともに落下しながら、オムスターBREAKはブロスターBREAKを口元へと引き寄せていく。

 

 「甲殻なんぞ『かみくだ』いてしまえェ!」

 

 殺意。

 

 オムスターBREAKの十字の口が目いっぱい開かれ、ブロスターBREAKへと迫っていく。

 

 金色の身体を必死にもがかせるブロスターBREAK、だが、逃げられない。

 

 「…2匹とも、少々、痛くなりますわよ。」

 

 それでも令嬢は、不敵な笑みを崩さず、そして。

 

 袖口から、単三乾電池が、まろびでた。

 

 「そなた、ワザでもなんでもない電池では、いくらでんきが弱点でも...」

 

 電流が、しおみず(電解液)でしたたかに濡れた、イーブイの身体、その体毛を逆立てさせる。

 

 「かみなりッ!」

 

 鋭い牙がブロスターBREAKの金色の身体に突き立とうとしたまさにその瞬間、サンダースが、吠えた。

 

 オムスターBREAKの身体だけを濡らし続ける灰色の雨雲が雷鳴をとどろかせ、ビシャン!電光が大地へと何本も駆け落ちる。

 

 「塩気で濡れた手で電気に触らない、これ、鉄則でしてよ。」

 

 感電してぴくぴく震えるオムスターとブロスターを見て、ブロスターをボールに戻しながら蒼玻は告げた。

 

ー*-

 

 グレイシアが、額の氷を砕け散らせ、ボールへ戻っていく。

 

 すでにヒヲマトウハネとファイアローBREAKは墜ち、マハリハグルマは使えず、そして今、おみや巡り旅立ち以来の相棒も倒れた。

 

 「…特殊状態が本領だから出番ないかと思ったんだけどね…ビビヨン、がむしゃら。」

 

 ボールから出されるや否や、青と白の模様を持つ蝶は大げさにばたばたと羽ばたきながら突撃していく。

 

 フラージェス_BROKENがまたもやドス黒い粒子を振りまきながら無慈悲に腕を振るい、それだけでビビヨンはかっ飛んでいき当然のことながら戦闘不能になる…が、役目は充分に果たしていた。フラージェス_BROKENがカクンと膝をつく。

 

 「…貧弱なビビヨン並みにまで体力を持っていくか。けれどキミほどのトレーナーならフラージェスBREAKの追加特性は知っているんだろ?

 

 消えてないよ。限界を超えてもね。」

 

 (「フラワーブリーズ」は状態異常にならないだけじゃなく、体力を徐々に回復させる特性…!長引かせればビビヨンの犠牲が無駄になっちゃう!)

 

 「この子を出すと、いつも苦し紛れだと思われるんだよね...ウールー!」

 

 ころんっと、もふもふの毛玉がボールを飛び出した。

 

 「ムーンフォース_BROKEN」「ガードスワップ」

 

 ウールーの身体に一瞬だけ黒い粒子がまとわりつくが、またたくまに雲散霧消するーまるで「お前にはこの力は受け止め切れない」と言わんばかりに。

 

 (BROKEN進化…あれだけ豪語するだけのことはあるよね...それでもフラージェスBREAKぶんくらいには防御力を向上させられたはず!)

 

 月蝕した月の力(ムーンフォース)が、ウールーを呑み込む。

 

 チリチリと羽毛を黒く焦げさせながら、しかしウールーはカグヤの予想通り、耐えて見せた。

 

 「今のフラージェス、あなたの防御力は普通のフラージェス、体力はビビヨンのそれ。

 

 チェックメイトだよ。すてみタックル!」

 

 「吹き飛ばせ、はなふぶき_BROKEN」

 

 花びらとドス黒い粒子でできた汚い暴風が、ウールーを襲う。そのただなかを、ウールーはフラージェス_BROKENの目の前まで突進し、そしてノーマルタイプ屈指の威力で突き飛ばした。

 

 ウールーがふらりと倒れる。フラージェス_BROKENがふらつく。

 

 「勝負あったかね…いや...

 

 …もう一度はなふぶきっ!」

 

 「遅いよっ!きしかいせいっ!」

 

 毛玉が、爆発的にエネルギーを噴き出す。

 

 フラージェス_BROKENは頭上に花びらを舞わせ始めていたが、間に合わず吹き飛ばされる。

 

 今度こそウールーがついに力尽きる。

 

 「…やるね…

 

 …最初に配られる保温用のポケモンというだけではないとは思っていたが…『すてみタックル』で倒しきれなくても咄嗟に『こらえる』で耐えて『きしかいせい』...かな?もしや、もともとそういう打ち合わせ、とか?」

 

 「…全部バレるもんだね…」

 

 「効率のいい戦術ではあるね。もっとも...

 

 ウールーを使う事自体の期待値が低い、がね。

 

 金色の粒子が舞い上がる。

 

 -むくり。

 

 粒子が色を失い、そしてドス黒い漆黒に染め上がる。

 

 「ムーンフォース_BROKEN」

 

 月蝕した月光が、グングンと大きくなる。

 

 「もう用済みだね。さようなら。」

 

 もはやカグヤに、打つ手はないー

 

 「クチート、てっていこうせんで迎え撃つんじゃっ!」

 

 ー極大の月蝕へと、残りの体力すべてを犠牲にしたメガクチートの全力がぶち込まれた。

 

 黒い粒子がはじけ飛び、ミルク色の光球が大爆発とともに四散する。

 

 「…ウキクサは...逃げたか。さすがに連戦は効率が悪いが…

 

 もうそのイーブイしかいないのかな?」

 

 「そう、見えますかしら?」

 

 そして、蒼玻は、ボールを投げた。

 

ー*-

 

 「御子様が、そなたと直に会ってみたい、そう仰せになっておる。」

 

 地面が揺れる。

 

 「クリムガン...」

 

 まだ子供であるにも関わらず、見上げるほどの高さを感じる。ぬしポケモンの子は伊達ではないらしい。

 

 クリムガンはそっと頭を下げ、蒼玻の目を覗き込んだ。そして、不思議そうに、クイと首を傾ける。

 

 「…カグヤ、今だけ、いいかしら。」

 

 「…はぁ…いいよ。」

 

 「…それでは…

 

 …よく頑張ったな、クリムガン。」

 

 瞳をあわせたその瞬間、クリムガンはこくりと頷いた。

 

 「俺はさ、誰からも気にされなかったし、誰も気にしなかったんだ。誰も俺のために生きてはいなかったし、俺も誰かのために生きてはいなかった。

 

 『意味』が、なかったんだ。

 

 だから...

 

 …妹、イーブイ、そしてランプラーやブロスターのことを、とてもありがたいと思ってる。俺にこの世界で生きる意義を与えてくれるみんなに、俺のできることをしたい、応えたいって思ってる。」

 

 -そして、二度目の生を与えた、この世界も、ありがたいって素直に思える。だから、俺はこういう戦いだって、逃げたりしたくない。

 

 何の話なのか、そもそもどうして口調が全然変わっているのか、カグヤ以外はまったくわからず、脳内を疑問符で埋め尽くされる。けれどクリムガンだけはじっと蒼玻を見つめ、微動だにしない。

 

 「だから、まあ...

 

 …みんなの想いに応えて強敵に立ち向かえたお前のこと、あー…なんて言うか…

 

 『すごい』って思ってるし『仲間になれそう』って思ってる。

 

 なあクリムガン...

 

 わたくしといっしょに旅をしませんこと?」

 

 カグヤもハルも、周りの兵士も、突然の爆弾発言にどよめいた。

 

 「もっと幸ある生を、そう願われた。ならば、広い世界を旅して目いっぱい人生を送るのも、みんなと世界にささやかな力を助太刀するのも、わたくしたちの」

 

 ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)

 

 「どんな悪と困難と苦しみが待ち受けているのかは、わかりませんわ。

 

 けれど、わたくしは、より実り多く、そして生きた意義と足跡をみんなに遺せる、そういう、新たな生を歩みたい。

 

 貴方も、わたくしたちと志を共に...わたくしたちの輪に、加わりませんかしら?」

 

 カグヤが「重っ...」とつぶやいた。

 

ー*-

 

 「ほのおのパンチッ!」

 

 クリムガンが、真上から炎の拳を打ち下ろした。

 

 フラージェス_BROKENがギリギリのところでダンスステップのような回避を見せるが、クリムガンは左右の腕を交互に横薙ぎに払う怒涛のラッシュでフラージェス_BROKENの反撃を許さない。

 

 「御子様、『ちょうはつ』じゃ!ミストフィールドを張らせるでない!」

 

 ハルの横やりにクリムガンが応え、天空の山城に咆哮が響く。ただそれだけで、ドラゴン・あくタイプのワザを完封する「ミストフィールド_BROKEN」は封じられた。

 

 「カグヤが与えたデバフもダメージも、ヌシさまの子であることも、無意味になんかさせませんわよっ!」

 

 「ムーンフォース_BROKEN!ドラゴンタイプなんぞフィールドを使わなくても倒してしまえ!」

 

 「イーブイ、でんこうせっかで妨害ですわ!クリムガン、そのまま殴り続けてっ!」

 

 電光とともにサンダースがフラージェス_BROKENの身体に体当たりを繰り返し、その身体をよろめかせる。そしてクリムガンは左右から拳を振るい、フラージェス_BROKENに距離を取らせない。それでも、ダンスステップのようにクリムガンの拳を回避しつつもぐらつくフラージェス_BROKENの頭上で、月蝕は大きくなり続ける。

 

 「発射!」「クリムガン、飛べっ!」

 

 「んなっ...」

 

 ドス黒い粒子をまとってミルク色のビームが奔るその上を、クリムガンが土煙とともに舞い上がる。

 

 「無理だと、そう思ってはいませんでしたかしら?」

 

 間合いに入って殴り合う、そのファイティングスタイルが、相手が飛ぶ、遠距離ファイトをする、その発想を無意識に薄くする。

 

 「人もポケモンも、飛んでいなくても、飛べるものですわよっ!

 

 打ち下ろしなさい、はかいこうせんッ!」

 

 閃光とともに、絶大なエネルギーが真上から降り注ぐ。それでも...

 

 …ややえぐれた地面の上で、フラージェス_BROKENは、まだ立っていた。

 

 「体力はちょっと回復で上積みしたビビヨン、防御力はウールー...それでも耐えるって言うの…?」

 

 フラージェス_BROKENが、目の前を睨む...そこに、クリムガンはいなかった。

 

 イーブイを、腕に抱きこみ、蒼玻はその毛並みを優しく、撫でていた。

 

 -コンフリーが、指示に、ためらいを見せる。

 

 「カグヤが空振りでしたので、わたくしから、言い直させていただきますわ。

 

 チェックメイト、ですわよ。」

 

 「はなふぶき_BROKENだ。アオバごと吹き飛ばしてしまえっ!」

 

 何か迷いを捨てるような、苦しそうなそぶりを見せ、コンフリーが言う中...

 

 ...蒼玻の腕の中で、イーブイが光に包まれる(はつげんちょうせいする)

 

 「イーブイ、ハイパーボイスっ!」

 

 妖精の音波が、フェアリースキンで増幅され、花びら舞う暴風の中を響き渡る。

 

 蒼玻が着物の袖で顔を隠した直後、無数の花びらが彼女の白い服を切り裂き、吹き飛ばす。

 

 爆音がフラージェス_BROKENの鼓膜を張り叩き、植物性の身体をビリビリ震わせる。

 

 「たかが進化したてのニンフィアごときで...」「あら、これで終わりでは、ありませんわよ。」

 

 気絶したイーブイを、身体のあちこちから血を流しながら蒼玻は抱きしめ...そして...笑った。

 

 衝撃が、フラージェス_BROKENを、真上から殴りつけた。

 

 ーぬしクリムガンの特性「りゅうおうのたかぶり」。強者が鍛え続ける山城に600年座すぬしは、相手に強い力(BREAKオーラ)が集まるほど攻撃力を増す...確かに受け継がれた血と志は、限界を超えた強さを誇る人造のハリボテ強者に、その真価を示した。

 

 クレーター。

 

 土煙の中に、ドラゴンが勢いよく落下し、もはやメッキの消えた花園の女王を踏みつける。

 

 「あえてダメージを受けて、それを返す...

 

 言い直す(リベンジ)と、言ったはずですわよ?」

 

 「クソが、下の下ェ!」

 

 敗北を見せつけられたコンフリーは、叫ぶなり、モンスターボールを投げ捨てた。

 

 「お姉ちゃん、リベンジの威力って、フレンドリーファイアじゃ上がらないよ?」

 

 「…えっ、そうですの...?

 

 ま、まあ、倒せたから、いいではありませんの。」

 

ー*-

 

 「…俺としたことが、非効率的な蛇足に熱くなってしまったようだ。

 

 必要なデータは得られた。それでは、おいとまさせてもらうよ。」

 

 踵を返し、背中を向け、コンフリーはしごく平坦な声で告げた。

 

 「待ちなさい。逃がすとでも、思っているのかしら?」

 

 一歩、蒼玻が迫る。

 

 「逃げられる確率を確保しておかない理由があるとでも思っているのかな?」

 

 一歩、コンフリーが歩き...その足元から、煙が噴き出した。

 

 「さらばだ。次に会う時まで、元気にしていろよ?」

 

 液滴(ヨクアタラーヌ)が一滴また一滴と地面にしみこみ、煙幕で視界を奪っていった。

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