お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
※本話と次話は、ゲストキャラクターが原作キャラに独断と偏見をぶつける描写があります。これはキャラ付けで、筆者の考えとは異なるものであること、あくまで「キャラどうしの立場の違い」によって生じている発言であることを記しておきます。
#24 コンジキおみやの試練(起) 博士の異常な忌避、転生者の異常な仮説
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コンジキシティ、コンジキ大学。
穏やかな空気流れるキャンパスの一角、バトルスタジアムの真横に作られた無骨な鉄筋コンクリートビルの中で、本の山にうずもれて、その女性は悠々と椅子の背もたれを傾かせていた。
「私はファガレス・カクミガシ。カクミガシ博士と呼んでくれたまえ。」
清楚怜悧な大人の女性ー強いて言うなら、スーツが黒でロングヘア―を黒くストレートに降ろしたアララギ博士、そんな印象を与える彼女は、メガネを押さえ、ややクセのある挨拶を発した。
「この地方のポケモン博士...ということでよろしいかしら?」
「ポケモン博士!...ポケモン博士!
その呼び方も...嫌いではないがね。しかし私のことはこう呼びたまえ。
ユキコシ本草学博士、カクミガシであるっ!」
(まーたクセ強女来たよ…)
鉄道少女ササユリ、一人称「妾」姫ハル・ブラシカと来てコイツである。そもそもこの世界で蒼玻が最初に出会った女性からして、ヤンデレ気味妹カグヤ・フロックスだ。ー一瞬でも「やっと頼りになる大人の女性だ...」と思った蒼玻が間違っていたのかもしれない。
「ユキコシ本草学...というのは、ポケモン学とはどう異なるのかしら?ポケモンを配り、研究し、啓蒙する...オーキド博士などと同じように」「オーキド博士...ユキナリ・オーキド...!んんっ、私の前でみだりにその名を呼ばないでくれたまえ...」
-どうやら、クセが強いだけではなく事情もめんどくさそうだった。
「それで、キミの学説について、ディスカッションしようじゃないか。アオバくん?」
(おまけに話聞かないタイプかよ…)
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コンジキシティ。おおむね6つの地域と1つの島にわかれるユキコシ地方で、コンジキ地域などと呼ばれる地域の中核都市であり、そしてユキコシ地方第二の都市である。あまりにも細長いユキコシに於いて、かなり北の端に位置していて道中に天険を挟むワカナエシティよりも、コンジキシティをユキコシシティの中枢都市と考える人も多い(実際、文化的にはそうだ)。
文化都市コンジキ...その立場は、
…だから、信仰や崇拝の対象であるおみやが、都市の発展とともに文化の中心地へ移っていったのも無理はないだろう。この地のよりしろさまは人とともに生きるポケモンでもあったのだし…定期市から宿場へ、宿場から鉄道駅へ、鉄道駅からポケモンセンターへ、そして、今は文化と人流が集まる地、ユキコシ地方の最高学府、コンジキ大学にあるというわけだ。
そういうわけなのでコンジキおみやの試練は一風変わっていた。なにしろ受付は大学事務室であり、学生窓口の横に「おみや巡りトレーナー窓口」があって、窓口を訪れれば「これがカクミガシ博士からの課題です」とプリントを渡されるのである。
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コンジキおみや よりしろさま挑戦権獲得のための試練
以下の『おみや』『よりしろさま』にまつわる設問に対し、考えられるあなたなりの答えを記してください。なお、回答は学問的正答ではなく回答内の論理的整合性と発想力により採点されます。
問1
ユキコシ地方が「壊れている」と呼ばれる理由は、いわゆる「フルスペック状態」と呼称される、”エネルギー的に通常のワザと同様でありながらも威力がポケモンバトルの範疇に収まらず人やポケモンを容易に致死的状況にする現象”にある。
伝承学的見地からは、『闇より顕れし伝説のポケモン』が2000年前にユキコシ地方を滅ぼしたのちに再創造した際、かのポケモンが用いた力が異常なものであったために、ポケモンの枷となるべき何らかの要因が欠落してしまったことがその原因とされている。しかし現在、ユキコシ地方にのみ欠落するなんらかの要因は発見されていない。
伝承学的見地を支持する場合、ユキコシ地方に欠落していると思われるものが何であるか、答えよ。
伝承学的見地を支持しない場合、ユキコシ地方に特異的なこの事象の原因を提示する仮説を答えよ。
問2
上記問1の状態に対して、知識、感情、意思をつかさどる神様が憂慮し授けた「祝福」により、強い力と心は世代を超えて受け継がれるようになったとされている。
科学的には、ユキコシ地方にはBREAKフィールドと名付けられた力場が存在し、ポケモンの力がこの力場に蓄積されてオーラとなり、ポケモンが心で強く望んだ時に周囲の力場のオーラが収束して力を一時的に貸し与えるものだと説明されているが、詳細な原理は未だ不明である。
一方で近年、反転暴走の頻発など、BREAKフィールドのオーラの状態に起因すると見られる異常が発生しており、BREAKオーラ、「祝福」の実態解明が急務とされている。
BREAKフィールドの本質とはなんであるか?BREAKフィールドがあることにより何がもたらされ、無くなれば何が失われるか?あなたの考えを簡潔に述べよ。
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「課題の採点に普通は私は関わらないんだよ。この課題はカントーリーグジムで言うところのジムトレーナーバトルだからね、採点はジムリーダーたる私ではなくて、学生がやっているんだ。」
意地の悪い出題だから、普通は『頑張って頭をひねって的外れなことを書いてきたな』と学生の笑いものになって終わり、再試験の代わりに学生とのバトルで挑戦権を得る…のだが、珍しく学生が、自分たちの手には負えない、と持ってきたものでね。驚いてしまったよアオバくん。
『本来この世界において、ポケモンバトルはコンピューターゲームのようなもの、各種類・各個体・各ワザごとに決まっている攻撃力と防御力と体力によって勝敗が決まり、ゲームであるから人やポケモンが対戦によってロストすることはない。
ユキコシ地方ではこのゲームチックな部分が破壊されてしまっているため、人やポケモンがバトルの際にワザが起こす物理現象で物理法則に従って死ぬことは当然であるが、3体の神様が生み出した力場が善なるポケモンのバトルにおいてのゲームチックエミュレートを可能にしている』
アオバくん、キミは、この世界がゲームのごときもの、と考えているのかい?」
「…いいえ。」
(もし転生したばかりなら、はいって答えていたかもしれない。
他の地方ではポケモンバトルで人もポケモンも死なない、けれどユキコシでのみはポケモンが心得ないと死ぬ、これってつまり、「他の地方では対戦を楽しめるゲームとしてのポケモン世界が成立しているけど、ユキコシ地方ではポケモンバトルが生々しく危険なものとなりゲームの世界が破綻している」って言える。
…だけど、そうじゃないんだと思う。俺たちは生きている、それも前世よりも意味ある生を。この世界がゲームの中だなんて思うには、今の俺には現実を生きている実感がありすぎる。)
「これは『法則』の話なのですわ。この世界を作っている法則の1つ目にあるのが物理法則だとするならば、2つ目に、御都合主義と申しましょうかファンタジーと申しましょうか、『ポケモンの法則』がこの世界に刺さっている、そう思うのですわ。」
「それが、あたかも、ワザを物理現象ではなく攻撃力数値とし、物理法則ではなく純粋な
そして、伝承に伝わる破壊神は、世界の構成法則のうち物理法則の方は直したが、『ポケモンの法則』のほうは直し損ね、代わりにエミュレーターとしてさしはさまれたのがBREAK力場である、と。
ふむふむ。
…ユキコシ地方の欠落が概念的なものであるという仮説は、前々から存在したんだ。ついでに言うと、ポケモンバトルを攻撃力と防御力の数値に落とし込む数理モデルも提唱されてはいる。だから...うん。数理モデルのことを本来世界を構築しているべき法則のひとつでありユキコシ地方の欠損だと定義したところに、キミの新規性があるわけだね。
キミの考えはとても興味深い。その新規性は思いつけそうで思いつけないものだからだ...キミ、何を知っているんだい?」
「…どういう、意味かしら?」
「欠落に物質でもポケモンでもなく、『法則』を提示する。ポケモンバトルを単なる数字として解釈する、そのすべてが、普通に生きていたら想像の埒外になること、そうだろう?」
「…そうですの?」
「例えばキミが、ある日起きたら重力を感じなくなっていたとしよう。たいていの人なら、キミの感覚がおかしくなったか、キミが宇宙みたいな無重力空間にいると言うだろうに、実は重力という法則が存在しない世界にいるんだ、なんて言うのは、実際にそのような世界を知っている人間くらいじゃないか?
私はキミが、ポケモンの法則、ひいてはポケモンそのものが存在しない異世界からやってきたと述べても、信じる用意があるよ。」
実際にヒスイ地方にはそれとおぼしき記録があるしね、カクミガシは紅茶をすすった。
「何のことやらわかりかねますわ。ただ、
そう...わたくしから申し上げるならば、視点を増やすことは大事だ、ということでしょうか?」
-もちろん視点を増やすとは、文字通り視る人を魂的に増やすことも含めるー
「例えば先ほど忌避してらしたオーキド博士など。」
「…キミもそれを言うかね…」
「私も前から気になってたんだよね。
カクミガシ博士、貴女は...コンジキ大学は、ユキコシ科学界は、どうして、『ポケモン学』と融和する気がないの?ずっと、ユキコシに閉じこもっているの?」
「…若いとは、やんごとないとは、恐ろしいことだ。どうしてそんなことをぶしつけに聞けるのかね?
いいだろう、よもや、タダで答えをもらえるとは思ってはいまい?
たった一体だ。たった一体で、キミたちを倒してみせよう。バトルコートにきたまえ。」
-もし万が一にもそうならなければ質問にも答えるし頼みだって聞いてやろう、言外に、博士は匂わせる。
「…いいの?前回のおみや巡りの時の私よりも、成長してるんだよ?
って言いたいんだけど、せっかくだから、お姉ちゃん、相手してもらって。本当は面接試験みたいなもので倒せなくても志を見せればよりしろさまに会えるんだけど、私たちのプライドとポケモン研究の未来と野次馬魂がかかってるよ!」
「そんなものを賭けてわたくしに勝利を求めないでくださるかしら!?
…まあ、やれるだけやってみると致しますわ。」
参加賞はよりしろさまへの謁見権、そして勝利報酬に求めるはカクミガシの回答...
ー転生者蒼玻が コンジキおみやぐうしカクミガシ博士に しょうぶをいどんできた!
「行け、アブソル!」
カクミガシはオーク(樫)と同じブナ科の樹、20世紀にボルネオ・雲南・コロンビアの山奥で発見された原始的な樹木です。主流であるオーキド系ポケモン学とは別系統の伝統的なユキコシ本草学の研究者の名として採用しました。
ユキコシ地方では古くからポケモン研究が行われており、ヒスイ地方では失伝したタイプ分類法を使ってポケモンを分類し命名を行っていました(「キンノコブシ」「サジンノリュウ」など、他の地方にいない特殊個体の名前はその名残)。「あれっフェアリータイプいないことになってんじゃん」とか思ってたらしいです。
カクミガシ博士の風貌は木原唯一と木山春生を足して2で割る感じ。