お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
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「行きますわよ、ブロスター...BREAK進化!」
蒼玻はボールを投げながら叫んだ。
(長くて深い毛、鋭く長くしっかりした爪...アブソルだって詳しくないけど、ユキコシのアブソルなんて前世じゃ聞いたこともない。気を引き締めないと…)
どこからか集まってきて観客席に群がる学生たちが、はやし立てる。
「BREAK進化とメガシンカの対決だ、アツいぞこれは!」「ブロスターのBREAK進化って文献少ないよな!誰かカメラ回せ!」「挑戦者が心折れるかどうかで賭けようぜ」
(...俺の大学時代が懐かしくなるくらい好き勝手してるな…)
転生者だから精神年齢が自分の見かけより高い…などとは蒼玻は思ってこなかった。なにせカグヤもしっかりしているほうだし、それにアテは老人で溌剌剽軽、カンゾウは壮年でしっかりとサラリーマン、ハル姫とササユリ駅長は20歳未満なのに責任を受け継いで立ち向かう姿を見せた。人は年齢によらないのである。…それにしたって勝手なことを言う大学生先輩たちではあった。
「さてと...
ヤドランはガラルではメガシンカしないとされている。その知見からすると、リージョンフォームのメガシンカというのは驚かれることも多いんだがね…
さあ、ユキコシアブソル...反例を積み重ねようか?」
研究ノートを左手で掲げ開いたその時、挟み込まれたボールペンの頭部からキーストーンの輝きが放たれた。
真っ黒な大きな翼、額から上下に伸びる毛はまるで白黒の太極図。鋭い漆黒の爪がフィールドに突き刺さる。
「自由を与えるわけにはいきませんわね…」
ナノハナ鉄道で見たユキコシアブソルは、雪山に適応して爪が長い鍵爪に変化し、断崖絶壁であろうとも跳び回る行動能力を持っている。ましてこのメガアブソルは翼らしきものを持っている。縦横無尽に動き回られれば手が付けられなくなることうけあいだ。
(一手ずつ追い詰めつつ様子を見るか…)
「ブロスター、ロックオン。」
赤いターゲッティングビームが、ブロスターBREAKの小さな左腕からメガアブソルへと延びていく。だがメガアブソルは避けるそぶりを見せなかった。
「短期決戦か。実にinterestingだね。では私はこうしよう。
アブソル、ほろびのうた。」
「…は?」
聞くに堪えない、慟哭とも怨嗟ともつかない響きが、鼓膜を抜けて脳を揺らす。
(ほろびのうたは確か数分でお互いが倒れるワザだったはず…!ブロスターBREAKに交代させてロックオンを消すつもりか…?
…いや、もしかして。)
「りゅうのはどうッ!」
強化された銀色の閃光が、顎をなしてアブソルを呑み込もうとする。アブソルは翼をはためかせたかと思うと跳び上がり、原種メガアブソルよりも発達した黒翼で宙を駆けるようにして飛んで、りゅうのはどうから逃れようとする…が、一度ロックオンされたポケモンへのワザは必中になるため、波導は交わされることなくグイグイ追随していく。
迫る、光線。
「さあアブソル、実に逆境だね。
禍転じて福と成そうか。」
メガアブソルが、己に迫るりゅうのはどうに向き直る。
パタン!実験ノートを閉じる音が響く。
「ディザスターウイング」
刹那、メガアブソルの額、白黒の太極図のような毛が、”何か”を吸った。
赤いビームがメガアブソルの身体から額へと照準を移動していく。
そして、黒い翼が、グンと一回り、二回り、まるで何かを包み込むかのように拡がる。
ーその厄禍は迂転するー
(なんだ、今の、途方もない、気配...!?)
ビームが消える。
「今…の…は」
蒼玻は呆然と、ただ茫然と、見ていることしかできなかった。すべては一瞬の間に、まるで幻であったかのように起き...そしてすべてが終わった時にはブロスターが倒れていたのだから。
「『ディザスターウイング』。ジョウトの貴人たちが何百年経ってもたどり着けなかった、メガアブソルの真骨頂だよ。
先行研究によれば、アブソルは災厄を予知する能力があるという…もし彼らが絆を結び、災厄から人々を守りたいと思えばどうなるかな?」
ユキコシは、禍いから逃げ続けるにはあまりにも危険な土地だ。豪雪、雪崩、鉄砲水、そしてポケモン。身ひとつで逃げるならともかく、絆を結んだ大切な人間を守るためには、ただ訪れる災厄を告げるだけでは力不足...だから彼らは、新たな力を得たのだ。
「…追い詰めれば追い詰めるほど跳ね返ってくる、ということかしら。
ならば正面から打ち合うしかありませんわね。クリムガン!」
(しょせんは伝説でも幻でもないポケモン、ササユリも攻略できたと言っていた...追い詰められることがあのワザのトリガーにせよ、ダメージを受けるほど無敵になるような理不尽な性能はしていないはず!)
「…順当にがっぷり4つに組んで戦い、体力を削れば、アブソルの能力は発動しない…そう考えたのかな?
仮説を検証してみようか。ディザスターウイング...」
再び、陰陽図が何かを捻じ曲げる。
地上に着陸しクリムガンと向き合っていたメガアブソル、その黒い翼が禍々しく拡がる。
(んな、「ロックオン」はもう消えて…まさかっ!?)
ーその厄禍は迂転するー
「…とするには実験の前提が足りなかったようだね!」
ほろびのうたー差し迫った滅びというこの上ない災厄が捻じ曲げられ、黒翼の幻影となってクリムガンを両側から打ち据えようとする。
「飛びなさいなっ、クリムガン!」
そのがっしりした脚が強く地面を蹴り上げ、ゴツゴツとした龍翼が幻影の黒翼を交わしクリムガンを空へと持ち上げる。
「ふむ…確かに奥の手になるだろうな。だが私は本草博士だよ?クリムガンが実は飛べることくらい知っていると思わないのかな?」
「…これしきの小手先が奥の手だと、本当にそう思われますのかしら?でしたらずいぶんと...
…舐められた話ですわね?
撃ち下ろしなさいなっ!」
直上からはかいこうせんが降り下ろされる。
「ふぶきで身を隠せ。」
(なっ...見えない!?)
指示とともに、メガアブソルを中心に白い霧が現れ、瞬く間に白い吹雪となってバトルコートを覆っていった。寒さが苦手なドラゴンタイプであるクリムガンは徐々に吹雪から逃れて上昇していき、翼以外のほとんどが白いメガアブソルは吹雪に紛れて見えなくなっていく。
たっぷり十数秒撃ち下ろされたビームも、あてずっぽうに吹雪の中を掃射するばかりで手ごたえは見られなかった。
(この威力...もしや氷タイプを持ってるな…
それにしてもどこからくる...?)
「ふいうちだ。」
クリムガンを呑み込もうとする吹雪、その中のどこからメガアブソルが襲い掛かってくるのか…目を凝らしていたクリムガンを、斜め上、太陽をバックに、長く伸びた鋭い鍵爪が斬りつけた。
クリムガンの大きな体が空中から叩き落とされ、吹雪の中へと落下していく。
「今のうち、かな?みらいよちをしておこう。」
クリムガンの様子は猛吹雪に包まれいまだわからない。だが、蒼玻はあえて何ら指示を出さなかった。かといって、吹雪が止むのを待っているわけでもない。
予感があった。そろそろだという、予感が。
(クリムガンは充分時間を稼いでくれたはずだ。それにナノハナキャッスルのヌシの子は、そんな簡単に倒れはしない…!)
そして唐突に、不快な旋律が耳をつんざく。
(来た!ほろびのうたのリミットッ!)
「今かっ!?アブソル、回避しろっ!」
メガアブソルの全身の毛が逆立ち、額の太極図があたかも90度回転したかのようになる。
何が起きているのかまったく定かでないのに、”何か”を確かに回避した、それだけは誰もがはっきりと感じ取った。
「博士だからね。解説してあげようじゃないか。これこそがユキコシアブソルの特性『だいろっか」「この時を待ってましたわ!リベンジっ!」
ー真下から、握り締められた青い拳が、したたかにメガアブソルの腹を打ちぬいた。
何かを避けることに集中していたメガアブソルはとてもかわすことなど叶わず、空へと吹き飛んでいく。そうしてクリムガンはというと…それで力尽きたか、吹雪が染めた白銀のバトルコートへと落下していった。
「…無理を、させましたわね。
戻ってくださいなクリムガン。
…さて、氷タイプを持っているとなると話は変わってくるのではなくって?ランプラー!」
ー*-
やるねこのお嬢様...
「初手ほろびのうた」は試験なんだ。アブソルを理解しているか、ユキコシのアブソルを理解しているかという。
普通に考えれば「ほろびのうた」はいずれ相打ちになるワザだ。挑戦者のみ交代ありのルールでは挑戦者に有利で、待っていればアブソルは沈む…ように、ポケモントレーナーニワカなら思う。
けれど、天災に対する予知能力を持つアブソルの、それもヒトと生きるために災厄を予知するばかりか捻じ曲げることができるまでになったユキコシ変異種なら?
コンジキやサンゴジュ、ウスベニあたりの住民なら当たり前に知っているし、アブソルのことを信頼している。グンジョウポートやワカナエ、トキトビあたりだとギリギリ察するかどうか。そしてジョウトやカントーでは、かつてのように忌避する者こそ少ないが、信頼に至る人は今でもほとんどいない…まして自分のパートナーでもないアブソルを。
「よくわかったね。」
「…無策でほろびのうたを使ってむざむざ自滅するわけがありませんわ。」
「単純に、効果が出るまでに仕留めてやると言う示威行為だったかもしれないよ?あるいはリミットを切ることで焦らせるとか、後は定石的に、交代を強いるとかね。
キミ深窓の令嬢だろう?疑うことを覚えたまえ。」
…ゲームチック世界仮説といい、バトル中の反応のどこか初々しくワンテンポ遅れた感じと言い、ワザもタイプもうろ覚えな雰囲気と言い、どうもアオバ嬢には、ただフロックス長女の世間知らずというだけでは済まされないものがある。全体的に、危うい。この地方と同じで、何か大切な要因が欠けている…それこそ、ポケモンそのものが存在しない異世界からやってきたと述べても、一考に値するくらいに。
「あら?
わたくしの読みにまんまとハマって隙を突かれた方に言われたくはありませんわね。
2発目のディザスターウイングの時点で、ほろびのうたの無効化はできずにアブソルにとっての災厄ではあり続けるとわかった。1発目があったからには、ディザスターウイングとやらは迫る災厄を活用はできてもそれは無効化ではない…そうですわね?
『ほろびのうた』の真の意義は、迫る災厄を自ら用意しておくことでディザスターウィングの威力を高めること、そして自分で自分に災厄のタネをまくからにはその災厄を処理できる目途はたっている…合ってるかしら?それでもずいぶんと無法な戦術ですけれど。」
「…決してノーデメリットな無法じゃない。キミに言わせれば『ゲーム的にアンフェアすぎる』『チート』ってことになるのかな?」
アブソルの特性「だいろっかん」は、彼女が推察したとおり、決して便利な特性じゃない。みらいよちやほろびのうたのような「未来に於いて災厄をもたらすワザ」、ソーラビームのような「
「…きっと、その災厄から土壇場で逃れるには何らかの反動がさすがにある、おそらくそれは隙になる…正解だ。単位をあげたいね。キミ、ウチの研究室に来ないかい?」
「ありがたいお話ですが残念ながら。」
「…コホン。話を戻そうか。
キミの仮説の通りだ。特性『だいろっかん』はタイムラグがあるワザの到来を『災厄の予知と回避』でかわすが、予知が見えるのも回避するのも強制なんだよ。」
「てっきり、予知でわかりはするけれど、見えた『
「ああうん、それもある。全自動で発動して、未来が勝手に見えるや否や勝手に身体と脳が動いて、膨大なリソースを喰って災厄を回避、そういう特性だよ。」
...だから、発動したら最後、その災厄をかわしきったと判断するまで、全力でそれに力を注ぎ込むことになる。未熟なアブソルなら、相手が「みらいよち」を連発でもしてきたらハメられてしまうくらいに。
「…私の驚きはここなんだ。キミがアブソルの能力を、たぶんほとんど知らなかっただろう?その状態から推察して隙まで突いてきた。そして今は、ユキコシでも決して縁起の良くないランプラーを用いている。
研究者にとって先入観がないのは素晴らしいことだ。だがキミは研究者じゃあない。」
箱入りの令嬢だ...あまり観客がいる前では言えないけどね。あれ、さっき言った気もするな…まあいいか。
「…貴女がわたくしに思う疑問に関してはとても簡潔ですわ。わたくし、皆さんと知識体系が違いますの。」
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「わたくし、皆さんと知識体系が違いますの。
詳しくは語りはしませんが、少々とはいかないほどに複雑な事情があるのですわ。ですから…」
…これを言っていいのか、悩ましいな。失礼という意味でも、ハル姫に続き
「ポケモン学とも、貴女のユキコシ本草学?とも、まったく違う視点を持っている…ですからわたくしはそのポケモンの種類や謂れなどよりも絆を信じるのですわ。」
多少は壊れているこの地方でも、本来はゲームキャラであるポケモン、その世界であることは変わりがない。だったらアブソルは禍をもたらさないしヒトモシは必ずしもトレーナーを殺さない…ゲーム的に考えればむしろ有用な能力を持っているはずだ。
こんなのは思考チート、それはわかっている。ただ、この世界のすべてのポケモンにはポケモンとして愛され使われるバトルキャラとしての何らかの存在意義があるんだろう。
「『視点を増やすことは大事』、その言葉はそういう背景かい?まったくとんだ旅人だね…」
「きっと貴女は、カクミガシ博士は...ポケモン学の視点が気に入らないのですわね?それも、アブソルで人を試すくらいに。」
「…ポケモン図鑑のアブソルの記述、知っているかな?
おい観客の学生たち!答えてみたまえ!」
おお、大学教員だ...
「『アブソルが ひとまえに あらわれると かならず じしんや つなみなどの さいがいが おこったので わざわいポケモン という べつめいで よばれた。』だ!」
「『そらや だいちの へんかを びんかんに かんじ さいがいを さっちする のうりょくを もつ。100ねん いきる ちょうじゅの ポケモン。』です。」
「『めいしんが はびこる むかし わざわいを もたらすと いみきらわれ やまの おくへと おいやられた。』」
「『つばさのように さかだつ たいもうを はばたかせて あいてを いあつする オーラを ほとばしらせるのだ。』とか?」
「よし今答えられた奴は期末で5点加点!
…と、まあこういうわけだね。これは過渡期も過渡期にしか許されないだろう。だいたい謂れや別名は生物学じゃなくて民俗学だし、寿命100年だってちゃんと測っているか大いに怪しい。」
…これ、「私は反証データを持ってる」って言う顔だ。
「相手を威圧するオーラとやらも、厄除けの像が厄を遠ざけるために怒った顔をしているのと同じで、何も誰かを威圧したいわけじゃない。災害予知も、そんな超高性能気象衛星みたいな原理じゃない。
ポケモン学の土台であるポケモン図鑑からして、あちこちの俗説、生物学に民俗学に歴史学を類聚してるだけなんだよ。
こんなものは博物学でしかない。」
「…ごめんあそばせ。博物学とは、なにかしら?」
「…自然界に存在するものを収集し記録する学問だ。その到着点として分類がある。タイプ分類法...最近までフェアリーを忘れていたアレだ。
まだオーキド流は俗説を積み重ねただけでそれを整理し束ねる基礎体系を確立しきっていない。けれど、そこに無理やり、メガシンカやらダイマックスやらテラスタルやらの複雑系の解析をやっている。
泥沼の上にビルを建てるような体系なんだよ。」
コイツぼろっくそに言うな!?
「…メガシンカにしろZワザにしろ、大切で重要で急がれる、だから一歩一歩踏みしめている余裕がない、それだけではないかしら。」
「別にそういう事情で、雑学じみた知見を無体系に並べ立てるのならコンジキ大学が目くじらを立てたりはしないさ。
けれど、外のポケモン研究の歴史をずっと見てきたらどう思うかという話なんだよ。
例えばオーキド博士は若いころは優秀なトレーナーでね…要するに彼が盛り立てたポケモン学というのは、各地に集まるポケモンの
ポケモントレーナーという生き方の発展と注目、それとともに急速に、ポケモンの雑学を集めて参考になるものとして成型した、それがポケモン学だと、私たちは考えている。」
「…ポケモントレーナーのシステムが育ったから、彼らが求めるポケモン知識を集積してくれる学問が発達した、ということですのね。」
「だから私はラベン博士を尊敬しているんだ。彼はポケモントレーナーやリーグシステムのためではなく、厳しいヒスイの環境でポケモンに立ち向かいポケモンと生きるための知見を積み重ねタイプという体系を打ち立てたからね。
私たちユキコシ本草学もそうだった。時代と環境の要求に求められ…」
「はっきり言えばいいじゃありませんの。『お前らと違ってあそびで研究してるんじゃないんだぞ』と。」
「『ポケモンは 怖い 生き物だからです!』くらいにさせてくれないかね?
別に気に食わないとは言わないよ。若い学問が好奇心のままに無数の新知見を類聚して体系を少しずつ積み上げるのを気に食わないなんて言うのはただの老害だよ。私は行き遅れだが老害では…って誰が婚期終わったオバサンだ。
…でも、好奇心のまま雑学や応用技術をやたらめっぽうに広げた結果、アクロマやフジ博士みたいな研究者が現れて…その残党はこの地方に今も影を落としている。」
「ゴフク屋...」
「ポケモンの抑止、融和、活用...生きるために応用と実学のためのポケモン研究と体系作りをしてきた私たちからすれば、趣味のために周回遅れで俗説集めをし、ポケモンの危険性についての評価すら危うく、その割には好奇心のまま1分野で突出、挙句の果てには悪の科学者なんぞ生み出して迷惑をかける…
…好感を抱けというほうが無理な話ではないかな?」
そうか。
そうかそうか。
「貴女、矛盾してますわよ。」
ー*-
厳しいユキコシだからこそ、それこそ先人が文字通り血を流して知見を集め体系を打ち立てたユキコシ本草学。彼らにとって、いまさらポケモントレーナーの好奇心で始まりあまつさえ悪に暴走しすらするオーキド流ポケモン学は気に入らないー
「貴女、矛盾してますわよ。」
ーそんなこだわりを、蒼玻は、一言で斬り捨てた。
「だって好感は学問には関係ない...先入観や偏見を排するべきなのが研究者ですわ。」
「キミに何がわかる…と安易に言えそうにないね。キミ、前世は大卒かな?」
「…前世?なんのことかわかりませんわね。」
あくまでとぼけながら、蒼玻は舌鋒を緩めない。
「生きるために知見を集め体系化することからユキコシ本草学が始まった...ならば知識所有者の好感度でえり好みするのは理屈にあいませんわ?それとも今はもう死ぬことはないから知識のえり好みができると余裕ぶっているのかしら?」
カクミガシは無表情だが…観客の学生たちの顔が赤く染まる。
「結局それはいろいろと理由を付けて、実学ではなく趣味の研究だから、迷惑をかけられたから、そんな理由にすがって意地を張っているだけですわよ。」
「何を偉そうな!」「黙っていればド素人が!」
「本当はわかっているのでしょう!
でなければどうして、この地方は他の地方と同じ呼び名を用いているのかしら!?」
「…完敗かもしれないね。ああ、そうだ。
古称名をオーキド流命名に、グローバルスタンダードに転換させたのは私たちの学部だ。」
「博士!?」
学生たちが、立ち上がったり口を押えたり、明らかに動揺を見せた。
「ですわよね。サジンノリュウにキンノコブシ、古い名前が付けられていながらも、外にも存在するポケモンの多くはリージョンフォームですらアブソルにロコンですものね。」
「オーキドらが、私たちに転換の時を自覚させるほど優れた業績を上げているのも確かだよ。結局人の探求心を最も動かすのは好奇心、好きのパワーだからね。
それでも、私たちが簡単に彼らに頭を下げることはできない。葛藤しているから、名前を聞きたくないと言ったんだ。
けれどもういい加減目を背けられないね。学生諸君もわかっているはずだ。
だから、この分岐点で、キミとの勝敗に、ユキコシ本草学の未来を委ねようじゃないか。」
カクミガシ博士が、あらためてボールを握り締める。
蒼玻が天を仰ぐー「アスピリン欲しいですわ」-そして、告げた。
「ならば胸を借りるつもりで見せて差し上げますわ。好悪を抜きにしてでも視点を増やす意義があることを。視点を増やせば何ができるかを。
さあ、バトル再開の準備はよろしくって!?」
ーユキコシ本草学博士カクミガシが しょうぶをいどんできた!
アブソル(ユキコシのすがた) あく/こおり
ユキコシ地方のアブソル。山岳地帯に生息しているため、体毛が深く、爪が長くなり、また天候の急変や禍いの感知能力が発達している。古くから珍重され、コンジキシティが発展を始めた数百年前からは人間と共生するようになった。
専用特性 だいろっかん
溜めワザの回避率が上昇する。またみらいよち、はめつのねがい、ほろびのうた、自分以外が使用したみちづれの効果を受けない(みちづれのトリガーは自分を犠牲にすることなので、だいろっかんによる回避能力は発生しない)
隠れ特性 ぜんてんこう
ユキコシの山岳系のポケモンが時折持っている特性。天気の変化によるデメリットを受けなくなる。(自分が受けなくなるだけであり、ノーてんきやエアロックと異なり天候の影響そのものを無効にするわけではない。またメリットは享受できる。)
メガアブソル(ユキコシのすがた) あく/こおり
ユキコシ地方のアブソルのメガシンカ形態。原種メガアブソルと異なり翼状部分は黒い毛でできており多少の滑空能力を持つため、高い跳躍能力と組み合わせることで疑似的な飛行が可能である。額から伸びる太極図風の毛は自らに迫る厄災を感知するだけではなく、厄災の方向性をわずかに誘導することができる。
ワザ ディザスターウィング
メガアブソル(ユキコシのすがた)の専用ワザ。
ワザとしてはあくのはどうと同じ性能だが、自らにデバフがかかっていたり追い詰められている場合にはそれらの禍を捻じ曲げワザのパワーに変換し威力を倍加させる。「あまりにも不吉な黒翼」が迫ってくるワザ。
特性も専用ワザも、バフデバフタイミング天候など戦術を練られるほどそれを破壊して「練られた戦術によって追い詰められる」という禍を転じて福とするものですが、小細工なしの殴り合いで競り負けるとそれは単に残当な負けであるため打つ手がなくなってきたりします。