お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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 高校生時代にノートに書き溜めてた二次創作(つまり黒歴史、まあこれも10年後には似たようなものかもしれませんが)のアニポケ長編物があって、XYの続編としてXYBREAKをやっているんですよね、旅の範囲はスイスで。それを読み返したらゲストキャラに大企業の令嬢で「ノーブルボール」を使うキャラがいました(本作の「ノブレスボール」と異なり家紋入りですが)。当時は令嬢キャラというものの存在すら知らなかったのに、性癖が6年で一周してないか…?


 ところでなんですが評価・お気に入りありがとうございます!おしむらくはTS畑だけではなくポケモン畑からのお気に入りも欲しいのに得られないことですが…(もしかして:考証)
 
感想も(私の心が折れない範囲で)頂けるとありがたかったりします。

 


#27 コンジキおみやの試練(結) 窮鼠は猫を噛み、旧鼠は猫を育て、奚鼠は炬燵でまるくなる

ー*-

 

 あの、その場のノリでポケモン研究の未来が賭けられ、災厄を避けたり捻じ曲げたりするトンデモポケモンに辛勝したバトルから一夜が明けた。

 

 蒼玻とカグヤは、改めてコンジキ大学のカクミガシ研究室に呼び出されていた。

 

 「やあ。昨日は愉しかったね。」

 

 そう言うカクミガシはといえば、目の下にクマができている。

 

 「おかげで私も解析がたくさんできたよ。」

 

 (...さては徹夜してたな...)

 

 「それで...

 

 ...お姉ちゃんをよりしろさまに、会わせてもらえるんだよね?というか、バトルさせてもらえるんだよね?」

 

 (は!?)

 

 「バトル!?聞いてませんわよ!?」

 

 (よりしろさまって数百年生きてるとか蟲毒してるとかのめちゃくちゃ強い奴だろ!?まぼろしとか準伝とかみたいな奴だろ!?むりムリ無理!)

 

 「お姉ちゃん、大丈夫...とは言わないけど...ここのよりしろさまはちょっと特殊だから。」

 

 「うん、そうなんだ。

 

 じゃあ、ちょっと2回ほど驚いてもらおうかな。というわけで、これ持って。」

 

 ポン、カクミガシは蒼玻とカグヤに金属缶を差し出した。

 

 「…ポケモンフーズ...ですかしら?」「ブランド変えたんだ...」「老舗がどっかの大企業(フロックス)に買収されちゃってね…」「あー…あっ、お姉ちゃん、かじられないように気を付けてね?」

 

 (...かじられる?えっ何それ怖っ)

 

 言われるままに姉妹はポケモンフーズを掌に載せた。そのままカクミガシ博士は姉妹とともに、崩れかけの書物や論文の山の隙間へと手を差し出した。

 

 「おいでおいで~」

 

 (…?)

 

 紙の山にみんなでポケモンフーズを差し出しているシュールな状況が数分続く。

 

 「…何も起こりませんけど...」

 

 ガサッ。ガサガサッ。

 

 茶色い背中、白いお腹、大きい耳、肌色の尻尾…紙の山をかきわけ現れたのは、このポケモン世界に来てから何度も何度も街中で見てきたノーマルポケモンだった。

 

 「…ラッタ?」

 

 特に珍しくもないそのポケモンは、ちょこっと首を傾げ、カクミガシ博士の手のひらの上からポケモンフーズをカリっと器用に食べた。続けて、蒼玻とカグヤの手にも興味を示す。

 

 「…ただの、ラッタ、ですわよね?餌付け…?」

 

 「ううんお姉ちゃん。お供えだよ。」

 

 (お供え…えっ!?)

 

 蹴り飛ばせば人間でもギリギリ勝てそうな、小さくでぶっとしたねずみポケモンが、懸命に餌をかじっている。

 

 「…よりしろさま、ですの?」「うん」「そうだよ」

 

 (えっ…)

 

 「驚いてくれたかな?

 

 だがもう一度驚いてもらおうか。」

 

 その一言とともに、紙の山が崩落した。

 

 棚の隙間から、PCラックの裏から、机の下から、天井から、崩れた論文の山の下から、いつの間にか開いていた扉の向こうから、窓の外から、カーテンレールの上から、エアコンの送風口から、ラッタが3人を見つめていた。

 

 「どこからこんなに!?」

 

 わらわらわらとラッタ十数体が集まり、ポケモンフーズ缶を引き倒し、ガリガリと噛み砕き、そしてあっという間に空にしていく。

 

 

 「人里ですら人はポケモンと時に対峙し時に寄り添い生き抜いてきた...それは現代の大都会でもだ。

 

 都会だからこそ、人の一番身近にいるポケモン達が、社会と結びつき、人々と扶けあう…だから、コンジキシティのラッタは...いいや、ラッタ『たち』は、よりしろさまなんだ。

 

 というわけで、刮目してくれたまえよ?キミ。」

 

 ぞろぞろぞろ、どこからともなく這い出てきたラッタたちが、一斉に金色の粒子を帯び始めた。

 

ー*-

 

 ...そうは言っても、ただのラッタだからなあ...

 

 今までの感じからすると、よりしろさまも、ぐうじのメインポケモンも、何かしらの特殊能力を持っていると考えたほうがいい気がする。…って言ってもただのラッタだしなあ...

 

 金色になってるからラッタBREAK...って言っても、ラッタがメガラッタになったところで相変わらず蹴とばせそうだしなあ...

 

 タイプもノーマル...いや、カグヤのウールーは強いけど...

 

 「最初に言っておくが、人の身でよりしろさまとバトルすることは不可能と言っていい。

 

 うちのよりしろさまは、ただの強いポケモンの1体じゃない。

 

 ラッタ・コンジキシティ個体群推定10万匹、そのすべて。

 

 巨大にして不滅の個体群集団そのものが、人と生き、人に扶けられ、人を扶けてきた。

 

 私たち市民と生きるすべてのラッタ、それ(10万匹)すなわち、よりしろさまなんだ。

 

 だから、倒すのは不可能だよ。

 

 ラッタ・コラッタの増殖速度は極めて速い。今は個体群密度が環境収容力に達しているからもう合計25万匹を超えないだろうけど、仮に再び大災厄(カタストロフ)でこの地方が滅亡の危機に瀕しても、2匹でも生き残ればそこからまた増え直すことができる。コンジキのよりしろさまは不滅にして最強なんだ。」

 

 ...そうか、そんな膨大な数を相手にするとなると強いのか。人海戦術ならぬ鼠海戦術か...

 

 じゃあどうやってバトルするんだ?

 

 「が、しかし!

 

 よりしろさまは、1体でも決して弱くはない。

 

 人里で人間とともに暮らすことを選んだポケモン達だって、自然に鍛えられたポケモンと少しも変わることはない。

 

 私もよりしろさまも、インドアとか引きこもりとか言われることもあるけどね…都会っ子の力、よく見るといい。

 

 バトルは挑戦者の手持ちと同じ数だけのラッタBREAK、4対4、ポケモン全てを同時に出してのバトルだ。4体すべてを倒した方を勝利としよう。

 

 さあ、試練を始めようか?」

 

 ...「4体すべてを倒した方を勝利」か。ダブルバトルでもトリプルバトルでもなく、4体同時?

 

 「1体ずつ4体まで出して...の間違いではなくって?」

 

 「いいや?群れの力を知ってもらわないと困るからね。クアドラプルバトルで間違いはないよ。

 

 「私の時なんか6体同時、セクスタプルバトルで脳が焼け付くかと思ったよ。」

 

 ひえ、6体同時のバトル...頭がこんがらがりそうだ...しかも相手はみんな見分けがつかないラッタBREAKか...

 

 ...これ思ったよりも難しいか?

 

 「わかりましたわ。始めてくださいませ。イーブイ、ランプラー、ブロスター、クリムガン!」

 

ー*-

 

 4体の金色のラッタに、イーブイ、ランプラー、ブロスター、クリムガンが向かい合う。

 

 今日もコンジキ大学バトルスタジアムのバトルコートは学生たちが集まり大盛況だった。それに昨日とは異なり、観客席に何百、いや何千とラッタがうろつき、我が物顔で座席にふんぞり返ったり、女子学生に撫でられてご満悦だったり、走り回っていたり、どこからかもらってきたらしい食べ物を分け合ったりしている。

 

 バトルコートの中央で、バトルは始まった。

 

 「ブロスターアクアジェット、クリムガンも飛ぶのですわっ!イーブイはクリムガンに飛び乗って!」

 

 ラッタBREAK4体の鋭い前歯が、キラリと輝いた。猛ダッシュし、飛び掛かる。

 

 ブロスターはギリギリ間一髪、水流を噴射して地面から離れ、ランプラーもその姿を彷徨わせて高く上げた。しかし鈍重なクリムガンはすぐには飛び立てず、ラッタBREAKのうち1体が、前歯を突き立てる。

 

 金色のオーラが、歯からクリムガンの全身へほとばしった。

 

 「!!? イーブイ、でんこうせっかッ!ラッタに捕まってはいけませんわッ!」

 

 クリムガンが崩れ落ちた。

 

ー*-

 

 「『いかりのまえばBREAK』、アレ反則じゃないの?」

 

 「そうは言っても、そういうワザなんだから仕方ないだろう?それに、あんなの普通のバトルじゃただの初見殺しにしかならないしな。」

 

 「…確かに私もここのカケラほとんど使わないけど…」

 

 カグヤとカクミガシ博士は、2人でバトルコートの脇でバトルを眺めていた。

 

 走り続けるイーブイを、4体のラッタBREAKが右へ左へと追い込んでいく。まるでサッカーのゴール前でもつれあう選手たちのようだ。

 

 クリムガンはといえばふらふらよたよたとはいつくばっていた。その様子を、空飛ぶランプラーもブロスターも、そしてトレーナーの蒼玻も、どうすればいいのかと半ば恐慌状態で見ている。

 

 「結局アレってどういう効果なの?当たればひんし寸前になるのはわかったけど...」

 

 「計測値を参照するなら『がんじょう』『きあいのタスキ』でギリギリ耐えた時と同じ状態になっていると見たほうがいいだろうね。

 

 アオバくんの言うようにゲームチックに表現するなら...そうだな『必ず相手のHPを残り1にする』とかか?」

 

 クリムガンをラッタBREAKのうち1匹が蹴りつけた。それだけぐらりと龍体が傾き、ドシンと土煙を上げて倒れ、気を失う。

 

 「それやっぱり強過ぎだって。しかもそれが市内に約10万匹?」

 

 「前歯で噛みつかれなければどうにでもなるんだ。まあ都市を知り尽くした群れから一噛みもされずに逃げ切れるかは別問題だろうけどね。ああそれに、彼らは仲間になるどくタイプポケモンの居場所も知っている。」

 

 どく状態で「いかりのまえばBREAK」を受ければ、毒のダメージでひんしになってしまう。

 

 正々堂々バトルするのは恩情なんだよーそんなことを言うカクミガシの瞳の中に、ついにラッタBREAKに追いつかれて噛みつかれたイーブイの姿が映っていた。

 

ー*-

 

 (ギリ一撃必殺じゃない代わりに当たるワザ、「ミリ残し必殺ワザ」って感じか…?)

 

 「ブロスター、イーブイにいやしのはどうですわ!ランプラーはあやしいひかりで動きを止めますわよ!」

 

 (そんなチートな代物、くらってたまるか!でも切り抜ければなんとかなるはず…!)

 

 他に大威力のワザはないーそのことに蒼玻は賭けた。果たして…

 

 …ラッタの金色の身体から、電光が奔った。回復され距離を取っているイーブイなど見向きもしない。

 

 怪しい光弾をいくつも頭上に回し、今にもラッタBREAKたちに向けて飛ばそうとするランプラーへ、4体がアタマを上げ、鳴く。

 

 -「でんじは」のマヒ率は90%。では4体同時なら?

 

 ランプラーがしびれ、ふらふらと落下する。ラッタBREAKがつめかけ、噛みつき、足蹴にする。それだけでランプラーは気絶してしまった。

 

 (っ、あと2体…)

 

 一撃必殺ワザの30%ですら、4体同時なら75%命中するのだ。群れが一糸乱れずポケモンを追い込めるということはそれだけ単純に有利である。

 

 そして、すでに数的有利を蒼玻は完全に喪失していた。

 

 (カハリヤツカゲなら実体がないから噛まれはしない…でも8体すべてはきっと出せないし消耗するからそう簡単には出せない…結局は継戦能力がガタ落ちすることに変わりはない...)

 

 「迷っている場合かい?」

 

 ー心理的優位(動揺)戦術的優位(集団戦法)戦力的優位(いかりのまえばBREAK)

 

 (アオバちゃんに言われたことの逆で負けルートになってるじゃん!)

 

ー*-

 

 「さあ、アオバくん、どうする...?」

 

 「イーブイ、ブロスターに飛び乗るのですわ!ブロスター、BREAK進化っ!」

 

 アクアジェットで飛び回っていたブロスターが金色に染まり、そこへイーブイがぴょんと騎乗する。

 

 ラッタBREAK4体が、上空のブロスターBREAKをにらみ、再びヒゲから電光を奔らせた。

 

 金色の水流が、ブロスターBREAKとイーブイを包む。そして…イーブイの姿が消失する。

 

 「あら…

 

 …水は電磁波を遮蔽しますわ。もう貴方方の戦法は、通じない!」

 

 「…でんじはを減衰して、噛まれるまで近づくのを防ぐ。カグヤくんの時と同じだね。姉妹は似るのかな?」「別に似てないよ、うん。それにコットンガードは遮蔽できてなかったよ。」

 

 昔話に講じる観客を無視し、蒼玻は畳みかける。

 

 「どうせ数で劣るなら戦力集中(1つにまとめてしまったほうがいい)ですわ!

 

 ブロスター、ロックオン!」

 

 赤いターゲッティングビームが、逃げ回るラッタBREAKを追いかける。

 

 逃げ惑いながらも、ラッタBREAK4体の口元に霧が漂った。

 

 -ダメージソースを「いかりのまえばBREAK」に頼るなら、「がむしゃら」「すてみタックル」「からげんき」のようなノーマルタイプの定石に頼る必要などどこにもないのだ。撃墜し、動きを抑え、噛みつけばあとはなんとでもなる。

 

 だから、4筋のれいとうビームが、アクアジェットで空中を逃げ回るブロスターBREAKへの対空戦闘を始めた。

 

 「…もうターゲッティングに固執しても仕方ないですわね。みずのはどう!」

 

 水弾が、金色のラッタの1体を弾き飛ばす。それと同時に水流が凍り付き、ブロスターBREAKが落下する。

 

 3体のラッタBREAKは、みずのはどうの直撃を受けた1体をつつき、どうやら気絶したようだと見るやいなや、氷に閉じ込められたブロスターBREAKのほうを一斉に見た。

 

 -目の前に、シャワーズが立っていた。ラッタBREAKたちが愕然とこおりつく。

 

 「ハイドロポンプッ!続けてはつげんちょうせいグレイシア、ふぶきッ!」

 

 1体のラッタBREAKが激流でスタジアムの端へ叩きつけられ、金色のオーラが霧散していく。

 

 「今のは、どこに隠れてたのあのイーブイ?」「シャワーズは水に身体を溶かせるという先行研究がある。まあ『みずのはどう』に溶かすのは想定外だが…」

 

 みずのはどうのなかに隠れていた時にかすめたばかりのれいとうビームの記憶、それが、シャワーズ(イーブイ)に氷の感覚を想起させる。

 

 「ふぶきッ!」

 

 ラッタBREAKのヒゲに電光が迸り始めたその時、既に、白い吹雪が2体の視界の目前に迫っていた。

 

 ラッタBREAK2体が視界を奪われ、グレイシアがマヒして動きを止める。

 

 ーそれすらも、蒼玻は待っていた。

 

 (カハリヤツカゲじゃないただの「はつげんちょうせい」なら、環境に合わせてオートで進化してるだけ、消耗は少ない。「優勝イーブイ」と同じで不完全はつげんをさせているからほどほどにしか使えないけど...まだいける!)

 

 身体を駆け抜けるでんじは、身体が痺れるほどの帯電、神経系を不全にする不随電流ー通電の感覚、そのすべてが、不安定極まるイーブイの遺伝子を刺激する。

 

 「イーブイ、かみなりですわッ!」

 

 サンダースが鳴くとともに、みずのはどうの直撃で体力をほとんど失っていたラッタBREAKのずぶ濡れの身体が、閃光に呑まれた。

 

 光が消えた時、そこ倒れていたのは、茶色と白のラッタだった。

 

ー*-

 

 「残り、2匹…」

 

 しかしブロスターBREAKは凍り付いたまま。体型が災いして自力では氷を割ることが難しいし、ワザの射出点であるハサミも閉じたまま凍り付いてしまっては割るのには時間がかかりそうである。

 

 頭に積もった雪を振り払い、ラッタBREAK2体が威嚇の鳴き声を上げ、サンダースを睨むーもはや「でんじは」はでんきタイプのサンダースには通じない。

 

 (どうする...?

 

 思った以上に手ごわい、接近戦は前歯が危なすぎる、耐久力も並みのラッタよりは増してるはず。

 

 ブロスターの解凍を待っても後手に回るだけ...どうする?)

 

 サンダースが、2体のラッタBREAKとにらみ合いながら、蒼玻の指示を待っている。

 

 (...待て?

 

 なんで。

 

 なんで、ラッタBREAKは俺たちに待ち時間をくれている…?)

 

 なおも、サンダースとラッタBREAKがにらみ合う。

 

 (考えろ、考えろ俺...!なんでラッタBREAKは攻めてこない…!?)

 

 サンダースの姿が薄れ、イーブイが透けるーはつげんちょうせいの時間切れが近い。

 

 (考えろ...!

 

 4体ならみんなで同時に襲い掛かってきた。

 

 3体なら動けない1体を見捨てた。

 

 2体で、膠着…

 

 考えろ、考えろ俺...!)

 

 「ふむ」カクミガシが呟く。

 

 サンダースが完全に失せる。

 

 2体のラッタBREAKのヒゲに電光が迸る。

 

 (そうか…!わかったぜラッタBREAK!お前の弱みがな!)

 

 丸裸のイーブイへ、でんじはが光の速さで飛ぶ。

 

 「はつげんちょうせい『ニンフィア』ッ!

 

 ほえろ!ワザじゃなくていい、ほえるんですわ!」

 

 ニンフィアに、大切な蒼玻からの妥協込みの指示を未達にする理由など、ありはしない。

 

 ワザにはならなくても、痙攣した身体でも、鳴き声くらい...!

 

 声が響き渡る。

 

 ラッタBREAKは...ヒゲをぴくぴく震わせ、地面へともぐりこんだ(あなをほる)

 

ー*ー

 

 「…どういうカラクリか教えてくれるかな?」

 

 「博士もおわかりですわよね?答え合わせにもなりませんわよ。

 

 いくら10万体の群れ全体で最強のよりしろさまでも、1体1体はちょっと強いラッタ、そういうことですわ。」

 

 「…4体なら、みんなで群れの力で攻めかかって手柄を欲しがる。

 

 1体倒れても、むしろ自分だけが手柄を独り占めできる。

 

 ところが有利な状況から2体倒れれば...ということか。」

 

 「ええ...

 

 2匹は自分が先に戦えばより傷つくと思って、バトル相手の出方、そして仲間の出方をうかがうようになる。」

 

 -それが、膠着状態の正体。

 

 集団戦術が瓦解し、マヒが効かなくなった相手への、自分が損することを恐れて仲間に先鋒を譲ろうとする、野生ポケモンとしての本能。

 

 「そして、威圧されれば算を乱して逃げ、不戦勝が成立する...と考えたわけかな?

 

 しかしそれはあまい考え、あまい賭けだよ。幸い賭けの半分は勝ったようだが、しかしコンジキの誇るよりしろさまが、ただ逃げるだけと思うのかな?」

 

 「ええ...

 

 ニンフィア、ブロスターの上へ。」

 

 ワザがうちにくいほど痙攣していても、歩くことくらいできる。

 

ー*-

 

 やり返さなければ気が済まない…

 

 …地面へとあなをほった2体のラッタBREAKは、ニンフィアが歩いて行った振動がする方向へ地中を掘り進み、そして、真下から勢いよく、ニンフィアがいるだろうポイントへアタックした。

 

 そして2体は見た。

 

 砕け散り降り注ぐ、氷。

 

 「ブロスター、待たせましたわね!」

 

 怒りに震える小さな眼、そして、大きく開かれた、金色のハサミ。

 

 「みずのはどう(解放しろ)ッ!」

 

 氷漬けになっている間ずっと高めてきたエネルギーが、特性のメガランチャーで増幅され、鉄をも穿つ高圧放水として発射された。

 

 「ラッタ、2体とも戦闘不能!

 

 よりしろさま代表全滅に付き、この試練、挑戦者アオバの勝利とする!」

 

ー*-

 

 「よくやったね。単位はあげないが修了の証をあげよう。

 

 コンジキジムバッジと、『百万石のカケラ』だ。受け取りたまえ。」

 

 「ありがたく、いただいておきますわ。」

 

 「人とポケモンの絆の大切さ、それに、群れの大切さと脆さ。

 

 学んでくれたようでうれしいよ。

 

 時に、次はウスベニシティかな?あそこのおみやも大変だろうが…」

 

 「いえ、ナノハナキャッスルで、サツキ渓谷へ行くよう勧められましたの。イーブイを毎回毎回想像力や環境変化ではつげんちょうせいさせるのは負担が大きいからって。」

 

 「…サツキ渓谷…なるほど、進化の石があれば負担の少ない進化が可能だし、所持している間はある程度長く進化の維持が見込めるな。

 

 だがサツキタウンへ行くには結局ウスベニシティを通るぞ?だったらついでに挑戦…できるほど甘くはないだろうな。奴はフルパーティーも実現できないトレーナーが勝てるほどではないと聞くし、難易度調整なんかしてはくれん。」

 

 「ううん、ウスベニからサツキも、サツキタウンから発掘現場も遠いでしょ?だから、どうせならシラヤマタウンを経由しようと思って。」

 

 「おおしらやまの山麓を川沿いに進むのか。面白そうだね。私が学生に行かせたいくらいだよ。

 

 わかった。サツキカセキ博物館には縁があるからね。紹介状を書いておこう、持っていきたまえ。」




Q:群れで戦っているならリーダーを倒せばいいのでは

A:見分けがつかない金色のラッタ4匹入り乱れてる中で、仮にリーダーを識別できてもすぐに入り混じってどれかわからなくなるのがオチ。リーダーについては下記。




 ・ラッタBREAKコンジキシティ個体群 ノーマル

 コンジキシティのよりしろさま。推定10万匹のラッタから構成され、同時に1万匹のBREAK進化をなせるBREAKオーラを持っている。

 1匹1匹は少々強いラッタに過ぎないが、集団戦法で敵対者を追い詰め、100㎢のコンジキシティ市街地を縦横無尽に戦い、ラッタ・コラッタ一族の増殖力も高く少々殺しても個体群はすぐ回復するため、敵に回した場合にコンジキにいつづけることはできない。

 事実上コンジキシティへの市街戦侵攻が不可能であることが、コンジキの殿様が百万石の栄華を200年以上維持するための安全保障となっていた。そのため今でもコンジキ市民は、生活の片隅に出没するラッタたちと共生している。

 ・いかりのまえばBREAK(コンジキよりしろさまの専用ワザ・コンジキおみやの祝福のカケラ使用時のBREAKワザ)

 前歯に込めた力で、強制的に相手の体力をギリギリまで削るワザ。ラッタBREAK自身は特殊状態などの「残りHP1」を器用に詰めるワザに乏しいので回復や反撃をされがちだが、カケラを授かったポケモンによっては化ける。ただし接近して前歯で噛みつくという大きな隙が必要なことには変わりがない。

 ・集団的知性(ラッタ個体群の特性)

 ラッタそれ自体の特性ではなく、個体群全体が持つ特性。ラッタ1匹1匹は決してそこまで賢いわけではなく、バトル中にできる判断も攻撃選択と逃走、知っている知識もビル1つから街区1つくらいだが、1体1体が自分にとって最適な選択を選んだ結果、個体群全体が「集合知」「単純な行動の相互作用による組織化」によってあたかも「街全体を知り尽くし、常に相手の裏をかき追い詰め、一糸乱れず集団行動する」かのような行動を見せる。これが集団的知性である(アイアントの巣などにも同様の性質がある)。

 例えば「群れ全体で襲い掛かり袋叩きにする」戦法を群れがとっているように見えるが、これはあくまで「有利な状況では仲間に先を越されまいとすべての個体が可能な限り最速で攻撃する」結果として群れに集団攻撃というプロトコルが発生しているだけである。

 この特性によって集団戦法を可能にしているため、ラッタたちにリーダーは存在しない。しかし1体1体はただのラッタであるため、数が減るほど判断力が低下し、また個体ごとの単位では「先んじて攻撃することで自分だけ傷つくのを恐れる」などの性質もある。
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