お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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次の話も遅れます。なんならもっと遅れます(#28投稿時すでに#29書き進んでいたので)。不定期となることをお許しください。


#29 二重立て籠もり、その結末

ー*ー

 

 プラズマ団ーそれは数年前にイッシュ地方で猛威を振るったポケモン至上主義団体である。トップのゲーチスはポケモン愛護を隠れ蓑に一般人からのポケモンの接収によるポケモン独占を画策しており、そのことが発覚したために団は征服派(ゲーチス派)と愛護派(N派、穏健派)に分裂、ボランティア団体としてのプラズマ団はやがて改名した一方でゲーチス派は幹部が次々に逮捕され壊滅していたーここユキコシ地方を除いて。

 

 あまりにも間が悪かったのだ。プラズマ団が分裂していたころ、ちょうどユキコシ地方は寒冬年、外界との行き来が困難となり、ただでさえ混乱する本部の指示や協力を仰ぐことはできなかった。その状況でロケット団をゴフク屋が叩き出す大抗争が始まったのであるー普通なら地元組織とロケット団支部がもめた場合、ロケット団は撤退するか増援を待つのだが、冬のユキコシにはどちらの選択肢もないし数百年続くゴフク屋相手に潜伏などもっと不可能であったから、抗争は血で血を洗うものとなり、うっかり巻き込まれたプラズマ団ユキコシ支部にはさっさと降参してゴフク屋の庇護下に入る以外の道がなかった。

 

 そうしている間にプラズマ団ゲーチス派は再び大敗を喫して壊滅、かくて悪としてのプラズマ団唯一の組織的残党は、ユキコシ地方の悪の組織ゴフク屋加盟の一集団となったのである。この集団はゴフク屋という商業的悪のスペシャリストがバックに付いていた上、ある程度の孤立を見越してプラズマ団の高い科学力を支部だけで行使できるように設立されていたものにゴフク屋が他の組織残党から吸収した技術力を併せ持ったので、非常に始末に負えない集団であった...が、それは同時に、ユキコシの社会に裏側として寄生するゴフク屋が「やりすぎないよう」歯止めをかけている、ということでもあった。

 

 だから、彼らには必要だったのだーゴフク屋を騙して最強のポケモンをせしめつつ刑務所内のゲーチスやアクロマを奪還し、ユキコシから再びプラズマ団の旗を世界に掲げるための一手が。そしてそれは、フロックス本社やホープ団なにより新興のラスト団が蠢動してゴフク屋の統制が弱くなり、客人の来訪と館長の在館でカセキ博物館のセキュリティが甘くなったこの日がベストタイミングだった。

 

ー*-

 

 「館長っ!化石搬入口、破られました!館内に賊が侵入っ!」

 

 その言葉と同時に、何か不快なものを背筋に感じ、カグヤはとっさにボールをポケットに戻した。

 

 研究員のポケモン達が、振り返り、こちらを睨む。

 

 「お、おいどうしたジュカイン...」「ナマズン、何を…」

 

 「ウールー、コットンガード!」

 

 別のポケモンを繰り出して、そうして膨大な綿が攻撃を吸収して焼け焦げる。

 

 「あ、ありがとうございます…」「いったい何が…」

 

 「すぐにわかると思うよ…

 

 ファイアロー、BREAK...」

 

 ウールーと交代で繰り出されたファイアローだがしかし、金色の粒子が湧きだすことはない。

 

 「向こうがすでにBREAKワザを切っちゃってますのね…」

 

 オーラ濃度計測アプリを見てみれば、まだ2割も回復していなさそうであった。

 

 「この回復の遅さはワザじゃなくて進化…

 

 ファイアロー、ブレイブバ」

 

 金色の飛跡が奔り、ファイアローを撃墜した。

 

 「んなっ、ファイアローBREAK!?ファイアロー戻って!」「ブロスター、出番ですわよっ!」

 

 そして、コットンが消えていく。

 

 そこには、一体のファイアローBREAK、そして何体もの研究員のポケモン、その奥にプラズマ団の黒い制服の男たちと、そして何やら台車に乗ったゴツいパラボラアンテナの怪物が鎮座していた。

 

ー*-

 

 「お姉ちゃん、何も今プラズマ団と戦わなくても...絶対勝てると思って攻めて来てるんだから不利だよ…」

 

 「そういうわけにはまいりませんわよ。ゴフク屋はロケット団の技術も持っているのですから。

 

 ミュウツーを産んだ遺伝子技術とゲノセクトを産んだ改造技術の両方を持っているとしたら、カセキを奪われたら、手が付けられない最恐人造ポケモンが爆誕してしまいますわ。」

 

 この世に悪の栄えぬ試しなしーゴフク屋の掲げる至言を、カグヤは思い出していた。

 

ー*-

 

 「イーブイ、ランプラー、クリムガン、行きますわよ」

 

 蒼玻がボールを袖から出したものの、ボタンを押そうとする手をカグヤが押しとどめる。

 

 「お姉ちゃん、あんまりボールをいっぺんに出しちゃダメ。

 

 研究員のポケモンがみんな奴らに従ってるのは、絶対にタネがある。おそらくはコントロール装置...だけどそれは完璧でも完全でもない。」

 

 -そうだったら、とっくに詰んでいる。

 

 「相手に制限があるから使ってこないんだとしたら、私たちが手札を全部切るわけにはいかないよ。」

 

 こちらの手札が全部見えたのなら、「場のポケモンを操ってしまえば勝ち確」の状況にされてしまったのなら、多少の制約を無視して無理に奥の手(コントロール)を使ってくる可能性がある…ポケモンバトルも「ポケモンを使ったバトル」も結局は半分は読み合いだと考えるフロックスならではの考えで、姉妹はギリギリピンチを脱していた。

 

 「…ですわね。

 

 とりあえずこういう時の王道で行きますわよ。ブロスター戻って...イーブイ!」

 

 「私も、やっぱり一番絆を結んだポケモンを出すべきだよね。グレイシア!」

 

 「それでは私は、弊館のポケモンのしりぬぐいからさせてください。

 

 カモン、プテラ!」

 

ー*-

 

 問題が多すぎるんだよね。

 

 この博物館別館からゴフク屋を叩き出すために、操られてるっぽいポケモンを何とかしないといけないし、ゴフク屋本来のポケモンっぽいファイアローBREAKも倒さないといけない。それに、逆転されないためにはコントロール装置...たぶんあの、奥にあるいかにも怪しいパラボラアンテナを壊さないといけない。

 

 もっと言えばファイアローBREAK以外の元々の手持ちは装置の防衛用なんだと思う。たぶん隠してる手札は私たちよりゴフク屋のほうが強いけど、ゴフク屋にとってコントロール装置は切り札だし使うのもローコストじゃない...

 

 ...としてもそれは、私たちが手札を切れば、有利になれば、相手もそれだけ手札を切る…エスカレーションするってこと。だから、なんとかひとまず収束させるためには、一気に事態を打開しないといけない。…それには、まだ私たちは弱すぎる。

 

 「巻きで行くよっ!ふぶきっ!」

 

ー*-

 

 「私、いちおうフィールドワーカーでしてね…

 

 ...んんっ、見せるとしましょう、カセキ博物館館長の本気!

 

 プテラ、メガシンカァ!」

 

 翼からゴツゴツと岩が飛び出し、体中をとがらせる。ドラゴンポケモンと見間違うほど凶暴なツラが、大翼広げて眼下を睥睨する。

 

 「これぞ古代の王者!空を統べし者!

 

 操り人形如きものの数ではありませんっ!ひねりつぶしてしまうのですっ!」

 

 「…どっちが悪かわかったものじゃありませんわね。

 

 イーブイ、はつげんちょうせいを。」

 

 カグヤがスタンガンを放り投げる。普通ならば感電するだけ、人に当たれば一発気絶のそれは、イーブイの遺伝子を刺激し、その姿をサンダースへと変えせしめた。

 

 「ふぶきに隠れなさいな。ファイアローを墜としますわよ。」

 

 ーだが、ファイアローの姿はどこにも見当たらない。

 

 ((どこからくる...?))

 

 吹雪の中に隠れるグレイシアとサンダースの代わりに、姉妹がファイアローBREAK探して目を凝らす一方、館長のメガプテラはというと羽ばたくたびにかすかに光る何かを飛び散らせている。

 

 ジュカインにキングドラ、ワタッコにアメモースにガオガエン...名だたる操られたポケモンたちが、館内に侵入しようとしては虚空が爆発して阻まれていた。メガプテラの「ステルスロック」が効いているらしい。

 

 (こちらからではあの怪しいマシンへの射線が通りません...前はポケモンとゴフク屋が邪魔ですし、館内では天井が邪魔で高い射点が取れませんし…)

 

 「…!見えたよ」「見えましたわ!」

 

 金色の飛跡がメガプテラめがけて奔るのを見たその瞬間、蒼玻とカグヤは視線を交わした。

 

 -ファイアローBREAKの素早さを考えれば、気づいた時にはすべて終わっていると考えるしかない。だが、攻撃そのものの対策は不可能でも、ファイアローBREAK自身ですら速すぎる。広くはない館内にまっすぐつっこんでくる以上、来る場所は限られている。

 

 「ぜったいれいど!」「かみなりッ!」

 

 一体でも中に入れればアイアントの一穴のごとく別館が陥落しかねないー必殺の意志を込めて、上下から閃光が奔ったその瞬間に、金色の飛跡がグイッと曲がり、突っ込んできた。

 

 「うそ...!?

 

 ウールー、コットンガード!」

 

ー*-

 

 コットンが金色の飛跡をギリギリ防ぎ、爆炎が蒼玻とカグヤを包む。

 

 メガプテラの一吠えとともに膨大な岩が虚空からなだれ落ち、操られていたポケモン達を埋める。

 

 ((射線が通った!))

 

 奇しくも、いや、ゴフク屋にとって狙う通りに、館長とゴフク屋の心は一致した。

 

 「んんっ、メガプテラ、げんしのちから!アンテナを打ち抜くのです!」

 

 「ビーム照射ァ!」

 

 最悪、メガプテラを奪われるのを引き換えにでもマシーンを壊せば勝てる...そう、館長は考えた。

 

 (メガプテラはポケモンの中で屈指の行動速度があります。私とプテラの絆だって伊達じゃないのですから、例え数秒でコントロールを奪われるとしてもその前にアンテナを破壊できるはずです!)

 

 ーだが、プラズマ団の、いやゴフク屋の科学力は彼の想定をはるかに超えていた。

 

 げんしのちからが、出ない。

 

 メガプテラが、顎から燐光を漏らしながら、向き直る。

 

 「い、いけないっ!ヒヲマトウハネ、まもって!」

 

 メガプテラの口が開き、そして閃光ーバリアが一瞬で割れ、ヒヲマトウハネが落下する。

 

 吹雪の渦が晴れ、目を血走らせたグレイシア、ウールーとイーブイが、カグヤと蒼玻を睨む。

 

 「んんん!?メガシンカポケモンを一瞬で掌握、ですと!?」

 

 「そんなっ、そう簡単に使えない奥の手ではなかったんですの!?それにイーブイまで!」

 

 「グレイシア!お願いだから正気に戻って!」

 

 あっという間に3人が恐慌状態に陥り、とっくにポケモンを失っていた研究員たちがとうとう絶望して座り込む。そして、ゴフク屋の一人が、背をそらし、叫んだ。

 

 「ふっはっは...!我が...

 

 我がプラズマ団のポケモンコントロール力は世界一ィィィ!操れんものなどないィィィ!」

 

 「どっかで聞いたようなことをのたまいますのねっ!

 

 ですがBREAK進化ならこちらにも考えがありますのよ!クリムガン!」

 

 「タネが少しもわかんない!でも戦うしかないよね、マハリハグルマ!」

 

 姉妹が次のポケモンを出したその時、金色の飛跡が、目の前に現れた。

 

 静止したことで、その姿があらわになるー金色の、メガプテラ。

 

 「メガプテラBREAK!?」「んんん!?メガシンカとBREAK進化は両立しないはずでは!?」

 

 ダブル”げんしのちから”が、クリムガンとマハリハグルマを吹き飛ばした。

 

ー*-

 

 「はぁ、はぁ…

 

 お姉ちゃん、けっこうヤバいよね…」

 

 ビビヨンと、ブロスター。蒼玻がまだボールに入れているランプラーを含めれば、使える手持ちは残り2体。残りは倒されるかコントロールされるかしてしまった。

 

 「…あのアンテナ...コントロール装置の条件もわからないですし…」

 

 「…お姉ちゃん、条件とか、制約とか、なかったりしたら、どうする?」

 

 メガシンカ入りとはいえ手持ちを一体ずつしか出していない状況で、まだ向こうにもファイアローBREAK(?)がいる状況で、メガプテラと刺し違えるリスクもあっただろうに、コントロール装置を使ってきて、そしてもっとも絆を結んだポケモン達を奪われた。

 

 「…あそばれてたんだよ、私たち...」

 

 「そう...かしら...」

 

 蒼玻が、復元装置の筐体に背をもたせ掛ける。

 

 「…このカセキ復元室もいずれ見つかって陥ちます。ですが、この部屋には機材搬入のための地下通路があります。

 

 フロックス家の皆様、復元が終わり次第、地下通路からお逃げください。

 

 私が、時間を稼ぎます。」

 

 「そういうわけにはまいりませんわ。わたくしは、誰かを見捨てたりは、できませんもの。」

 

 「ほーう、そうかい。」

 

 声が、聞こえたー背後から。

 

 「なっ」「えっ」「んっ!?」

 

 「げんしのちからァ!」

 

 メガプテラと金色のメガプテラが、閃光を吐き出す。

 

 そして、ビビヨンとブロスターが墜ちた。

 

 バトルをできるようにするだけなら、「げんきのかたまり」でいいのかもしれない。問題は、それを使う時間の余裕がないのもさることながら、相手のワザがフルスペックワザでありバトルスペックとはベクトルが異なる以上、バトルができる回復をしても、医学的な無理無茶であるかもしれない、ということか。

 

 「それで、最後か?

 

 じゃあ、カセキもポケモンも、いただいていくとするかね。」

 

 プラズマ団征服のゴフク屋の男が、2体のメガプテラをバックに、勝ち誇る。

 

 「いいえ。

 

 わたくしたちのポケモンは取り返したいですし、カセキは守り抜きたい。わたくし...欲張りでしてよ。

 

 ですから。ランプラー、貴方が...貴方が、最後の希望ですわ。」

 

 移動もした、時間も経った、すなわち、時は満ちた。

 

 「あやしいひかりBREAK!」

 

 「っ!?めざめるパワーァッ!」

 

 金色のメガプテラが、ランプラーへと閃光を発した。

 

 「んん?めざめるパワーをプテラは覚えないはず...げんしのちからではなく、模倣...?」

 

 「しまった...ァ」

 

 館長が何かに気付いて顔を上げ、ゴフク屋の男が額を押さえた...が、そんな会話とはまったく関係なく、ランプラーは地面に落ち、怪光もまとう金色の粒子も霧散した。

 

 「ランプラーっ!?」

 

 「ま、まあいいさ。お前らが気づく前に、始末すればいいんだからな。

 

 もう一度だ。ぶっ殺せェッ!」

 

 「ランプラー、ダメっ!」

 

 蒼玻の細くすべすべの足が、袴から覗き、床を蹴る。

 

 閃光が、長い袖をかすめ、たなびく純白の髪を焼きちぎる。

 

 ランプラーを抱きしめ、床を何度も転がって、蒼玻の身体はカセキ復元室の隅で止まった。

 

 腕の中から、ランプラーが蒼玻の顔を見上げる。

 

 「ランプラー...

 

 ...わたくし、決めてますのよ。

 

 あの日から。絶対に、あそこでわたくしを食べずに、あの坑道の外に出たこと...強引に連れ出しましたけど、後悔はさせないって。」

 

 -「わたくしの魂、命、ここで食べてしまうには惜しいのではないのかしら?」

 

 もう何もできないのかもしれない、それでも、あきらめたくはない。どうせ一度死んだ魂が、大切なポケモン達という生きる意義を、この世界で与えられたのだから、自分の身命を賭してでも、あきらめたくはない。

 

 蒼玻の細い手が、足元にたまたま落ちていた、化石を取り出した後に出るカスの石ころを握り締め、真上に掲げさせる。

 

 金色のメガプテラが、蒼玻を睨む。

 

 蒼玻が、金色のメガプテラを睨む。

 

 メガプテラBREAKの顎から、再び、燐光が漏れ始めた。

 

 蒼玻が、石を振りかぶる。メガプテラBREAKが、口を開く。

 

 そして、閃光が奔った。

 

 「お姉ちゃぁぁぁん!」

 

ー*-

 

 いいえ、悲劇なんかで、終わらせはしませんわ。

 

 この壊れた世界で、それでも、わたくしたちはカグヤ、ポケモンたちとのこの日々を、この愛する人々、街、ユキコシを、見守ってきた。

 

 例え天命だとしても、魂を賭けて、守り抜かなければならないのですわ。

 

ー*-

 

 ーこのフシギなニンゲンを、フシギで美しいひとを、ボクはまだ、失いたくない。

 

 ー命を賭けて守ってくれるこのひとの、美しい魂、美しいこころ...

 

 -魂の視え方が不気味でも、魂の在り方が美しいんだ。

 

 -だから、ボクも、このひとのために、このひとのように...

 

 ーボクだって、もっと…強く!

 

ー*ー

 

 輝きが、蒼玻の腕の中から、蒼玻の視界を奪い取った。

 

 蒼い、そう、トレーナーの瞳と同じ色の障壁(トリックルーム)が、2人を包み込む。

 

 「こ、これは...」

 

 金色のメガプテラから放たれた閃光が、スローモーションで迫ってくる。蒼玻はするりとそれを避け、そして、腕の中から抜け出した大切なポケモンを見つめた。

 

 「…奇跡、ですわね…」

 

 握り締めていた石は、床に落ちて粉々に砕けていた。それが本当は何であったかなど、蒼玻は気にするそぶりも見せないー単なる石ころだと思っておくのも、それはそれで悪くない。

 

 「ありがとう...

 

 オーバーヒート!」

 

 誰への感謝なのか、それすらもはっきりさせはしなかった。

 

 ーシャンデラの オーバーヒート!

 

 獄炎が、金色のメガプテラを包む。

 

 黒い煙の中で、何かが墜ちていくのが見えた。煙の中にモンスターボールの回収光線が伸びて、その姿が消える。

 

 (...やはり、プテラのシルエットではないですね…なるほど、あのファイアローも別物でしょう。タネが見えてきましたよ…)

 

 「ちっ...

 

 だがまだメガプテラを操っている。他の団員、操ったポケモンだっている。

 

 もう一度言う。カセキとポケモンを渡せ。見逃してやる。」

 

 今の戦力で負けはしないが、もし蒼玻がやけくそになれば、シャンデラはオーバーヒートで復元装置と中のカセキを破壊できる...男は焦っていた。

 

 絶対にカセキを譲ることはできないし、操られたメガプテラも何とか倒して状況を打開しなければ...蒼玻には、一歩も引く気などなかった。

 

 睨み合い。

 

 ひりつくような緊張感が、カセキ復元室を包む。

 

 ガタッ。

 

 「…お?」「…え?」

 

 だから、物音がしたとき、それも思いもかけない方向から物音がしたとき、全員が、とっさには反応できなかった。

 

 地下通路への扉が、開いている。

 

 金色の光が、暗闇の中に浮かび上がっている。

 

 ー???BREAKの パワージェム!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メガプテラが、部屋の壁に叩きつけられ、メガシンカを解除され崩れ落ちた。

 

 「ん、だ、と...」

 

 ザッ、ザッ、ザッ...地下通路の奥から、無数のポケモンが隊伍を組んで行進する音が聞こえる。

 

 そして、彼らは光の下に姿を見せた。

 

 金色に輝く身体。その胴体は結晶が覗く岩であり、上にちょこんと頭と耳がついている。

 

 「メレシー...」

 

 カグヤの口から、声が漏れる。

 

 数十匹のメレシーBREAKは、反応すらしない。

 

 「バカな...こんな...数の...BREAK進化...!?」

 

 ゴフク屋の男が呆然と声を漏らす。外から足音が響き、そして黒い制服の男たちが扉を開く。

 

 「隊長、もう終わりましたっすか...えっなんすかこれ!?」

 

 「撤退だ!死ぬぞ俺たち!」

 

 メレシーBREAKの額の結晶が輝きを帯びるー次のパワージェムをくらってはひとたまりもない。ゴフク屋団員たちは一瞬で顔を真っ青にし、廊下へ飛び出して走り出した。

 

 直後、まばゆい閃光が扉を蒸発させ、向かいの部屋をも貫き博物館別館の建物の外へビームが噴き出す。

 

 「間一髪...!」「バカ!次が来るぞ!本館へ戻って立て直す!」

 

ー*-

 

 「…本館に立てこもっていることには変わりがないかもですけれど、とりあえずこの場はしのげましたわね…」

 

 博物館別館立て籠もりは成功、そう言おうとした蒼玻の足を、メレシーBREAKが小突いた。

 

 「…なんですの?」

 

 ”「おい盟約の姫君」”

 

 (キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!)

 

 明らかに足元の0.3mのほうせきポケモンが発しているとしか思えない渋い声が脳に響き、蒼玻はギョッと飛び跳ねる。

 

 ”「驚きすぎだ。

 

 それよりも、ここを早く出ていけ」”

 

 「…は?」

 

 カグヤの声が、低く響く。

 

 ”「太古からの贈り物、眠り続けるポケモン達、それを私欲で奪い合い乱暴に扱う、こんな種族(人間)は、もはや信じるに値しない」”

 

 (はええカグヤにも聞こえるのか、というか饒舌...)

 

 ”「盟約は切れたと聞いたが、せめての慈悲だ。すぐには手を出さないでやろう。早く出ていけ人間ども。」”

 

 「なんで、なんでそんなことが、言えるの...っ!私と、お姉ちゃんに!」

 

 ”「我々が、お主ら盟約の血筋(フロックス)に代わり、ここのポケモンを護るからだ。」”

 

ー*ー

 

 「いまさら...

 

 いまさら、いまさらどのツラ下げてっ!」

 

 カグヤは、青空へと叫んだ。

 

 「…カグヤ...どういうことですの...?」「カグヤさん、盟約が切れた、とはどういうことでしょうか…?」

 

 「お姉ちゃんがボロボロで帰ってきたあの日、お姉ちゃんはディアンシーを持っていなかった。

 

 遠き日に御先祖様達が結んだ、『共にユキコシ地方を護る』って盟約。ディアンシーの先祖が(メガストーン)を生み出して、フロックスが(キーストーン)で護る…

 

 なのにあの日、ディアンシーはお姉ちゃんを護らないで消えた、それなのに。」

 

 いまさら博物館のポケモンを護る?ディアンシーの一族であるメレシーが?

 

 「いまさら、いまさらっ!」

 

 「…それは、お姉さんに何か失敗が...」

 

 カグヤが、館長を睨む。

 

 「お姉ちゃんに限ってそんなことない!お姉ちゃんは完璧なんだから!」

 

 「では、なぜ...」

 

 館長が、蒼玻を見る。蒼玻にしてみれば魂が別人なので聞かれても困るのだが。

 

 「とにかく、いまさら現れて意味が分かんない!絶対、絶対文句言ってやる!」

 

 「それには同意ですわ...」

 

 とにかく、本館とイーブイ・グレイシア・ウールーを奪われ、別館にメレシーBREAKが入れ替わりに立て籠もって青空の下に放り出されているようでは状況は変えられないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー*-

 

 ”「おや?」”

 

 ”「長老様?」”

 

 「復元ガ 完了 シマシタ!

 

 復元ガ 完了 シマシタ!

 

 装置ヲ 開キマス!」 

 




 二重立て籠もりの結末

 ・本館に立てこもったゴフク屋元プラズマ団は別館に侵攻するがメレシーBREAKの群れに叩きだされて本館へ戻る

 ・別館に立て籠もった博物館職員とフロックス姉妹はボロクソに負けるがギリギリのところでメレシーBREAKに救われる、ただしすぐに追い出される

 ・姉妹や館長と入れ替わりに、メレシーの群れが別館に立て籠もる

 もちろんですが、作中で館長が「メガシンカとBREAK進化は両立しない」と語っているように、メガプテラBREAKは存在しません。(BREAK進化ポケモン一覧:https://www.pokemon-card.com/card-search/index.php?keyword=&se_ta=pokemon&regulation_sidebar_form=all&sc_pm_breakevo=1&sc_hp_s=&sc_hp_e=&sc_run_away_s=0&sc_run_away_e=&pg=&illust=&sm_and_keyword=true )

 ではメガプテラBREAKそして敵のファイアローBREAKのカラクリは何かというとちゃんとヒントがあります。そしてコントロール装置もあそびで使い渋っていたわけではなく、館長のメガプテラが操られたポケモンを倒したその時がベストタイミングとなった理由はあります。


次回予告

 ”「お主はもう帰れない いっしょに暮らそう」”

 ”「こればかりは譲れんな」”

 「たいがい独善じゃありませんの」

 「わかってますわよ、貴方方の切り札ポケモンも、装置のカラクリも」

 「#30 盟約2千年、化石3億年、転生して4ヶ月」 サツキ博物館編第3話、しばしお待ちください”
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