お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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#30 盟約2千年、化石3億年、転生して4ヶ月

ー*-

 

 そのポケモンは、未だ、この星の誰も見たことがない、不思議な不思議な生き物だった。

 

 ー確かに、それがゲノセクトと計画上呼ばれ、別の世界で実現した改造ポケモンの本来の姿と言えるかは、誰にも分らない。ガチゴラスについて言われるように復元装置が完全に元の姿を復元しているかは疑問符が付けられている。ただ、ゲノセクトと同じように、そのポケモンは、復元直後にもかかわらずなんの違和感もなさそうにその細い手足を伸ばして立ち上がった(直立二足歩行ではあるらしい)。おそらくそう大きな間違いはないのだろう。

 

 古代のポケモンというだけあって、この世界のポケモンになぞらえて説明するのは難しい。顎がなく4本脚でかつ立ち上がっているという点を無視していいのなら、もっともそれっぽいのはアイアントだろうー頭胸腹にわかれる基本構造が分かりやすいからかもしれない。あるいは翅のないスピアーやハッサムも近いかもしれない。

 

 カラーリングは透き通るような蒼。湖に近いところで暮らしていたのかもしれない。

 

 何より目立つのは、胸の後ろから伸びるアームによって支えられた、甲羅のような構造だ。昆虫としての発達学からはツノゼミの角のようなものなのだろうが、なにぶんここはポケモンの世界、そのような類推に意味があるかは不明である。大砲などという仰々しいものは付いていないが、いかにも何か弾のようなものを撃ちだせそうな穴がその前面に空いている。ビーム系のワザの射出口か何かだろうか?

 

 古きユキコシの民ならば、岩タイプというタイプと、虫の神であるとも長寿(時を超える)神であるとも言われ一説には鋼の姿とも言われる古い伝承神から、そのポケモンに「イワトコヨガミ」とでも命名したかもしれなかった。

 

ー*-

 

 目を覚まして、そのポケモンが最初に見たのは、あちこちが破壊された殺風景な部屋と、足元で飛び跳ねる鉱石のポケモンたちだった。

 

 ”「聞こえるか?時を超えてきた者よ」”

 

 ーだ、だれや?

 

 ”「儂だ。お主を救った者だ」”

 

 メレシーの長老からのテレパシーに、ポケモンはつたなく「ありがとう」と告げて、ふと、首をひねった。

 

 -さっき、あらそってたのがきこえたきがするねんけど、あれからたすけてくれたん?

 

 ”「そうだ。お主らの時代にはいなかった人間という種族だ。

 

 奴らはお主を狙って争っておる。」”

 

 ーじゃあ...

 

 ...だれかが、ジブンのことまもってくれてたこえがきこえたきがしてん。テレパシーちゃうかったきがするねんけど、あれもおたくら?

 

 ”「声?」”

 

 -なんやったかろうな。「ポケモンは取り返したいですし、カセキは守り抜きたい」とか「連れ出してきたこと後悔はさせない」とかやったきがするんやけどな。

 

 メレシーたちは顔を見合せた。

 

 ”「長老様、もしかして外の人間たち...」””「しー!」”

 

 -おたくらなんか隠しとるんな?

 

 まあええわ。それよりここはどこや?ずいぶんねとったきするねんけど。

 

 ジブン、かえりたいんやけど。

 

 メレシーたちは、沈痛な表情で首を横に振った。

 

 ”「お前はもう帰れない いっしょに暮らそう」”

 

 -は?かえれないってどういうことや。

 

 ”「お主が寝ておったのは3億年だ。春秋が3億回回る間に、大地も海も変わり、お主らの同胞、お主が見たことがある花も木もポケモンも、すべて死に絶えて同じ種族はいなくなってしまった。」”

 

 -ほーん。まじ?

 

 ほな、やっぱりそといってみてこなあかんな。

 

 ”「それは勧めんぞ。

 

 人間を名乗る、他の者を我が物にすることをなんとも思わぬ種族が跋扈しておる。」”

 

 -でも、もしかして、ジブンをまもってくれたのもそいつらちゃうん?

 

 メレシーの長老は、眉?をひそめるような仕草をした。

 

 ”「…そ、そうだが…

 

 ...しかし、この時代を知らんのだろう?良い人間もいるし良いポケモンもいる、しかし見分けなどつくまい。この時代で生きるすべも知るまい。

 

 我々といっしょに暮らしたほうが良いぞ。」”

 

 悪いことは言わないから、年寄りの言うことには素直に従っておいた方がいいぞー善意100%なのは、目覚めたばかりの彼でもはっきり理解できた。

 

 -せやな、おたくの言う通りかもしれへんな。おたくらうそついてる目ちゃうもん。

 

 でもジブン、おれいくらいはいいたいねん。

 

 ”「…人間に、騙されんようにな。」”

 

ー*-

 

 「もう一度言うよ。

 

 ここを、通して。それと、力を貸して。」

 

 ”「力を貸せとは何様のつもりだ。」”

 

 「はあ?

 

 盟約の一族ディアンシーの、その家令のメレシー。だったらディアンシーと盟約を結ぶフロックスに従うべき、そうでしょう?」

 

 ”「もはや盟約は消えた、姫様が直々に我等近衛におっしゃられたのだ。他人ではないか。見逃してやっただけ感謝しろ。

 

 これだから人間は身勝手だ。産み、増え、地に満ち、争い、そして他の者を自分の物だと思い上がってこき使ってはばからない傲慢な種族。ただちに立ち去れい!」”

 

 「はあ~?

 

 先にフロックスを捨てたのは、盟約を破ったのは貴方たちでしょ!?」

 

 ”「何を言うか!」”

 

 ーえっなにこれ。ジブンとんでもないとこにきてもうたんかもしれん。

 

 数億年ぶりの太陽の下で眩しさに懐かしさを感じる暇もなく、ポケモンはあまりに険悪な雰囲気にたじろいだ。

 

 「…あら。

 

 無事に復元されたんですのね!良かったですわ!」

 

 蚊帳の外でじっとたたずんでいた、純白の髪の少女が走り寄ってくる。

 

 ”「ダメだ。こ奴に近づかせてはこ奴のためにもならん。」”

 

 それを、数匹のメレシーが立ちふさがって飛び跳ね、通せんぼした。

 

 ”「だいたい、お主の身体はフロックスでも、心は違うと聞いたぞ。

 

 盟約は魂と魂で結ばれた(メガシンカ)、お主なぞ氏素性も怪しき不心得者ではないか。」”

 

 「…あー…そこまで、バレてますのね。」

 

 少女ー蒼玻は、右左前後を見回し、館長や研究員たちから距離があることを確認する。

 

 「…そうだよ。

 

 俺はアオバ・フロックスじゃない。うっかり別の世界から流れ着いた、何処かの馬の骨の魂だよ。」

 

 ”「…別の、世界?

 

 たわごとを。」”

 

 「カグヤは信じてくれたんだけどな。」

 

 ”「妹のほうは騙されたのか?そんな見え透いた嘘に?

 

 まだなりすましていると言った方が道理が通るぞ。」”

 

 そりゃそうだけどさぁ…蒼玻は頭を押さえる。突然「魂だけ別者なんだ」なんて、狂人か二重人格がいいところだ。まあなりすますにしても意味の分からない言い訳ではあるとはいえ。

 

 「…血が通った大切な姉の身体なんだから、わかるよそれくらい。

 

 お姉ちゃんへのなりすましなんてできっこない。

 

 だから、私の確信は、血が通わない貴方たちじゃわからないだろうけど、厳然たる事実なんだよ。」

 

 ”「…なんだそれは...」”

 

 「理解してもらえるなんて思ってない。他人が感じられるとも思えない。

 

 大切な人がそこにいて、その人が大切な人...そんなこと、言葉で根拠を示したりするほどのことでもないよ。」

 

 (...そんな理由で信用されてたんだ...鳥肌が立つような気がするな...)

 

 (なんや、こいつらはええやつってきぃするな。

 

 きらきらなおめめしとるやんか。これは「しんじとるもん」のめぇや。)

 

 「…それは、ひとまず、いい。俺の言うことを信じようが信じまいが、それもいい。

 

 俺は俺の大切な仲間を取り返さなきゃならない。そのために、俺はお前らの力を借りたいし」

 

 ”「貸すわけがないだろう。」”

 

 「そうだろうな。

 

 正直に言うけど、俺は、カセキから復元されたばかりのそのポケモンの力を借りたいんだ。なんせ俺たち二人の戦力は今シャンデラしかいないんだ。まさしくニャースの手も借りたい。」

 

 ”「案の定、ポケモンを、自分が戦うための都合のいい戦力くらいにしか思っておらんではないか。ますます、お主を許すわけにはいかんな。」”

 

 ージブンなんやな、ジブンのちからがひつようっていうんと、ジブンのちからをいいようにつかいたいだけだっていうんとで、もめとるんやな。

 

 「ああ、そうかもしれないな。」

 

 ”「やはりな」”

 

 「ちょっと、お姉ちゃん!?認めてどうするの!?」

 

 「…でも俺は、それで後悔なんてさせない。

 

 俺も...それにカグヤ、きっとアオバ・フロックスも、欲張りなんだろ?」

 

 「…それは、そうだけど...」

 

 ”「お主、何が言いたい?それともただの開き直りか?」”

 

 「『2ミミロルを追う者は2ミミロルとも取れ。その意味は決して妥協するなということだ』...俺のいた世界の、まあインターネット語録だ。

 

 仲間は取り返すし、新しい仲間だって大切にする。誰にも後悔なんてさせない。そうすることを俺は望んでるし、きっとこの身体の持ち主も望んでるはずだ。

 

 だからまあ...月並みな発言だが、俺を信じてくれ。」

 

 ”「話にならんな」”

 

 -ほーん、しんじてるやつのつぎは、「信じてくれ」か。

 

 なあおたくら、ちょっちジブンのいうことつたえてくれん?テレパシー、つかえるんやろ?

 

 ”「わかったが…なんだって?ああ...

 

 おい人間、このポケモンがこう聞いている。儂もお前の覚悟が聞きたい。

 

 『それでもしジブンがことわったらどうするつもりなん?なかまあきらめるん?』だと。」”

 

 「俺も、フロックスも見くびらないでくれよ?

 

 ...例え俺一人でも、俺は俺の仲間のために戦う。できるすべてをする。

 

 イーブイが、シャンデラが、ブロスターが、クリムガンが、俺の存在意義(レゾンデートル)なんだ。

 

 だから、俺は行く。カグヤ、来るか?」

 

 「お姉ちゃんを、それに蒼玻くんを、一人では行かせられない。

 

 それに、私だってグレイシアたちと離れ離れになんか、なってやんないんだから。

 

 お嬢様はね、欲張りなんだよ。」

 

 「…そういうわけだ。

 

 メレシーも、お前も、来ないならそれでもいいし、ついてくるならそれでもいい。俺は往く。これが俺...

 

 ...いいえ、俺と、きっと、わたくしのノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)ですわ。」

 

 -すきとおった、あおい、ジブンみたいなおめめや...

 

 ”「…ならば行くがよい。助太刀はせんぞ。」

 

 話は終わったとばかりに、蒼玻は歩き出す。カグヤがため息をつき、メレシーたちを睨み、それから蒼玻に続く。

 

 -まちや。

 

 カセキポケモンは、メレシーを飛び越え、蒼玻の背を引いた。

 

ー*-

 

 「わたくしに、ついてきたいんですの?

 

 いいえ、言葉はわからなくても、通じますわ。貴方も、志があるのですわね。

 

 いいですわ。ならば、名前を差し上げなくてはなりませんわね。

 

 そうです、世界でたった一つ、貴方だけの、わたくしの大切な仲間である貴方だけの、名前ですわ。

 

 虫...

 

 ...『ゲノ(gene)』ではなく...

 

 ...太古...元の姿...オールドでもアンシエントでもなく...プレセクト?プリセクト?それはプリセットみたいで嫌ですわね…

 

 そう...オリジン!オリジンセクト!

 

 決めました!今日から貴方の名前は、『オリセクト』ですわ!」

 

 ポケモン、オリセクトは、深々と頷いた。

 

ー*-

 

 ”「認められん、認められん。氏素性も怪しき、腹の内で何を考えているかもわからぬ人間に、信じろだと?認められん。

 

 

 例えこ奴がお主に付いていきたいと言っても、こればかりは譲れんな。行かせられん」”

 

 「あら、どうしてそう思いますのかしら?」

 

 

 ”「儂らが、それではいい結果にならないのではないか、そう案じるからだ。」”

 

 「…わたくしはこの子がついてきたほうがわたくしの仲間のためにもなるしこの子のためにもなるようにする、だからこの子にとってもいい結果になる、そう思っていますわ。

 

 翻ってメレシー、貴方は、わたくしに従わない方がこの子が幸せになれる、そう思うんですのね?」

 

 ”「そう言っておろう。」”

 

 「メレシーあなた、太古のポケモンのためと言いながら、たいがい独善じゃありませんの。

 

 自分が『こうすればこいつのためになるだろう』そう思って善意を押し付ける、わたくしも貴方も、やっていることはおんなじですわ。」

 

 ”「何を言う!おなじ、だと...!さっきまで争っていたばかりの人間が!?」”

 

 「あら、何を言いたいのかって...何かを言いたいのではなく...」

 

 「行動で示すから黙ってついてこい、そう言いたいんでしょお姉ちゃん。

 

 行こう?館長さんも考え事は終わったって。」

 

 そして3人は歩き出す、ゴフク屋が占拠している博物館本館へと。

 

 メレシーたちはオリセクトを引き留めようとしたが、いかんせんガタイが小さすぎるし手足もない彼らでは何もできはしなかった。

 

 ”「…姫様に報告だ。

 

 指示を仰ぐぞ」”

 

ー*-

 

 「本館の職員がベラベラ喋っていたら大変なことでしたが、ちゃんと、聞かれてないことは答えなかったみたいですね。

 

 連中、配管点検用の天井裏ルートの存在も、監視カメラのパスワードさえあればどこからでも館内を覗き放題なことも気づいていないらしいです。」

 

 館長を先頭に、姉妹とオリセクト、それにお目付け役のメレシー1体が、狭い天井配管路を一列に這い進む。

 

 「…理科実験室の天井なんかが配管だらけなのは知っていましたけど、人が進めるほどのものがあるとは知りませんでしたわ。博物館見学中は気づきませんでしたし…」

 

 「化石や岩石の中には温度湿度の管理がシビアなものがありますからね。どうしても配管は...

 

 ...おっと、そこを右です。転落しないように。」

 

 こわごわ、蒼玻もカグヤも鉄板の上を這った。鉄板の上はパイプだらけで、まだ電線がむき出しでないだけいいとはいえ決してスペースがあるわけではなく、おっかないことこの上ない。

 

 「と、あそこです。」

 

 復元ポケモン飼育大温室、巨大なガラス張りのドーム。再現された自然に満ちるその中央に目を凝らせば、不似合いなパラボラアンテナの怪物が鎮座している。周りで、リーダーらしきガタイのいい男を囲い、したっぱたちと操られたポケモン達がたむろしていた。

 

 「…イーブイ、今、助けますわ。」

 

 スタッ...慎重かつ大胆に、大温室入口へ人影が舞いおり、見張りのゴフク屋が呆気に取られているのを気にも留めず、扉を勢いよく押し開けた。

 

 「…なんと、来るか。」

 

 「そりゃあ来るよ。私たちのポケモンをそんなふうに使われてたらね。」

 

 カグヤが指さす先で、グレイシアとウールーが、イーブイが、最初から敵のポケモンだったかのように歯をむき出していた。

 

 「誰だって怒りますわ。それに、あざけりもしますわよ。」

 

 「…あざける、だと?」

 

 男が首をひねる。

 

 「ええ、だって。」

 

 すいっと、蒼玻はその芸術作品のように美しい左腕を滑らかに真上へと伸ばし、天井を指さした。

 

 「どんなに横暴を尽くしても、貴方方が本当に欲しいものは、手に入りはしませんもの。」

 

 真上から、ドスっと、それは着地した。

 

 「オリセクト、貴方の初陣ですわよ!」

 

 「き、貴様...!それは我らプラズマ団が得るべき資産だと言うに...!

 

 行け!メガプテラ!ぶっ潰せ!」

 

 叫ぶ、リーダーと思しき男だけではない。元プラズマ団のゴフク屋たちすべてが、男も女も皆、激昂していた。それでも彼らは、ポケモンを出すそぶりを見せない。

 

 金色のメガプテラ...メガプテラBREAK(?)が、バサバサと羽ばたき、姉妹と館長を睥睨した。

 

 蒼玻が、にやりと笑う。

 

 「これで、タネはすべて割れましたわね。

 

 いきなりですみませんが...

 

 むしのさざめきBREAK!」

 

 ためらいは一瞬だった。一瞬でしかなかった。

 

 金色の光、そして、騒音が大温室に響き渡る。

 

 メガプテラBREAKがまとう金色の粒子が、瞬く間に剥がれ落ち、空気に溶けて消えた。

 

 「なっ...なぜ...

 

 なぜバレた!」

 

 ゴロリと地面に転がったのは、プテラ...などではなかった。

 

ー*-

 

 「僥倖があるとすれば、このポケモンはむしタイプであることです。」

 

 オリセクト、そう命名されたばかりのポケモンについて、ずっと譲渡するべきか悩んでいた時とは全く反対のことを、館長は告げた。

 

 「ファイアローもメガプテラもひこうタイプ、不利ではなくって?」

 

 「…メガプテラなんて、最初から最後まで、私のプテラしかいなかったんですよ。」

 

 「…え?」

 

 「きっと、もう一度メガプテラBREAKモドキは出てくると思います。蒼玻さんのシャンデラが一度倒したとはいえ、ポケモンセンターに連れていくほど大切にしてはいないでしょう。その、倒された時のシルエット、プテラでもファイアローでもありませんでした。

 

 それに、『げんしのちから』に見せかけていたようですが、一度口を滑らせて『めざめるパワー』と指示していました。あのワザはビームにもなるしエネルギー弾にもなる便利なワザ...擬装には最適です。

 

 BREAK進化できるポケモンは限られます。その中で...滅多に出会うことはありませんが、相手に成りすまし、本来BREAK進化しないポケモンやメガシンカポケモンにすら化けられるポケモンが、一種類だけいるのです。」

 

ー*-

 

 「やはり、ゾロアークでしたか。

 

 珍しすぎて私も仕様をよく知りませんでしたが、化けても身にまとうオーラは剥がれないということなら、相手と同じ見た目かつBREAKオーラ分の有利なスペックを得られる、というわけですね。」

 

 「それに、そう簡単に自分たちの手持ちポケモンだって出せないんじゃないの?

 

 さっきは、てっきりコントロール装置を守ったり後からくるジュンサーたちと戦うために温存してるのかと思ったけど、そうじゃないよね?

 

 『世界一、操れないものなどない』つまり、それくらい、無茶苦茶な出力を持ってるんでしょ?自分たちの味方のポケモンでも問答無用でコントロールをオフからオンにして、かえって融通が利かなくなる、とか。強い分不便ってよくある話だよね?」

 

 「それに、わたくしたちのポケモンを操るために使ったのは、他の操られたポケモン全てが岩に埋まっていた時、でしたわよね?

 

 パラボラアンテナ(放物面)って確か、前面全域に照射したはずですわ。一度操ったポケモンにもう一度ビームを照射するわけにはいかないんじゃなくって?例えば...それをすると、コントロールがオンからオフになっちゃうとかではありませんかしら。」

 

 ぐぬぬ...ゴフク屋のリーダーは、言葉を詰まらせた。

 

 -確かにプラズマ団はポケモンを意のままに操る高い科学力を持つ。伝説のポケモンすら操ってみせるその技術はしかし、決して洗練されたものではないのだ。

 

 なにしろプラズマ団の理想は、すべてのポケモンをプラズマ団、もといゲーチスが独占することだ。従わないポケモンを従わせるためのマシーンに、従わせる相手を選んだりする必要はなく十把一絡げに支配する機能だけあればよく、従わせる相手に難しいことを考えられるようにする必要はなく低能なままゲーチスに力を捧げればよい。

 

 まして今ユキコシにあるそれは、いくら他の悪の組織の技術が加わっていても本質的にモンキーモデルに過ぎない。うっかり手持ちに照射すれば脳波コントロールの結果として行動はおぼつかないものになるし、コントロール解除に難しいシステムを導入できない野戦用であることも相まって二重照射すればコントロールは解除されるし、それでいて相手を選べずパラボラ前方に無差別にコントロールビームを放つー「敵しかいない」状況を創り出さないと使えないのだ。

 

 「…だから、なんだと言うのだ!

 

 カラクリが割れたとて貴様らの手持ちはすでにシャンデラとカセキポケモンのみ!

 

 それさえ操ってしまえば、我がプラズマ団の勝利は確定するッ!」

 

 「いいえ。

 

 そうはなりませんし、そうはさせてくれませんわよ、きっと。」

 

 いつの間にか、ともに付いてきたお目付け役が消えているのを確認し、蒼玻は目を閉じた。

 

 (すべてのピースは嵌まった。

 

 「『信じてくれ』では話にならない」って言うけど、俺だって、お前らの決意と覚悟を信じてるんだからな。)

 

 「ええい、ごちゃごちゃうるさいッ!

 

 照射ァ!」

 

 叫び声を聞き、したっぱの男がマシーンのレバーを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー*-

 

 -メレシーBREAKの パワージェム!

 

 閃光が、大温室を構成するガラスドームを貫き、パラボラの照射ビームを真横から呑み、弾き飛ばした。

 

 ”「…もう一人のアオバさん。貴方のノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)、見届けました。

 

 遅くなって申し訳ありません。私たちも、くわわりますね。」

 

 「遅いなんてとんでもない、ベストタイミングでしたわよ。

 

 こちらこそ、独力でも悪しき人間からポケモン()を守る覚悟が本物ならきっと来てくれる、そう信じておりましたわ、ディアンシー。」




 オリジナルのインセクトポケモンにオリセクトって命名するな。

 オリセクトInsectum origo phloxi(ゲノセクト原種) むし/いわ 特性:カタパルト

 3億年前に生息し、最強のハンターと恐れられていた古代のむしポケモン。胸の後ろのアームから伸びる甲羅は、防具であるだけではなく、周囲の強力な筋肉によってよくしなり、投石器(カタパルト)となって半径数十メートルへ狙い定めての投射が可能。

 直立二足歩行による索敵能力、素早い動き、甲羅で身を覆うことによる高い防御力と潜伏能力、投石による奇襲で古代に於いて敵なしだった。しかし、やがてさまざまなポケモンが飛翔能力を発達させ使いこなすようになると、前方投射能力に優れていても構造的に上方投射能力がほとんどないため一方的にやられることになり絶滅した。


 「背中の大砲がパワーアップした(ホワイト)」「背中に砲台を付けられた(BW2)」というゲノセクトの図鑑説明文の矛盾と、カセキポケモンであるからはがねタイプではなくいわタイプであろうことについて「砲身と砲口を持つカノン(大砲)ではなく、岩を投射するカタパルト(投石砲)であったのだろう」と解釈しました。プラズマ団はたぶん移動能力の乏しさと投石ではせいぜい百メートルくらいしか攻撃できないことを憂えて、カセットでエネルギーを供給してエネルギー噴射による飛行とエネルギー砲を使えるようにしたのだと解釈します。
 
 残党が博物館のカセキの存在を知っていて改造計画まで練っていたのにゲノセクトの現物が存在しないのは、おそらくこの世界ではゲノセクトの元の化石を別口で手に入れたものの復元までできずに組織崩壊して散逸したか、あるいはハッキングか公開論文があったか何かで発掘されたのを知って改造計画を立てたもののカセキの現物がどこに収蔵されているのか最近まで突き留められなかったのだと。
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