お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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 そういえば41話だからこれで自分史上最大話数...




#36 ラスト団

ー*ー

 

 「これでダメならステラーシステムを要請するしかねえな…クソッ。」

 

 壊れたマンションの影で、オリザはぼやいた。

 

 「ステラーシステム...というのはなんですかしら?」

 

 「…嬢ちゃん、それを知らないはずはないだろうよ。

 

 あのビル、フロックス本社に据え付けの対ポケモン兵器だ。なんでも伝説のポケモンを撃退するためのものでな。

 

 …俺の根性でもよりしろさまがどうにもならねえ、そして人々にも危害を加えるかもしれねえ暴走状態…となったら、最悪は、最悪はだぞ、俺は支援砲撃でアイツを消し飛ばしてもらう覚悟を決めなくちゃならねえ。」

 

 「でも、貴方は、あのよりしろさまを祀り、ともに過ごすぐうじ、なのですわよね?」

 

 「だからだよ。そうですよね?オリザくん。」

 

 「ああ、ダイゴの言う通りだ。

 

 ずっとアイツとともにいて、情熱鍛えてきたんだ。だから、アイツが人々を傷つけるくらいなら...俺が。

 

 そうなる前に。俺はアイツの気合いを叩き直さなくちゃならねえんだが…」

 

 「それに、ひとつ問題があるのでは、オリザくん。

 

 ぐうじ…ジムリーダーの貴方がお手上げだと言ってフロックス本社に対応を投げたら、それはフロックス本社による戒厳施行と同じなのでは?」

 

 -せっかくワカナエ市役所が蒼玻の生配信動画で躊躇してくれているのに、個人ではワカナエ一の実力者であるはずのぐうじオリザが「そうは言っても実力不足なんだわ」と言ってしまえば、ワカナエすべてをフロックス本社に委ねるしかなくなってしまうーそれしか、もっと言えば現有のポケモン戦力で未だ事態を打開できないばかりか暴走ポケモンを出して混迷している以上ステラーシステムによる機械的砲撃でしか、状況を解決できないからだ。

 

 しかし戒厳令は、いかにも怪しいと蒼玻が考えるフロックス本社にワカナエの全権をむざむざ譲り渡すということで、できればしたくはない。

 

 「そうだ。だから...

 

 ...俺に根性がもう少しあれば...」

 

 「方法なら、一つ思いつきましたわよ。」

 

 根性はともかくー蒼玻はそう言った。

 

 「おいおい、どうするんだよ。

 

 性根って意味の根性ならともかく強さって意味の根性ならいつもよりずっと上がってやがる。手の打ちようは...」

 

 「BREAKワザなら、それでもやりようはありますわ。幸いオーラ異常でいくらでも使えますし。」

 

 「…いや、無理だ。俺のおみやから授ける『田園の結晶』ってのは結局はきまぐレーザーBREAKだからな。普段ですらよりしろさまには...」

 

 「いいえ、わたくしが言いたいのは、コンジキおみやのことですわ。」

 

 「…その、コンジキおみやでもらえる特別なワザというのは、なんなんだい?」

 

 「『いかりのまえばBREAK』

 

 相手の体力を問答無用で戦闘不能寸前にする...ただし、噛みつければ、ですが。」

 

 「なるほど。攻撃力も防御力もあって再生もする相手だけど、一撃で戦闘不能寸前にできるならちょうどいいね。」

 

 一撃必殺ワザに賭ける手もあるが、カミツラオロチ_BROKENの戦闘力を考えれば返り討ちが関の山の分の悪い賭けだろう。

 

 「いや、それでもちいとばかり情熱が足りねえな。8本のきまぐレーザーをかいくぐって噛みつかなきゃならんのは気合いでなんとかできるとして、ギリギリに削ってもまだ手数が8本あるんだ。」

 

 トドメを迎え撃ちながらじこさいせいで回復されれば水の泡だ。

 

 「それこそ根性の見せどころではありませんの。」

 

 「…なるほど?最終的に勝てなくても忙殺くらいはできると。俺に根性見せろたあ豪気な話だな。いいぜ、乗った。」

 

 「ではぼくは、蒼玻ちゃんに路を作ろう。

 

 これでもすごくて強いチャンピオンだからね。お膳立てもできないだなんて言わせないよ?」

 

 「…お二人とも、すごいイケメン力ですわね。」

 

ー*-

 

 「行け、ボスゴドラ!がんせきふうじっ!」

 

 ダイゴがボールを投げながら飛び出し、叫ぶ。

 

 「撃ち落とせ、きまぐレーザー_BROKEN。

 

 さて、次は何処から飛び出してくるかな?それともかくれんぼ?」

 

 降り注ぐ岩を8本のレーザーが蒸発させていく。

 

 「アイアンテール!」

 

 8匹のうち2匹が、降り注ぐ岩石を見上げるのをやめて前を向き、レーザーをボスゴドラへと向ける。とたん、ボスゴドラは立ち止まった。

 

 「てっぺきっ!」

 

 キラン、輝いたボスゴドラの肌が、レーザーを反射した。

 

 コンフリーが皮肉気に拍手をする。

 

 「…なるほど、威力が高くてもレーザー、反射率を上げればある程度は跳ね返せる、と。だが上の下だねその手は。

 

 こんな危険な攻撃を反射しながら迂闊には動けまい?それに鉄の反射率はせいぜい0.05、ワザのてっぺきということは0.10程度...10%は反射できずに受け続けることになるよ?」

 

 「そうだね。でも、ぼくがその程度のこと、考えないとでも?この、ホウエン最強の、ぼくが。

 

 さっききみ自身がオリザくんに使っていたそうじゃないか。」

 

 (じしんを、覚えている…!?

 

 それも、もしや...チャンピオンのくせに、無敵のカミツラオロチ_BROKENに勝とうとするのは効率が悪いと諦めて期待値の高い相手(操っている俺自身)に目標を切り替えたとしたら!?範囲攻撃可能なあのワザなら、俺にアタックできる、ユキコシなら容易くポケモンで人を仕留められるって気づいたなら!?)

 

 「…下の中かクソがっ!

 

 カミツラオロチ_BROKEN、少々の時間効率(すばやさ)は諦めろ!全レーザーをボスゴドラへ!」

 

 キランと輝くボスゴドラへ、一束にまとめられた8本のレーザーが殺到し、その鉄壁を焼く。

 

 迎撃されなくなったがんせきふうじが岩石を降り注がせる。

 

 ダイゴが、にやりと笑った。

 

 「今だ蒼玻ちゃん!」「イーブイ、『いかりのまえばBREAK!』」

 

 コンフリーの表情が歪み、「下の下ェ!」と吐き捨てる。

 

 降り注ぐ岩石の上をジャンプして下降し、急速にイーブイがカミツラオロチ_BROKENへと迫る。その開いた口は金色の粒子を撒き散らし、前歯は金色に輝いていた。

 

 「きまぐレーザーをイーブイに向けろ!」「間に合いませんわよ!はつげんちょうせいッ!」

 

 膝をつくボスゴドラから逸れたレーザーが再び8本に分かれ、上空、岩石に身を隠しジャンプするイーブイを薙ぎ払おうと宙をなぞる。

 

 イーブイから、8つの進化系の虚像がわかれる。8匹の龍は、金色に輝く口を持つ8匹のポケモンが岩陰を伝い飛び降りてくるのを見て、まごまごとレーザーを惑わせた。

 

 リーフィアの虚像が消し飛び、エーフィーの虚像が岩ごと粉砕され、シャワーズの虚像が文字通り蒸発し、グレイシアの虚像が砕けちり、サンダースの虚像が貫かれて爆散し、ブラッキーの虚像が空高く吹き飛ばされ、ニンフィアの虚像が両断され、ブースターの虚像が2本のレーザーによって挟み撃ちになる。

 

 -それでも、真打が残っている。

 

 イーブイの金色の前歯が、龍の首元に噛みついた。

 

 振り払おうとした小龍が、ぐんにゃりと首を垂れる。それでもその血走った瞳は黒と金の粒子を撒き散らしながらレーザーを吐きかけ、イーブイが吹き飛んでいく。

 

 「さあタルップル、根性入れなおしてやろうぜ!」

 

 いつの間にか瓦礫の山のてっぺんにいたぐうじが、金色と稲穂の翠を瞬かせる正二十面体の結晶(よりしろさまのカケラ)を掲げて叫んだ。

 

 -タルップルの ヤマタのげきりゅう(きまぐレーザーBREAK)

 

 (今、今だけはそれを受けるわけには...!

 

 じこさいせいなら間に合うか!?いやがんせきふうじで鈍足になってしかも弱っている、ワザの切り替えを考えれば...!)

 

 「レーザーでそのまま迎え撃てっ!」

 

 8本のレーザーが、空中で交錯する。

 

 タルップルが、ズルズルと地面を滑る。レーザーの交錯点がぐんぐんタルップルへと迫る。

 

 「情熱見せろタルップルぅ!」

 

 「ボスゴドラ、メタルバーストッ!」

 

 「下の下の下ェ!」ー叫んでも、もはやどうにもならなかった。8匹の龍はタルップルからの8本のレーザーを防ぐために8本のレーザーで撃ち返していて「さらにもう一手」は用意できない。そしていかりのまえばBREAKの効果で体力はギリギリ(HP残り1)で、少しカスっただけでももう耐えられない。

 

 無情に、光線が黄金林檎を吹き飛ばし、運河へと突き落とした。

 

ー*-

 

 「…カスオヤジ、貴方、いったい何を...」

 

 「…ああ、言い忘れていたっけ?」

 

ー*-

 

「尋問してボスの名前を聞けと匿名希望さんに言われましたわ。でもそんな非効率的な手段を取らなくても、教えてくださいますわよね?」

 

 令嬢が絶対にしないことーコンフリーの首根っこをつかんで持ち上げ、蒼玻はにらみつける。

 

 コンフリーは、皮肉気に嗤った。

 「…ふふふ、確かにもうその必要もないし稼げる時間の期待値も低いね。

 

 では、教えてあげようか。ボスの名は...

 

 ...クワズ。」

 

 「クワズ...?どこかで...

 

 ...ッ!?」

 

 「そんなバカな!」「いや、でもいろいろしっくりくるよ…!」

 

 オリザとダイゴが驚愕と怒りで肩を震わせる。

 

 「そうさ。ラスト団は...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー*-

 

 

 「俺はフロックス・ホールディンクス副会長...

 

 ...兼、ラスト団ボス、クワズ。

 

 この地方を偽るヴェールを剥がし、ギラティナを招きよせて2000年前完遂されなかった世界の破壊をやり直し、そして鉄錆に埋もれた世界から、新たな、そして正しい時代を、ユキコシに、世界にもたらす、歴史の動力源だ...!」

 

ー*-

 

 「ラスト団はキミの会社さアオバ・フロックス!」

 

 哄笑。

 

 瞬間、橋の向こうの市街地にそびえたつひときわ高いビル(フロックスセンタービル)の屋上に、閃光が瞬いた。

 

 「アオバちゃんっ!」

 

 叫声。ダイゴが蒼玻を突き飛ばす。

 

 -Emulated_”テラクラスター” powered by ステラーシステム! 

 

 細く引き絞られ、それでいて確かな殺気と濃密な命の危険で全身を冷たくさせる苛烈なビームが、放りだされたコンフリーの両足を消滅させた。

 

 -フロックスホールディンクス副会長兼ラスト団ボスの クワズが ステラーシステムを くりだしてきた!




正式計画名 産学民貴官5者合同プロジェクト「ワカナエシティ防衛計画」フロックス本社副会長室付研究調査(Research)ユニット(Unit)特別(Special)任務部隊(Taskforce)提案:星形配置ビーム砲塔計画C案(フロックスセンタービル配備案)修正第3版

通称名   ステラーシステム

秘匿名称  Copied_Legend.Emulated_”Terapagos”

 「ユキコシ地方が直面し続けている、ホープ団という侵略の脅威。それが伝説のポケモンを伴い人口密集地であるワカナエシティに襲来した際、ポケモンの猛威がより致死的なカタチで発生しやすいユキコシ地方では伝説ポケモンとのまともなポケモンバトルが成立し得ないため、各地方での悪の組織に対するバトル的対応ではなく、抗堪性とレジリエンスに長けた長射程必中のエネルギー兵器を以てこれを撃退する必要がある」という提言によりユキコシ地方にのみ特別に認可された、ポケモンのエネルギーを用いた対ポケモン大型機械兵器。

 公称のスペックでは、「高層ビルを叩き壊せるラムパルドからの連続攻撃に対して最低30分の連続攻撃状態の維持が可能であり、防御力に長けたトリデプスの正面盾に対し40㎞の超長距離射撃によって致死性の一撃攻撃が可能であり、40㎞の遠地点での半数必中界は3m」というとてつもない性能の光学兵器とされており、地平線から高速で迫る伝説ポケモンに対し強力なビームを照射し続けて討伐するとともに、討伐が叶わぬまでもセンタービルの次元歪曲防壁(ディメンションウォール)によってなるべく長く攻撃を続け伝説ポケモンをビルに引き付ることで少しでもダメージと市民の避難時間を稼ぐ計画となっている。

 ポケモンを確殺する強力兵器ということで国際的に監視下におかれるはずだったが、計画中にカロス四天王パキラ氏のフレア団内通が発覚したためユキコシ側は国際社会に対して「要人であろうともホープ団につながる悪人であるリスクがぬぐえない」と態度を強硬化、その後当時の会長夫妻が急死し、詳細は謎に包まれている。
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