お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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結局クワズとコンフリーの目論見と組織図はどうなっていたのかというと...

クワズ「伝説の破壊神ってギラティナだしたぶんもう一度やぶれたせかいから引っ張り出して操れば世界の破壊と再創造ができるよな。

 世界の破壊の端緒となれて、かつこの世界の裏側に住むギラティナを顕現させられるのはマハリハグルマ...歯車に世界が引っ掛かったままうまく回れずにいるんだから、強引に回せば世界を『やぶれる』けど、それをやるにはBROKENの暴走状態だけじゃ不充分、たぶん世界をうっかり挟み込んだ時の状態(BREAKオーラ濃度0)で、その時でも闇落ちしなかったフロックスの心を闇落ちさせて共鳴させる必要があるな?」

クワズ「フロックスの闇落ちは人でもキーストーンでもいけそうだな。マハリハグルマもあるな。

 逃げたフロックスは会社として追えるしゴフク屋に頼んでもいいな。でもBREAKフィールドの実験の方はあんまり会社でできないな。

 そうだ、暗部組織を作って業務を代替させよう。一度文明を鉄錆に戻して再構築するのが目標だから名前は鉄錆、ラスト団だ。ラスト団に割り当てた業務はコンフリーに任せよう。」

 コンフリー(ラスト団):BREAKフィールドの研究、暴走状態の有効活用検討とオーラ濃度0の実現によるマハリハグルマ活性化を可能にする、フロックスセンタービルへの介入行動及びギラティナ目撃者が出ないようにするためにワカナエ島を封鎖しBROKEN反転暴走で封殺

 クワズ:フロックスの心の確保、フロックスの闇落ち、闇フロックスとマハリハグルマとの共鳴による世界のヒビの拡大、ギラティナの招来、世界の破壊と再創造

 クワズ「これで世界を再構築した後で罪をかぶる役目はラスト団が代替してくれるな。

 でも、ギラティナが通れるほど大きなヒビを作るためにマハリハグルマを活性化させるには、マハリハグルマが世界を挟み込んだ時代唯一の生き残りの子孫のフロックスを闇落ちさせて共鳴させなくちゃいけないけど、それってプラズマ団みたいな言動のコントロールじゃなくて心から闇落ちさせないといけないんだよな。

 ...洗脳、時間がかかりそうだな。終わるまで邪魔されないようにワカナエ島を(いっけんフロックスと無関係な)ラスト団に封鎖させて暴走で忙殺し続けなきゃなんだけど...

 (ここで走ってくる蒼玻を見る)

 おっ、カグヤの大事な大事な姉が走ってきてるな。

 『機械による心からの洗脳』じゃなくて、『大事な姉を自分のために失う絶望』で代替してもいいんじゃないか?よし、撃ってみよう」←イマココ!


 ※なおクワズはヒスイ・シンオウでギラティナが二度現れたことを知らない(どちらの事件もその場に居合わせた人間しか知らない)ので自分の地方の伝承どおりユキコシをもう一度破壊してくれると期待している…というのもあるが、「ギラティナもポケモンなのでBROKEN反転暴走で暴走させれば欲望のまますべてを破壊してくれるはずだし、そのあとで正気を取り戻せばその時近くにいた者の頼みを聞き再構築をしてくれる」くらいに考えている。この副会長の本質は目的のためならなんでもするサイコパスさと「代替」、計画もそれに使うものも適宜修正していくので細かい後先をあまり考えていない。

 



#37 絶望のステラーシステム

ー*-

 

 アオバ・フロックスとして、戦わなければならない。これは身内の不始末だ。

 

 今世の妹、カグヤを助けなければならない。

 

 どうせステラーシステムの射程は水平線まであるらしい、簡単には逃げきれない。

 

 戦えるのはもう俺しかいない。

 

 なにより、そうしなければと、戦ってカグヤを救い出しラスト団を、クワズ副会長を倒さなければ、そう心が叫んでいる。

 

 -それだけで、充分だった。

 

 「誇り高き俺たちの燦然」

 

 最初からそのつもりで、ラスト団によるワカナエ島封鎖を突破したらセンタービルへ凸りカグヤを救い出すべく、そのためにコンフリー戦で戦力を1体温存していたのだから。

 

 「誰にも、超えられはしないさッ!」

 

 フロックスセンタービルの屋上に閃光が瞬き、あまりにも細いビームが奔る。

 

 いくつものダイヤが砕け散り...それでも、メガディアンシーの頭の手前で、ギリギリ最後のダイヤを蒸発させて止まった。

 

 「さあ急ぎますわよディアンシー!」

 

 ”「はい...!」”

 

 大通りを疾走し、蒼玻とメガディアンシーは、運河にかかる橋を越え、ついにこの日の日中初めてワカナエ島へ入った非ラスト団員となった。

 

ー*-

 

 ーずっと思ってきた。 

 

 -この世界は、この地方はしょせん偽りだ。

 

 -本来存在しない善という概念を覆いかぶせ、薄氷の上に成り立つ偽りだ。

 

 -悪、災厄、それら醜いものをヴェールで覆い隠し、醜悪なそしてそれでこそ美しい真のユキコシ地方を2000年封印し、停滞したままだ。

 

 -創造は破壊からしか生まれない。新時代はカタストロフィとともにしか訪れない。

 

 

 ー正しくそして美しく、時代の、世界の歯車を回し直す。そうしなければ、この停滞し偽られた世界は前には進めない。

 

 -人間もポケモンも、いや世界の神羅万象は、しょせん代替が効く部品でしかない。無意味で無価値な代替可能品の集まり...けれど唯一代替が効かないもの、それが世界そのものだ。世界だけは替えが効かない。だからこそ、正しいカタチに創り直さなくては。

 

 -そのためには、一度世界をあの錆びついた時代に撒き戻してでも。いや、そうしてこそ、世界の部品を、人もポケモンもすべて、俺の都合のいいように、代替し、再構築できる...!

 

 「見えるかフロックス。悪は善となり、祝福は呪いである、これが、押さえつけられてきた真のユキコシの姿だ…!」

 

 フロックスセンタービル最上階のガラス張りの窓から見えるワカナエ島は、全域で煙が上がり、あちこちでビルやマンション、家々が崩れ去っている。二次大戦の大空襲がなかったこの世界で市街地がこのようにボロボロにされたことはほとんどなく、未曽有の惨状にカグヤは自分でも気づかないうちに涙を流していた。

 

 「そして、ここから始まる…ッ!歪に歪んだ世界を、この地方だけじゃない...

 

 そうだ!我等ラスト団こそが世界の歯車を巻き戻す!ガラルの雪原からカントーの島嶼に至るまで、世界中のあらゆる場所を破壊し、そして鉄錆の中から再構築するのだ!正常で、正しく、偽りのない、本性本当の世界を!」

 

 「…自分に酔ってるところ悪いけど、できない相談だよ。

 

 私はそんな簡単に洗脳されたりなんかしてやらない。

 

 お姉ちゃんだって、何度失敗しても手札を何枚でもかき集めて助けに来る。

 

 ラスト団が貴方と、フロックス本社とつながってることだってそう長くは隠せない、いずれ誰かが気づけばウォーターフロント地区(ワカナエ島)の封鎖だって対処は変わって強行突破でそのうち破られる。ダイゴさんだって一日あればホウエンからメガシンカ使いをかき集めて暴走範囲に突入できる。

 

 何日続ける?何日根競べと時間稼ぎができる?」

 

 「…そうだな。洗脳には思った以上に時間がかかりそうだ。直系とはいえ血も魂も遺伝の中で薄まる、もう少しフィールドホールの善意消失効果を受けると思っていたが、予想以上に高潔なようだ。

 

 ...だから、代替させてもらう。」

 

 「…代替?」

 

 「お前の大事な姉が、たったひとりのかけがえのない姉が、身を張って助けに来るんだろう?」

 

 -闇落ちは別に、洗脳でやる必要はないのだからな。

 

 「今からお前を絶望させてやる。そこで黙って意地を張っているんだなお転婆次女。」

 

 「カスオヤジ、貴方という人は...ッ!」

 

ー*-

 

 フロックスセンタービル、別名「ねじれたとう」。次元歪曲防壁(ディメンションウォール)に暴走ポケモンからの攻撃を受けて表面に光の波を浮かべるワカナエシティのランドマークの屋上に、五角形の基盤と5枚の花弁状の三角形シールドからなるーつまり星形(ステラー)な装置がギリギリ四辺をはみ出さないように置かれている。

 

 花弁上のシールドからは砲口が1門ずつ覗き、シールドごと動作する。そして計5基のビーム砲を載せる砲座たる五角形基盤の中央には、見上げるほどもある正二十面体の巨大な結晶が浮遊していた。

 

 >第2射用意

 

 >照準修正 ”アオバ・フロックス”から”盟約のメガディアンシー”へ

 

 >ワザタイプ変更 効果抜群の”はがね”タイプへ

 

 >防御変数計算完了 必要エネルギー量計算完了

 

 結晶が輝き、うち1面からエネルギーが光を放ってビーム砲のうち1基の背部へ吸い込まれていく。

 

 >光学測距・レーダー測距完了

 

 >2番砲エネルギー充填完了

 

 エネルギーをたっぷり蓄えたビーム砲が滑らかに動き、砲座のアームがスライドと伸長で砲身を傾け砲口を上下に振り、屋上から下界を見下ろす。

 

 >2番砲偏差修正 照準完了 移動速度変数計算完了 

 

 >第2射単発射撃2秒間 スタート

 

 砲口が瞬き、凝縮されたはがねタイプの力そのものが撃ち出された。

 

 -Emulated_”はがね_テラバースト” powered by ステラーシステム!

 

 はるか下界、全力疾走して橋をわたったばかりの蒼玻が、げっと顔をゆがませる。

 

 「ディアンシー、ダイヤストームですわ!」

 

 引き絞られた、まるでピアノ線のようなビーム...そして、はがねタイプの力、属性、エネルギーそのものの奔流が、渦巻くピンクのダイヤを貫きかち割り、蒸発させていく。メガディアンシーは両手で懸命に空気を圧縮してダイヤを増やすが、次々とダイヤは消え去りビームが迫り、飛びのくことを余儀なくされた。

 

 ダイヤをすべて破壊したビームが、つい数ミリ秒前までメガディアンシーが立っていた路面へと命中し、アスファルトを穿ち一点を赤熱させる。

 

 ”「あれ?思ったより弱い...?」”

 

 メガディアンシーが首を傾げた次の瞬間、アスファルトの赤熱が、泡のように揺らいだ。

 

 -爆発。蒼玻とメガディアンシーが吹き飛ばされる。

 

 「…効果の発生までにタイムラグがあるのですわね。」

 

 (あっぶね、「お前はもう死んでいる」がありうるってことか...!)

 

 ”「ということは、防げたと思っても、実はまだ効果が出ていないだけという事もあり得ますね。」”

 

 「…おっかないことこの上ないですわね。」

 

 直撃、貫通、破壊にタイムラグがあるということは、ダイヤの連続破壊で防ぎきれないと察して避けようとしたときにはすでに最後のダイヤを貫通して直撃していた可能性もあったのだ。

 

 どうやらさっきは本当に紙一重だったらしいぞ...背筋に走る悪寒を振り払いながら立ち上がり、蒼玻とメガディアンシーはフロックスセンタービル目指して再び走り出す。

 

 >誤差修正完了 エネルギー充填完了

 

 >第3射単発射撃1秒間 スタート

 

 -Emulated_”みず_テラバースト” powered by ステラーシステム! 

 

 「トリックルームですわ!」

 

 効果タイムラグ付き必殺ビームなど冗談ではない。こちらも速度をゆがめて対応だービームがゆっくりと進み、そのわきを足早に通り過ぎる。

 

 もっともトリックルームは効果範囲が広くはない。抜け出したところで迫る第4射のビームには間に合いそうもなかったが、メガディアンシーはジグザグと進むことでなんとかビームを回避した。

 

 「やり返した方が良さそうですわね。ムーンフォースBREAK!」

 

 メガディアンシーの真上に月光の力が集まり、光線がビルとビルの間を迸ってフロックスセンタービルへと迫る。

 

 -しかし、届かない。半分もしないうちに光線は霧消した。

 

 (射程が、足りない...!

 

 ダイヤストームは近くにダイヤを生み出してぶつけるワザ、ラディアント・レイピアは光剣、トリックルームは論外...ムーンフォースが届かないってことは一方的に撃たれるだけかよ!)

 

 ”「…あれにも対処したほうが良さそうですね。」”

 

 ディアンシーが指さす方へ、ムーンフォースが向きを変える。目を血走らせたルチャブルの群れが撃墜されていった。

 

 「…暴走ポケモン、全然元気ですわね。

 

 街の人は何をして...」

 

 やっと、全力で走っているとはいえ視野を広げた蒼玻は気づいた。

 

 ビル壁に、家の玄関に、大破した自動車に、崩れ落ちたアーケードに、電柱に、べっとりと血や、血よりももっと生々しいものが点々とこびりついている。

 

 「…この街は、もう...」

 

 ”「きっと逃げて無事な人やポケモンもいる、信じましょう。」”

 

 「…ですわね。」

 

ー*-

 

 「アオバ嬢ちゃん聞こえるか!?」

 

 「え、ええ、でもとても通話している余裕は...ディアンシー、右ですわっ!」

 

 「そんな長話じゃない!

 

 アオバ嬢ちゃん、気合い入れて走れ!

 

 ステラーシステムの弱点は俯角だ!アレは遠くから迫る伝説ポケモンを屋上から迎え撃つカノン!たぶん下向きにはそんなに傾けられねえはずだ!

 

 とにかく走って近寄れ!死角に入れ!」

 

 冷ややかな視線を、コンフリーがオリザへと向ける。

 

 「そううまくいくかな?」

 

 「…どういう意味だい?」

 

 「ダイゴ、キミはホウエンのチャンピオンとして、特許保持者のデボン次期社長として、ステラーシステムのことを『ポケモンの生体エネルギー、いわゆる(ムゲンダイ)エナジーを使う兵器』と思っているんだろう?」

 

 「…違うのかい?特許料を払って、技術指導まで頼んできたのに?」

 

 「違わない。でもそれだけじゃない。

 

 直接撃ち出すとか、カロス最終兵器よろしく暴発させるとか、ましてやメガシンカエネルギーと掛け合わせてワームホールにするなんて期待値の悪いこと、すると思うか?

 

 代替だよ。熱エネルギーを伝送しにくいから電気エネルギーに変換して伝送するように、攻撃をより適した手段に置換するんだ。例えば、ポケモンのワザとか。」

 

 「伝説ポケモンに対抗できる、ポケモンのワザ…まさか…」

 

 ーそれもまた、伝説ポケモンのワザ…ダイゴが青ざめる。グラードン、カイオーガの争いに巻き込まれたホウエン出身の彼だからこそ、伝説ポケモンの御業の恐ろしさはよくわかっていた。

 

 「ステラーシステムはわざわざこの俺がパルデアくんだりまで出張してチャンピオン秘蔵の伝説のポケモンのBREAKオーラを掠め取ってきて作ったんだ。死角なんて非効率的なもの、あると思うかい?」

 

 「…そいつぁどういう意味だオイ。そもそもこの地方の外にはフィールドがないからオーラだって存在しないし、強さと死角は無関係だろ。」

 

 「さあ?それより義足を新しいやつに変えてくれないかな?さすがに足無しでは逃亡の期待値がね。」

 

 「腕だけじゃなく足も機械のサイボーグって、どんなビックリ人間だよ。それも効率とやらか?」

 

 「そうさ。いつまでも傷つきやすく限界も知れて換えの効かない生身の身体にこだわるキミたちには、言ってもわからないかもしれないけどね。」

 

ー*-

 

 「近寄れと言われましても...」

 

 >第13射単発1秒 スタート

 

 光線がメガディアンシーからドレス上に下がるピンク水晶のうち1つを貫く。メガディアンシーが焦り顔で蒼玻を突き飛ばす。

 

 -爆発。

 

 メガディアンシーが爆風に包まれた。

 

 「ディアンシー!?」

 

 ”「だ、大丈夫...」”

 

 「こんなのどうにもなりませんわ!もぐら...モグリュー叩きのモグリュー役なんてごめんですわよ!」

 

 >第14射単発1秒 スタート

 

 ぐらつくメガディアンシーをとっさに抱え、火事場の馬鹿力で27.8㎏を動かす。

 

 直後、背中を何かがかすめたような気がした。

 

 爆発。

 

 蒼玻の身体が、メガディアンシーもろとも、背中から吹き飛ばされ、壊れたシャッターに叩きつけられる。

 

 「う、ぅ...」

 

 (あちこちが...痛い...でも...)

 

 必死に、シャッターの下へともぐりこむ。

 

 ぎょろり...目があった。

 

 「アギルダー!?

 

 ディアンシ―、ダイヤストームですわっ!」

 

 ビル1階の駐車場をまるごとダイヤの渦が呑み込み、何匹ものポケモンの叫び声が響く。油断も隙も無い。

 

 それにワカナエシティはしょせん人口80万、ワカナエ島市街なんて10万をきっているのだ。蒼玻がイメージする大都市ー例えば前世の東京ーのように地下街があるわけではなく、どこかの建物や地下空間に飛び込んでみたところで外に戻らなければとなりの建物にも行けない。

 

 「ディアンシー、正面突破はもう無理ですわ。とにかくビルの影を縫って、ステラーシステムの死角へもぐりこみますわよ。」

 

 ”「そんなことより、きずぐすり...」”

 

 「ああ、ごめんあそばせ。はい。

 

 ...ダメージが大きすぎますし貫通ですから、他のみんなは応急処置ではとても戦わせられませんわ。ですからディアンシー、貴女だけが頼りですわよ。」

 

 ”「そうじゃ、なくて...」”

 

 きずぐすりのスプレーを、メガディアンシーは蒼玻の手から取り上げた。

 

 ”「背中、服も破れて血まみれで、酷い有様ですよ…?」

 

 「うぅっ...そんなことに...まあそういうこともありますわね…うっ染みる...」

 

 ”「応急処置だけではとても戦わせられないのは、蒼玻さん、貴方もなんですよ…?」”

 

 「そう言われても、わたくしが...俺が行かなくて、誰があのビルに行って副会長を一発殴ればいいんだよ…。

 

 うっ、なんか言われたら背中が痛んできたな。」

 

ー*-

 

 「見えるかお転婆次女。

 

 かつてシキジカ狩りをした武将はこんな気持ちだったんだろうな...!」

 

 モニターに何百枚もの監視カメラ映像が映し出され、そのうち1つ、暗い裏路地を小走りで進む蒼玻とメガディアンシ―がアップになっていた。

 

 「…でもお姉ちゃんはうまく、直接屋上からビームが届かないところに入ってる。このまま、屋上から照準できないビルのそばまで来れば、お姉ちゃんの勝ちじゃないの?」

 

 「そうだな。砲座から直接撃つことはできない。ビル影は射界から外れた死角だ。

 

 なんだってそうだ。ただの(ムゲンダイ)エナジーでは攻撃にロスが大きい、だからテラバーストへ変換した。

 

 ポケモンを砲撃するビーム兵器ではとても認められない、だから対ゲリラ・伝説ポケモン兵器と書き換えた。

 

 人の心は簡単に操れない、だから本当はキーストーンで代用する予定だった。」

 

 なんだって替えが効く。使い物にならない部品は取り変えればいい。適切でない箇所は挿げ替えればいい。

 

 「だから、射点も代替する。」

 

 「…カスオヤジ、そこまで...」

 

 「反射モードを起動。航空障害灯全系統をハック。」

 

 >ステラーシステム照準系 反射照準モードへ移行

 

 >監視カメラ系統 照準系へ接続

 

 >カメラズーミング測距 スタート

 

 >航空障害灯掌握完了

 

 >第15射 単発0.5秒 スタート

 

 ーEmulated_”じめん_テラバースト” powered by ステラーシステム! 

 

 ーリゾートホテルワカナエ駅前2番航空障害灯は こうげきを はねかえした!

 

 監視カメラの中で、メガディアンシーの胸を、極細のビームが貫いた。

 

ー*-

 

 (後ろから、後ろから来たのはわかる…でもセンタービルは前方!後ろからなんて...)

 

 >第16射 単発0.5秒 スタート

 

 蒼玻と、煤にまみれたメガディアンシーが、背後へと振り返る。。

 

 ーEmulated_”はがね_テラバースト” powered by ステラーシステム! 

 

 空を仰げば、ギリギリ見えるか見えないか、あまりにも細いながらもしっかりとした光の線が、センタービルの方角からワカナエ島の外、ワカナエ駅前の方角へと伸びていくのが見える。

 

 ーワカナエ銀行本店1番航空障害灯は こうげきを はねかえした!

 

 メガディアンシーの胴体、巨大なピンクダイヤを、光線が貫通する。

 

 (な...高層ビルの警告灯で反射していた...!?ということは、逃れる方法は...)

 

 ない。

 

 ワカナエシティにある60m以上の高層ビルはフロックスセンタービル以外に16、そのすべての頂部に航空障害等は対角線上についている。高いビルがさほど多くないワカナエ市内で、それらのビルすべてから死角となるポイントが、移動し続けられるほどあるだろうか? 

 

 (詰んでる...!?)

 

 爆発―メガディアンシーの全身が赤炎に呑まれる。

 

 「ッ...戻って、ディアンシー!」

 

 ”「まだ、まだやれます…!」”

 

 そうは言っても、煙が吹き飛ぶと同時にメガシンカも解除され、ビルの外壁にもたれかかって荒い息をしている。とても出し続けられる状態ではない。

 

 「いいから休んでろ!」

 

 ノブレスボールにディアンシーを回収し、「こうなったら一か八かだ...!」叫んで、蒼玻は裏路地をジグザクに走り出した。

 

 背後に着弾ー盛大に身体が吹き飛ぶ。

 

 前方に着弾ーあわてて伏せて頭をバッグで守る。

 

 左へ着弾ー右方にあった電柱の影に飛び込んだ次の瞬間、爆風をくらった電柱がグラグラひしぎ始める。

 

 >第20射 用意

 

 >ワザタイプ変更 Emulated_”ステラ”タイプへ

 

 >防御変数計算完了 必要エネルギー量計算完了

 

 >光学測距・レーダー測距完了

 

 >4、5番砲エネルギー充填完了

 

 >4、5番砲誤差修正完了 

 

 >第20射単発射撃0.1秒間 スタート

 

 ーEmulated_”テラクラスター” powered by ステラーシステム!

 

 -ワカナエ新報メディアビル2番航空障害灯は こうげきを はねかえした!

 

 -ワカナエシティ市役所庁舎1番航空障害灯は こうげきを はねかえした!

 

 2条のビームが、まったく違う方向からクロスするかのようにして、蒼玻の背後へと迫る。

 

 光の筋が、ヒラヒラした着物の袖を、そして、袴を貫いた。

 

 爆発。

 

 ぼろきれのように、上へと打ち上げられ、そしてアスファルトに落下する。

 

 「う、ぅ...」

 

ー*-

 

 「これがお前らの終点だ。どれだけ強がろうともな。

 

 どこへ行ったかよくわからず姿を見せない魂の次は、魂を宿すべき肉体...もはや替えも効くまい。取り返しもつくまい。

 

 さあ、死ぬぞ、お前の姉が…!お前の姉の身体が...!」

 

 「貴方...アンタ...!」

 

 「さあ、絶望するんだカグヤ・フロックス!」

 

ー*ー

 

 足の感覚がない。左腕が猛烈に痛い。

 

 服が血まみれなのがわかる。

 

 ...それでも、それでも、こんなところで、終わるわけには...!

 

 「カグヤ...

 

 ...アオバちゃん...!

 

 俺は、俺は...!」

 

 あっ...

 

 足に力が入らない...立てない...足が...

 

 ...足がある気がしない...

 

 俺は...もう...

 

 「クソッ...」

 

 ーEmulated_”テラクラスター” powered by ステラーシステム!

 

 今世は、今世こそは、あっさり死ぬわけには...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バザギリ、しんくうは。」

 

 ビルが斜めに両断されてズレ、迫るビームを阻んで大爆発し、すべてを覆い隠した。

 

 「おいおい、三日会わざれば刮目せにゃならんのはお嬢様もか?しばらくってわけでもねえうちにずいぶんと口汚くなってんなぁ。」

 

 「…だ、れ...?」

 

 「組織犯の半は大事なことを分かってねぇ。名前を名乗り、知られる犯罪者なんて長続きしねぇんだよ。だから俺はヌスビトさんにすら名前を教えてねぇ。まあボスのことだから知ってるんだろうがなぁ。」

 

 カグヤをさらったその男は、片手に山刀を下げ、作り物の笑みを満面に貼り付けて言った。

 

 「…!?誘拐犯!?何をしにきたのかしら!?」

 

 「おいおいお嬢ちゃん、無理して叫ぶんじゃねぇよ。血反吐を吐くような苦しみっつってもマジで血を吐かなくていいんだわ。内臓がやられてやがるぞ。」

 

 「…それでも、それでも」

 

 「あー、だから、無理すんな。そのままだと長く保たねぇぞ。

 

 ベラカス、さいきのいのりBREAK。」

 

 まあ内出血とか脳出血とかヤバくなることもあるし後から病院行った方がいいけど、とりあえず足はくっついたし血は止まったぜーそんなことを、男は告げた。

 

 「まあいろいろ納得できねぇだろうよ。

 

 助太刀、ってやつだ。どうやらクワズよりもお前に協力したほうが儲かりそうだってヌスビトさんが言うんでなぁ。」

 

 「…感謝は致しますわ。けれど、これがすべて終わったら、ジュンサーに突き出しますわよ。」

 

 「ハハッ、そん時はそん時だなぁ。さっさとトンズラするだけよ。徹頭徹尾俺の事情で動いてるだけなんでなぁ。

 

 さて、もう立てるだろ?行くぜ。」

 

 「行くって、どこに...?逃げ場は...」

 

 「フン、俺たちを見くびるなよ?

 

 確かに砲座と障害灯からは逃げられねぇ。ほとんどどこにいてもビームが届いちまう。だけどな、ステラーシステムってのは洒落なんだ。」

 

 「洒落?」

 

 「テラスタルのエミュレーターだからステラー、星型の砲配置だからステラー...そして、『恒星系(stellar system)』なんだよ。

 

 複数のビーム砲、反射のための障害灯...それに、索敵と照準のための機械。3通りのシステムをそれぞれ複数台運用するからステラーシステムなんだろう。そして、照準のための機械は間違いなくカメラ、街に溢れかえっているカメラと言えば...」

 

 ブンと山刀を投げつけ、男は監視カメラを破壊した。

 

 「俺たちは犯罪集団だ。監視カメラの死角を通ってフロックスセンタービルへ行く方法くらい、当然知ってるに決まってるだろ?」




「フラダリ転生」に続き、謎テクノロジーでテラバーストを再現する試みが止まらない...

次回予告

 ついに相対することとなった、因縁の敵、副会長クワズ。

 「やあ、ようこそ、弊社会長殿下?」

 「深窓令嬢、お前が、本当のアオバ・フロックスじゃないって話だ。」

 「新時代の礎となれること、あの世で俺に感謝するがいい...!」

 ユキコシギギギアルがすっぽり通過できるほどに拡大した「世界のヒビ」ーカグヤが絶望し共鳴すれば、2000年前の破壊神が再び顕現してしまうーユキコシ、そして世界の命運を賭け、蒼玻はクワズへ、最後の戦いを挑む。

 「おままごとはもはや終わりだ。」

 「#38 ラストバトル」
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