お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
ずっと、俺の声や心がうっすらとわかっていたし外も見えていたアオバちゃんに、俺の拙い言葉を伝えることが意味があるのか、これを書いている今もわからないでいる。
アオバちゃんがこれを読んでいるということは、俺はアオバちゃんの身体からいなくなったということだろう。
ずっと、そうなるのではと思っていた。アオバちゃんがオーベムの見せた夢に現れた時には、特に。
ありえないんだ。俺は前世で転生するような何かをしてはいないし、アオバちゃんだって特に原因はなく殴られて昏倒しただけだから…俺が転生してくる理由がない。にもかかわらず転生してきたことに意味があるとすれば…それは、アオバちゃんと、それからこの地方が、俺を必要としているからじゃないかなって。
だから、アオバちゃんがこの身体に戻ってこれたのなら、俺が成仏したのなら、俺がアオバちゃんとこの余生世界にとって不要になったということなんだろうな。
アオバちゃん、ユキコシ地方は、何かしらの危機から救われたか?アオバちゃんは?会社は奪還できたか?良心の仇はとれたか?
…きっと、できたんだろうな。俺と俺のポケモンがそれをやる。できなくても、それをすることが俺の…俺の”天命”なら、俺は存在を賭してもアオバちゃんにつなごうとするはずだ。だからきっと、俺は成し遂げたんだな。
ただひとつ心残りがあるとすれば、ポケモンたちだ。
特にイーブイ。奴にとって、生きている意義もなく死ぬままだったところを救い、必要とした俺は、きっと生きがいなんだ。
アオバちゃん、俺のポケモンたちにとって、いい主に、そして求め求められるかけがえのない存在になってくれ。
俺が信じたアオバちゃんのことを、みんなは信じてくれる。だから、みんなを裏切らないで、そして俺とみんながつなげたものを大事にしてくれ。カグヤやポケモンやそしてこの世界だけじゃない、アオバちゃん自身もだ。
…それでも、アオバちゃんが、それよりもしたいことがあるのなら。
カグヤだってアオバちゃんの身体を大切にしてほしかっただろうに、俺は身を投げるような無謀を何度もしている。清水の舞台から飛び降りるような…いや、これはちょっと違うし、アオバちゃんにはわからないかもしれないが。だから、アオバちゃんの行動に文句を言えないし、言うつもりもない。好きにやってくれ。きっとそれにみんなはついてきてくれる。思いをぶつけるべきときにはぶつけてくれ。
俺はピンチヒッターとして求められて居るだけなんだ。俺が捻じ曲げた人生を背負う必要はない。アオバちゃんは、本当にそうしたいのなら、俺のことを忘れて、俺のことを気にしないで生きてくれ。…きっとこう言っておかないと、俺のために何か、なんて思いそうだしな。
最後にこれだけは書いておきたい。
短いアディッショナルタイムだったけど、楽しい余生だった。なんの意味もなく誰からも必要とされず、ただ誰とでも替えが効く一人として漫然と生きてきた俺に、かけがえのなさ、生きる意義、それらをくれた。誰かのために生きられた。存在していることが必要だと思えた。それが嬉しかったんだ。
ありがとう。
みんなを、そして蒼玻・フロックスが生きてきた旅を、アオバちゃん、お前に託す。
よろしくな。
中橋蒼玻より
ー*ー
アオバは手紙を握りつぶした。
「あら、あら、あらあらあら...」
涙がこぼれる。
「無償返却なんて認めない。」
冗談ではないーどれほど彼女が、彼に世話になったと。
「転生の理由なんて考えない。」
彼の役割、使命?転生の仕組み?そんなことはどうでもいいー彼女の感情の前では些末なことだ。
「勝ち逃げなんて許さない。」
だから、この、至高かつ至宝と自認する令嬢は怒っていた。燃えていた。決意していた。
「天命なんて気にしない。
人生なんて背負わない。
存在意義なんて問わせない。
蒼玻くん…」
-さあ、新しい旅の、準備はよろしくって?