お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
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「ファイアロー、ぐれんのつばさっ!」
ボールを放り投げるなり、金色の飛跡が宙を貫く。
「ダイヤストームですわ!」「ウェーブタックルだよ!」
ーオンリョ~~~~ゥン!!?
渦巻くミカルゲが、いくつもの攻撃に貫かれビクビクと震えて見せた。細い左目に赤い焔が灯る。
-ミカルゲ<
瞬間、視界を、赤が埋め尽くした。
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「っ...皆さん、生きてますかしら?」
「…な、なんとか耐えれたよお姉ちゃん...」
「何人か気絶してるけど無事なんだよ…」
「ぐうじさま、身代わりの札が…もう...」
「…コイツの焔は実体がない代わりに魂を直接燃やすみたいなんだよ。結界を強化するんだよ。
イダイトウお疲れ。
招来、ブリムオン!」
「ヤドラン!」「ルージュラ」「ネイティオっ」「ムシャーナ!」「アヤシシィ」「ヨノワール!」「来られよドータクン!」
「「「「「「「「トリックルーム!」」」」」」」」
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多重のトリックルームが生み出す摩訶不思議な空間にお札や幣が飛んで貼り移り、トリックルームごと透明化していく。
「シャドーボール!」
再び呪文祝詞に集中しだした巫女・神官たちのことはもう気にも留めずイチシノは叫んだ。一方でトリックルームを張り終わったポケモン達も加勢して思い思いにワザを打ち出していく。
…だが、ミカルゲ側にこたえている様子はない。祠石から身体を出し入れしキシャキシャ笑い「オンリョ~~~~ゥン!」と如何にもな鳴き声を上げあくのはどうをまき散らしている。手が付けられない。
「こんな禍々しいところ長居したくないんだよ、マジカルシャイン!」
「蹂躙して、シャドーダイブ!」
「ここで終わっていただきますわ!ムーンフォース!」
共有された危機感に基づき、フェアリーの力が殺到し、そしてミカルゲの正面に「ヒビ」が出現して飛び出してきたちびギアがミカルゲを貫通していく。
渦から赤い人魂が飛び散っていくのが、爆炎越しに見える。
「これは...」「いや、まだなんだよ!ひかりのかべ!」
白面で覆った双眼は煙の中に何を見出したのかー果たしてその見通しは正しかった。
あまりにも巨大な、人ひとりすっぽり入りそうなシャドーボール。地面を削り焔を巻き込み突っ込んでくる。
「ダイヤストームで迎え撃つのですわ!」「ヒヲマトウハネ、まもるっ!」
ひかりのかべとまもるの二重障壁が突き破やれ、ダイヤの渦に切り刻まれるようにして、火の粉と土煙を纏い、爆散。
アオバの純白の髪が茶色く汚れ煤ける。
「ビビヨン、ぼうふうで視界を!」
-吹き飛ばされた土煙の向こうを見て、カグヤは少しばかり、見えるようになったことを後悔した。
山城のふもと、燃え盛る幻焔に包まれる谷間、旧ウスベニシティから、無数の人魂が舞い上がり、次々とミカルゲへ吸い込まれていく。
ーミカルゲ<
「いけないんだよ!ミストバーストっ!」
ピンクの閃光ーだが、間に合わなかった。
ミカルゲがくにゃりとへし折れ、しかし、地面から、空から、次々と祠石に人魂を吸い込んで何事もなかったかのように嗤う。
ブリムオンが、がくりと倒れた。なのにミカルゲはピンピンしているー悪霊の集合体だけあって、狂える怨霊の人魂を取り込めばいくらでも回復できるらしい。
「そんな無法繰り返されてはたまったものじゃありませんわよ!?」
シャンデラ、
8本のレーザーが、空をなぞり、飛来する人魂を薙いでいく。
ミカルゲはケタケタ嗤い、ピョンと跳ねた。瞬間、ミカルゲとシャンデラの背後に杭が出現する。
ーミカルゲ<
シャンデラががくりと地面に落下する。
「こっちものろいですわっ!」
すみませんわねーウィンクで遺憾を伝えつつ。無限回復には回復速度を超える割合ダメージだと言わんばかりに2本目の杭が出現した。ついにシャンデラが戦闘不能になる。
さすがに少々効いたのか、ミカルゲのいたずらな表情が歪み、ブルブルと震える。
両目がまぁるく広がり、その奥に、赤い輝きが強くまたたいた。
ーミカルゲ<
ーミカルゲ<
声を発する余裕もなく、アオバはふらりと、後ろへ倒れ込んだ。
「お姉ちゃん!?」「いけない、憑かれたんだよ!」
ー*-
「兵の疲弊激しくポケモンへの補給もままならず、恐れながら殿の御下命あれども出兵能わず」
「殿、グンジョウ方とウスベニ方、どちらを大将としても我が武士団は割れまする…」
「吾が直接出よう。キンゴ殿亡き今、吾が大将となるよりあるまい。…せめて吾に嫡男さえいれば...」
(これは...声...?)
「『卑劣なるヨシノ武士と言えども、我がウスベニ武士団が後詰にありては貴殿の城を攻め続けること長続きせざるべし。枕を高うして籠城されよ』そう伝えよ。」
「アイツ裏切りやがったぞ!」
「馬鹿な!この雨の中で!?」
「いけません!砦、既に陥ちてございます!」
「南ジョウトの野蛮人どもめ!最初から吾らをユキコシの外へ引きずり出すつもりでっ!帰るぞ!」
「し、しかし殿、そう弱気になられては...!」
「申し上げます!寺院兵、砦を追い落とされユキコシへ撤退!このままでは吾らは挟み撃ちですぞ!」
「…全軍、北へ撤退!」
(...まさか、これは、ウスベニの死霊たちの、記憶…?)
「彼奴め当主自ら突っ込んで来るだと!?なんの恨みがあると言うのだ!」
「右か?左か?」「殿は右の道を!拙者はここで踏みとどまります!」「それでは某に旗を!左で囮を務めまする!」「皆の者...」
「全軍かかれーっ!忌々しいウスベニの血で山を染めろっ!」「この坂を通してはならん!ユキコシの命運吾らの奮闘に掛かれりっ!」
「遠くホウエンではこう言うらしいな…天下よ見るがいい…『メガシンカ』」
(黒いメガレックウザ!?戦略級ポケモンですわよねっ!?)
「殿…ウスベニよ…どうか、御無事で...」
「貴様、遅参するとは何事だ?全軍でウスベニ武士どもを皆殺し、そう伝えたはずだが?貴様も敵もろとも叩き斬ってくれるわ!」
(...「ウスベニ夜話」どおりの滅茶苦茶な武将ね、ヨシノのとのさま…)
「なんとか…帰ってこれたな…籠城の準備だ。」
「ヨシノ武士がユキコシへ攻め込みウスベニシティを焼き討ちにするという噂が…民草共が逃散しております!」
「よいよい、去る者を追うな。」
「殿…しかし…」
「この城都の文物は、燃えてしまうには惜しい。
ウスベニ城と吾らの命だけを守るわけにはいかぬのだ。」
(...これが…
…彼の、ノブレス・オブリージュ…)
「だが吾はやられるつもりはない。このウスベニはフスベシティとチョウジタウンより西ユキコシへ入る入口、蛮族どもに抜かれるわけにはいかん。」
「殿!敵、関を越え攻め入ってきます!」
「在地のサムライたちはどうした!?ユキコシには三神の
「それが、奴ら腑抜けになったようで...」
「くっ...そもそもどうしてそんなに進軍が早いのだ...そうか…裏切り者どもめ!」
「申し上げます!グンジョウポートとの往来を遮断されました!」
「コンジキおみやへ援軍を要請しろっ!ナノハナの連中にもだ!彼らがやってくれば何も問題はない...」
「殿、ナノハナ武士団は...」「ナノハナ武士団は御家騒動中で、出兵能力はありません。」
「コンジキおみや、出兵を拒否してきました!」「命令をしたはずだ!コンジキシティなどとっとと滅ぼしておけと...!それをお前らは止めた!盟を結べと!みんな嘘つきだ!ぼうずどもさえも!」
「殿…
ウスベニシティはもはやおしまいです。殿の命令は諸将に届いておりませぬ。こんな状態で、これ以上ウスベニ谷間を守ることは...
拙者の城へお逃げください。サツキタウンならば守りようもあります。」
「もうよい。」「は...殿、なんと…」「このオンバーンの特性は『おみとおし』『テレパシー』でな…
貴様も裏切り者だったのだな。」
「申し上げます!敵、目前に...殿!?」
「裏切り者のサツキ城主は吾が誅した。これより吾らは最期の決戦を行う!たった500人だが…付いてきてくれて、ありがとう。」
「カッカッカ!ヨシノ殿の許可は頂いたぜ!これで今日から、俺が、ウスベニの主だ!」「簒奪者め...末代まで悔いるがよいぞ...!」
(これが、旧ウスベニシティの、滅亡…)
ー「憎い。裏切り者が。」
「殿…あいえ魔王閣下、占領下のウスベニシティ、謀反一揆により壊滅とのこと!」「使えぬ奴だなしょせん裏切り者か。もう一度滅ぼしてやれ。」
(こんな、強い感情…!)
-「憎い。殿を殺し民もポケモンも皆殺しにしたヤツが。」
「魔王閣下、御覚悟!出でよラプラス!」「レックウザは墜ちたであるか…金柑頭め...是非に及ばず。」
(わたくしの…わたくしひとりの心では…)
-「憎い。ヨシノのすべての人間が。」
「ハイドロカノンでも消えないっ!なんだこれは!」「火が迫ってくるぞぉ!」「こんなところで...俺とゴウカザルが…天下を取るはずだったのに…」「ボスゴドラァァァ!」
(怨嗟に、呪詛に、怨念に、呑まれてしまう…!)
-「憎い。ウスベニを捨てた者共が。」
「夜な夜な人魂が出て街を燃やすんだとよ。」「作物も育たないし次々と狂う…こんなところ住んでられるか!」「聞いたか?例の疫病、新ウスベニシティに出たんだってよ…」
(助けて…誰か…助けてくださいまし…!)
ー「呪え。祟れ。誘え。吾らに仇なすすべてを」
ー*-
「…そういうわけにも行きませんわ。」
ブツブツ…アオバは暗い顔で呟く。その背には...ミカルゲが、生えていた。
「…『ここから先は一方通行』とでも、言えばよろしくって?」
巨大なミカルゲ、それが、まるで根を生やすかのように身を突き出してアオバに突き刺し、嗤っている。
「お姉ちゃん...」
メガディアンシーが膝をつき、アオバの指の上のキーストーンが曇り、メガシンカが解ける。
「ダメだ妹さん、もう憑かれてる、近づいたら巻き添えになるんだよ!」
手を伸ばすカグヤ。身体を抱きとめるイチシノ。
「でも、でも...!」
黒く濁った瞳。アオバは、ミカルゲと同調し、ケタケタと嗤う。
「ディアンシー...」
「ゼロ距離ムーンフォースBREAK!」
金色の粒子を纏うピンクの閃光が、アオバの背越しに、ミカルゲを呑み込んだ。
「「え…」」
-オンリョ~~~ゥン!?
眩い閃光の中、ミカルゲが苦しみの叫びを上げ吹き飛んでいく。
「…わたくしとしたことが少々手間を取りましたわ。けれどこのわたくし、下賤な心に堕ちはしませんのよ!
イーブイ、ハイパーボイスですわ!」
妖精の力を込めた大音波。人魂たちが消し飛ぶ。
「…やっと、わたくし、とっくに死んだ貴方方が何を求めていたのか、得心しましたわ。
サマヨウミタマ!わたくしに力を貸しなさいなっ!」
力を貸すと言われても…サマヨウミタマはしばし困惑のそぶりを見せたが、「まごまごしてるんじゃありませんわよっ!」との声とともにリーフィアへはつげんちょうせいしたイーブイのツルによってミカルゲへと放り投げられた。
守り神と悪霊が、衝突する。どうしたことか、2体は離れることができない。
「なんで!?聖と魔、反対の性質のはず!」
サマヨウミタマの涼しい双眸と、ミカルゲの歪んだ片目が、視線をバチバチと交わしながら必死に距離を取ろうとする…だが、N極とS極のごとく、やはり離れられない。
「違う!よりしろさまはウスベニ鎮護、怨霊はさまざまなモノへの恨み呪い…でもどちらの想いも由来は旧ウスベニシティで死んだサムライや町人の霊魂なんだよ!」
あれほど騒がしく飛び回っていた人魂の大群が、静かに城址の周りをグルグルゆっくり旋回している。
「その通り…ですから、きっと両者は...
…そしてわたくしたちは、分かり合えますわ。想いを伝えられますわ。
畏れ戦うのではなく、敬意を
コツ、コツ...夜に、令嬢の足音が響く。
「お姉ちゃん、危ないって!」「お姉さん、近づかない方がいいんだよ!」
「…静かに。」
貫禄ーカグヤもイチシノも、息を呑む。
「フロックス家が当主、アオバ・フロックスが告げますわ!」
大きく、息を吸う。
「貴方方が守りたかったもの...ウスベニも、ユキコシの平穏も、守られましたわ。そしてこれからは、わたくしたちが守っていくのです!そしてその誇らしき心は、すべての民が受け継ぎ、天地に祝福を満たしていますわ。
ですから…
…もう、安らかに眠る時ですわ。その心を静める時が来たのですわ。強い憎しみに囚われ、いつしか何もかもをも忘れただ呪いの化身となった貴方方が、立ち返り、幕を引く時ですわ。
今まで怨霊だと、誰も貴方方を畏れても称えなかったかもしれない。けれどわたくしにはわかりましてよ、貴方方の未練が。守り続けたいという未練、許したくないという未練、死にたくなかったという未練、羨ましいという未練…許せないという未練。」
幽霊とはけだし、前世への未練を忘れられないで残留した霊ー思念体なのだ...それを理解してやることが、調伏への大事な一歩なのだからと、アオバは想いを込める。
「関係ない方に、後世に祟るのが、貴方方が守り伝えようとしたウスベニ武士の矜持かしら?
わたくしにだって未練がありますわ。取り戻したい、失いたくない、ちゃんと想いを伝えたい…!
…ですからわたくしは今を歩みます。それがどんな結末へ向かうにしても。
そして、故にこそ…
…いずれユキコシの至宝と呼ばれるこのアオバ・フロックスの言葉を以て、その未練がましい旅の一巻を以て、ウスベニ武士団の有終の美となすのがよろしくってよ。」
祟りを畏れ祓うのではない。英霊を称え興し、そしてそれゆえにこそ美しく退くべきだと諭す。
「貴方方の名は、役目は、想いは、受け継がれますわ。突けば消え果そうな平穏だけれど、今を生きるわたくしたちがそっと支え続けていくのですから。」
(わたくしの未練が、未練で終わりはしないように。)
「ただ、見護っていては、くださりませんこと?」
ー*-
サマヨウミタマとミカルゲが、ともに激しく燃え上がる。
ミカルゲが、怒りの叫びを上げた。
ウスベニ城址の上空に、無数の人魂が谷間から山を伝い集まっていく。
ーミカルゲ<
サマヨウミタマが、悲し気な声を立てた。
金色の光が全身に沸き上がり、あたかも金メッキのごとくサマヨウミタマを染め上げ、光量を爆発的に増大させていく。
-サマヨウミタマの マジカルシャインBREAK!
まるで天と悪意そのものが降りてくるかのように、シャドーボールが2体を呑み込む。
闇の中で、サマヨウミタマが栄光の歴史そのものかのように果てしなく輝く。
閃光と闇の点滅。脳が堪えられないほどの光刺激で次々と仲間が卒倒する中、アオバとカグヤは手で目を半ば隠しながらも逸らしはしない。
2体を包むシャドーボールが、城の周りを漂う人魂をいっそブラックホールかのように一気に吸い込み、そして、闇が爆発した。
城址が、闇の力に呑まれたかのようにー
-そして、内側から光が食い破る。
旧ウスベニシティの真の夜明け…その中で、寂しい響きの断末魔が響く。
祠石が、ごとりと転がった。
日の光がさんさんと照らす谷間に涙のような雨が降り始め、城下町の焔はひっそりと消えていった。
「脳が堪えられないほどの光刺激」←リアルポリゴンショックをするんじゃない!
なお、完全に祓われたわけではなく、弱まりこそすれウスベニの谷間の怨霊はなおいます。洒落怖だって供養して収まったように見えても決して完治ではないしね。