お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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#47 結局世の中幽霊より人間の方が怖いってn回言われてるから定期

ー*-

 

 ここまで皆さんが読んできたように、ウスベニおみやが建てられたきっかけの一つ、ヨシノ大禍は、巷では焼け落ちた旧ウスベニシティとウスベニ武士団の祟りによると言われています。

 

 しかし真実はもう少し複雑なのです。

 

 亡者の祟りは強い指向性を持つことは確かにあります。しかしそれは地縛か憑依によるものであり、遠く離れた街一つという概念的指向性は持ちえません。ゴーストポケモンが実証してくれるのは「憑いた相手か、自分が術をかけた場所にしか、呪いは効かない」という事実です。それを裏付けるように、ウスベニおみや霊域、城下町の霊魂の祟りは、侵入者にのみ効いています。

 

 ではウスベニの祟りとは何なのか…それは亡者の祟りだけではなく生者の想いなのです。

 

 ウスベニのとのさまには娘がいました。彼女はコガネシティに当時存在した大寺院にいて、その跡継ぎと結婚していたことが明らかとなっています。

 

 すべては父と仲間の無念を晴らすために...彼女は嫁ぎ先たる大寺院を説き伏せたのでしょう。そして、当時ゴースト・エスパーポケモンの不可思議の研究はあまり進んでいなかったので、大寺院の大呪が容易く成功したことは想像に難くありません。

 

 重臣の裏切りによって滅ぶ前、ヨシノのとのさまの周辺には怪しいぼうずがうろついていたと記録されています。ヨシノシティに近い29番道路では『まがったスプーン』がたびたび見つかっています。

 

 研究が示しているのは、このような悲劇を引き起こしつつもその一方で、晩年まで娘は夫と仲睦まじかったということです。すなわち、2人は恨みと利害によってつながったわけではなく、ウスベニの祟りをヨシノに導いて城下町ととのさまを焼き滅ぼしたのは、大寺院の跡継ぎがウスベニのとのさまの娘に向けた愛ゆえに、亡き娘の父の供養として仇を取ったから……そんな仮説が成り立ちます。

 

 (別冊オーカルチャー「ユキコシ特集」66頁「研究 神霊のおみやウスベニ」より抜粋)

 

ー*-

 

 「…どうして悪霊ミカルゲに憑りつかれなかったのか、お姉さんが祠で確認して『もうここに用はない』と判断したのは何故なのか、わかったよ。」

 

 「…そう。」

 

 「これはあくまで可能性なんだよ。そうかもしれないって話なんだよ。普通に考えてありえないんだよ。

 

 …あの『憑依霊の残渣』、残渣じゃないのかも。

 

 我々には残りカスにしか『視え』ないけれど、ウスベニの怨霊は感知していてヨシノの魂だと思った。それで、呪おうとしたけれど呪うことができなかった。…ちゃんと霊魂ではあるけれど、それを『視る』ことができないし呪えもしない...

 

 …根本的に、我々の知っている人間の魂じゃないかもなんだよ。」

 

 「…『異世界』ってわかりますかしら?」

 

 「お姉ちゃん、それを言うのは...」

 

 「アローラにあるって言うウルトラスペースとかのことでいいのならなんだよ。」

 

 「いいえ…

 

 …もしポケモンが存在しない、アルセウスが創ったのでもない…そう、空想上にしかポケモンが存在する余地のない並行世界が存在したとして、霊魂(ゴースト)は、その世界ではどのようになるのか、わかりまして?」

 

 「…そんな世界、想像もつかないんだよ。けど…

 

 …ポケモンがいないって言うのは、ポケモンにまつわる(ことわり)がないってことなのかなんだよ?」

 

 「ええ。」

 

 -物理法則と、ポケモンの法則。いつか蒼玻が言及した提言に、期せずしてアオバの考えは近似していた。物理法則ではありえないファンタジックな法則、体系…それらが存在しない世界で、霊は同じ存在でいられるのか?

 

 「…少なくともウスベニおみやだけじゃない、霊魂ゴーストのプロを自認してるトレーナーは四天王からオカルトマニアに至るまで再考を余儀なくされるんだよ。だってゴーストポケモンが(よろず)のことを教えて来てくれたんだから。

 

 …というか、ゴーストポケモンが存在できない世界で、霊魂(ゴースト)が存在できるのかもわからないんだよ。原子の塊としていずれ銀河に還るだけだとしても…

 

 …そんな霊魂の話を、お姉さんはしてるの?」

 

 「ええ。そして、そんな異世界の霊魂が憑依してこの世界で身体が死んだときにどう挙動するのか、聞いているのですわ。」

 

 「わかるわけないんだよ。『視え』る霊になるのか、呪える霊になるのか、怨霊が感知できるのか…そして祟りをはじくことができるのか、すべては未知数なんだよ。」

 

 「ならばわたくしは、そうであったと信じますわ。

 

 霊のフォーマットが根本的に異なる、ゆえにこの世の理では対処できないし、ウスベニおみやにこれ以上頼っても仕方がない...そうであるのだと信じますわ。」

 

 

 「…お姉ちゃん、私にはもうあんまりついていけないけど、これだけ言わせて。

 

 それは希望的観測だよ。」

 

 カグヤの言う通りだ。

 

 本当は、ただの残りカスに、異世界の幻影を見ているのかもしれない。

 

 まさしく幽霊の正体は枯れ尾花かもしれない。

 

 …そんなことは重々承知だ。それでもアオバは、蒼玻の魂がまだ存在すると信じたかった。

 

 「予定通りはてやまに挑むつもりかなんだよ?」

 

 「ええ、神と謳われる存在ならあるいは…」

 

 カグヤが後悔のあまりうつむくー今となっては、かつてトキトビで蒼玻に与えた希望が、あだになっていた。

 

 「…か細い希望だけど、すがる意味はあるんだよ。

 

 けど、もう一つのアプローチを薦めるんだよ。」

 

 「もう一つ?」

 

 「眠っている者を呼び覚ますことはできても、叩き起こすのは我らの力ではないんだよ?

 

 霊魂のアプローチじゃなくて、科学のアプローチ…神経脳科学のアプローチでもいいと思うんだよ。」

 

 アオバ自身が前に言ったとおりだ。「魂」はそれ自体が「経験+思考回路で構成される概念(イデア)であり、それ以上でもそれ以下でもない…ならばオカルトではなく、脳神経の電気信号という方面からもアプローチはありえるのだ。

 

 「待って、それは無理だよ。だって電磁気刺激で精神や脳内に干渉できるとしても、それで眠ってる魂に干渉できるわけ...電気で魂を操作できるならでんきタイプがゴーストタイプに効くはずだよ!?」

 

 「妹さんの言う通り、もちろん普通にやっても無駄なんだよ。

 

 脳神経回路の電気信号を励起させて脳内の魂がどうにかなるのなら、お祓いなんて要らないんだよ。

 

 だから、これをあげるんだよ。」

 

 イチシノが、お札を一枚差し出す。

 

 「…これは?」

 

 「『因縁生起』って考え方がある、すべてのものごとは結びついているんだよ。

 

 心霊と身体を結び付け、その連絡を深める…

 

 …そのために、身体を神体に見立てて、神体や依代の中の神を興す術式を改変したんだよ。」

 

 すなわち、(もし本当にいるのであれば)生体脳に憑依した魂を強化し、そして生体脳と強く結びつけるお札だ。

 

 「どうしてそこまでしてくださるのかしら?

 

 あれだけ怨霊が怒り狂った以上、わたくしが求める魂は、恨みを買うような…

 

 …異世界のヨシノシティ(東海地方)出身かもしれませんのよ?おみやのぐうじとして、せっかく収まったウスベニの怨霊が再び暴れるかもしれないような手助け、するべきではないのでなくって?」

 

 「…お姉さんはその魂を、好き?」

 

 「もちろんですわ。」

 

 「愛憎って並び称されるんだよ。憎しみ、恨みと同じくらい、その対極であって同根、人間の心を根源的に支配し心の底から沸き上がる力、『愛』って、怖い感情なんだよ。

 

 キミはその憑依霊?を愛している。それなら、黙っておくんだよ。扶けておくんだよ。

 

 邪魔をしたらバンバドロどころかレイスポスに蹴られるんだよ。

 

 グンジョウおみやに行くんだよ。生体電気からゼクロムに至るまで識ってるあそこなら、もしかしたらキミを扶けてくれるんだよ。」




Q:なんでイチシノぐうじはレイスポスのこと知ってるの?アイツガラルの伝説なのに遠く離れたユキコシで...

A:仮にも霊を鎮めあるいは興すオカルトのプロを数百年やってるウスベニおみやが、調伏伝説まである伝説的ゴーストポケモンを把握して対策を考えないかというとそんなわけ。


 これにて第伍章、ウスベニ編は完結となります。そして物語は第陸章「電速、超えて貫くべきもの」へ…
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