お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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 最強のチャンピオンユウリの次は最強のぐうじ、最強2連続は冷めるかな…と、テーマを決めてから気づきましたが、もうこのまま「最強のポケモン」までいきますかね。

 というわけで久々に本編更新となります。そういえばシャリタツブレードが無限夢路のUA超えてる...なんでや...


第漆章 冬迫る地、最強を問え
#53 最強不在_where?


ー*-

 

 サンゴジュシティ。

 

 細長いユキコシ地方の中央部に位置する古き港町である。蒼玻の世界での富山・高岡にあたる街だ。

 

 南にそびえたつ雄大な山脈に見守られ、サンゴジュおみやは、港を望む丘の石垣の上に建っていた。

 

 川の水を引き込み全体を堀で囲った丘の上に、白い漆喰が輝く天守が立ち、その背後に巨大なクリアドームがバトルコートとして設置され、そして山側にはちっぽけな朱塗りの鳥居が建っている。

 

 (不思議なつくりだな...天守閣がよりしろさまを迎えるおみやだとして...

 

 /...街から見ればよりしろさまが天守の上から街を見下ろし、山から考えれば、山から招いたよりしろさまが山をしろしめし(把握し支配し)つつバトルをご覧になられる、そういう構造ですわね。)

 

 そのような会話を心のなかで交わしつつ、二重魂魄の令嬢は石段を登り、天守閣の前に来て、そして呆然と立ち尽くした。

 

 「あちゃー…」

 

 妹のカグヤが、秋の風に冷やされた肩を温める上着を羽織りながらー彼女のトレードマークの赤いパーティードレスは肩出しで冷えやすいのだーため息を付く。

 

 行列が、並んでいた。

 

 天守閣の横の脇から曲がってきているその行列が、天守閣の裏にあるバトルコートドームから伸びているのは明らかで、だとすれば100人は並んでいるのだろう。そして、進んでいる様子はない。

 

 「もう4時間か…」「だいぐうじ、今日はもう無理なんかな…」「諦めろってことかしらね…」「せっかくならだいぐうじさまに挑戦したいんだけど…」「ふぁ…眠くなってきた…」「まったく、待たせやがって…」

 

 怒っているというより呆れている感じの声が漏れ聞こえてくる。

 

 「…もし、これは如何なっているのかしら?」

 

 トントン、肩を叩かれたトレーナーの女性は、振り返りざま、目を丸くした。

 

 「いかがってそりゃ…って、アオバ令嬢!?」

 

 「…あら、ご存知でしたのね。」

 

 「ご存知もなにも、あれだけワカナエとグンジョウで大太刀まわりしてニュースになりゃ…だいたい自分で電波にのってるっすよ?」

 

 「…あー…」

 

 (そういやワカナエ大乱の時に生放送したな…/ちょっと、軽々にわたくしの容姿が知れ渡ってるのをそんなノリで扱わないでくださる!?/でも悪手じゃなかっただろ。だいたいどうせだんだん知られていくわけだし?/そうですけれど…)

 

 それが不可能な状況だったとは言え、乙女の姿を全世界に生放送するなら了解くらい得てほしかったのが、アオバの本音だった。

 

 「まあわかったっす。アオバ令嬢もだいぐうじに挑戦するんすか?」

 

 「ええ。せっかくおみやを6つ回ったのですから。」

 

 「最後にして最強のサンゴジュおみやで認められれば、カグヤ令嬢に続き、晴れて7おみや巡り成就者ってわけっすね。いやーすごいっす。」

 

 ートレーナーの女性とアオバには、大きな食い違いがある。トレーナーの女性は「7おみや巡りのおおとりとしてのサンゴジュ」と思っているが、アオバにとっては「あくまで蒼玻の転生騒動解決のためにはてやまおみやの三神を尋ねるための7おみや巡りだったが、6つ目のグンジョウで解決してしまい、ついでに来た」ようなものだ。もっともわざわざ齟齬を訂正することもないが。

 

 「けどまあ旅っすからトラブルも憑き物っすよ。今日はだいぐうじチューリップは不在っす。」

 

 「不在…?それは、行事かなにかしら…?」

 

 と、ここで、今まで黙っていた付き添いのカグヤが、口を挟んだ。

 

 「違うよ。それならそう掲示するし伝えるはずだから、それなのにこうして列になってるってことは、かなりの急用じゃない?」

 

 「ま、そうとも言えるっちゃ言えるっすね。」

 

 「え、なにその言い方…」

 

 「行って見てみりゃわかるっすよ。ひとつ言えるのは、この列のみんなが怒らず並んでいるのは、並ぶとわかっていても、最強と戦いたいって思ってるからっすね。」

 

ー*ー

 

 「最強と戦いたいのはわかるけど、でも私が前にここに挑んだときはこんなに並んでなかったような…代替わりで落ち着かないのかな…?」

 

 「並ぶとわかっている…まるで、長蛇の列は日常茶飯事、という言い方でしたわね。」

 

 そんなことを話しながら、姉妹は行列の横を歩き、天守閣裏へと向かった。どうやらバトルコートドームでバトルがないわけではないらしいのだ。

 

 サンゴジュおみやバトルコートドーム受付で、アオバは単刀直入に尋ねることにした。

 

 「ようこそサンゴジュおみやへ。ジムトレーナーバトルをお望みでしょうか?それともチューリップだいぐうじとのバトルをお望みでしょうか?」

 

 「いえ、チューリップだいぐうじがおられない、とは聞いていますわ。そのうえで、何があったのかをお聞きしたいと思いまして。」

 

 「サンゴジュおみやは、だいぐうじ本人に挑まなくても、ジムトレーナー連戦で成就を認定いたします。本当にだいぐうじを?」

 

 「はい、『ぐうじ』の中でも最強と名高く『だいぐうじ』の名を受け継いでおられるチューリップさんに挑んでこそサンゴジュおみや巡りですから…と言うのが模範的なポケモントレーナーというものなのでしょう。」

 

 ーただ、蒼玻/アオバは違う。なにせ「6つクリアしたならせっかくなら最後の7つ目も」という動機なのだ。

 

 「わたくしはアオバ・フロックスですから。」

 

 「はい、お噂はかねがね…しかし」

 

 「いえ、だから列を飛ばせなんて夢にも申しませんわ。

 

 ただ、訪れた先で難事と思しき事態に遭遇したならば、如何すべきかは明白というものですわ。

 

 だいぐうじ不在は慢性的、けれど捜索しているですとか行方不明ですとか聞きませんし、慢性的にだいぐうじが出奔するトラブルがある、ということなのですわよね?

 

 ならばわたくし、ひとつ、何かしらの手助けをしたいのですわ。」

 

 「…失礼しました。しかし、だいぐうじ不在はだいぐうじの私的(プライベート)なトラブルでして…」

 

 「私的な…?

 

 確かチューリップさんって、私がクリアしたすぐあとに老眼と肺炎で先代が辞めて、まだ1年ちょっと…そう年は変わらないし頻繁に大事なおみやを留守にする私用なんて…

 

 …あ、わかった、恋でしよ。デートだ。」

 

 カグヤの視線が、蒼玻/アオバに突き刺さるー蒼玻のためにアオバがワカナエからグンジョウまで奔走しカグヤに心配をかけてきたことを思えば無理もないことだった。恋は乙女を盲目にするのである。

 

 「まさかそんな。」

 

 「そういう、ちゃんとしてる人に限って、誰かのために無茶苦茶やったりするんだよ。

 

 ね、お姉ちゃん?」

 

 (いや、カグヤ、お前もシスコンだしそんなもんだろ/今この瞬間も「そんなお姉ちゃんも素敵だけどねっ」とか考えてますわよこの子。)

 

 「いえ、そうではなく…

 

 …だいぐうじは、人見知りなんです。」

 

 「「…はい?」」

 

 「ですから、だいぐうじチューリップは人見知りで、2人以上他人がいると逃げてしまうんです。

 

 デートなんてとてもとても…」

 

 絶句。

 

 あんまりな真相に、姉妹はただただ絶句した。

 

ー*ー

 

 「ですから、ジムトレーナー連戦というシステムは、チューリップをだいぐうじに擁立した時から定型化していたんです。」

 

 美少女姉妹(それも有名人)が受付で放心していては目立ちすぎて迷惑になるということで、場所を応接室に移動し、説明は再開された。

 

 「それは...

 

 ...おみやはそれで良くても、ジムとしてよく通りましたわね?」

 

 -ユキコシ7おみやは伝統として維持された祭祀的制度で、その立場は対等かつ代々それぞれに維持されているし、他のおみやが干渉して文句を付けることなどない。グンジョウおみやに至ってはグンジョウポートから移転した上に決定権の半分をジョウト地方のジョウト電力(株)が持つグンジョウ原発の傘下となっているが、特に物言いがついたりはしなかった。けれどジムとしては別で...7おみやが連合してユキコシリーグとして世界に認められるため、相当に政治力と実力を働かせたのは未だに語り草である。8つ目であるはてやまおみやに関しては「伝説ポケモンへの謁見」それ自体が無茶ぶりである上に下手な発言はユキコシ民の逆鱗とわかり切っていたが、人が治める7おみやをジムと認めるにはおみやに独自裁量権がありすぎだとは、当時のユキコシ民ですら思っていた。

 

 「いいえ、内外からの声はありましたし、カントーとジョウトからは実際査察が来ました。ただ...」

 

 彼女は意味深に笑って見せた。

 

 (...査察に来たジムリーダー、惨敗させて帰したな...?)

 

 「もちろん私たちとしてもだいぐうじ直々のバトルができればそれに越したことはありませんが、決しておみや巡り成就認定に恥じないであろうバトルになることを確信して、ジムトレーナーとの連戦形式を提供しています。

 

 ...が、みなさんジムトレーナーでは満足いかないということで...」

 

 それで、わざわざハードモードを待ち侘びるチャレンジャーで、行列ができているらしい。会いにくいことも代替手段があることも知ってなお価値を見出し並んでいるのだから、なるほど当然怒らないわけであった。

 

 「私たちも、強いですけどね?何と言っても最強だいぐうじのジムトレーナーのリーダーですから。現にみなさん、暇つぶし気分で私と戦って惨敗されますし。」

 

 「…ちなみに、だいぐうじチューリップさんの居場所は、ご存知かしら?」

 

 「知っていたとしても教えられません...が、わからないんですよね。緊急連絡には応じられるので...」

 

 そこでふと、彼女は蒼玻/アオバから視線をそらし、カグヤへと向けた。

 

 「…そうか、カグヤさんは7おみや巡り成就者でしたね。姉妹ならあるいは...

 

 ...アオバさん、本当に、だいぐうじのトラブル、解決したいですか?」

 

 「ええ、会ってみたいですし、それで力になれるのでしたら是非ともですわ。」

 

 「それでしたら、それを試練としましょう。いつまでも人見知りでいさせられないとはいえ身内の私たちでは信頼関係が壊れそうで困っていましたが、カグヤさんの実力とお2人の説得ならあるいは望みがありますからね。

 

 『だいぐうじを探し、だいぐうじの人見知りの原因を見つけて人見知りを改善してくれ』

 

 報酬はそうですね、最優先で、だいぐうじチューリップとフルバトルということで。」




 書いてから気付きましたが高岡市と富山市は隣接してすらいないですね、まあサンゴジュシティはだいたい富山湾あたりの立山を望む都市ということでひとつ。
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