お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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ゼミの準備も研究の進捗も0なので次の更新も遅れます というかこれ更新してる場合でもなかったりする...


#55 最強観察_What?

ー*ー

 

 蒼玻がその少女に感じた第一印象は一言で言えば「ロリ」だった。そのことからわかるように、サンゴジュおみやだいぐうじチューリップはとてもあどけなく、いっそ幼げで、年齢的にはJKだがむしろJCにしか見えず、声も甘みがある…清楚で穏やかながら強い芯を感じさせるアオバの声ははもちろん、凛とした鋭さがあるカグヤの声よりもずっとかわいい。

 

 にもかかわらず…

 

 …アオバは、「最強」とは何か、思い知ることになった。

 

ー*ー

 

 「私が…先に、出すよ?

 

 クレベース、お願い。」

 

 「ブロスター、参りますわよ。」

 

 ユキコシ地方のクレベースは原種と異なり、凍り付いた身体の上に薄く雪をかぶり、また足も氷ではなく茶色い凍土でできている。どこか、かつてヒスイ地方に生息したリージョンフォームを彷彿とさせるその姿はしかし、当然ながらみずタイプに極めて弱い。

 

 「ブロスター、BREAK進化ですわ!」

 

 金色の光がスケートリンク中に沸き立ち、ブロスターへと集まって体表を金色に色づける。

 

 「アクアジェット!」「いわなだれ!」

 

 降りそそぐ岩を避けながら、水流を身にまとい、ブロスターBREAKが宙を駆ける。

 

 「ロックオンしなさいな!」

 

 水流の中から伸びる、赤いターゲッティングビーム。鈍重なユキコシクレベースがこれを躱せるはずもなく。

 

 「みずのはどうでとどめですわ!」

 

 「ひょうざんおろし。」

 

 ロックオン状態と特性のメガランチャーとBREAK進化によって強化された水弾が、4倍弱点の相手へと突き刺さる。ユキコシクレベースの背を覆う雪が一掃される。

 

 直後、ブロスターBREAKがアクアジェットで飛ぶ直上に氷塊が出現し、崩落した。全身を暗く影で包む氷塊のあまりの大きさに避けきれず、水流ごとブロスターBREAKは崩落に巻き込まれる。

 

 氷片によって地面に叩きつけられたブロスターBREAKを、吹雪く鼻息を吹き付けながらユキコシクレベースが睨んだ。

 

 「じこさいせいで回復して。」

 

 まったく元通りに、氷の天板を細雪が覆っていく。

 

 (ダメージが通っていないのかしら...?でもそんなはずは…/アオバちゃん落ち着いて。まったく無意味ってわけじゃないと思うよ。)

 

 「ならば繰り返し削り続けるのみですわ。もう一度ロックオン!」

 

 「クレベース、ジャイロボール。」

 

 グルグル...高速で回転する氷山を、再びしっかりと赤いターゲッティングビームが捉える。

 

 「みずのはどうっ!」

 

 「跳んで、クレベース!そしてひょうざんおろし!」

 

 回転するユキコシクレベースは、いくつもの氷塊を生み出しながらも跳ねるようにして跳び上がり、ブロスターBREAKに迫る。…が、ブロスターBREAKはすでにアクアジェットを再開して宙を舞いはじめており、当然、命中するはずもない。

 

 ユキコシクレベースがいくらジャイロボールで跳び回ろうと、水弾はしっかりとそれを追尾する。

 

 「知っているはずですわよね?ロックオン状態では必中だと。」

 

 「もちろん、私、最強だから。

 

 それで...必中なら、こういうことも、ある、よね?」

 

 次々と出現する氷塊。それを避けながら跳び回るブロスターBREAKは、突如目の前の氷塊が爆散し、奥から回転物体が跳び出してきたことに目を丸くしてたまげた。

 

 (まさか、すべてのひょうざんおろしが、アクアジェットの誘導...!?)

 

 ジャイロボール中のユキコシクレベースと、アクアジェット中のブロスターBREAKが、水と氷の織り成す白煙とともに衝突する。そしてそのただなかへ、ブロスターBRREAKが放ち、ずっとユキコシクレベースを追尾していた水弾が突っ込み、さらなる爆発を生んだ。

 

 (さすがに相打ちだろこれは…/ジャイロボールの当たりどころによっては…いえ、贅沢は禁物かしらね。)

 

 白煙はすぐに晴れる。

 

 「なっ…」

 

 ユキコシクレベースは平気な表情で屹立し、その氷の甲板の上に、元の色へ戻ったブロスターが横たわっていた。

 

ー*ー

 

 「圧倒的な耐久力を誇るクレベースとはいえどうして…って顔だけど、それは筋違い、だよ。

 

 足りてない、から。ワザの威力も、手段も。」

 

 「…小技裏技というわけでは、なく…?」

 

 「その必要が、私にありそう?」

 

 「…なさそうてすわね。」

 

 (ワザのレパートリーはひょうざんおろし、いわなだれ、じこさいせい、ジャイロボールで決まりか。/じこさいせいより早くダメージを与えるしかありませんわね。じこさいせいで忙殺させられるほどのアタッカーでしたら…)

 

 「おいでませ、クリムガンっ!」

 

 「相性、よくない、よ…?」

 

 「でしたらひょうざんおろしを受けられない、それだけ。単純明快でよろしくってよ!

 

 クリムガン、近づいて至近からほのおのパンチ!間断無く攻め立てるのですわ!」

 

 クリムガンが、両の炎拳から、かわるがわる、とても回避など思いも寄らないラッシュを繰り出す。

 

 ほのおワザはユキコシクレベースに等倍、クリムガンにとってはタイプ一致ではない…が、途切れることのない殴打で確実に凍てつく身体にダメージを与えられるはずだし、いくら耐久性があると言ってもじこさいせいを強いられるのにそう時間はかからないだろう。

 

 「…引き離すしか、ないよね。ジャイロボール。」

 

 炎拳に殴られ続けながらも器用に片足立ちしたユキコシクレベースが、そのまま、右前足を軸にして回転を始め、そしてスケートリンクを滑り出す。

 

 「退いてはなりませんわ!」

 

 炎を飛び散らせながらも、必死に、クリムガンはスケートリンクにドタドタとヒビを入れながら走り、回転中のユキコシクレベースへの殴打を繰り返していく。

 

 「残念だけど、忘れたの?クレベースは這い回るだけじゃない…

 

 跳んで、クレベース!」

 

 ポンポン…鞠が跳ねるような予備動作、そしてユキコシクレベースの回転球は、ぴょんと跳び上がった。クリムガンより高く。

 

 ドリブルよろしく、回転球が大迫力で広いスケートリンクを跳ね回る。こうなってはクリムガンも追いかけ回すことはできず、両の腕を下げるしかない。

 

 「…あら、でも忘れているのは貴女もではなくって?なぜクリムガンの翼があるのか…

 

 …飛びなさいな、クリムガン!」

 

 翼のはためき…そして、風とともに、スケートリンクの天井近くまで一気にクリムガンが舞い上がりー

 

 「はかいこうせんっ!」

 

 ー逆落としに急降下、極光を撃ち下ろし、眼下でジャイロボールで跳ね回るユキコシクレベースを、スケートリンクを覆う氷ごと吹き飛ばした。

 

 大爆発…だが、それでも、ユキコシクレベースは、身体のあちこちにヒビを入れながらも目を開いている。

 

 「じこさいせい。」

 

 「忙殺しなさいなっ、ほのおのパンチ!」

 

 回復のためにフリーズしたユキコシクレベースを、舞い降りたクリムガンが、両の拳に炎をまとい代わる代わるに撃ち砕かんと振り下ろす。

 

 じこさいせいの翠の光は、果たして、消えない。ユキコシクレベースにとって、回復速度とほのおのパンチの威力が釣り合っているからだ。回復しなければ倒されかねないからこそ、回復し続けるしかない、回復以外のことができないのだ。

 

 「…目のつけどころは悪くないよ。でも、ひとつ見落としたよね。

 

 その攻撃、どんなに激しくても、余裕で防げるよ。

 

 ひょうざんおろし。」

 

 新たな氷塊は、人ひとり収まらない程度の小ぶりサイズで出現した…クリムガンが振り下ろした拳の下に。

 

 炎拳は氷塊を打ち砕く。けれど、それは一拍遅く…

 

 …ユキコシクレベースは、絶え間ないラッシュを逃れてしまったのだ。

 

 「ひょうざんおろし。」

 

 2つ目の氷塊が、今度はクリムガンの真上へ…そして、クリムガンをいわなだれが包みこんだ。

 

ー*ー

 

 「最強は、伊達ではありませんわね…」

 

 クリムガンをノブレスボールへ戻しながら、アオバが呟く。

 

 「…この前、コンジキ大のカクミガシ博士から照会されたんだ。強さを、速さとか威力とかのスペックを、教えて欲しい…って。なんか、ポケモンバトルを、数値化したい…って。」

 

 思いがけず、チューリップはちゃんと、返事を返した。

 

 (あー…俺が「ポケモンバトルって物理現象威力だけじゃなくてゲームみたいなスペック値のぶつけ合いの側面もあるかも」みたいなこと言ったからか…)

 

 「それで、驚かれた、よ…

 

 …れべるひゃくで、ろくぶい?だって…」

 

 (こっわ、カクミガシ博士こっわぁ…)

 

 転生者だからこそ、蒼玻は震撼を禁じ得なかった。ニワカだから「ろくぶい」とやらはどこかで聞き覚えがある程度だが、レベルくらいはさすがにわかる。…だからこそ、カクミガシ博士が理論なき状態から数ヶ月でそういった概念にたどり着いてあまつさえ逆算に成功しているのはもはや異能のたぐいであると、蒼玻にはわかってしまう。

 

 (ええ…?実は転生者じゃないだろうなカクミガシ博士…/ちょっと蒼玻くん、現実逃避は充分かしら?/…あ、ああごめんアオバちゃん。/それでどうするのかしら。/そりゃ、特別な個体相手ならこっちも特別な個体出すしかないだろ…)

 

 「…イーブイ、出番ですわよ。

 

 はつげんちょうせい、シャワーズ!」

 

 ボールから飛び出したばかりのイーブイが、進化の光に包まれてシャワーズへと変貌する。

 

 「…はつげんちょうせいを有用に使えてるの、はじめて見た、かも。」

 

 「勝ちますわよイーブイ、なみのり!」

 

 大波とともに、シャワーズがユキコシクレベースへと突進する。

 

 ユキコシクレベースはシャワーズの勢いを受け止め切れず数メートル滑り、そして何よりその氷と凍土の身体をびしょぬれにした。

 

 「慌てない。クレベース、じこさいせい。」

 

 翠色の光がユキコシクレベースを包む...だが、ユキコシクレベースは怪訝そうに首を振った。シャワーズにぶつかられた傷口が、治らない。

 

 「ただの水ならよかったかもしれませんわね。

 

 塩水の凝固点はマイナス21度!わたくしたちの本気の熱、耐えられますかしら!?」

 

 シャワーズがその姿を虚像へ薄れさせていき、入れ替わるようにしてブースターの姿を現していく。

 

 「…考えた、ね。

 

 ...でも、さ。

 

 私は最強。だから...

 

 ...それしきの小細工でどうにかできるって思われたのは、心外だよ。

 

 クレベース、決める、よ…

 

 …ひょうざんおろし。」

 

 スケートリンクが、翳った。頭上に出現したそれによって。

 

 巨大な氷塊が、ゆっくり落下しながら亀裂を奔らせ、千々に崩壊し、スケートリンクに突き刺さっていく。

 

 「…飛び移りなさいな、イーブイ!」

 

 ひょいひょいとブースターは氷片に飛び乗り飛び移り、高く駆け上がっていく。

 

 「そして真上からフレアドライブですわッ!」

 

 落下する無数の氷片の頂点から、ブースターが火の球と化して突っ込んでくる…そのさまを見て、ユキコシクレベースは確かに、ニィと笑った。

 

 「クレベース、ひょうがほうかい!」

 

 ーユキコシクレベースの ひょうざんおろし!

 

 ーユキコシクレベースの いわなだれ!

 

 それはゆきなだれなどというチャチなものでは断じてなく。

 

 巨大な氷塊と岩塊が、同時に同所的に、クレベースとブースターの間に出現し、そして張り裂けた氷片と凍てついた岩片が、ブースターを呑み込む。

 

 「イーブイ!」

 

 あまりの猛撃に、蒼玻は反射的に声を出し、そして、走り出していた。

 

 「…え…」

 

 「ちょ、何してますの/いやだって、心配で…」

 

 スケートリンクの中央に積み上がる、車一台すっぽり包み隠せるだろうほどの凍土の山。それに自分のポケモンが呑まれたらと思うと誰だって冷静でいられるはずもなく…だから、チューリップが驚いたのは、そのことではなかった。

 

 「あ、あのあの、えとえと…

 

 と、とりあえず、ルージュラ、サイコキネシス!」

 

 チューリップが、慌てながらもこわごわ、ボールからルージュラを出す。

 

 サイコキネシスで持ち上げられた土砂の中から、ビショビショボロボロのイーブイが姿を現す。

 

 「良かった、大丈夫そう…/ほら、オレンの実ですわ。すぐにポケモンセンターへ連れていきますわよ。」

 

 「ア、アオバ、さん…?

 

 …そこに、薬、あるから、というか、私が手当するから…」

 

 「薬…?そういえばサンゴジュシティは薬の街でしたわね。」

 

 サンゴジュの薬売りー各家庭に薬を置いていき次回訪問時に使われていた分だけ補充代金を徴収する伝統的な販売形態と薬品製造で有名な街の「最強」だけあって、チューリップはテキパキと、イーブイを聴診し触診しスプレーをかけ、蒼玻/アオバに手渡した。

 

 「そのイーブイ、すっかり元気になった、から…」

 

 「ありがとうですわ。」

 

 目をぱっちり開いたイーブイを抱えなですさりながらアオバが応える。

 

 「ううん、よくあることだし…

 

 …それより、あの、えと、もしかして…

 

 …アオバさんって、ひとりじゃなくて、ふたり?」

 

 (あ、やっべ素出してた…/いや咎められませんけど芳しからざるですわよ?/いやしかし口調と雰囲気でこんな即見抜かれることある!?/だから最強なんですわよ、おバカっ!)

 

 苦渋…数秒して、蒼玻/アオバは、なるべくならあまり広めたくない真相を露わにした。

 

 「しまった…/バレましたわね…」

 

 チューリップが、一歩、二歩、後ずさる。ポケモンをボールに戻す。

 

 「わたくし、実は二重」

 

 チューリップは、ユキコシクレベースとルージュラをボールに戻し、背中を向ける。

 

 「わ、わた、私、えっと…

 

 …ごめんなさいっ…!」

 

 具体的な答えを聞くことすらなく、チューリップは駆け出し、あっという間に走り去っていった。

 

 バタン!扉が閉じられる音が響く。

 

 「…あら…/逃げられたな、どうする…?」

 

 ポツン、ひとり取り残された純白の令嬢は、途方に暮れ呟いた。

 

ー*ー

 

 すさまじい勢いで正面玄関が押し開かれ、少女が飛び出してくる。

 

 「…あちゃー...

 

 ウールー、コットンガード。」

 

 そして少女は、突如湧いた白い綿毛へ突っ込み、綿に身体を巻き込ませてクルクル前転した。

 

 コツコツ、足音が近づく。少女はバタバタともがいたが、綿毛に手足を取られてボールの中の手持ちポケモンを出せない。

 

 「蒼玻くんって元陰キャだっけ...口下手と人見知りを同じところに閉じ込めちゃうまくいかないかもだよね...

 

 そんなことを呟きながら、足音の主、コットンガードを指示した下手人ーカグヤは綿の塊の中から、少女のか弱い腕を引き上げた。

 

 「貴女、だいぐうじのチューリップさんだよね?」

 

 こうなってはもはやまな板の上のコイキング。少女はたじたじと、今にも泣きだしそうになりながらうなずく。

 

 「は、はい…えと」

 

 「私はカグヤ。貴女がさっき逃げてきたアオバは、私のお姉ちゃんだよ。」

 

 「あの、それは、ごめんなさい、それで…」

 

 カグヤからも逃げ出そうとチューリップはもがく…が、カグヤはその腕を握ったまま離そうとはしない。そればかりか眼光までもチューリップを縛り付けた。

 

 「でさ、チューリップさん。

 

 ちょっと、私とお話、しよっか。」

 

 「ひぇ」

 

 有無を言わさぬシスコンの瞳に見つめられ、ヒュッと、チューリップは声にならない声を漏らし連行されることになった。




 …#54のグレー捜索と不法侵入に続き、今度は半分誘拐みたいな真似…この姉妹ずいぶん図太いトレーナーに育ってきたな…
 

 クレベース(ユキコシのすがた) こおり/じめん

 ユキコシ地方の山岳氷河周辺に生息するクレベース。かつてのシンオウ地方(ヒスイ地方)に生息していたとされる「ヒスイクレベース」の記録と酷似しているため、「現存クレベースの祖先」「ヒスイクレベースと同種であり、列島に氷河が広がっていた時代の遺存種」「氷河によって生まれた収斂進化種」などさまざまな説が提唱されている。

 実はヒスイクレベースと異なりじめんタイプなのだが、あまりじめんワザを覚えられずむしろいわワザばかり覚えると言う欠点がある。
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