お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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#58 最強の時限VS最強という限壁_When&With?(下)

ー*-

 

 (な...!?雪が降っていなくても、BREAKワザを...!?

 

 /蒼玻くん、こうなっては致し方ありませんわ!

 

/そうだな...ディアンシー、準備はいいか!?)

 

 ”「ここまで練習してきたのですから!」”

 

 本バトル二度目の「ジオスケール」発動。しかし今回は、ただの時間操作ではない。

 

 -デュアルメガディアンシーの...

 

 ダイヤを生み出すために重ねられる両手は、空気を、そう、まるで挟み、包み、あるいは「握る」かのように...

 

 (((3、2、1...)))

 

 ーユキツヌシカミの ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ!

 

 (((へいらっしゃ!)))

 

 ーダイヤストーム・アクセラレーション!

  

 ダイヤが生成される数百万年を一瞬のうちに凝縮するその時間加速(アクセラレーション)を込められたダイヤ、たった一粒だがそれは掌からあふれるほど大きく、そして、膨大な時間を帯びて回転していた。

 

 デュアルメガディアンシーを輝かせるナノダイヤのヴェールとティアラもまた連動し、時間を帯びて目にも止まらぬダイヤの竜巻(ダイヤストーム)となり、デュアルメガディアンシーを包む。

 

 次の瞬間、白い霧が、音すらも凍り付かせる。

 

 静寂の中、空へと放り投げられていた巨大なダイヤの動きが過冷却霧を刺激し、キンと澄んだ音がして、そして空気が凍り付き...デュアルメガディアンシーの全身を氷で包んだのだった。 

 

ー*-

 

 「回転はまだ...

 

 /...止まりませんわよッ!」

 

 氷像に近づいたユキツヌシカミの直上から、それは風を切って落ちてきた。

 

 巨大なダイヤモンドだ。ミラーボールのように光り方を激しく変えながら、太陽のように眩しく内側から輝いている。

 

 ”「凍り付かなかったのですか!?」”

 

 -ユキツヌシカミの サイコキネシス!

 

 巨大なダイヤモンドを、サイコパワーで押さえつけ、落下を止めようとする。しかしそれはむしろ悪手だった。

 

 動きを急に遮られたダイヤモンドは、時間加速で得た膨大な回転の運動エネルギーを、熱エネルギーに変換する。ダイヤの温度は急激に、発火点どころか昇華点をも突破し、そして突沸し蒸気炭素となって酸素と化合した。

 

 爆鳴がとどろく。ユキツヌシカミが思わず首をすくめる。

 

 爆発によってユキツヌシカミが氷像から思わず目を離したその瞬間、今度は破砕音が響き、氷像が砕け散った。切り刻まれた無数の氷片が一瞬で液化して水しぶきを飛び散らせ虹を描くその中から、白熱したナノダイヤのヴェールを振り払うようにしてデュアルメガディアンシーが姿を現す。

 

 「さあ、決着を」”「つけることに」”「いたしましょうかしら?」

 

 デュアルメガディアンシーと蒼玻/アオバは、凍り付いたスケートリンクの支配者、最強のぬしポケモンへ、挑戦的な目を向けた。

 

 ユキツヌシカミの答えは...笑顔だった。

 

ー*- 

 

 

 ”「ダイヤを高速回転させて、摩擦熱で凍結を防ぐ...」”

 

 ユキツヌシカミはさすがにちゃんと、どうして「ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ」が効かなかったのかを看破したーダイヤモンドは800度までは耐える。無数のナノダイヤを生み出して自分の周りで高速回転させることで、空気との摩擦熱とナノダイヤそれ自体の破砕力で自らの周りの完全凍結を防いだのだ(それでもなお、保温空間のさらに外側に「殻」のような凍結空間が生まれたわけだが)。

 

 ”「アイデアもその回転を実行する力も、稀有なものです。

 

 どこでその力を?」”

 

 ”「シャリタツさんから学んだのです。

 

 回転で守る方法、回転で強くなる方法...

 

 ...スシを回す、極意を!心意気を!」”

 

 ”「…スシの...心意気?」”

 

 ”「そうです…

 

 これこそ、スシの極意、ダイヤの握り!」”

 

 困惑...ユキツヌシカミはデュアルメガディアンシーから目をそらし、蒼玻/アオバの蒼と青の瞳に視線を向ける。

 

 「…いやそんな、俺にもわからないぞ。回転寿司でもないしたぶん一般シャリタツでもないな/ディアンシーがわかっているのならそれでいいですわ。職人魂というものはきっとそうなのですわよ。」

 

 ”「え、ええ...」”

 

 「そんなことよりそろそろ、もう一つの奥の手の御開帳といたしましょうか。

 

 ディアンシー、トリックルームBREAK。」

 

-*-

 

 「熱くなっちゃってるけど、もともと、どうしてこのバトルが起きてるか、わかる?チューリップさん。

 

 これね、持ちかけたの、お姉ちゃんじゃないんだよ?」

 

 「…よりしろさま...なの...?カグヤさん...」

 

 「うん。」

 

 「私、よりしろさままで煩わせて、やっぱり、弱い子だ...」

 

 「ううん、私はそういうことを言いたいんじゃないよ。

 

 よりしろさまですら貴女のことを心配してる。

 

 みんな、貴女の弱さを分かって、私とお姉ちゃんに頼んで、あるいは独力でこのバトルへと導いて...

 

 ...貴女は貴女が思う以上に信じられてるし、大切にされてるんだよ。

 

 誰にも必要とされず、ついには自分の存在意義すら実感できなくなった男の話、私は聞いたことあるから。

 

 貴女は、貴女の強さだけじゃない、弱さも含めて全部、必要とされて、求められて、大切にされてるんだよ。」

 

 「私の、弱さも...

 

 ...でも、それはわかってるけど、でも...

 

 ...私は、やっぱり...」

 

 「自信がないんでしょ?自分が必要とされてる。だから...

 

 ...蒼玻くんは前世で、存在意義を感じられないあまりに虚無の心で死んだ。

 

 でも逆に貴女は、存在意義が強さだけだと思ってるから、強さを理由に拾われたから、強さに固執するしかなくなっちゃった。

 

 強さしか、信じられないんだね。」

 

 「はい...私は、捨て子だから...」

 

 「だったらさ…

 

 …貴女が、貴女の存在が必要とされてるって信じられないのなら。

 

 貴女を必要としてるみんなを信じればいいんじゃない?

 

 自分なんて信じなくていいんだよ。でも、自分を信じてるみんなを、信じてあげようよ。」

 

 「みんなを、信じる…」

 

 「貴女は、自分の心が弱いことを気にしてるんでしょ?...自分の心が弱いから、自分が思ってることすら信じられない。だから『強さ』って明確に見てわかるものしか、自分の存在意義の証明に使えない。

 

 ...貴女が、貴女より心が強いと思っている人たちとよりしろさまなら、貴女は何かを信じるに値するって思えるでしょ?」

 

 貴女を必要としてる人たちは、貴女より強いんだよ、チューリップさん。

 

ー*ー

 

 ーデュアルメガディアンシーの ジオスケール_トリックルームBREAK!

 

 金の粒子散る摩訶不思議な光の箱が、デュアルメガディアンシーとユキツヌシカミを囲う。

 

 「さあ、賭け事(ベット)の時間と/はしたなくも致しましょうか!」

 

 ーユキツヌシカミの ふぶき!

 

 吹雪が、デュアルメガディアンシー向けて吹きつけ…

 

 …ようとして、空中に雪玉をなし静止した。

 

 ーデュアルメガディアンシーの ダイヤストーム!

 

 ダイヤの渦がバルカン砲よろしくユキツヌシカミを撃ち据える。

 

 ーユキツヌシカミの つららばり!

 

 ーデュアルメガディアンシーの ラディアント・レイピア!

 

 撃ち出された氷弾が瞬時にその姿をトリックルームの外へと消し、光の剣が歪んだ像をなしてユキツヌシカミに迫る。

 

 ”「あなたたち、時間を狂わせましたね!?」”

 

 ユキツヌシカミはサイコキネシスで浮かばせた氷盾でレイピアを受け止めながら言った。

 

 ”「トリックルームは時間の摂理を狂わせるワザ…あなたがたはそのスケールを拡げた!」”

 

 時はまるで、火山の一生にとってのその上に咲く花のごとく短く、魚にとっての泳ぐ海溝ほどにも長く、その両方のスケールが速度論(すばやさ)としてだけせめぎあう、アンビバレントな空間…それがジオスケール_トリックルーム。

 

 「わたくしたちにも、このトリックルームの時間がどう流れどう切り替わるかはわかりませんわ。」

 

 それができればパルキアだ。残念ながらディアンシーはパルキアではなく、時を自由自在に操れはしない…だが、動かしてはいなくても、スイッチを押したのが自分たちなら、ベットのタイミングくらいは読める。

 

 「けれどこの時を支配/できはしねえが、支配したのは俺達だ!

 

 ディアンシー、ダイヤストーム...」

 

 (いいよな?)

 

 すでにジオスケールの発動は3回。片頭痛が頭蓋の両側を締め付け、脂汗がしなやかな手先を濡らし、胃が裏返るような苦しさを訴える...

 

 (ええ、いっしょに嘔吐してくれますわよね?)

 

 「「アクセラレーション!」」

 

 3回目どころか4回目、限界を超えた回数のジオスケール発動。

 

 蒼玻/アオバの脳がきしみ、蒼と青の眼球が血走り、形の良い唇の端からは血筋が垂れる。

 

  ーデュアルメガディアンシーの ダイヤストーム・アクセラレーション!

 

”「時間は握らせても、空間まで奪わせはしませんよ!」

 

 生物の預かり知らぬ速度を与えられたダイヤは、例え時計のゼンマイがイカれた空間でもそれすら相殺し、ユキツヌシカミへ殺到した。

 

 ーユキツヌシカミの ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ!

 

 生物の抗い得ぬ自然の猛威を宿した氷霧は、例え時空のうち片側を歪められたトリックルームでも残る片側、空間を満たし、すべてを呑み込んだ。

 

ー*ー

 

 「それよりあれを見てよ。

 

 デュアルメガシンカは、2人の魂とディアンシーが共鳴した強さ。

 

 ダイヤの握りこと『回転』は、外つ国でディアンシーがシャリタツたちを見て身に着けた強さ。

 

 あれが『2人』の強さ。人とポケモンだけじゃない。人と人、人とポケモン、ポケモンとポケモンの輪が繋がって、さらなる強さになるの。

 

 貴女も強さにこだわる者なら、あんな強さ、興味はない?」

 

 「2人の...人と人、人とポケモン、ポケモンとポケモンの輪の、強さ...」

 

 バトルを見つめるチューリップの眼は確かに輝いていた。ワクワクと、溢れんばかりの天賦の才で。

 

ー*ー

 

 2度目の「ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ」を発動された時。

 

 いやいやいやそれはダメだろ…蒼玻の本音はそれだった。

 

 思い返せばサジンノリュウもカミツラオロチもマイイカヅチもBREAKワザの出し惜しみなどしていなかった。

 

 BREAKワザの使用にクールタイムが必要なのは、一般のポケモンならばBREAKオーラを周囲からチャージせねばならず、一度ワザのためにオーラを使用すると放出されたオーラが力場として安定するにはそれなりの時間が必要だからだ…しかしよりしろさまにオーラチャージの必要などなく、彼らは最初からBREAKオーラー強さの概念ーを自前で持っている。何度でもBREAKワザを撃ち放題なのだ。

 

 ゆえにこそ、ユキツヌシカミ渾身のチートBREAKワザは、氷河世界を生み出しすべてを凍結させるサンゴジュの切り札は、地質的時間スケールの超加速を帯びたダイヤの散弾をも、凍り留めた。

 

 すべてが凍る。時間も空間も、ダイヤも、そして生命さえも。

 

 (やられたっ…!)

 

 ”「手こずりましたが、決まりましたね。」”

 

 蒼玻/アオバが崩れ落ちる。

 

 ディアンシーの氷像…そう、ドレスのように絢爛と纏う水晶とピンクダイヤも、溢れ出す高貴な輝きを散乱させんと浮き舞うナノダイヤもなく、質素に茶色い母岩を足元に持つ、シンプルなただのディアンシーの形の氷像の中で、呆然とした表情のままにディアンシーは目を回していた。

 

 「ああ、俺達の負けだ。

 

 /けれど、貴女を誇らせる敗北ではありませんことよ。」

 

 ディアンシーは力尽きた…これは蒼玻とアオバの敗北だ。

 

 ”「なにを言うのです?私が、外敵や強敵以外に勝利を誇ることなど…」”

 

 だが、敗北ではあっても、終わりではない。

 

 「言ったろ。

 

 時を支配できたわけじゃないが、支配した。

 

 同じだ/いえ、逆かしら?

 

 貴女は誇らないのではありません、誇れないのですわ。」

 

 パチン!指を弾くー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーそして、時は回帰する。

 

 ージオスケール_トリックルーム状態は 解除された!

 

 スケートリンクの床が、はじけた。

 

 無数のピンクの飛跡が、機関銃よろしく、氷上から撃ち出される。

 

 ”「ダイヤストーム!?

 

 ですが、ディアンシーはもう…!」”

 

 「ああそうさ、だけどお前は見逃した!

 

 空間まるごと凍結する絶対零度で、世界を氷河で満たすその権能で、ディアンシーとともに凍りつかせたと思い込んでいたダイヤを!

 

 /狂った時間の中で時間ごと凍結され止まったダイヤは、トリックルームもろとも空間が凍りついてトリックルームが解除されたことで、トリックルーム前の…ディセラレーション(時間減速)前の速度を取り戻す!凍結後に!

 

 貴女の敗因は、貴女の強さを読み誤ったことですわ!貴女への攻撃を押し留めていたトリック(手品)すらも凍らせる、その強さを!」

 

 無数のピンクダイヤの雹が、衝撃波を伴ってユキツヌシカミを呑み込み、スケートリンクの観客席を吹き飛ばして壁へと叩きつけた。

 

 爆風が、ディアンシーの氷像を砕く。氷片を振り撒き、ディアンシーが前のめりに倒れる。

 

 同時にユキツヌシカミもまた、コンクリートに刻んだ己の形のくぼみから崩れ堕ち、自らを横たえたのだった。

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