お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

69 / 107
更新遅れてすみません...でもまだまだ遅れます…


#60 最強証明_Result!

ー*-

 

 ここまでずっと、蒼玻/アオバが使いあぐねてきたポケモンがいる。

 

 クリムガンだ。

 

 何と言ってもドラゴン単タイプ、こおりタイプスペシャリストのサンゴジュおみやに相性が悪すぎる。おまけに特性「りゅうおうのたかぶり」はBREAK進化ポケモン特効だから、6対6バトルではタイミングの見極めが強いられる。もちろん、出し惜しんで最後まで出番がない可能性も高い。

 

 ただ、ことここに及んではクリムガンを出せるラストチャンスだった。だいぐうじチューリップの残り2体のうち一体は、初めて会った時にユキコシクレベースと特訓を繰り広げていたモスノウ…とすれば、接近戦での殴り合いをメインとするクリムガンにとって不利である。そしておそらくモスノウはおおとりだろう…そうアオバは踏んでいたし、こおり/むしタイプであるらしいモスノウでは、グレイシアの最後っ屁の「にほんばれ」を活かせないだろうという点で蒼玻も同意していた。

 

 「クリムガン、申し訳ありませんが、出番ですわ。」

 

 相手が接近戦させてくれるといいなぁ…そんなことを思う2人と1体の前に、チューリップだいぐうじはボールを投げる。

 

 「ユキノオー、れいとうパンチ!」

 

 樹氷の怪物は、向き合いざまに、冷気をまとった拳で殴りかかってきた。

 

ー*ー

 

 「こちらもほのおのパンチで応戦ですわ!」

 

 「殴り倒してッ!」

 

 氷の吐息が、龍の覇気が、湯気のように立ち上る。

 

 代わる代わるに拳を振り上げ振り下ろす。

 

 龍翼がこごえ、凍霜が溶ける。

 

 左からユキノオーの右頬めがけ振り下ろされるクリムガンの炎拳を、右腕で受け止め、冷気で弱める。

 

 クリムガンが右の炎拳をパッと開き、ユキノオーの凍拳を掴み取って、握りつぶさんと力こぶを作る。

 

 ーここで指示を加えるのは野暮だ、蒼玻/アオバもチューリップも、それを深く感じていた。

 

 ユキノオーが、クリムガンに掴み取られた左手ごと左腕を強く引き、懐へと引き寄せられたクリムガンへと右腕を下から振り上げる。

 

 クリムガンが翼をふわりと羽ばたかせ、ユキノオーの凍拳をギリギリかわす。

 

 お互いに一歩も退かない、退けない殴り合い。ラッシュの交錯。

 

 「いけいけいけいけいけいけ…!」

 

 チューリップが手に汗を握る。

 

 「倒れろ倒れろ倒れろ…!/頑張れ頑張れ頑張れ…!」

 

 蒼玻/アオバは白い着物の袖をシワになるほど握り潰す。

 

 果たして。

 

 ユキノオーとクリムガンのラッシュが、途切れた。

 

 2体が、一歩、二歩、後退る。

 

 誰もが、固唾をのんで見守る。静寂。

 

 ユキノオーが、前のめりにふらつく。

 

 樹氷の怪物は、両の腕を地面につけた。

 

 「今なら…!

 

 決めろ、リベンジ!」

 

 クリムガンが、ふらついた足に力を込め…

 

 …そして、後ろのめりにばたり、ひっくり返った。

 

 「クリムガン…

 

 …無理させましたわね…」

 

ー*-

 

 クリムガンの肉弾戦の能力はかなり高い。あの龍腕で絶え間ないラッシュを浴びせつつ、翼で浮き上がったりしてふいもつけるインチキさも併せ持っているのだから、弱いわけがないのだ。

 

 まして「ほのおのパンチ」はユキノオーに対してタイプ不一致とは言え4倍弱点、2倍弱点の「れいとうパンチ」とのラッシュのパワー比べで敗北するのは、納得がいく負け方ではなかった。

 

 (それでも、これで間違ってないはずだ。

 

 タイプ相性の悪い「りゅうのはどう」の代わりにわざマシンで入れた、このワザで...)

 

 「ブロスター、出てこい...

 

 あまごい!」

 

 サンゴジュおみやはこおりタイプ、雪と雪山を司るおみや...ならば、チャレンジャー側も天候変化の対策を持っておくのは大事なことである。

 

 日差しが雲にさえぎられ、バトルコートに雨が降り始める。

 

 「ブロスター、時は今ですわ!BREAK進化!」

 

 「私は、その、上を行くよ。

 

 ユキノオー、メガシンカ!」

 

 降りしきる雨の中に、金色の粒子が浮かび上がる。

 

 雨雲の下、虹色の輝きが、うつむいたままのユキノオーを照らす。

 

 ユキノオーの背中から、2本の氷晶突き出す樹腕が伸びた。氷晶からは冷気があふれ出し、雨雲が凍り付いていく。

 

 「な...」

 

 あめからゆき、そしておおゆきへの、天候の張替え…

 

 「このユキノオーちゃん、普段は、特性『ぼうおん』の特殊個体だけど、メガシンカすると、戻るんだよ。通常のユキノオーと同じ『ゆきふらし』に!」

 

 ー大雪が 降り注ぐ!

 

 「跳び回れっ!やられるぞっ!」

 

 大雪の中で、金色に輝く体表に霜を付けながら、ブロスターBREAKがアクアジェットを噴射して飛翔を始める。

 

 「〆るよ。ふぶき。」

 

 おおゆき天候といえばやはりこのワザだ。威力は増し、避けることは困難となる猛吹雪。

 

 ブロスターの悲鳴が聞こえてくるかのようだった。吹き荒れる猛吹雪以外に見えるものがなにもないのだから。

 

 「何も見えませんわね…すごい雪…/ってか、近距離パワーファイターなのに遠隔でもこの超威力って、反則だろこれ…」

 

ー*ー

 

 ありえないほど強い…

 

 私が挑戦した時は先代だったけど、先代のメガオニゴーリはあんな馬鹿威力じゃなかった。ドラゴンタイプに素で殴り勝って、メガシンカしたらバトルコートをふぶきで隠し通すほどの特殊攻撃力。

 

 「…なにか、カラクリがあるんだよね?」

 

 「カグヤさん、気づかれましたか。

 

 私も見るのは初めてです。メガシンカによる天候変化を利用した、デュアル(二重)天候テクニック。」

 

 ジムトレーナーのその返答を聞いて、カグヤは思わず空を見上げた。

 

 にほんばれで晴れ上がった空。

 

 クリムガンに殴打で競り勝つ攻撃力。

 

 ゆきふらしによってメガユキノオーを包む大雪。

 

 ーカグヤの脳内で、点が線へとつながる。

 

 「で、でもいつの間に…!?」

 

 「…積んでいたんですよ、『せいちょう』を!クリムガンと殴り合いながら片手間で!せいちょうしていたんです!」

 

 日差しが強い時のみ自身の攻撃力を徐々に上昇させる「せいちょう」と、ふぶきの威力と命中率を上げる天候「おおゆき」…そういうことだ。

 

 「グレイシアから…!仕組まれていたって言うの…!?」

 

 「この緻密で入念な戦術を名付けて、『スノー晴レーション』!

 

 …私たちの、サンゴジュおみやの、最強です…!」

 

 感じ入り、心酔した…そんな陶酔的な声色で、ジムトレーナーが叫んだ。

 

ー*ー

 

 ドン!

 

 猛吹雪の中から、爆音が響いた。

 

 ふぶきがいったん止む。降りしきる大雪の中、メガユキノオーが、背中の樹腕の氷晶をかち割られ、うめいていた。

 

 ブロスターBREAKは、半ば氷漬けの状態で、右腕を大きく開き、メガユキノオーを睨んでいた。

 

 「なぜ…!?見えないはず…!」

 

 「ええ吹雪の中では前など見えやしませんわ。けれどこのブロスターは海のヌシ/吹いてくる雪からメガユキノオーの位置を探るくらい、水流を感じるよりずっと子供だましってやつだ!」

 

 すでにサジンノリュウ相手にやったことがある…流体、流体的な挙動の物質から触角で敵の位置を探るのは。

 

 「かませ、みずのはどうッ!」

 

 「迎え撃て、ふぶきッ!」

 

 巨大な水弾。細くまるで消防放水のようにしぼられたふぶきと衝突し、凍りつきながらも猛吹雪の中を前進していく。

 

 猛吹雪が、ブロスターBREAKを包みこんだ。

 

 雪雲の下、メガユキノオーが白煙を上げた。

 

 金色の粒子が霧散し、ブロスターが倒れている。

 

 メガシンカはまだ、解除されない。よろめきながら、メガユキノオーはまだ、立っている。

 

ー*ー

 

 「クリムガン、ブロスター…

 

 …貴方たちの奮闘、無駄にはしませんわ。

 

 /そうだよな、イーブイ!

 

 「はつげんちょうせい、ブースター!」」

 

 ーカグヤとアオバの、グレイシアバトル。アオバの新たな旅立ちのため挑んだあのバトルで、イーブイは「ゆき天候の環境変化でグレイシア以外へのはつげんちょうせいを封じられる」憂き目にあった。

 

 だからこそずっと、備えてきたのだ。もう外界の雑音によって自分の可能性を閉ざされぬよう。持ち得るすべてを用いれるよう。

 

 大雪が降っているからなんだ?積雪があろうとなんの問題がある?そんなものが、大切な2人の主に捧げる熱い志と、重ねてきた特訓の成果を、どうして阻めようか?

 

 心頭滅却すれば、大雪もまた熱し!

 

 「わー…イーブイって種族の、限界、超えて来たね…」

 

 チューリップの感嘆も無理はない。遺伝子が環境の変化の影響を受けやすく、容易く様々に進化するポケモン、イーブイ…しかし、錯覚が実感を乗っ取り遺伝子にまで染み渡った今、その種族のさだめを、蒼玻/アオバのイーブイは壊していた。

 

 「基本的に、タイプ不一致か、効果今一つ、なんだよね…

 

 …ふぶき。」

 

 メガユキノオーという種族の宿命として、ほのおタイプには弱い。ましてクリムガンとブロスターBREAKにさんざんダメージを与えられたばかり、メガユキノオーの末路は見えている…が、チューリップは抗う。

 

 大雪降りしきる中、再び、猛吹雪が吹き荒ぶ。デュアル天候テクニック「スノー晴レーション」で極限まで威力を増した猛吹雪が。ブースターへと吹き付ける。

 

 「イーブイ、『カウンターシールド』かえんほうしゃ。」

 

 猛吹雪は、押し止められた。コマのように回る炎の渦巻によって。

 

 炎の渦巻きの中央、かえんほうしゃの噴射を推進力に、前足で片手立ちしたブースターが回転している。ぬしシャリタツの、ハイドロポンプで回って攻撃を弾くシャリタツブレードのように。

 

 積雪と猛吹雪で凍りかけたバトルコート。ゆえに、発熱おびただしいブースターは、足元の氷を溶かすことで接地面との摩擦を低減し、さもスケート選手かのように自在にバトルコートを滑り、メガユキノオーへとぶつかっていった。

 

 「ユキノオー、まも」「内に入れっ!まもらせるなッ!」

 

 かえんほうしゃの爆炎が上がり、果たして、ユキノオーは今度こそ、前へ突っ伏し戦闘不能となった。

 

ー*-

 

 「私を、残り1体まで、追い詰めたの、賞賛する。

 

 ...でも、こうなる気が、してたから、私、この子をトリにとっておいたんだよね。

 

 いくよ、モスノウ。」

 

 大雪はまだ降り続いている。白い粉雪を吹き散らし、雪蛾が大きく羽ばたいた。

 

 「イーブイ、フレアドライブで落とせッ!」

 

 雪をかき飛ばし、炎を纏ってブースターが突進する。

 

 モスノウは、大雪の向こうで待ち受け、炎を受け止め、そしてあっけなく四散した。

 

 ーあまりにも手ごたえがない...

 

 「ちょうのまい」

 

 …モスノウは、真上にいた。何事もなかったかのように、雪の鱗粉を振りまいて。

 

 「…みがわり?それともかげぶんしんかしら?/テレポートって線もあるな。」

 

 何らかの手段で、モスノウが偽物とすり替わって攻撃を避けたのは間違いない。ただ、手段はおろかすり替わりそのものが気付けないというのは常軌を逸していたが。

 

 「どちらにせよこれ以上舞われたら収拾がつかないな…

 

 …イーブイ、スピードスターだ。」

 

 ブースターが尻尾を振り、星屑を真上へと飛ばす。さすが必中ワザだけあり、星屑は全弾あやまたずモスノウに直撃した。

 

 ふたたび、モスノウが四散する。

 

 …そして今度は、真後ろにモスノウ。

 

 「…ちなみに、正解は、タネもしかけもない、みがわり、だよ。」

 

 「イーブイ、見えたか?みがわりを使うところ、入れ替わるところ。」

 

 ふるふる、ブースターが首を横に振った。化かされているような気分である。

 

 (アオバちゃん、どう思う?

 

 /どうもこうも、わたくしなぞなぞは苦手ですわよ。ただ...

 

 ...どうしてサンゴジュおみやを7おみやの最後に巡るべきとされているのか、カグヤがどうここを突破したのかなら、わかりますわ。力技で、みがわりも本体も焼き尽くせ、ということですわよ。

 

 /あー…それなー...

 

 ...いや、負けた気分になるな。誇らしく勝てたと言い張れない気がする。)

 

 すべてを呪いの焔で満たすBREAKワザ「ごう・みっかみばん」のカケラを、そう応えて蒼玻は袖の中にしまい込んだ。

 

 「イーブイ、もう一度カウンターシールドだ。

 

 /さあモスノウ...チューリップだいぐうじ!

 

 いつでもどこからでもかかってこいッ!

 

 その時俺たちは撃ち返すッ!

 

 倍返しだッ!」

 

 (ちょ、ちょっと蒼玻くん!?

 

 喧嘩売ってどうするんですの!?

 

 本当に、ちょうのまい積めるだけ積んで最大火力で撃ってきますわよ!?

 

 /どうせそうなるさ。俺たちにモスノウの攻撃は不可能だよきっと。

 

 /え...?)

 

 「いいの?私、あなたたちが、何も、しないなら、『最強』の『好き放題』を、するよ?」

 

 「時間の多少の問題でそうなるんだろ?

 

 俺の知ってる台詞だ。ホームズってこの世界にはないんだっけか?

 

 『全ての不可能を除外して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる』...

 

 …みがわりに入れ替わるのを見られないなら、最初っからみがわりしか見せてないんだろ!?」

 

 「…正解。

 

 それで本体を見つけられなかったら、何の意味もない、正解だけどね。

 

 それに、そろそろ、でしょ?」

 

 ブースターの、像が揺らぐ。

 

 回転するかえんほうしゃが、途絶える。

 

 イーブイに、戻っていく。

 

 「はつげんちょうせいのタイムリミットッ!それを、私はッ、待ってたッ!

 

 モスノウ、もう積みは充分だね!?」

 

 降り止もうとしていた大雪が、雪が積もったバトルコートが、震えた。

 

 「そう言うなら望み通り、受けさせてあげるッ!

 

 最大最高最強『ふぶき』ッ!」

 

 「さすがのサンゴジュでもこれは知らなかったみてぇだなッ!

 

 /ええ、ハル姫にはわたくしからも感謝を伝えておくべきですわねッ...

 

 「はつげんちょうせい、カハリヤツカゲ」ッ!!」

 

 ブースターの像が消えたイーブイが、吼える。

 

 雪降る雲と雪積る地面が震え、吹雪が舞い上がる。

 

 「「とっておきッ!」」

 

 イーブイが、8つの虚像を背負う。

 

 地面の一点から、雪の竜巻が噴き上がり、イーブイめがけてビームかのように突き出した。それは、モスノウが極限までちょうのまいで威力を高めた最強の一撃であり、そしてまた、身を隠し続けていたモスノウの位置が、はじめてあらわとなった瞬間でもあった。

 

 (...先入観か!飛ぶポケモンだからつい上を探していたが…/凍り付いて雪に覆われた地面に、擬態していたのですわね!?)

 

 ブースター、シャワーズ、リーフィア、サンダース、グレイシア、ブラッキー、エーフィー、ニンフィア...そして、中央にイーブイ。9つの虚像が、光の玉と化して、雪の豪風の中へと突っ込んだ。

 

ーモスノウの ふぶき!

 

イーブイ(カハリヤツカゲ)の とっておき!

 

 (イーブイが与えられる、これが最強威力だ!9つの虚像のパワーすべてで、とっておきの大火力…!

 

 /やれるだけのことはやりましたわ!これで、どうかしら!?)

 

 風が爆発する。

 

 雪と土が爆散し、汚らしい凍土が純白の着物を汚す。

 

 雪雲は吹き飛ぶよりも早く蒸発し、青空がバトルコートを照らす。

 

 蒼玻/アオバもチューリップも、髪や目を腕で守ろうとなんてしない。爆煙に包まれ、バトルコートごと、観客席から見えなくなる。

 

ー*-

 

 「お姉ちゃん...」

 

 カグヤが祈る。

 

 「だいぐうじ...」

 

 ジムトレーナーは信じる。

 

 ”「…ふむ…

 

 …そうなりましたか。」”

 

 よりしろさまは、黙って見つめていた。

 

ー*-

 

 バトルコートは、完全に破壊されていた。

 

 コートを覆う雪と氷が消失し、モンスターボール型・長方形枠線型の白線もまた消え去り、スプーンでえぐり取ったかのように穴が空いている。

 

 あちこちから煙が糸を引くクレーターの中央で、モスノウとイーブイが倒れている。

 

 モスノウの羽が、小さく震えた。

 

 雪がわずかに身体から舞い上がる。

 

 「イーブイ...」

 

 蒼玻が握り締めた手を、アオバが弛緩させた。

 

 イーブイは、なおも立ち上がらない。

 

 モスノウが、顔を上げた。

 

 「…イ、イーブイ戦闘不能、モスノウ継戦可能!

 

 よって勝者、だいぐうじチューリップ!」

 

 ワァァァァァァ!サンゴジュおみやバトルコートが、歓声で沸いた。

 

ー*-

 

 「私に、勝てるとは、あんまり期待、してなかった。だけど、あなたたちは、強かった。」

 

 ふ~...チューリップは大きく息を吐いた。キョロキョロと周りを見て、そそくさとバトルコートを離れながら蒼玻/アオバを手招きする。

 

 「…やっぱり、他人の目は、怖いよ…

 

 たくさんの人に、強さを、価値を、見定められてるみたいで...」

 

 あまり人目のない廊下で、チューリップは開口一番そう言った。

 

 「でも、貴女はやはり強かったし、それに貴女の弱さも含めて受け入れてもらえている…

 

 …それを信じられないのはそういうものでしょうけれど。」

 

 結局、チューリップだいぐうじもまた、成長の途中なのだと、蒼玻もアオバも思った。

 

 「ううん、私、もう目を背けられない。

 

 だって、あなたたちは、輝いていたから。とっても強かったから。

 

 だから、私は、その強さを、目指したい。」

 

 -それは、チューリップの決意表明だった。

 

 「人とポケモンだけじゃない。ポケモンとポケモン、人と人...関わりが作りだす強さを。

 

 私に、それを魅せてくれてありがとう。

 

 きっと私は、最強のポケモントレーナーとして、最強を証明し続けたい、更新し続けたい、やっぱりそれが、私だから。

 

 だからもう、逃げたくない。」

 

 ポケットから、ジムバッジ、そしてスノードームのように内部に白い光が舞う正二十面体の結晶を取り出し、チューリップはそれらを差し出した。

 

 「これは私からの認定であり、感謝であり、そして貴女の強さと私からの敬意の証明。

 

 おめでとう。7おみや巡り、成就だよ。アオバさん!」

 

 「ありがとうございますわ。

 

 わたくしも/俺も、トレーナーとして、人として、アオバ・フロックスとして、誇れるように/さらに精進していくことを誓いますわ。」

 

 蒼玻/アオバが、洗練された動作でバッジとカケラを受け取り、ケースへと収める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ードン!

 

爆発音が響き、しなやかな蒼玻/アオバの指先から、バッジとカケラが宙を舞った。

 

 「い、今のは!?」

 

 「地震…ではありませんわよね?/どっちかってーと爆発だろこれ…!」

 

 人々の駆け足の音が喧騒を生み出す。

 

 「お姉ちゃん!」

 

 「カグヤ、どうなってる!?」

 

 「SNS見て!」

 

ー*-

 

 検索:サンゴジュ 爆発

 

 話題の投稿

 

 @krtnawe

 Breaking!

 サンゴジュシティで爆発事故発生!

 路面電鉄が爆発、テロ!?

 

 @loawrqzx

サンゴジュなう!

 路面電車俺の目の前で吹っ飛んだ!え、どういうこと!?

 

 @tlo3453

 ワカナエ大乱の時「うちは最強のだいぐうじおるし大丈夫やろ鼻ホジ」と思ってたけど今外出たら駅炎上してて鬱

 

 @sangojuLIFE

 現在サンゴジュ各地で爆発事件の発生が報告されています!フォロワーの皆さんはその場にとどまり、安全を確保しつつ、サンゴジュシティ、サンゴジュおみや、各種メディアからの情報を待ち冷静に行動してください!

 

 @AlartYU

 速報

先ほど、サンゴジュシティ各所で爆発発生したことが報告されました。

 医療機関には毒ガス被害と思われるものも報告されているとのことです。

 

 @SangojucityOffice

 現在サンゴジュシティ市内の少なくとも15か所で爆発を確認し、なおも報告が増加しています。

 毒ガスと思われるものも目撃されており、市民の皆様には爆発現場からの一刻も早い退去を勧告します。

 10分後より市長の緊急会見を行います。

 

 @Kaguya_Phlox

 サンゴジュシティ多発爆発事件について、現在、現地で姉とだいぐうじさんを交え、フロックス家、おみやともに対応を検討していきます。

 …これテロじゃないかなぁ…

 

ー*ー

 

 青年秘書がクリアファイルを渡す。

 

 「市長、被害の詳報です。」

 

 「酷いな…

 

 …市電が20バスが14に水道局に変電所…

 

 …会見資料を訂正してくれ。これはテロだ。

 

 おみやのほうからは、まだ何も?」

 

 「ちょうど大事な試合とかで、だいぐうじ本人に連絡は繋がりませんでしたが、カグヤ嬢からおみやとフロックス家のホットラインを繋いでいただいています。」

 

 「おみやが無事ならそれでいい。あそこが混乱すると悲惨だからな。」

 

 サンゴジュ市長は、窓の外、おみやのある方角に目を向けた。

 

 街のあちこちで煙が上がっているが、天守閣とスタジアムとおみやを備えるサンゴジュおみやのあたりは…

 

 「おいおい、おみやに真正面から挑みたくないからって、あんなにオトシドリの大編隊たぁ豪儀だねぇ…

 

 防災課に伝えてくれ。周りに流れ弾が出るからおみや周辺に避難指示だ。」

 

 「あの、市長、おみやには…?」

 

 「チューリップの嬢ちゃんなら自力でなんとかするだろうよ。例えあれが300じゃなくて3000でもな。

 

 それより会見まであと何分だ?」

 

 「2分です。急ぎましょう市長。」

 

 そう応え腕時計から顔を上げた青年秘書は、腰を抜かした。

 

 「いいや、アンタはもう0分だよ。」

 

 女の、声。

 

 「オオニューラ、フェイタルクロー。」

 

 血溜まりに沈む人々を背景に、女は告げた。

 

 「なっ…がっ…」

 

 市長の口から、赤黒い血がこぼれ落ちる。

 

 青いネクタイが、赤く染みていく。

 

 「市長…!?市長!」

 

 遠ざかる意識の中で、市長は思ったー

 

 ーこの女は危険すぎる。

 

 「戒厳を出せ…

 

 俺たちには、無理だ…

 

 市制を、力ある者に、託せ...」

 

 青年秘書が、涙をぬぐい走り出す。

 

 「ちっ…オオニューラ、フェイタルクロー」

 

 「ソ、ソーナンス、カウンター!」

 

 オオニューラがあわてて飛び退く。

 

 ソーナンスと青年秘書が「テレポート」で姿を消す。

 

 「…逃げられたか…

 

 …ま、いっか。」

 

 女はオオニューラをボールに戻し、そしてそこで、息も絶え絶えの市長に足首を掴まれていることに気づいた。

 

 「きみ、何者だね…」

 

 「あたし?

 

 あたしはホープ団陸軍中将ハッカ。

 

 ユキコシの、奪還者だよ。

 

 おいで、ホウオウ!」

 

ー*ー

 

 「こちらサンゴジュシティ市役所!

 

 現在本庁は敵武装勢力との交戦下にあり被害甚大、市長重体のため指揮機能喪失!

 

 緊急政令として戒厳令を発動し、サンゴジュおみや及び適切なる諸家諸氏にうわっなにをするやめっ」

 

 「ホウオウ、せいなるほのお」

 

 ツー、ツー…




 蒼玻/アオバが、蒼玻の転生以来続けてきた7おみや巡りを成就したその時、発生した多発爆発。

 サンゴジュシティ同時多発爆発テロは、サンゴジュシティ市役所焼失によりそのハイライトを終えた。

 そして、市役所焼失の直前に発せられた緊急戒厳令及び市制全権奉還により、サンゴジュシティ市街戦の主役は、サンゴジュおみやとそのだいぐうじチューリップ、そしてサンゴジュシティにいながら難を逃れ、やんごとなき家格と華々しい実績、そして7おみや巡り成就者の称号を持つ、フロックス姉妹に移る。

 敵は悪名高いゲリラ組織「ホープ団」。

 サンゴジュシティの最も長い1週間は、始まったばかりであった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。