お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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※ #60.5になっていますが、#61の次の話となります。ナンバリングの綾というやつなので#61未読の方は#61へお戻りください(ネタバレがあります)(#50.5でもこの警告したな...)

 また本話は#21.5 幕間劇「三頭軍政」と転生ポケモン令嬢外伝「少女たちの無限夢路(サマーコスモス)の内容から大きくつながっています。


第捌章 逆侵攻、決戦はてやまダム! 果てに至りて希望の暫証
#60.5 時流という下り坂


 「運命とは、下り坂を転がり落ちることだ。

 

 人は時に運命に従い、時に運命に抗う。しかし、運命という大局に本当の意味で逆らうことは、できない。

 

 運命とは、みずポケモンにとって流れる河のことだ。

 

 コイキングは河を流されることも滝を登ることもできる。だが、河の流れを上に向けることは、できない。

 

 世界は無数の因果と理を秘めて廻っており、因果は時という重力に引かれて運命という河を流し、運命は寄り集まって時流という大局を作り出す。

 

 人は時代を作り、時代は人を押し流す。これを人は運命と呼ぶ。

 

 時代は人を求め、時代は人々が形作る。これを人は天命と呼ぶ。

 

 だが、人は時代を変えることはできない。なぜなら、人々が形作った時代それそのものすら、人々を含んだ、ある種の予定調和に過ぎないからだ。

 

 可能性は無限ではない。風を吹かせればリンゴは左や右に落ちるかもしれないが、しかし、リンゴが上に向かって落ちることはあり得ない。けだし人は、時間に従って増大する限定された合理的な帰結を選び漸進しているに過ぎない。

 

 選ぶことはできる。抗ったつもりにもなれる。だが、それすらも運命の掌だ。運命は君をほくそ笑むだろう。むろん、それが君が天命を果たしたという誇りを穢すものではない。

 

 それでも人は、時代の大局の中、それすらもひとつの時流でしかないことに気付きすらせず、例え気付いたとしても目を背け、如何に大河の中を泳ぎぬくか、昨日を明日へつなげるための今日を生み出すか、考えなくてはならない。

 

 人々が人生を重ね意思を練り上げその魂で下す一つ一つの判断が、生贄を燈火に変えて、この時代を輝かせている。そして明日も、明日も。

 

 帰結は、そうは選べないだろう。それでも君は、その選択を誇れる説明を用意しなければならない。その説明が君の誇りを説明するからだ。

 

 愚や愚や、汝は如何にせむ?」

 

 ~古代遺跡から発見された怪文書~

 

ー*-

 

 「あれが、ゆきのさいやくの、かみさま...」

 

 幼い少年が見つめる先で、怒り狂った白虎が吼える。

 

 雪が山の麓まで流れ落ち、木々はおろかそれが生える尾根すらも削りとっていく。

 

 「鎮まってください、冰神よ…」

 

 剣を持つのは、少年の幼馴染の少女だった。

 

 白虎は白い剣を少女の左腕ごと齧る。少女の肩は血が溢れるまでもなく凍りつく。

 

 白虎は、噛み砕いて2つ折にした剣がちょうど犬歯の位置に収まったのを、なんども口を噛み合わせて確認し、一つ伸びをして雪山を駆け下りていった。

 

 大人たちが歓声を上げる。

 

 喧騒の中、少年は大人たちをかき分け、意識と片腕を失った少女へ走り寄った。

 

 「おきて!

 

 ねえ繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)、おきてってば!」

 

ー*ー

 

 失墜の神殿、そう呼ばれる真新しい石造建築の中を、ひとりの女性が、回想をしながらひた走っている。

 

 ー「繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)、そなたのためなんだ。」

 

 莫迦じゃないのか?繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)は愛する夫のことをそう思っていた。

 

 ー「そなたと、お腹の中の双子のためなんだ。」

 

 愛されすぎでしょ?繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)は自分の幸福に満足していた。

 

 ー「だから、どんな罪も背負う。

 

 こなたはあの日、決めたんだ。

 

 そなたの片腕を生贄にした繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)主義とこの世界に、復讐するって。」

 

 けれど、あるいはだから、片腕の彼女には、与えられた幸福に甘えることが、産まれてくる彼との双子に誇れることとは思えなかった。

 

 ー「繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)主義を、拡大するんだ。

 

 生贄は、巫女の腕なんかじゃない。

 

 従えるのは、パオジアンなんかじゃない。

 

 コシ地方全土を生贄にして、あまねく神々を従えるんだ。

 

 こなたはやってみせる。そしたら…

 

 …新しいコシ地方を、そなたに捧げよう。」

 

 モモワロウ像の前に備えられた、割れたまぼろしモモンを飛び越える。

 

 テラスタル結晶でできたテラパゴス像の前で、身重のお腹をさする。

 

 追手の声を聞き、ガラル粒子で着色されたバドレックス像の後ろに隠れる。

 

 Zクリスタルを彫って作ったネクロズマのチャームは、お守り袋から取り出して書き置きとともにカプ神の像に供えた。

 

 ビクティニの像が作り出すキュレムのプロジェクションマッピングの前を横切り、影を差す。

 

 巨大なレックウザメガストーンでできたデオキシス像からひとかけらえぐると、それはキーストーンになった。

 

 コシ地方の象徴、「アルセウスを切り別ける18体のレジギガス」の壁画の前で、繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)は立ち止まった。

 

 今まで走ってきた巨大で冒涜的な神殿、その上で凶鳥「サ・ファイ・ザー」がこの佳き日を尊ぶかのように飛び回っている。

 

 「はあ、はあ…

 

 …いますか、ディアンシー。」

 

 ”「はい。

 

 …説得、できなかったのですね…」”

 

 「悪は易く小禍となり克ち易く、善は克ち難くして大禍となる…

 

 ...私には、繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)を止めることは、できません。」

 

 失墜の神殿、なんて、繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)には、狂執に駆られた復讐魔の宮殿にしか思えなかった。

 

 「ディアンシー、私と、契約してくれませんか?」

 

 ”「お断りします。

 

 あなたでは力不足です。

 

 定命の人間に、コシ地方を守ることができますか?」”

 

 やがて歴史へつながる初代は、それにふさわしく、はるか未来を見通して問うた。

 

 「…それでは、私のお腹の中の、2人の子も契約に。」

 

 2000年後の子孫を思わせる誇り高く譲らない精神と、2000年後の転生者を思わせる傑才、片腕の代わりにそれらを併せ持つ妊婦は、さらなるベットを辞さない。

 

 「人間は儚く、社会は移ろいますが、託した想いはきっと受け継がれるはずです。それが人間の力なのですから。」

 

 ”「…いいでしょう。

 

 けれど契約は結びません。

 

 私は繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)主義の『生贄によって調伏される神』ではないのです。」”

 

 ヒビ割れた空の下。

 

 ”「ですから私も、私の一族を以て、あなたの子々孫々に盟を約しましょう。」”

 

 かくして。

 

 繝ャ繝?繝ェ繧(レムリア)繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)は、ファーストネームを捨てた。

 

 彼女が新たなファーストネームに選んだ、愛する人が呼んでくれた愛称、シバザクラ(フロックス)。その花言葉が後世で「合意」「一致」となる皮肉も、双子の兄妹の子孫とディアンシーの子孫がその花言葉をメガシンカの極意として「デュアルメガシンカ」へ到達する皮肉も、知る由もなかった。

 

 ギゴガシャァーーーーンッッッッッ!

 

 コシ地方の空に、ギラティナの声は響き渡っていた。

 

 2000年後まで彼女の子孫が語り継ぐ大事変、ユキコシ大災厄(カタストロフ)まで、あとわずかの時のことであった。

 

ー*-

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発1日前。

 

 「誉れ高きホープ団俊英兵士諸君!」

 

 アルソミトラの叫び声が、トンネルに響く。

 

 「私たちはついに、目標としていた4体の伝説ポケモンを手に入れました!

 

 古代ユキコシ文明が『失墜の神殿』にて貶めることができなかった、カロス地方とジョウト地方の伝説ポケモンです!」

 

 ジョウト地方のフスベシティと、ユキコシ地方のコンジキシティ、サンゴジュシティを秘密裏につなげる山岳トンネルアジト。

 

 基底現実の同じ位置には飛騨トンネルがあり、掘削シールドが圧壊したりする10年の難工事のすえに奇跡の事故死者0で完成したが、ポケモンが存在するこの世界に於いては「あなをほる」の多用によってかなり古くから建造に成功していた(これを何世代にもわたって秘密裏に行ってきたホープ団は数えきれない犠牲者を出し、数百年間ユキコシ奪還の軍勢を途絶えさせざるを得なくなった)。

 

 「BROKEN進化で貶め、穢す...

 

 それが、ユキコシの力によって神を下すことが、神をもしろしめしユキコシ一円を治めた古代ユキコシ文明を、正統に継承するイニシエーションとなるでしょう!

 

 まさに時は満ちました!2000年の悲願、私が、叶えましょう。」

 

 コンフリーに言われたとおりの演説であるのは気に食わないが、ただの強さによる出征よりも、正統性の継承のイニシエーションのほうが士気の期待値が高い、という彼の意見はその通りだーアルソミトラはそんなことを考えている。

 

 「今、アルソミトラが言ったとおりだ。

 

 カントーのロケット団とかいうマフィアどもはその名を『Raid On the City(街々を襲いつくせ), Knock out(撃ちのめせ), Evil Tusk(悪の牙たち)』って言葉から取ったらしいなぁ。

 

 だが俺たちホープ団は違う。その上を往けぇ!

 

 地上を襲いつくせ!

 

 撃ち滅ぼせ!

 

 焼き尽くせ!

 

 屍の山を築け!血の河を流せ!

 

 ユキコシを乗っ取りし者どもの血の贖いをさせ!

 

 俺たちの2000年の戦いに終止符を打ち!

 

 故郷ユキコシを奪い返すのだぁッ!

 

 トンネルアジトの崩落を心配したくなるほどの歓声が、山岳にとどろく。

 

 「…あの、ウキクサこれ、収拾つくんでしょうね?」

 

 「わりぃ、ついつい、心が昂っちまった。」

 

 「はぁ…後でお説教ね。

 

 ...うん、ここにいるみんな!

 

 あたし、ハッカがいつも指導して指揮してきたとおりに戦えば、できるはずでしょ?

 

 あたしたち陸軍が山に潜み山を越えてトライアンドエラーを繰り返し、決してへこたれず、ダメそうだって気づいたらこのトンネルを100年かけて掘り進めて、そうして今日この大軍を興した!

 

 2000年の雪辱を晴らそう。

 

 そして、大義を成就させよう。

 

 きっとすべてはこの時のためにあったって、笑顔でお墓参りできるように!

 

 殺されたり殺しつくしたりしよう!

 

 さぁ、出陣だよ!」

 

 「冬コミまでには終わらせたいね!」そんなことを、さもそれができて当然かのように、ハッカは告げた。

 

 人知れぬ山奥のトンネルアジトは、大いに揺れ、大音声をこだまさせた。

 

ー*-

 

 From:アオバ・フロックス

 

 To:ミクロステリス・フロックス、レプトシフォン・フロックス

 

 CC:カグヤ・フロックス

 

 緊急:あかいくさりについてご連絡

 

 ヒスイ分家の皆様へ

 

 突然の御連絡にて失礼します。

 

 フロックス本家家長のアオバです。

 

 さて、ご存じかと思いますが、昨今のユキコシ地方ではホープ団が神聖なはてやま連峰の一部を大々的に占拠し、問題となっております。私たちフロックス家・おみや連合がホープ団との戦を不安視しておりますのは、ホープ団が神格級伝説のポケモンを複数所持しているからです。

 

 つきましては、ヒスイ分家の皆様に、伝説のポケモンを鎮める「あかいくさり」を譲渡していただきたく存じます。

 

 ご多用の折恐れ入りますが、ぜひご検討くださいますよう、お願い申し上げます。

 

 

 From:ミクロステリス・フロックス

 

 To:アオバ・フロックス

 

 CC:カグヤ・フロックス、レプトシフォン・フロックス

 

 Re:緊急:あかいくさりについてご連絡

 

 ユキコシ本家の皆様。

 

 ヒスイ分家のミクロステリスと申します。

 

 先日申し出をいただきました「あかいくさり」譲渡に関しましてですが、現在ヒスイ分家は厳しい立場におかれており、大っぴらにギンガ団の継承資産を取引できる状況ではございません。

 

 一度、直接お会いして、私たちヒスイ分家の状況についてご尽力いただけませんでしょうか?

 

 ご検討のほどよろしくお願いします。

 

 

 From:カグヤ・フロックス

 

 To:ミクロステリス・フロックス、レプトシフォン・フロックス

 

 CC:アオバ・フロックス

 

 先ほどのメールに関して

 

 ヒスイ分家の皆様、ユキコシ本家継承1位、カグヤ・フロックスでございます。

 

 姉と相談しましたが、冬の間に一度そちらに伺おうと思います。

 

 レプトシフォン様はパーシモン・ゼミナールに御在学中と伺っております。私と姉も学園の年末パーティーに招待されましたので、学園島グランデ・コンティネントでお会いしませんか? 

 

 PS:先ほどCCにて頂きました返信メールなのですが、姉であるアオバに返信が届いておらず、調べましたところ、返信先アドレスが間違っておりました。これを受けまして、フロックス・ネットセキュリティ社に調べさせましたところ、メール「緊急:あかいくさりについてご連絡」の発信者である「アオバ・フロックス」は姉が所持しているアドレスとは表示ミス等含め何ら関係がなく、身元不明の人物であると判明しました。

 

 そちらでもお調べいただけると幸いに存じます。

 

 

ー*-

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目。

 

 「…クワズさん、身体の代替どころか、自分の役割まで代替することにしたのか。」

 

 インターネットにしかけていたバックドアで遊びながら、コンフリーは背もたれに身をもたせ掛けた。

 

 「どうしました、コンフリー。」

 

 「いんや、アルソミトラさん、最近噂を聞かなくなった元上司が、なんかインターネットをさまよってたんでね。」

 

 「なんですかそれは...ずいぶん変な職場ですね…」

 

 ラスト団とかいう変な職場のナンバーツーに奉職していたニヒルな青年は、「そんなことより」とアルソミトラに言った。

 

 「おみやの連中、そろそろ勘づいたんじゃないかな。

 

 監視カメラ見たけど、大軍ではてやまを調べに来る気満々だよ。」

 

 「良く気づきましたね。というかどうしてサンゴジュおみやの敷地内のカメラが...」

 

 「フロックスグループの光学機器シェア率は99%だからね。

 

 ステラーシステムの射撃管制に監視カメラを使うと決めた時に、操作と閲覧用のバッグドアを仕込んであるよ。

 

 そんなことより、いいのかい?おみやとフロックスと武士団だ。ホープ団の宿敵フルコースじゃないか。」

 

 「…7おみやが手薄になるのですか。こちらも手勢を割いて各都市に進駐を...」

 

 「いや、ホープ団の辞書には確率計算とか効率計算とか期待値計算の文字はないのか?

 

 それで各地を占領しても、強さの源になっているはてやまアジトとゼルネアス_BROKENを陥とされたら、またすべて水の泡だよ。」

 

 コンフリーの見立てでは、それがホープ団がずっとユキコシ奪還に失敗し続けた理由だ。ホープ団の集団型・分散型指導体制には戦略眼というものがまるでなく、ユキコシのどこかにほころびを見つけて突っついて占領と略奪をしてみては、おみやの軍勢に蹴散らされて得たものを失う...これでは戦火と戦果は増えてもユキコシ奪還は果たせるわけがない。

 

 「では、コンフリー、私たちはどうすべきだと言うのですか?」

 

 「そりゃ当然。

 

 全軍を集めて、伝説4体で迎え撃つのさ。

 

 戦力の逐次投入や分散投入なんて愚の骨頂だよ。」

 

 「…それで、勝てますか?」

 

 アルソミトラの震えた声は、ホープ団という組織を象徴していた。彼らは戦術的に勝利して占領や略奪をしても、支配地域を確立できたためしがないのだ。

 

 「ええ、まあ、僕は技術者であって軍師ではないけれど…

 

 ...成功の期待値は、最大だからね。」




 主人公のシスコン令嬢姉妹の2000年前の祖先はたぶん兄妹相姦してます!←由緒正しすぎるのやめろ

 (念のため言っておきますと、最初はカップルを「古代ユキコシを抜けたフロックス開祖」にする構想もあったのですが、どちらにせよ限られた人数がエクソダスする限り近親相姦は避けられないかなと...)





 もう第拾章までの線を全部引いてるので書き終わるしかないんですが、それはそれとして次の更新は未定です…
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