お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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 これまでの転生ポケモン令嬢

 現代日本からの転生男子こと蒼玻と、ユキコシ地方一の令嬢アオバ。2人は転生と憑依にまつわる諸問題をやっとのことで解決し、晴れて1つの身体を共有する恋仲として、旅を続けていた。

 晴れて7おみや巡り成就者となった蒼玻/アオバ。だがその時、サンゴジュシティに火の手が上がった。ユキコシ地方の因縁、ホープ団。史上まれにみる強大な力を手にした悪の組織は、ホウオウとルギアを手にし、サンゴジュシティ各地を破壊、市役所跡地に立て籠もったのである。

 直接戦闘でサンゴジュシティ市役所跡地を奪い返す目途は立たない。だが、1週間の包囲下でも市役所跡地のホープ団は弱まる気配がない...対策を協議する中浮上したのは、南方に広がるはてやま連峰に、無限の生命力を与えるポケモンであるゼルネアスをホープ団が隠し持っている可能性。

 はてやま連峰にあるだろうアジトを征伐し、ホープ団を源から断つ!ユキコシ史上最大の作戦が、今、始まった...!


#62 戦集サンゴジュおみや

ー*ー

 

 一晩、紛糾した。

 

 ホープ団勢力にサンゴジュ市役所跡地を占拠され、ホウオウ、ルギアを擁するハッカ陸軍中将とウキクサ海軍中将を排除する目処は立たない。そして、7おみや1財閥1武士団でサンゴジュシティを包囲するも、市役所に立て籠もるホープ団が継戦能力を失う様子はない。そして、何かの異変を感じたのかはてやま連峰に駆け出していったよりしろさまユキツヌシカミからは、1週間なんの音沙汰もない。

 

 はてやま連峰には、ホープ団のもう一人の幹部アルソミトラがおり、ゼルネアスで無限の生命力を得てサンゴジュシティ市役所跡地に送りながら、イベルタルによってユキツヌシカミを封じてしまったのだろう…という見立て自体には、誰も反論しなかった。

 

 ただし、それではホープ団の力の源たるはてやまのアジトをどう攻めるかーここで揉めに揉めた。

 

 蒼玻/アオバが単身乗り込んでぶっ潰す。他地方の悪の組織も最後は少数の殿堂入りトレーナーに踏み込まれて壊滅してるし、アルソミトラには一度勝ってるからいけるいけるーそんな蒼玻の意見はまっさきに「死ぬぞお前」と総ツッコミが入り、ボツになった。

 

 ワカナエシティの新本社ビルから駆けつけたフロックスグループの某社長は「ならば、私達社員一同で姉妹をお支えし…」と口をしたが、直後に電話で中座し、10分後「稟議を通りませんでした」と頭を下げた。

 

 ナノハナキャッスルから武士団を率いてきたツグツラとかいう男は「武士は舐められたら殺す!あれしきの賊ただちに討伐してご覧に入れましょうぞ!」と言い放ち、カグヤに「最近自分たちの城を陥とされて私達の手を煩わせたよね?」と冷たい圧をかけられて切腹を試みた(もちろん止めた)。

 

 結局、どの程度かはてやま攻略戦力を抽出しなければならない。けれど、あくまで正面前線はサンゴジュシティであり、かつただでさえ警備が手薄になった他地区も気にする必要がある中で、どれだけの、どの戦力を派遣して、はてやまにいるだろうアルソミトラを倒すのか、という点で揉めたのだ。

 

 「なあこれ、全部ぶつけちゃだめなのか?」

 

 ポツリ、ワカナエおみやぐうじのオリザが呟いた。

 

 「気合とか情熱はガツンとぶつけなきゃ話になんねえだろ。熱意の配分とか根性を馬鹿にしてるのかって話だよ。」

 

 「いや、なんですのその/脳筋戦法は…」

 

 ー「いや、案外ありかもしれないね。」

 

 唯一この場におらず、コンジキ大学の研究室からオンラインで参加しているコンジキおみやぐうじカクミガシ博士が、モニターの向こうで頷いた。

 

 ー「よりしろさまはどうせ居残りだし、ぐうじ総出で殴り込み、そう論外ではないかもしれないよ。」

 

 「歴史の中で幾度となく繰り返されてきたことを、忘れてはいけないんだよ。

 

 出征して敵を叩きに行った結果、弱い本国を突かれて滅ぶ…ウスベニ武士の二の舞いなんだよ。」

 

 ウスベニおみやぐうじ、イチシノは故事を引いて苦言を呈する。

 

 「いえ、それはホープ団も同じです。策源地を空けて攻めてきているのですから。

 

 鉱脈を掘る時は、落盤の危険があるポイントを残してはならない…マニュアルではそうなっています。ホープ団にゼルネアスとイベルタルがある限り、ユキコシ地方の落盤警報は鳴り止みませんよ?」

 

 トキトビ島からジェットフォイルでやってきたキンレンおみやぐうじカンゾウは、リスクの大本は早めに断てと主張した。

 

 「それで、俺達の街を護る責任ってのはどうなるんだ?

 

 所在のわからないホープ団海軍から発電所と街を護る責任が俺にはある。来いったって首を縦には振れないな。」

 

 グンジョウおみやぐうじ、トチュウは譲らない。

 

 「ひょっひょっひょっ…若造たち、良ぅ考えておるのぅ。」

 

 「そういうアテじいちゃんにはなんか考えでもあるの?」

 

 「うぅむ?

 

 わしはもう準備済みじゃぞぅ。」

 

 「…準備?爺さん何を...」

 

 -「御無沙汰しておりますアテぐうじ。

 

 ナノハナ鉄道ホウオウ駅駅長、ササユリと申します。皆さま、お久しぶりです。チューリップだいぐうじは初めましてですね。」

 

 アテが引っ張り出したタブレット端末に映し出されていたのは、最近ポケモンバトルイベントやポケモンコンテストイベントをはじめたことで知られる、ユキコシ地方半島部の鉄道会社重鎮を受け継いだ若き鉄道少女だった。

 

 「根回しは事前にしておくものじゃよ、ひょっひょっひょっひょ」

 

 ー「ユキコシ鉄道事業者14社を代表しまして、私から皆さまにご提案があります。

 

 今回のホープ団討伐に必要な人員物資の輸送と、鉄道沿線地域の警備、私たちにお任せいただけませんか?」

 

ー*-

 

 きっと、恩を返すとしたら今なのでしょう...そう、ササユリは、手帳に挟んだホウオウの羽を見ながら思っていた。

 

 ホープ団がホウオウをゲットしたタイミングは、きっと前にアオバさんたちとお会いした時、ホウオウが飛来してこの羽をくれた後。だとしたら自分にも責任の一端があるのかもしれません…と。

 

 アオバさんたちに救っていただいてこの路線が存続しているのですから、恩を返す時なのです…と。 

 

 「ユキコシ地方の鉄道事業者はすでに、戦時体制として輸送を行う準備を始めています。西列島鉄道さんはジョウト地方から装甲列車の移送を始めていて、これにはジョウトリーグからトレーナーの派遣も受けています。」

 

 鉄道やトラック…交通事業者には、それができる。ホープ団討伐のための膨大な軍需輸送だけではない。おみやの戦力が抜けて手薄になった都市の防衛だって、野生ポケモンと日々戦いながら大地を走る彼らなら、可能だ。

 

 「戦力を集められず、集めてもそれを維持する兵站が確保できず、戦力を抽出して生まれた隙をホープ団やゴフク屋に襲われる…それは、移動にポケモンライドや徒歩を使うしかなかった時代のことです。

 

 ですが今は違うッ!

 

 この100年で運送技術は長足の進歩を遂げました!鉄道とトラックは飛躍的に路線網と能力を発展させ、対抗するようにポケモンライドは負担なく能力を最大限に発揮できるアクセサリやノウハウを進歩させました!」

 

 ーその路線網には、答えがある。

 

 「交通事業者の誇りに賭しまして、沿線を守り抜き、奇襲に即応し、物資運送を請け負います。

 

 皆さま、後顧の憂いなく戦いください。」

 

ー*ー

 

 「というわけじゃ。どうやら、街の守りも、戦力の移動も、解決しそうじゃのぅ?」

 

 ヌレバおみやぐうじのアテ老人は、そう言ってアオバに目配せした。

 

 「ええ。

 

 フロックスグループも戦時生産・輸送体制に移行、すでに財界・労組にも協力を要請しておりますわ。」

 

 「決まり…だね。」

 

 呟き、すーっと息を吸って、チューリップが立ち上がる。

 

 「ユキコシ7おみや連合を代表して、サンゴジュおみやだいぐうじ、チューリップが、最強の名の下に、議決を祭します。」

 

 儀礼的な意思決定。チャンピオンどころか四天王もいないユキコシに於いて、ジムリーダーであるところのおみやぐうじ7人が集まり、最強の1人の前で誇りに賭けて意思を表明する伝統だ。

 

 「ワカナエおみやから提案の、7おみや全軍によるはてやま連峰征伐。

 

 ナノハナ鉄道から提案の、おみやによる各地守護使命の交通事業者への委託。

 

 フロックス家から提案の、財界の助力。

 

 以上各事項それぞれについて、30分後、賛否の決を行います!」

 

 7人のぐうじが、一斉に退席する。あれやこれやの陰謀がないように、議決直前のシンキングタイムは一人黙考が原則なのだ。

 

 「ハル姫、貴女はどうされるのかしら?」

 

 7おみやとフロックスだけではない。ここにはもう1組織、ユキコシ地方の善なる実力組織、ナノハナ武士団の姫も来ているのだ。アオバは、彼女にも意思を問うた。

 

 「妾はすべて賛成じゃ。

 

 武士は戦ってナンボじゃろ。ユキコシを挙げて痴れ者共を討つというに参加せねば、ヌシさまにもご先祖様にも武士の名にも恥ずるぞよ。」

 

 30分後。

 

 「それでは、わたくしアオバ・フロックスが見届け人として、7おみやの意思確認を行います。

 

 3つの議決事項に関して、順に、賛成の方は手を上げてください。」

 

 3度、7人の手が上がった。

 

 蒼玻/アオバ、カグヤ、ハル姫が頷く。

 

 ーこまごまとした手続きはあるが、これで、7おみや・フロックス・ナノハナ武士団全兵力のホープ団はてやまアジト攻略と、対ホープ団のためのユキコシ挙国一致が、始まった。

 

ー*-

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発7日目20時、戒厳令範囲をサンゴジュシティからサンゴジュシティ・はてやま連峰全域に拡大

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目9時、ユキコシ鉄道事業者14社、戦時体制発令

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目10時、西列島鉄道ジョウト支社、アサギシティ車両基地から全装甲列車のコンジキシティ車両基地移送を開始

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目10時、西列島鉄道ユキコシ支社、管区内全線を戦時ダイヤに移行

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目11時、7おみや連合、戦力結集を発令

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目12時、ユキコシ交通事業者協議会、戦時体制発令

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目12時、フロックス・グループは会長アオバ・フロックス及び役員会の名でユキコシ経済連合会へ申し入れ

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目13時、カントーリーグ、ジョウトリーグ連名会見「深い憂慮を表明する。ユキコシ地方の情勢安定に最大限の助力を惜しまない」

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目14時、カグヤ・フロックス、ダイゴ・ツワブキ宛に公開書簡「ホウエンリーグ、デボンコーポレーション、トクサネ宇宙センターに対して特別の協力要請」

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目15時、ユキコシ経済連合会及び全労組ユキコシ、対ホープ団戦時体制への全面協力を会見発表

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目16時、ダイゴ・ツワブキ、カグヤ・フロックスに対し、ホウエンリーグ協力を除く許諾回答

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目16時、ゴフク屋会頭ヌスビト、インターネット上にメッセージ「ホープ団騒動を黙殺する」「受注者がホープ団関係者でない確認ができないため、騒動安定まではゴフク屋は闇依頼を受け付けない」

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目17時、ワカナエシティ、トキトビシティ、ヌレバタウン、コンジキシティ、ウスベニシティ、グンジョウポートタウンの6都市は戒厳を発令。7おみやは都市鎮守の任を一時的にユキコシ交通事業者協議会へ委託することを発表。

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発8日目18時、アオバ・フロックス、SNS上に投稿「現時点を以て、ユキコシ全土が挙国一致戦時体制に達したことを宣言します。ユキコシ地方はこれより総力を以て、ユキコシ地方の占領及びユキコシ全住民の略奪を2000年にわたり企図する悪の組織『ホープ団』の排滅作戦を開始します。」

 

 

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