お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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#63 戦途はてやま

ー*-

 

 サンゴジュシティの南方に広がる、雄大なはてやま連峰。これにアプローチするにあたり、蒼玻は錆びついている日本地理の知識を引き出し、サンゴジュ...富山について思い出していた。

 

 はてやま連峰は基底現実に於ける飛騨山脈・立山連峰~両白山地(白山)であるが、ただし多少地理的には異なっている。

 

 もっとも、飛騨山脈にあたるフスベ山脈をユキコシ地方の境とし、それよりも西側にあるはてやま連峰との間に広がる谷間が巨大なダムとなっていることは代わりがない。このダムは「はてやまダム」と呼ばれて、ジョウト地方及びユキコシ地方の電力供給をになっている…要するに黒部ダムだ。ただし基底現実の黒部ダムは正面玄関は東側の長野県大町市であり、西の大都市富山は「立山黒部アルペンルート」で立山を横断した先にあるが、この世界のはてやまダムは東側につながるルートがなく、富山...サンゴジュシティからはてやま高原道路で8合目ターミナルに向かい、はてやまトンネルをトロリーバスではてやま連峰東側へ抜け、そこからはライドポケモンで向かうことになる(ホープ団が跋扈するフスベ山脈とその東のユキコシ地方外を信用できなかったためにこのルートになっている)。

 

 ちなみに8合目までの高原道路は装甲車、はてやま連峰をトンネルで横断するトロリーバスは装甲列車だー要するに舗装高原道路とトンネル内ですら安全が確保できないほど、はてやま連峰は修羅の地なのであった。8合目(標高2400m)から山頂に到達し、山頂のはてやまおみやからカルデラ湖「かえらずの湖」に眠る伝説三神に祈る?他の地方では巡るべきポケモンジムを8つとしているが、ユキコシ地方では8つのジムのうちはてやまおみやの存在をみんな見なかったことにしているのが、その難易度を表している。

 

 「いや無理ゲーで草」

 

 この山にユキコシ中の精鋭トレーナーを送り込み、山頂への到達を目指しながら山中を掃討する?そんな無謀な計画を提案したのは誰だよ!蒼玻は怒鳴りそうになったが、アオバに「貴方ですわよね?」と言われてはそういうわけにもいかない。

 

 もちろん、大人も馬鹿ではない。

 

 「はてやま連峰制圧」は、今まで誰も成し遂げられなかった空前絶後の巨大プロジェクトなのだ(はてやま連峰でこのザマなのだから「フスベ山脈(飛騨山脈)を完全制圧してユキコシ地方境山脈に巣くうホープ団を掃討する」などというユキコシ永年の夢など無謀の極みである)。

 

 ゆえに、ユキコシの叡智を結集して、ロジスティックスが組まれた。

 

 ・8合目までの装甲車列用意と護衛:フロックス運送(株)、フロックス警備(株)他

 

 ・8合目ターミナルのベースキャンプ確保:ナノハナ武士団

 

 ・はてやまトンネル内トロリーバス運行及び警備:ナノハナ鉄道(株)、西列島鉄道(株)ユキコシ支社

 

 ・はてやまトンネル東口~はてやまダム空路確保:ユキコシエアライン(株)、ユキコシポケモンエアライド事業者協議会(公)

 

 ・はてやまダム周辺及びはてやま峡谷縦貫歩道確保:はてやま水系管理公社(公)、ジョウト電力(株)、ユキコシ電力(株)

 

 ・人工衛星による監視・位置情報管理:ユキコシスペーステクノロジー(株)、デボンコーポレーション(株)、トクサネ宇宙センター(公)

 

 ・サンゴジュ登山口封鎖:ジュンサー連ユキコシ(公)

 

 ・物資輸送:フロックス運送(株)、ワカナエフーズ(株)、ポケモンセンター連ユキコシ(公)

 

 ・はてやま5合目以下捜索:ワカナエシティ、コンジキシティ、ウスベニシティやまおとこ会(公)、ユキコシリーグ協議会(公)、ユキコシ山岳会(公)、フスベシティ登山の友の会(公)

 

 ・はてやま8合目以下捜索:ユキコシ7おみや、ユキコシ殿堂トレーナー同志会(公)

 

 ・はてやま8合目~山頂捜索:アオバ・フロックス、カグヤ、フロックス、カンゾウぐうじ、アテぐうじ、カクミガシぐうじ、オリザぐうじ、イチシノぐうじ、トチュウぐうじ、チューリップだいぐうじ

 

 ユキコシ中のエリートトレーナーとトレーナーサポート団体を総動員しての、空前絶後の巨大プロジェクトである。「プロジェクトY」と蒼玻は呼んだが、フレア団のフラダリが同じ名前でイベルタルを扱っていたことーしかもそのイベルタルはまわりまわって今や敵であるーを知らされてやめた。

 

 レインボーロケット団騒動でもこれほどの規模の動員と計画は行われなかったし、ほとんどの悪の組織騒動ではチャンピオンや数名のトレーナーしか動いていないにもかかわらず、たった数日でこれだけの巨大プロジェクトを発動させた理由は、もちろんホープ団が2000年ものしぶとさを誇る組織であるのもさることながら、季節が関係している。

 

 サンゴジュシティ多発爆発テロ勃発の日のサンゴジュ気象台の発表は「初雪まであと3週間~4週間」、すなわちテロから12日目の今、降雪開始までの猶予は2週間ないかもしれないのだ。そしてユキコシ民なら誰もが、雪降る高山攻めなど「投身自殺するほうがまだマシ」と知っている。

 

 一方で、春の雪解けを待つわけにもいかない。はてやま山頂部の雪解けは6月と大変遅い上に、雪解けの時期になれば山に陣取るホープ団は人工雪崩を仕掛けてくるのは必定だからだ。

 

 タイムリミットは決まっていた。失敗も許されなかった。はてやまの大自然もホープ団の実力も伝説ポケモンも怖かった。

 

 ゆえに、史上最大の悪の組織討伐が始まった。

 

ー*-

 

 ノルマンディー作戦かよ…

 

 並んでる無数のトラックを見て、俺はそう思った。

 

 バラックやコンテナだけど、街ができてやがる。

 

 ポケモンセンターが一夜でできてるのにはもう笑うしかない。

 

 (蒼玻くん、突っ立ってる場合ではありませんわよ。)

 

 いや、だってさぁ…

 

 ...突貫でこんな、配送センターと仮設住宅の悪魔合体みたいな...

 

 (7割がた、うちのグループで作っていますけれどね。それだけの力が、あるのですわ。)

 

 ...ああ、そういえば、重機を使わなくてもポケモンが手早く建設できるしサイコキネシスで重力無視できるから建設スピードが速いのかこの世界。

 

 (それに、同じベースキャンプを8合目のターミナルにも作りますわよ。)

 

 仮設住宅や仮説診療所、食料に水のコンテナを指さして、アオバちゃんが言う。…すっごい人に転生憑依しちゃったなぁ…

 

 先行する装甲トラックに、ポケモントレーナーがポケモンを連れて乗り込んでいくのが見える。トリデプスにバクフーン、ゲッコウガやらソルロックやらフリージオやらルカリオやらマスカーニャやら...

 

 (そろそろ、ですわね。)

 

 ああ...チューリップさん大丈夫か?

 

 ー「皆さん!」

 

 あ、放送始まった。

 

 -「今日という日にお集まりいただき、ありがとうございます。サンゴジュおみやだいぐうじ、チューリップです。

 

 皆さんの無事と健闘を祈ります。私たちと一緒に、ホープ団に勝利し、完膚なきまでに壊滅させましょう!」

 

 ...あ、短く終わらせたな。

 

 (人見知りにしては頑張ったではありませんの)

 

 戒厳令発令で封鎖されたはてやま高原道路ゲートが開く。最初の一台の装甲トラックが高原道路を走りだし、車列が続いていく。

 

 ...きっと歴史的光景だろうし、写真撮っとくか。

 

 「お姉ちゃん?蒼玻くん?ほらもう乗るよ!」

 

ー*-

 

 穏やかな高原地帯を抜け、森林地帯に至ると、ユキコシ地方最凶の修羅地域ことはてやま連峰は牙をむいてくる。

 

 人間もさるもので、常に交通量がありトレーナーたちが野生ポケモンに出くわしては叩き返しているため、賢いポケモンは「高原道路にだけは近寄らない方がいい」と学んでいる。逆に言えば、それでも高原道路に襲い掛かるポケモンは、力づくでどかすしかない馬鹿だ。

 

 「先行車両より連絡!ドサイドン来ます!」「ラグラージ、ハイドロポンプで吹っ飛ばせ!」

 

 「空から攻撃来ます!」「みらいよちか!?サイコパワーをたどってくれフーディン!」「コットンガードだ!」

 

 「こらっお前森に放火しようとするな!いちおう自然保護区だぞ!」「でもガーメイルが向こうから!」

 

 「誰だよエンニュートなんてはてやまに持ち込んで逃がした奴!」「ジュンサーです!外来種は捕縛します!行けウィンディ!」

 

 「ドオーが道路上に立ち止まってます!」「シンボラー、ねんりきで浮かせられるか?」

 

 森のあちこちで大声や爆発音が聞こえる。それでも車列は、時速60キロで山道を這い進んでいった。

 

ー*-

 

 森林地帯を抜け、高原地帯ー冬には雪が積もり、道路上だけを除雪して生まれる「雪の壁」「雪の大谷」はサンゴジュのシンボルのひとつとなるーを走っていた時、ついに、数百台に及ぶトラック車列は完全に停止した。

 

 もしかしたら、見晴らしのいい高原は戦わずに抜けられるかな、そう淡く期待していたのだ。標高が上がれば弱くて愚かなポケモンは生き残れないし、賢いポケモンならば高原を延々と続く車列に襲い掛かることを躊躇するだろう、と。けれどそれは、それでも襲い掛かってくるポケモンは相当に強く自信があることを示している。

 

 ーガチグマ(アカツキ)の ブラッドムーンBREAK!

 

 真っ赫な月が落ちてくるかのような錯覚に、恐怖で身がすくむ。そして、あらん限りの気迫が物理的な圧となって、地面を吹き飛ばした。

 

 はてやま湿原の泥炭が盛大に茶色いしぶきを上げ、トラックが数台、衝撃で高原道路から湿原へ転落し泥に沈み込み始める。

 

 「レッカーはどこだ!」「いやどうせ間に合わん!87号車は放棄!」

 

 「行け、ガブリアス!」「キノガッサ、眠らせてやれ!」

 

 「イオルブどうした...まだ来る!?」

 

 ーメガガブリアスの だいちのちから!

 

 ーキノガッサの きのこのほうし!

 

 土煙が晴れる。…そこにいたのは、アカツキガチグマとガチグマ数頭ずつが混ざった群れだった。

 

 ーガチグマ(アカツキ)の ブラッドムーン!

 

 ーガチグマの ぶちかまし!

 

 プレッシャーがポケモンたちを道路上から草原へ吹き飛ばし、そこへガチグマの重厚な肉体が激突する。

 

 「も、戻れキノガッサ!」「ガブリアス、いったん空へ!」「行けルナトーン!」

 

 ーメガガブリアスの りゅうのはどう!

 

 ールナトーンの ステルスロック!

 

 「おいてめえ、トラック走るところにステロ撒いてどうすんだ!」「あっ、つい...」

 

 ーガチグマ(アカツキ)の しんくうは!

 

 -ガチグマの 10まんばりき!

 

 「どうする?増援を...」「こんなベースキャンプの手前で、主戦力の方々に消耗させるのか?」

 

 「みなさん、どいてください!」

 

 ジョーイの声が響く。

 

 「タブンネ、メガシンカ!」

 

 -メガタブンネの マジカルシャイン!

 

 ーガチグマ(アカツキ)の ブラッドムーン!

 

 2つの月光が、ぶつかる。

 

 「今でござるゲッコウガ!」

 

 爆煙の中、金色の忍者蛙が飛び込んで姿を消した。

 

 ーゲッコウガBREAKの きょだいみずしゅりけん!

 

 ガチグマたちの、怒りの叫びが高原にとどろく。

 

 だがトレーナーたちも負けてはいない。

 

 「タブンネ、もう一度マジカルシャインです!」「ルナトーン、メテオビームだ!」「ガブリアス、りゅうせいぐん!」「ハイドロカノンでござる!」

 

 何事かと集まってきたトレーナーたちが参加し、ビームが、流星か、岩屑が、水流が、火炎が、サイコパワーが、霊力が、エネルギー弾が殺到していく。

 

 泥飛沫の中、ガチグマたちはさすがに、なかよくひっくり返ることになった。

 

 「で、こいつらどうすんの…?」

 

 凶暴だからゲットしたくはないけど、でも放置したらそのうちまた襲って来そうだよな...と、誰もがげんなりした。

 

ー*ー

 

 8合目ターミナルにトラックを駐車させ、高原に仮設テントを広げコンテナを設置し、ベースキャンプとなす。

 

 山岳会やトレーナーたちのグルーブや警備会社社員のグループや武士団のサムライやおみやのジムトレーナーたちが、気合に満ちた精悍な顔つきで、登山リュックを背に山に散っていく。

 

 ホウオウタウンからはるばるやってきたササユリ駅長、それに西列島鉄道から応援としてきた添乗トレーナーを乗せ、はてやま連峰を横断するトンネルをトロリーバスが走り出す。

 

 はてやま連峰を越えた西側、はてやまダムでは、ジョウト電力とユキコシ電力の社員たちが、ホープ団の強襲に備え厳重警戒を敷きながら、はてやまトンネル西口とはてやまダムの間のライドポケモン空路の巡視を始めていた。

 

 はるか宇宙では、数十の人工衛星がユキコシ地方を収めつづける静止軌道上にのり、普段レックウザやデオキシス、メテノを捜索するレーダーやカメラを地上へ向ける。

 

 フロックス姉妹と7おみやぐうじもまた、はてやま山頂に向けて登りだした。

 

ー*-

 

 ここが、はてやまおみや...

 

 カグヤに連れられて、蒼玻くんがわたくしの魂を戻すべく来る予定だった、ユキコシ地方最後のおみや...なのですわね…

 

 わたくしの目の前にある、この小さな石の鳥居と祠。

 

 わたくしの御先祖様とディアンシーの御先祖様は、ここでユキコシ地方のポケモンたちを大災厄(カタストロフ)から守り抜いた。

 

 わたくしが仮死状態に陥っていた間に、カグヤは蒼玻くんに、わたくしの魂をよみがえらせるために、この山頂の湖で眠る三体の神に祈るためにおみや巡りの旅に出るように言った。

 

 ...そして、この祠から力を授かっているよりしろさまユキツヌシカミが失踪して、わたくしたちはよりしろさまとホープ団を追って、ここに辿り着いた...

 

 「感慨深い、ですわね…

 

 /まあ転生してトレーナー旅してラストダンジョン来たんだから俺だってそうだよ。

 

 /あら...

 

 ...けれど、わたくしたちの旅はまだ、終わっていませんわよ?」

 

 ハッピーエンドでは、終わっていませんのよ。

 

 ハッピーエンドで、終わらせなくては、わたくしたちの人生がうまく続いていけませんのよ。

 

 「そうだな...

 

 ユキツヌシカミにホープ団、いったい、どこにいるんだ...?」

 

 本当に、そうですわね。

 

 「お姉ちゃん、お祈りしとく?」

 

 「…いえ。

 

 やめておきますわ。」

 

 (アオバちゃん、どうして?)

 

 なぜかしら、わたくしたちの旅は、神頼みをすべきではないように思ってしまうのですわ。

 

ー*-

 

 はてやまおみや周辺を探索し、火口湖「かへらずの湖」を(眠る三体の「心を司る神」を刺激しないように慎重に)覗き込み、山頂周辺に広がるハイマツ林とお花畑も探し回り...

 

 ...しかし、はてやま連峰に駆けていったまま音沙汰のないサンゴジュよりしろさまユキツヌシカミも、ホープ団も、影も形もない。

 

 ユキツヌシカミがピンチになれば山頂に来るはずだ...という予想も、なんとなくホープ団は山頂付近にいるんじゃないかという予想も、どうやら裏切られたようだった。

 

 考えてみれば、ハイマツと草原が広がるはてやま山頂部は空から、そして宇宙からは丸見えなのだからサンゴジュシティ侵攻拠点のアジトを作っても隠し続けられない。標高2200mの森林限界以下の樹林帯に潜んでいる方が自然ではある。

 

 いったんベースキャンプに戻るか、それとも西側へ降りてはてやまトンネル西口・はてやまダムに向かうか...そんなことを考えていたその時、緊急連絡がフロックス姉妹とぐうじたちあわせて9人の耳に一斉に届いた。

 

 「こちらはてやまベースキャンプ指令所!

 

 山麓を捜索中の、ヌレバおみやトレーナー部隊から入電です!

 

 よりしろさまユキツヌシカミと思われる石像を7合目、はてやまⅢ氷河上部で発見、偵察を試みた結果ホープ団のしたっぱと接敵し、ただいま東側山麓を敗走中!」




メインバトルまで2話も引っ張るやつがあるか!架空戦記書いてるんじゃねーんだぞ!<はい...
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