お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
ーイベルタル_BROKENの わざわいのよる_BROKEN!
死、禍、厄、破、殺、滅、亡…それらでできた「夜」が、蒼玻/アオバとデュアルメガディアンシーを包みこんだ。
もはや、彼女たちを守る時間操作の結界は存在しない。魂の限界に達してこれ以上のジオスケール発動は無理で、トリックルームそのものもゼルネアス_BROKENの超火力の余波で消し飛んでいる。
「闇」が、「死」が、彼女たちを完全に呑み込んだ。
「うまく、すべてが噛み合うものですわね。」
「な…」
アルソミトラ、絶句。
蒼玻/アオバは、髪ツヤも増し純白を取り戻した長い髪を掬いたなびかせ、優雅に微笑んだ。
(…あっぶねぇー!/カグヤが、わたくしの命に関することでしくじるはずがないではありませんの。/しくじってるから今の俺たちがあるんだけどな!?)
デュアルメガディアンシーが、ゆっくりとしかししっかりと、掌で宙をなぞって光の細剣を作り出す。
「なぜ、なぜ生きているのです!?それどころか、まるで何事もなかったか、の、よ、う、に…」
ーデュアルメガディアンシーの ラディアント・レイピア・アクセラレーション!
”「えいっ」”
目にも止まらぬ速度で手から離れたレイピアは、金と黒の粒子をばらまきながら屹立するゼルネアス_BROKENの額に、吸い込まれるように突き刺さった。
受け止めきれないほどの、数百万年分の生命エネルギーの溢れ出し?否、そうではなかった。
何が起きたのかわからないという顔をする間もなく、ゼルネアス_BROKENは、石像となった。
「…!?まさかまだ時間操作能力が!?それにどうして、まるでイベルタルの権能のような能力をディアンシーが!?
アオバ・フロックス、何をしたのです!?」
「いいえ、ホープ団にわざわざ教えてあげることもございませんが/あえて言うなら、何かしたのはお前ら自身だよ。」
アルソミトラの表情が、困惑、そして次第に驚愕へと移り変わり…
「まさか、まさかまさかまさか…!」「カグヤァッ!/今ですわ!」
ーグレイシア<Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”>の...
...Emulated_”サウザンアロー”!
翠色の霰が、イベルタル_BROKENを斜め上から氷河へ叩きつけた。
ー*ー
遡ること約一ヶ月。ちょうど、フロックス姉妹が学園島グランデ・コンティネントでムゲン団幹部ローズと戦っていたころ。
アローラ地方、エーテルパラダイス。
エーテル財団がつくったこの人工島で、5人の重要人物が、一堂に介していた。
「こういうわけで、次にイベルタルとゼルネアスが来た時に備えておく責任が、俺にはあるってわけだ。」
ーユキコシ地方グンジョウおみやぐうじ兼ジョウト電力・ユキコシ電力共同グンジョウ原子力発電所所長、トチュウ。
「私からも、チャンピオンに代わって、ユキコシ地方にお詫びするわ。
…まさかうちから奪われた伝説のポケモンが、そんな使われ方をするなんて。許せない。」
ーカロス地方前チャンピオン、カルネ。
「私達ユキコシこそ、ホープ団なんて危険組織を倒せずに来たわけですからお互い様です。
…もっとも事態は、許す許さないを越えて推移していますが…」
ーユキコシ地方キンレンおみやぐうじ兼フロックスグループ子会社キンレン鉱業社長、カンゾウ。
「国際警察も同じ考えだ、許さない以前に、止めなくてちゃいけねえ。それに、本来カロスにいるべきジガルデがウルトラビースト侵入に対してアローラに飛んできてるから、誰も2体を止められないわけだしな。」
ーアローラ地方ウラウラ島しまキング兼国際警察元刑事、クチナシ。
「フロックス・グループさんからいただいた、擬似BREAK力場発生装置はもう設置済みよ。
私達エーテル財団は、アオバさんの
ーエーテル財団トップ、ルザミーネ。
以上の5名が、3地方の総力を結集したのだ。
「プラターヌ博士が開発したばかりの、ジガルデセルを集めるジガルデキューブよ。」
「チャンピオンから預かってきた、疑似BREAK力場を起動するためのウルトラネクロズマが入ってるウルトラボールだ。ま、ムゲンダイナの無限のエネルギーには劣るかもしれねえが、コイツの光エネルギーでもうまくやればなんとかなるんだろ?」
かくして、かつてラスト団が
ー*-
「ジガルデのカケラ!?いや、ステラーシステムのジガルデバージョン!?そもそもジガルデはカロスにもいないはずで、ムゲンダイナはやられてもう疑似BREAK力場を展開できるほどの保有エネルギー量のポケモンはいないはずで...!」
「いたよ。アローラに。」
それまでずっと戦闘に参加せずひっそりとしていたカグヤは、今や戦場の主役として、
「ネクロズマが放つ、無限に等しいほどの光のエネルギー。アローラに満ちるZパワーの祖とも言われているほどのエネルギー。
もともと『強さを授ける』ことができるそのエネルギーで、疑似BREAK力場を起動したんだよ。」
ムゲン団がラスト団の力を借りてムゲンダイナでやったように。
「それで...BREAKオーラは強さの概念。力場の存在下なら、充分に強いポケモンは自らのオーラを放ち、カケラとして分け与える。よりしろさまがしてきたように...
...ジガルデ・セルを集めながら、セルに放出させたBREAKオーラを結晶化させるのはけっこう時間がかかって、つい昨日航空便で届いたばかりなんだ。」
ムゲン団がステラーシステム作成のためにテラパゴスからBREAKオーラの形でその強さのイデアをコピーしたように。
ジガルデは100つのセルを集めて完全体になる。逆に言えば、セル1つからでもその権能は若干とはいえ採取できるのだ。時間と数を集めて、ここに「ジガルデをよりしろさまに見立て、『秩序を維持する』権能を他のポケモンに授ける、ジガルデのカケラ」が完成していたのだ。
「貴方たちが2000年、私たちを恨みながら方々に迷惑をまき散らして戦争してる間。
私たちは名家として財閥として、いろんな地方、いろんな人と手を取り合ってきた。
おかげで、貴方たちの伝説を、メタることができるね。
アルソミトラ、これでチェックメイトだよ!」
ー*-
イベルタルとゼルネアスの強奪を計画に組み入れてからずっと、カロス3体目の伝説ポケモン、ジガルデのことを気にしてはいました。
ー「ジガルデ?秩序の維持のためにカロスを監視しているポケモンのことか?それがどうしたアルソミトラ。」
ー「ジガルデはゼルネアスとイベルタルを制圧し得るでしょう。ひょっこり出てきて邪魔をされると迷惑ですから。コンフリー、フロックス・ホールディンクスの秘匿部門の長だった貴方なら、何か表に出ていない情報をご存じでは?」
ー「ああ。知ってるよ。アイツは今極秘でアローラにいる。ウルトラビーストが世界の秩序を乱しているからな。
...まあ杞憂することもない。フラダリが2体でさんざん暴れた時も、チャンピオンたちが奔走しただけでジガルデは出て来なかった。3000年前のAZの時もそうだ。ジガルデは神格の暴走を調停しても人間どもの走狗に興味なんざないだろうよ。
ジガルデの介入の期待値は無視できるね。」
...それがまさか、ジガルデのカケラなどというものが出てきますとは...ッ!それも、きっと、イベルタルを一度殺せば私がゼルネアスを出すことを、奴らは最初から想定して...!
ジガルデはおろか、イベルタルもゼルネアスもその権能の全容を理解できていません。この状況で...
「…イベルタル!デスウィングを撃つのです!」
...仕様を理解しながら戦うしかありません!
さて、結果は...
...破壊力は充分、しかし効果は逆転、ですか…
ー*-
生命と破壊と秩序の3体について、わかっていることは少ない。ただでさえ畏怖を以て遇される伝説のポケモンである上に、その性質のせいか、狙う人間がすべからくロクでもないから記録が残らないのだ。
だから、可能性の一つとして想定していたし実際に味わったとはいえ、イベルタル_BROKENが「デスウィング_BROKEN」でやらかしていることを見て、その場の全員が若干感動した。
黒金紫、BREAKオーラをまとった死の光線が、氷河をなぞる…すると、倒されて雪にうずもれていたポケモンたちが、元気に起き上がってくるのだ。
どう考えても、イベルタルがゼルネアス化している…ホープ団にとってはゆゆしきの極みであった。イベルタルの破壊力をゼルネアスからの生命力供給で駆動し続けるのがアルソミトラの策であって、生命力ばかりあっても
「仕方がありません。
皆さん、何度でも、気力が尽きるまで、死力を尽くしなさい!」
ことここに及んで、アルソミトラの決断は一つだった。
イベルタルの権能がゼルネアスのそれになったのなら、蘇生力を用いてゾンビアタックさせるしかない。そしてその間に、入れ替わった自らの権能があふれ出し石化したゼルネアスを、イベルタルによって蘇生させるのだ。
生命力の凝集に切り替えられてしまったデスウィングが、ホープ団のポケモン達を優しく撫でまわし、ゼルネアスに照射される。しかし、たったマイクロセンチ単位の範囲とはいえイベルタルの権能数百万年分を浴びたのだから、そう簡単にゼルネアスの石化が解けるわけがなかった。
ホープ団のポケモン達は、倒されては復活し、ゾンビアタックを繰り返していた。
「ふん、考えは悪くねえが、そんな情熱を欠いた攻撃俺の気合いには効かねぇぜ!」
オリザぐうじが、ポケモン達に混じって生身で飛び出し、こぶしを振り上げ振り下ろし、そのたびにマッスグマやらスカタンクやらが宙を舞う。
「…復活させられて精彩をなくしてるのはわかるけど、だからって生身で戦うのは意味がわからないんだよ…
オーロット、やどりぎのタネで縛り上げるんだよ。蘇生しても動けなくすればいいんだよ。」
イチシノぐうじはと言えば、どんどん気力を失くすポケモン達を拘束している。
「ふぉっふぉっふぉ...
...トレーナーは2000年の間儂らへの逆恨みを募らせても、ポケモン達はそうではなかったようじゃのぅ。」
アテぐうじのシロデスナは砂の要塞と化していて、その防御力を突破できるポケモンはいない。
「ぐっ...なぜ、私たちの聖戦が、こんな...!
ゼルネアスの解凍はまだですか解凍はまだですか…!」
持ち主が入れ替わろうと、イベルタル由来の破壊の権能さえ取り戻せば...!アルソミトラはしたっぱたちに指示を下しながら、イベルタル_BROKENに蘇生ビームを撃たせ続ける。
(なんとか、なんとか、イベルタルのスタミナが切れないよう...!)
ホープ団のポケモンたちも必死だ。生物のサガとして戦闘不能↔ゾンビアタックをさせられては精神力が尽きるが、しかしこの戦いがそれだけ重要であることは理解していた。退けない一線があったのだ。
「アップリュー、アツいダイドラグーンだ!」
「サーフゴー、サイコキネシスです!」
ぐうじの指示が飛ぶたびに、ホープ団のポケモン達が倒されていく。
「イベルタル!ウィンディとユキメノコとカクレオンを蘇生させなさい!」
最後の転機は、アルソミトラのもう何十回目かもわからない蘇生指示だった。
イベルタルからの光線を浴びた戦闘不能ポケモン達は、立ち上がることなく、そのまま石化したのだ。そう、本来のイベルタルにやられたかのように。
「そんな馬鹿な!?」
「あっ、ジガルデのカケラで授けた『オーラブレイク』は任意で切れるよ。」
ジガルデのカケラによって、イベルタル_BROKENの死と破壊の権能は反転させられゼルネアスのそれとなっていた...が、自然生成されたカケラではなく機械的なシステムのこと、なんとオフにもできたのだ。だから、イベルタルは本来の力を取り戻し、同士討ちを引き起こした。
「くっ...ならばイベルタル、あの女にわざわいのよる!」
「ぽちっとな。」
ーグレイシアは ジガルデの力を 得た!
ーグレイシア<Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”>は Emulated_”オーラブレイク”を 発動した!
ーイベルタル_BROKENの
真っ暗な「夜」の「闇」が、カグヤとグレイシアを包み込む。
「くーっ...力が満ち溢れるねグレイシア!」
死と破壊の力は生命力に反転されてカグヤとグレイシアの全身に力をみなぎらせた。そしてグレイシアに供給された生命力は、ジガルデのカケラが授けるジガルデの権能に変換される。
グレイシアは深く息を吸って、ふぶきを吐き出し...
ーグレイシア<Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”>の...
...Emulated_”サウザンアロー”!
...翠の霰がイベルタル_BROKENの両翼に真下から直撃し、大爆発。イベルタルは再び、地面に落下した。
ー*-
「ゼルネアスは石化イベルタルは陥落、そもそもどちらの能力も私の手の中...
...アルソミトラ、チェックメイトだよ。」
カグヤは、そう、しっかりと、決着を告げた。
ここに、グンジョウ原発から始まったユキコシ最大の危機、侵略者の手にあるイベルタルとゼルネアスのBROKEN進化体との闘いは、終わりを迎えたのだと。
「いえ...そろそろ...そろそろのはずなのです…!」
だが、アルソミトラは諦めない。
「…何を待ってるのか知らないけど、私のもうひとつの目的も、達成されたから。
諦めが悪いよアルソミトラ。」
氷河のクレバスの下から、吹雪が噴き出す。
”「そうですよ、略奪者たちよ」”
白い毛をたなびかせ、巨大なユキコシキュウコンが跳び上がり、氷河の上に舞い降りた。
「ユキツヌシカミ...!貴様...!
イベルタルの権能反転は、イベルタルを制圧するためだけではなく、私たちが一度石化させたユキツヌシカミを復活させるため...!?
クソッ...全員、ほのおワザで暖め」
-ユキツヌシカミは 凍風をはなち 聖山の神気が 下界を浄める!
ーユキツヌシカミの ごうせつ!
ー大雪が降り注ぐ!
ーユキツヌシカミの ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ!
氷霧が、すべてを覆い隠す。
すべてが、凍り付いた。
-ホウオウ_BROKENの シャイニングフレイム_BROKEN!
-ルギア_BROKENの はかいのせんこう_BROKEN!
上空に出現した2つ目の太陽の赤熱した神光が、氷に閉ざされた氷像のすべてを溶かし出す。
高エネルギーの空気弾が氷河にめり込み、爆裂。氷河が蒸発し、人もポケモン達も一斉に、あらわになった地表に叩きつけられる。
「よう、苦戦してるみてぇだなぁアルソミトラ!」「あたしらの出番、残ってる?」
「遅いですよ、ウキクサ、ハッカ!」
正式計画名:フロックスグループ・エーテル財団・カロスリーグ合同戦術対伝説システム緊急開発プロジェクト
名称:ジガルデのカケラ/ジガルデZ/
ウルトラネクロズマからあふれる「てんこがすめつぼうのひかり」のエネルギーで起動した疑似BREAK力場に、ジガルデキューブに集めたジガルデセルに含まれる「ジガルデの強さと権能の概念」を焼き付け、ジガルデのBREAKオーラを作成。充分に強くなって結晶化したオーラで作成したカケラ。
ジガルデの4種類の専用ワザ「グランドフォース」「サウザンアロー」「サウザンウェーブ」「コアパニッシャー」をよりしろさまのワザとして授け、また「ゼルネアスとイベルタルを制圧する」特性である「オーラブレイク」を付与する。その上、ステラーシステムと同じくBREAKオーラはエネルギーを与えるのではなく付与相手のエネルギーをジガルデのそれに変換することに使われているため、「自由にオンオフが可能」「(オーラ効率がよく)ある程度連続発動できる」という破格の性能を持つ。
各地方との人脈を総動員して伝説ポケモンを2体使っている上に、都市を一つ作れる金額がかかっている。
Q:8章はタイトル地名じゃなかったんですか?
A:ジガルデの居場所はついの洞窟、「