お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
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はてやま第Ⅲ氷河で、石化したユキツヌシカミが捜索隊に発見され、捜索隊がホープ団に見つかって敗走し始めていたころ。
ー「こちらアルソミトラです。ハッカ、ウキクサ、聞こえますか。」
「聞こえるぞ。」「聞こえるわ。」
二線級トレーナーたちやジュンサーたちに未だ包囲・監視されている、黒焦げのサンゴジュ市役所跡地。一度は周囲の建物のガレキでバリケードを築き要塞化していたが、それすらもテロ発生6日目の攻防戦で吹き飛んでしまい、冬の陣後の大阪城よろしく丸裸となっていた。
確かに今のサンゴジュシティは主力トレーナーがすべてはてやま征伐に向かいがら空き、隙を突いてサンゴジュシティへ逆侵攻する選択肢がホープ団にはある…が、アジトにしている市役所跡地が骨組みしかまともに残っていない惨状であるからして、戦力を割いて市街戦を行い、怒り狂いながらはてやまから戻ってくるだろう7ぐうじを相手にするのは賢い選択肢ではない...というコンフリーからアルソミトラへの進言はその通りだった。占領を維持し拡大するなら、7ぐうじらのユキコシ主戦力を伝説ポケモンで撃破した後にゆっくりやればいい。さいわい手札に伝説ポケモンが2体もいれば、攻めて来られることはないのだし。
一方でサンゴジュシティ側はホープ団の内情や判断など知る由もない。ハリボテでありながらも監視、そして散発的な攻撃で牽制しているのはそのためだ。上層部判断として「どうせ中心市街からの避難は終わらせたので、少しばかりホープ団被占領地が増えたとしてもはてやまの
お互いにお互いの戦力を評価した結果の微妙な均衡状態。サンゴジュシティ市役所跡地周辺で起きているのは、それだった。そしてそんな膠着は、アルソミトラからの一本の通信によって、終わりを告げた。
ー「さきほど、はてやま第Ⅲ氷河にしかけていた罠に、奴らがかかりました。
ほどなくして、ぐうじどもに忌々しいアオバ・フロックスが攻めてくるでしょう。」
その時こそ、手ごわい蒼玻/アオバと7ぐうじを叩きのめすベストタイミングだと。自分たちが仕掛けた誘い込みにユキコシ民たちはまんまと乗ったのだと、そう言いたげに。
「あたしらも、はてやまに合流すればいい、そうでしょ?」
ー「お判りいただけで何よりですハッカ。ただ...
ハッカ、ウキクサ、そちらの状況で、こちらの戦線への戦力の引き抜きをして、大丈夫ですか?」
「大丈夫ではねぇな。
数時間なら保つ。けど、ユキコシの運送業者どもは強敵だ。俺たちの移動を察知すればデコトラ乗ってやってきて、グラエナよろしく寄ってたかって俺たちを袋叩きにするだろうよ。
伝説ポケモン留守で市役所の占領維持もできねぇな。さっきSNSで見たが、ユキコシリーグ協議会はカントーやジョウトを筆頭に世界各地方のリーグからトレーナーを集めようとしてやがる。それも札束で張り叩いてだ。」
ワカナエ大乱では補償に追われたが、未だフロックス資本は強い。融資と引き換えに各地から腕利きのトレーナーを派遣させることは造作もなかった。
ー「厳冬期になって航空便が止まる前には帰るでしょうが、世界中から腕試し気分でやってくる暇人トレーナーたちから、一ヶ月の間伝説抜きで市役所を守る…無理ですね。」
さすがのホープ団といえども、「他所からトレーナーたちがやってくる航空便を撃ち落とせ」とは言えない。それをしてチャンピオンでも殺そうものなら開戦事由となり、下手すれば世界中を敵に回す。ウルトラビーストだの四災ポケモンだのを放たれれば、ポケモンのリミッターが外れたユキコシ地方は即座に壊滅してしまうだろう。
「アルソミトラ、あんたはこう言いたいんでしょ?『一度、市役所は放棄すべきだ。伝説ポケモン4体総出でぐうじたちを潰す作戦で、もう鉄骨しか残ってない市役所に欲目を出すべきじゃない』って。」
ー「ハッカ、そのとおりです。
ですが私は心配なのです。
撤退戦は、難しいですから。」
「何言ってんのアルソミトラ。」
「俺達の2000年の夢が叶いそうなんだ。拠点一つ捨てられねぇで、ゲリラがやれるかよ。」
ー*ー
サンゴジュ市役所跡地に煙が上がったのを見て、カントー地方タマムシジムリーダーのエリカは思った、いよいよですね、と。
冬季でもユキコシ地方と外界をつなぐ数少ない玄関口であるワカナエ山脈縦断トンネルによって、ワカナエシティとタマムシシティはつながっている。このトンネルはかつて山脈越えの街道があった場所で、タマムシシティはユキコシ地方と縁が深い。
現ジムリーダーのエリカも、ジムリーダー対抗戦で主将を務めた人望厚き実力者にして、お嬢様としてフロックス姉妹との個人的つながりもある…そういうわけでカントーからの救援第一陣としてジムトレーナー率いやってきたが、「主力が留守で市幹部も全滅してるし、ロケット団と戦ったあなたがちょうどいい」とサンゴジュ防衛の前線指揮を頼まれ、内心困惑していた。
「みなさん、事前の指示どおりに。
それでは、はじめてくださいませ。」
トランシーバーに告げてから、自らもボールを投げる。
直後、サンゴジュ市役所跡地を包む煤煙の中に、赤い光点が見えた。
「ホウオウ…!
今ですわ!発破!」
爆発や炎上の煙とは比べ物にならない、噴火のような噴煙が、市役所跡地の残骸を完全に見えなくする。
「そしてみなさま、一斉に!お願いしますわ!」
叫びながら、エリカは傍らのポケモンたちにもハンドサインを送る。
くさタイプの積みワザ「せいちょう」をありったけ積み待ち構えていたキレイハナ、ラフレシア、ウツボット、モジャンボ、リーフィア、ワタッコ…6体の最大火力の「ソーラービーム」が、街区画2つ横切る長距離砲撃として、市役所跡地に上がる煤煙へ撃ち込まれた。
同様の光景は、エリカの指示をトランシーバー越しに聞いたあらゆるポイントで繰り広げられている。時間的余裕を活かして最大限に積まれた積みワザを反映した大火力砲撃…だいもんじにりゅうせいぐん、はかいこうせん、ミストバーストにてっていこうせん…それらが全方位から、サンゴジュ市役所跡地を襲った。
(下からは「あなをほる」で作ったトンネルを通しての爆破。上からは集中攻撃…これで、なんとかなるはずです…!)
祈りは、聞き届けられない。
ーホウオウの シャイニングフレイム!
ールギアの はかいのせんこう!
光でできた焔が、煤煙の中からサンゴジュ市街へ撃ち込まれる。
プラズマの空気弾が、着弾と同時に家一つ消し飛ばす。
(これが、ホープ団…!)
「みなさま、作戦通り、持ち場を離れて各個戦闘を!」
ここにいてはホープ団に狙われてしまう。対抗するに充分ではない自分たちは、ゲリラ戦を挑むしかない…それがむしろ相手の十八番だと知りつつも、エリカはそう決めた。
ー*ー
めんどくさいと、ウキクサは思った。
ホープ団からすれば、サンゴジュから出ていってやろうと言うのだ。にもかかわらず邪魔されるいわれもない。
あまりにもウザいので、彼は思ったー行きがけの駄賃に破壊してしまっても良いのでは?
「ウキクサ、あんたもルギアしまいな。
ルギアとあたしのホウオウのサイコキネシスで全員飛ばさなくちゃいけないんだから、消耗させちゃだめでしょ。」
今からはてやま連峰に人力で登山していては決戦に間に合わないのだから、伝説2体に空を飛ばしてもらう...そのつもりであれば、飛べるようになるまでしまっておけとハッカに言われ、ウキクサはしぶしぶルギアをボールへ戻した。
「チッ...オムスター、出番だぜぇ。」
ビルがまるごと吹き飛ぶのが見える。さっきまで奪い合っていたビルだ。
「キマってやがるな...」
「サンゴジュの連中、絶対、ビル獲られたら丸ごと吹き飛ばす戦術で来てるわね…」
ー*-
サンゴジュ市民の戦術にドン引きしているのはホープ団だけではなく、前線総指揮官のエリカもだった。
なぜだかわからないが南の田園地帯へとがむしゃら向かうホープ団に対し、街区画、そしてビルひとつひとつを奪い合う市街戦が起きている。
すべての前線でエリカたちは不利で、トラックやバイクで走り回る運送業者たちだけが気炎を吐いているが、それもトラックが攻撃を受けて横転していくことで徐々に弱体化している。
「ガソリンが漏れたぞ!退避ィ!」
「南小学校前に到達のもよう了解!支援砲撃します!フレフワン、ムーンフォースだ!」
「商工会館、持ちこたえられません!下がります!サーナイト、5分後にみらいよちです!」
次々と、市街南方に敷いた防衛線は食い破られ...それに対して、無力なサンゴジュ市民は、占拠された区画やビルを片っ端から吹き飛ばしていた。みらいよちやだいばくはつやほのおワザ、手に入る者は火薬やガソリンを持ち出している。おかげでサンゴジュシティ全体の空気がなんだか煙で濁ってきた。
市役所焼失で死んだ4000人や多発テロの被害者の関係者もいるし、そもそも2週間の避難生活だ、サンゴジュ市民はみなうっぷんがたまっていて、この上ホープ団に好き勝手させるくらいなら焦土戦術すら辞さないという構えだった。エリカたち上層部は暴走しかかっている市民たちを制止しなければならなくなっていたのである。
ー*-
「てめえが、ここのトップかぁ?」
煙る住宅街をバックに、ウキクサは尋ねる。
「…そうです。
タマムシジムジムリーダーの、エリカと申しますわ。
あなたは?」
田園をバックに、エリカは応えた。
「…こんな血なまぐさいところにいていいタマじゃないだろ嬢ちゃん。
ホープ団海軍中将、ウキクサだ。悪りぃが、ここで俺たちと戦ってるなら、外つ国でも、有罪だな。
覚悟はできてるな?」
できているわけがないー何故かなってしまった指揮官の地位も、街区画を巡りせめぎ合うこの戦況も、不本意なのだから。
「できないけれど、でも、わたくしにできることをするしかありませんもの。
ウツボット、つるのムチで捕まえてください。」
「オムスター、触手を伸ばせ。」
蔓と触手がはたき合い、絡み合い、殴り合う。
「ソーラービームですわ。」
「撃ち荒らせ、いわなだれ。」
岩石が降り注ぎ、ウツボットが傷だらけになる。
光線がオムスターをかすめ、殻が欠ける。
「ちょっと何やってんのウキクサ!早く離陸の準備をしないと!」「ハッカ!俺がこいつを倒さなんだら、背中を見せて逃げることになるぞ!」
それは、ホープ団にはできない選択肢だ。ホウオウとルギアのサイコパワーでいっしょにはてやままで飛び立とうというわけで、滑走が必要な上に離陸直後は隙が生まれる...その瞬間に「てんらいのへきれき」、いやそこまで言わずとも「かみなり」を撃たれようものなら、ホウオウとルギア本体はともかく団員たちにも落雷して全員落伍だ。
「俺が戦わないで、どうするん」「ネッコアラ、あくびだッ!」
ウキクサの耳元に飛び出した、枕を抱えた小動物。それが、ウキクサの聴覚野に1/fゆらぎ音波を叩きこむ。
「な、に、を...」「あんた!?」
ネッコアラを投げつけた下手人のほうへ、ウキクサとハッカが振り返る…前に、彼、いや、彼らは飛び出していた。
「いけ、ゴローニャ!」「フォレトス、ふんばるぞ!」「オニゴーリ、やるわよ!」
ぞろぞろ、十数人のしたっぱたちが、眠気で今にも崩れ落ちそうなウキクサの視界に映る。
「お前ら、何を…」
「中将閣下…
俺達のジジババのずっと前から、俺達はいつか勝って、ふるさとに舞い戻るんだって、思ってきました。
今がその時だって、わかります。俺はウキクサ様とハッカ様に賭けてるんです。こんなつまらないとこで消耗していいタマじゃねえよ。
誰かが
隙が生まれる離陸前に、敵の戦力を削り切る…それはしょせん不可能だと、誰かが居残って、飛び立ちを守らなくてはと、したっぱたちは犠牲になろうとしていた。
「っく…俺も、ヤキが回ったかな。」
ウキクサは、カクリと寝落ちする瞬間にルギアをボールから出す。
ールギアの サイコキネシス!
「…ったく…ちゃんと抗命罪の裁判をやらなくちゃなんだから、無事に帰ってくること!いいわね!」
ハッカが、自分のポケモンたちをしまい、ホウオウを出す。
ーホウオウの サイコキネシス!
あとに続く100人ほどのしたっぱたちが、ふわりと浮かび上がった。
「…まさか、飛ぶつもりですの!?
ここを通すわけには!」
エリカが、2体の伝説ポケモンの飛翔を止めようと立ちふさがる。
「お前らいいよな?
だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」
「うそっ...!?」
ウツボットの「まもる」バリアが爆風で消し飛び、エリカの身体が、収穫が終わり干された水田へと叩きつけられ乾いた泥濘に汚れる。
「エリカさん!?」「わたくしのことはいいから、早くホープ団を...!」
エリカの両脇を、ホウオウとルギアが、サイコパワーで全身を輝かせながら駆けだしていく。引きずられるようにして、数センチだけ地面から浮かび上がったホープ団員百余名がリニアモーターカーよろしく浮遊移動する。
「わかりました!おいライボルト、じゅうまんボルト!」「ハトーボー、かぜおこし!」
「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」
は!?エリカとトレーナーたちは驚愕する。居残りしたっぱたちは、先ほどだいばくはつさせたポケモン達の回収すらせず、2体目を投げると同時にだいばくはつを指示したのだ。
ホウオウとルギアへの攻撃の余裕などない。再び、爆風と爆片が襲い掛かる。
100人以上を浮かばせ伴に飛ばしながら、ホウオウとルギアは滑走し、ホープ団員たちを空に打ち上げるやいなや自らも舞い上がる。
「っ、キレイハナ、ラフレシア、出てきてくださいませ!
リーフストーム!」
ソーラービームは間に合わない、リーフストームは届くかわからない...エリカは逡巡なくとっさに後者を指示した。
「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」「だいばくはつ!」
が、いずれにせよ、無意味。
居残りしたっぱたちの3体目の爆発に巻き込まれ、キレイハナもラフレシアもあっけなく気絶する。エリカ本人はと言えば、かろうじて田んぼの畔影に隠れて爆風をしのいだ。
おそるおそる田んぼから顔をあげたエリカたちが見たのは、空高く飛び去って行くホウオウとルギア、そして点のようにしか見えなくなったたくさんのホープ団員だった。
「ホープ団、万歳!」「ホープ団に栄光あれ!」
ー*ー
「…あたしは、応えなくちゃいけない。
2000年の歴史と、皆の期待を、背負ってるんだから。
...もう起きてるんでしょ、ウキクサ。」
「ああ。
俺たちには使命がある。絶対に、簒奪者どもを全部ぶっ殺して、ユキコシを取り戻す。
俺たちの手で、古代ユキコシの栄光を、復活させるんだ...!」
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ダイヤモンドダストで白く見えなくなった、はてやま東山麓。
はてやまアジトを作ったはずの、アルソミトラが7ぐうじを待ち受けるはずの場所が氷霧に包まれているのを見て、ハッカとウキクサは「(大変気に食わないが)最近アルソミトラが連れてきたコンフリーとかいうユキコシ人部下の『期待値計算』とやらは正しいらしい」と悟った。
-ホウオウ_BROKENの シャイニングフレイム_BROKEN!
-ルギア_BROKENの はかいのせんこう_BROKEN!
上空に出現した2つ目の太陽の赤熱した神光が、氷に閉ざされた氷像のすべてを溶かし出す。
高エネルギーの空気弾が氷河にめり込み、爆裂。氷河が蒸発し、人もポケモン達も一斉に、あらわになった地表に叩きつけられる。
「よう、苦戦してるみてぇだなぁアルソミトラ!」「あたしらの出番、残ってる?」
「遅いですよ、ウキクサ、ハッカ!」
かくて、サンゴジュシティ市役所跡地に立て籠もり包囲されていたホープ団部隊は、はるかはてやま連峰第Ⅲ氷河に、援軍として合流したのである。