お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
現代日本からの転生男子こと蒼玻と、ユキコシ地方一の令嬢アオバ。2人は転生と憑依にまつわる諸問題をやっとのことで解決し、1つの身体を共有する「二重魂魄」そして恋仲として、旅を続けていた。
晴れて7おみや巡り成就者となった蒼玻/アオバ。だがその時、サンゴジュシティに火の手が上がった。ユキコシ地方の因縁、ホープ団。史上まれにみる強大な力を手にした悪の組織は、ホウオウとルギアを手にし、サンゴジュシティ各地を破壊、市役所跡地に立て籠もったのである。
市役所跡地を奪還する目途が立たず、ユキコシ地方は「はてやま連峰のどこかにアジトを築き、ゼルネアスとイベルタルを持って立て籠もっているであろう」ホープ団空軍中将アルソミトラへの逆撃を行った。
ユキコシ地方の総力を結集し、Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”によるゼルネアス・イベルタルへのメタもあって、アルソミトラをあと一歩のところまで追い詰めた主人公たち。だがその時、
対戦カード
ホープ団
ホウオウ_BROKEN:太陽の化身と化し焔の神鳥
ルギア_BROKEN:深海より出でし嵐呼ぶ神鳥
ゼルネアス_BROKEN:無尽蔵の生命力授けし蘇生神
イベルタル_BROKEN:死をもたらす破壊神
他、したっぱ百余名
ユキコシ地方
デュアルメガディアンシー:地質的時間を操るダイヤモンドの姫
グレイシア<Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”>:秩序神の権能をエミュレートしている、妹令嬢一番の相棒
他、ぐうじ7名
ー*-
「散開ッ!」
グンジョウおみやぐうじトチュウが、咄嗟に叫ぶ。
ホウオウが発する「光でできた熱」を目にした瞬間、ぐうじたちは氷河へ身を突っ込み、手近な氷河の割れ目に転がり込むーさいわいクレバスに落ちてもなんとかなる自信があったーが、次の瞬間、氷河にめり込んだ高エネルギー空気弾がその熱エネルギーを解放。氷河が大きく蒸発・融解して陥没し、全員が雪渓の下に隠れていた地表へと落下した。
溶かされて腰まで満たした水が、溶け残りの氷河を流しながら谷底へと消えていく。すでにはてやま第Ⅲ氷河は残っている面積の方が少ない。
何人かがしたたかに腰を打ったが、それでもほとんどのトレーナーは「まもる」「コットンガード」等を駆使して着地した。そもそもユキコシ地方のほとんどではウールーを最初の一体として配るので、落下緩衝は誰でもできるのだ。
「…伝説が4体とは、厄も豪勢だね。
では、厄落としと行こうか?」
-ユキコシメガアブソルの ディザスターウィング!
「ひょっほっほ、あまり老人をびっくりさせるでないぞい。心臓がうっかり止まってしまうからのぅ!」
-オツユデスの のろい!
「神サンの頭数そろえりゃいいと思ってんならずいぶんと骨なし脳なし気合いなしだな!俺が!お前に!情熱ってやつを教えてやるよ!」
-キョダイアップリューの
厄禍の幻翼が、空を覆いつくす錯覚をなして、ホープ団を襲う。
巨大な杭が、ホウオウの背を打つ。
ホウオウとルギアに、4条ずつ、ビームが奔る。
だが、ホウオウもルギアも、堕ちない。
サイコパワーで浮かばせられていた、無数にも思えるホープ団員たちが、地上へ着陸する。
ハッカが、虹色に輝く鹿角をアルソミトラへ投げ渡した。
「コイツァ返すぜ、アルソミトラ。」
アルソミトラは、舌を噛みそうな複雑な表情をして、石化したゼルネアスをボールから出し、鹿角を折ってゼルネアスとイベルタルへ投げた。瞬く間に、ボロボロのイベルタルも、石像となっていたゼルネアスも、立ち上がり、復活する。
「…やっぱり、持ってたのですわね。
ゼルネアスがはてやまにいて、貴方方がサンゴジュ市役所で籠城戦をできている…となれば、ゼルネアスの生命力をどうにかして持ってこなければならないわけですから。有線ではないでしょうと思ってはいましたが…」
ゼルネアスの身体の一部ー鹿の角は精力剤として使われるほど生命力の象徴だーを切り取って、持っていく。そうすれば、ゼルネアス本体の生命力の一部が、遠隔であっても流れてくる…さすがのユキコシ上層部も、そんな「分け
かくて、ホウオウ、ルギア、ゼルネアス、イベルタルが、100人を優に超えるホープ団員を守るように、はてやま東山麓の谷間に屹立した。
ー*-
「カグヤ、そっちは任せましたわよ!」
ゼルネアスとイベルタルなんて蘇生チート&即死チート持ちコンビ、メタ張りなしで相手してられん。アオバちゃんと一致する意見だ...なんでグンジョウ原発の時はできたんだろうな?
「お姉ちゃんこそ、信じてるからね。蒼玻くんも。」
「ええもちろん。ホウオウもルギアも倒しますし/無事に終わらせるさ、カグヤ。」
幸い、
「悪いけど、よりしろさま/わたくしたちの援護を頼めますかしら?」
”「人の身にてかのごとき熱量には耐えがたいでしょう。わかりました。私が、みなを冷やして回りましょう。」”
「こきつかって申し訳ありませんわね。
ぐうじの皆様、それでよろしくって?」
「俺たちにあの根性なしを叩けっつうんだろ?気合い入るってもんだぜ!」「神にはさすがに、ウスベニの呪いや恨みも通じないから、そうさせてもらうんだよ。」「最強の私も、無理だってわかるから。」「人知を超えている相手には搦め手を持っている者が対処する、マニュアルどおりですね。」「お前らへの邪魔を入れさせない。ああ、その責任、このトチュウが引き受けたよ。」「ひょっひょっひょ、若い者の花道を作るのも、老人の務めじゃからのぅ!」「学者としても、ジガルデエミュレーター付きグレイシアVSイベルタル&ゼルネアス、デュアルメガディアンシーVSホウオウ&ルギア、この対戦カード、見ない選択肢はないからね。」
...どうやら7人のぐうじも、俺たちの戦いに邪魔を入れず、入れさせない、その方向で手伝ってくれるみたいだ。ありがたいことだね。
(さて、準備は如何?)
充分だよ、蒼玻ちゃん。
”(私も、充分です、アオバさん、蒼玻さん。)”
さて...
「誇り高き俺達の燦然、誰にも超えられはしないさ!
/直視すること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏すのですわ!」
ー*ー
ーデュアルメガディアンシーの ダイヤストーム・ディセラレーション!
無数のピンクダイヤが、ナノダイヤの粉雪をまとい、デュアルメガディアンシーの周囲に出現する。
ダイヤ「ストーム」を名乗りながら、そのダイヤはほとんど動いていない。
「ふん、ダイヤの結界か?関係ねぇな。
打ち毀せ、ルギア!」
-ルギア_BROKENの はかいのせんこう_BROKEN!
黄金に輝くルギア_BROKEN、その口内で爆縮された空気弾が、デュアルメガディアンシーと蒼玻/アオバに迫る。
ピンクダイヤとナノダイヤの結界は、果たして...壊れない。赤熱した空気弾は、接触した瞬間に静止し、爆発せず...少しだけ、その赤熱の領域が広がっていくのだけが見える。
時間減速が付与されているダイヤモンドにワザが命中したとしても、現象はその時間減速に巻き込まれ、相対的には極めてゆっくり...ほぼ停止して発生することになる。
「…珍妙ね。だったら、ダイヤの隙間を抜けばいいわ。
ホウオウ、灼き尽くせ。」
-ホウオウ_BROKENの シャイニングフレイム_BROKEN!
地上に太陽が出現し、光でできた熱が光線となり、ダイヤの渦の隙間を超える。
”「それを」”「待って/いましたわッ!」
ーデュアルメガディアンシーの ラディアント・レイピア!
光線を裂いて、一振りの細剣が、ホウオウ_BROKENの胸へと突き刺さった。
「レイピア...!?」「ハッカ、そういやその一刺しでやべぇことあるらしいぜ。」
痛そうにしながら、ホウオウは翼を激しく羽ばたかせ、細剣を振り落とした。ラディアント・レイピアはいわタイプわざ、だいぶ効き目があったらしい。
「…あたしから手札を奪おうってわけね。眩しければこっちへの攻撃が見にくいから。」
「わたくしの戦い方ですわよ。心理的優位、戦力的優位、戦術的優位...
/手札も優越感も失って、さあ、お前らはどうする?」
チリチリと服や髪をあちこち焼き焦がされながらも、蒼玻/アオバは気丈に煽ってみせた。
「つくづくけったいな女だなぁ。
でもてめぇ、忘れてねぇか?」
伝説のポケモンは、神威を封じられてもなお、伝説に値するのだと。
-ルギア_BROKENの れいとうビーム_BROKEN!
-ホウオウ_BROKENの ソーラービーム_BROKEN!
「おっかなッ!?」
どちらも致死の、二条のビーム。蒼玻/アオバの心胆を寒からしめたのは、光線の片方が「れいとうビーム」であろうにもかかわらず、山肌を深くえぐったことである。単純な破壊力が桁違いということだった。
ただこちらもさるもの。デュアルメガディアンシーの「ムーンフォース」とユキツヌシカミの「ふぶき」、それに展開されていたダイヤの時間減速領域がビームの方向をなんとか直撃から逸らす。
(どうしますかしら?これ、緩衝しかできませんわよ…?
/そりゃやられる前にやるしかないだろ…!)
ーデュアルメガディアンシーの ダイヤストーム!
ーユキツヌシカミの ふぶき!
ホウオウ_BROKENをダイヤの暴風が、ルギア_BROKENを雪雹が、横薙ぎに払った。
横っ面を張り叩かれた神鳥2羽が、怒りの咆哮とともに、翼を畳み突っ込んでくる。
摩擦熱で身体を光らせながら、蒼玻/アオバとデュアルメガディアンシーとユキツヌシカミの目の前で引き起こし、急上昇、空中で大きくループを描き、衝撃波を発しながら逆落としに墜落する。
-ルギア_BROKENの ゴッドバード_BROKEN!
-ホウオウ_BROKENの ゴッドバード_BROKEN!
ー*ー
…お姉ちゃんは!?
…無事か…
とっさのダイヤと氷の盾ももう保たないんだと思う。でもとりあえず、特殊攻撃を封じて、怒涛の通常攻撃を耐えてる。
お姉ちゃんも、悔しいけど蒼玻くんも、すごい。
自分でやってみてわかる。ジガルデでメタを取っても、神と呼ばれし伝説のポケモンの相手は、ワンミスで死ぬ…!
「でも、負けられない…!
グレイシア、もう一度サウザンアロー!」
「だんだんタネがわかってきましたよ。
イベルタル、エアスラッシュです。」
…エミュレートしてるだけで、威力は「ふぶき」でしかないし、じめんタイプわざになってる。相殺されちゃう。
「だったら…
ゆきなだれッ!」
「デスウィングですッ!」
「避けッ」
…はー冷や汗かいた。ジガルデエミュレーターオンに戻そ。
「先程は遅れを取りましたが、あなたはそこまで、ジガルデの能力に頼ることはできないようですね。
カケラというよりは、コンフリーに聞いた『ステラーシステム』に近いものなのでしょう。」
…動揺を見せちゃダメ。
「サウザンウェーブ。」
「ゼルネアス、ハイパーボイスで打ち消しなさい。
やはり、ジガルデの能力は手に入っても、出力までは不可能なようですね。
かのステラーシステムは莫大な貯蔵エネルギーをテラパゴスのワザに変換していますが、そのグレイシアはジガルデのワザや能力を使うにしてもあくまで持ち前のパワー分だけ、純粋なワザ効果の点では相性が悪い分むしろ悪化するのでは?」
…ゆさぶりにわざわざ付き合う義理はない。例え図星でも。
解析上、「コアパニッシャー」をすれば、反転じゃなくて、完全にイベルタルとゼルネアスの権能を封じることができるのはわかってる。だけど、あたしたちにそれはできない。Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”はあくまでエミュレーターで、グレイシアでジガルデをエミュレートしても、できるのは「性質の変換」だけだから、コアパニッシャーを撃つにはグレイシアの出力が足りなさすぎる。
「イベルタルにぜったいれいど!」
「ゼルネアス、サンクチュアリ。イベルタル、わざわいのよる。」
…っ、どうする!?ジガルデエミュレーターで入れ替えても結局は両方来る、だったらぜったいれいどが決まってイベルタルの即死攻撃が不発するのを祈る!?でもそんな運試し…っ
…いや…
「ゆきげしきッ!」
「…隠れます、か…」
イベルタルの「夜」から逃げるだけなら、隠れて狙いを逸らして、ゼルネアスの影響のほうが強いとこに行けばいい…一瞬ちょっと足石化しちゃった。これも最善手じゃないよね…
「お姉ちゃんはすごいよ…
蒼玻くんも…ほんとすごい…」
「ゼルネアス、ギガインパクト。イベルタル、ゴッドバード。」
私は、並び立ちたいんだ。私を半年ちょっとでトレーナーとしてすら追い越していった、心から尊敬してる2人と。
「
ーグレイシアの ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ!
ー*ー
”「少し、手を出しますよ、アオバさん。」”
ーユキツヌシカミの ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ!
すべてが凍りついても、ホウオウ_BROKENもルギア_BROKENも、そしてゼルネアス_BROKENもイベルタル_BROKENも、止まらなかった。
一撃必殺ワザごときで一撃必殺される神格ではない。ましてゼルネアスに至っては無尽蔵の生命力があり、ホウオウもまた燃え盛る火焔の中から蘇生するだとか死んだポケモンをエンテイ・スイクン・ライコウとして生きかえらせただとか言われている。戦闘不能が継戦不能を意味しないのだ。
「おぅ、ブチギレてるみてぇだなぁ!」「あたしたちの、怒りに共鳴しなさい!」「神は、祟ってからが本番ですからね…!」
-ホウオウ_BROKENの シャイニングフレイム_BROKEN!
焔鳥の全身が、地上に現出せる太陽のように、閃光して不可視の焔を全方位へ届ける。
-ルギア_BROKENの はかいのせんこう_BROKEN!
深鳥の口を閃光させる膨大なエネルギーが、空気弾を爆縮状態にして撃ち出す。
-ゼルネアス_BROKEN〈テラスタル:フェアリー〉の ムーンフォース_BROKEN!
理論値的なバフがかかった凝縮月光ビームが、虹色の角から照射される。
-イベルタル_BROKENの デスウィング_BROKEN!
Y字の破壊の象徴は、死をもたらすドス黒い輝きで大地をなぞった。
「いかんッ!」「むっ、気合ィィィィィッ!」「馬鹿やってる場合じゃないんだよオリザッ!」「マニュアルにゃありませんねこんな事態!」「嗚呼、震天と煉獄を擦り合わせるかのような超常!データを取らせたまえ!」「私は最強私は最強私は最強…ッ!」
7人のぐうじは、4体の伝説の攻撃、そのたった余波を防ぐためだけに、手持ちのポケモンを総動員して数十重もの防壁を張る。
ぐうじたちと戦っていたしたっぱらと言えば、三中将の攻撃合図に気づいた途端にイトマルの子を散らすみたいに樹林に飛び込んだはずだが、肝心の樹林帯が爆風でなぎ倒され丸太の山と化している。もっとも無事を祈ったり同情したりしてやる必要のある相手でもないが。
「…アオバさんたちは大丈夫なの!?」
キノコ雲の下、様子は、杳として知れなかった。
無数のピンクの残像が、刹那の間だけ、はてやま連峰東山麓の谷間に吹き荒れた。
ー*-
4体の伝説からの同時攻撃を受けて、さすがのカグヤとて動揺したが、しかし蒼玻/アオバとディアンシーにとっては、そのような攻撃を受ける可能性は充分に想定してきたものだった。だから、ぐうじたちの心配はなんとか杞憂で済んだ。
ーデュアルメガディアンシーの ジオスケール_トリックルーム!
”「驚きました。私に挑んだ戦法を、逆でやるのですね。」”
蒼玻/アオバがデュアルメガディアンシーとともによりしろさまユキツヌシカミに挑戦した時、「ダイヤストームをジオスケール_トリックルームのぐちゃぐちゃな時間領域に巻き込み、ディアンシーの気絶とともにトリックルームが解除されることで本来の速度を取り戻し、ダイヤの暴風がふいをついて襲う」という奥の手を切った。
まったく同じ戦法は、取れない。あの時はバトルだったが、今度は原義での真剣勝負だからだ。石化されてから天災的な攻撃威力で灰燼レベルに砕かれるなどというわけにはいかない。
ただ、今回はさらに、トリックルームとして洗練されていた。
光線のような高速の事象は低速で進行し、逆に
結果、迫りくるすべての攻撃は静止し、今までは減速で縫い留められていたダイヤの結界は極超音速で撃ち出されてダイヤの暴風となったのだ。
そしてまた、ジオスケール_トリックルームが生んだ時間の逆転を、すなわち、本来は多大な時間がかかることを相対的超短時間で終わらせられるその余裕を、見逃すカグヤではなかった。
「やっと出力が足りた!
グレイシア、コアパニッシャー!」
ーグレイシア<Copied_Legend(2nd).Emulated_”Zygarde”>の Emulated_”コアパニッシャー”!
翠のビームが、トリックルームの中をゆっくりと進んでいく。
その間にも、カグヤのさらなる奥の手が、ノブレスボールから登場する。
「マハリハグルマ、かげうちっ!」
BREAK力場がBROKEN状態ではワカナエ大乱の時よろしくうっかり「亀裂」の向こうから何かを召び喚さないとは限らないが、四の五の言っていられる場合でもない。時間が狂ったトリックルームの中に空間の亀裂がいくつにも分岐して伸展し這い回り、ほぼ停止状態の伝説4体の攻撃をヒビの中へ取り込んでいく。ふだんは「線」にすぎない亀裂で敵の攻撃のすべてを取り込むのは至難だが、幸い時間は減速しているからたっぷりあった。
案の定「ギゴガゴビシャーン!」と不吉な怒声が聞こえてきたがこれは無視し、空間のヒビを真上で解放した。
莫大なエネルギーが、宇宙まで噴き出す。トリックルームは耐えきれずに砕け散る。衝撃波が山稜を裂いて木々をなぎ倒し、空気は熱エネルギーで爆発膨張したまま戻らず真空状態となって、キノコ雲が湧きあがる。
すべては、ジオスケール_トリックルームで時間を引き延ばされていない外部からは、一瞬かのように見えた。空へ噴き上がる爆発と衝撃、立ち上がるキノコ雲、そしてそれらすべてを裂いて出現した、超高速の無数のピンクダイヤと、爆風に混じる不可視のナノダイヤ、そしてとどめに「Z」を描く翠緑の光線。
そうして、伝説4体は「しとめた」と思い、爆発の余波を避けるために目をそらした瞬間に、ダイヤの暴風をもろにくらい、そして、ジガルデ由来の「秩序を乱す神を制圧するビーム」に巻き込まれることになったのだった。
ー*-
「ゼルネアス、回復をするのです!」
煙が晴れ上がって見えるようになるまで、たっぷり1分以上かかって、そして全容を把握しアルソミトラは叫んだ。
しかし、ゼルネアスは動かない。
ゼルネアスだけではない。イベルタルも、ホウオウも、ルギアも、微動だにせず地面に座り込み、そしてその体毛は霜で白んでいた。
「凍っている…まさか!?」「ユキツ...ヌシカミぃぃぃ!」
一度はアルソミトラ単独で倒せたはずだったそのよりしろさまは、今やホープ団の最高戦力たちを黙って睥睨していた。
「今度こそ、もう、チェックメイトだよ。」
ジガルデの権能は秩序を乱す存在を制圧するーその権能に干渉することによってだ。特性を含めた権能すべてを、例え本物には遠く及ばないエミュレーターによってとはいえ差し止められた状態で、つまり
「どうする?凍結が溶けるまで、待ってみるか?/今度は増援は来ませんわよ?」
さすがに、蒼玻/アオバは勝利を確信していた。外から暖めなければ「ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ」による凍結は簡単に解凍されないし、ずっとゼルネアスによる蘇生とホウオウによる加熱で苦労していたがどちらも封じたのだから、もうホープ団は手がうてまいと。
「ああ、そうさせてもらうわよ。」
「…何?」
蒼玻がいぶかしむ。
ハッカが、ポケットからスイッチを取り出す。
「仕切り直し...ってな!」
「お姉ちゃん伏せて!マハリハグルマ、ヒビでお姉ちゃんを空中へ引き上げて!」
激震が、戦場を襲う。今までの戦闘のような至近の爆発ではなく、足元を揺るがす地震のような...
「こんな仕込みありかよっ!?/谷丸ごと爆破なんて冗談じゃありませんわね!?」
ーはてやま第Ⅲ氷河谷間、仕掛けられた大量の爆薬によって地盤から崩壊し、土石流となって崩流。
ー*ー
土煙を上げ、木々を刈り倒し、土石流は谷間を流れ下る。
もともとはてやま連峰は火山だと言われており、従って地盤がそれほど頑丈ではない。岩盤を爆破されては、表土は崩落し重力に従ってなだれ落ちる。
蒼玻/アオバもカグヤも、すんでのところでマハリハグルマに空中へ引き上げられ、空間の「ヒビ」に抱えられるようにして空中に退避する。7人のぐうじたちもそれぞれ、空へ逃れ、あるいはライドポケモンによって尾根へ登り、なんとか生き延びた。
土石流ははてやま東山麓を崩落していき、そして峡谷に広がる巨大なはてやまダムの湖面になだれこんで湖水をまっ茶色に染めた。はてやまには巨大なスプーンでえぐったかのような傷跡が残される。
「やりにくいですわね…」
”「ならば、こうしますか”」
いつのまにどこから出てきたのか、ユキツヌシカミが湖面に立っている。…立っている?
ーユキツヌシカミの ザ・グレイシャルワールド・オールフリーズ!
「あ、あらあら...」
見渡す限り、峡谷に広がるはてやまダム湖が凍り付く。さすがに消耗したのか、ユキツヌシカミは凍結湖面に座り込んだ。それでも、己の敵の気配を感じ取り眼光の鋭さを保っているー伝説4体相手に与える猶予として、この土石流から生き延びるのに使った十数分は、いかにも長すぎたのだ。
樹林の中からわらわら、ホープ団のしたっぱたちが凍結湖面へ抜けだしてくる。
「さて...
再開と行こうじゃぁねぇか!」
ウキクサが、ハッカが、アルソミトラが、ボールを投げ、そして再び、今度ははてやまダム凍結湖面に、ルギア、ホウオウ、ゼルネアス、イベルタルが降臨したのだった。
「ホープ団初冬の陣」編、次回、閉幕です。