お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
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きらびやかなホール。パーシモン・ゼミナールの学年末を告げる夜会の場。
「部長、料理は全て配膳できました。…みんな、喜んでくれるといいですね…」
厨房に立つたびに、私は緊張するし、ドキドキする。夢に近づいてるんだなって。だから、学園夜会なんて貴重な機会で、生徒のみんなだけじゃない、来賓のみなさんのぶんまで作らせてもらって、感謝してる。
あのフロックス家の作ったポケモンスクール、パーシモン・ゼミナール。きっとこの学校は私に、「一流のシェフになる」って夢を叶えさせてくれるんだって。
「案ずるな。心は料理に写るし、料理は心を変えるんだ。君とぼく、そしてこの料理部員みなの心は、きっと届くさ。」
…今は恥ずかしくて料理できないけど、でもいつか、私のありったけの心も、部長に食べてもらえたらな。
「さて、それじゃあ、実際みんなの反応を見に行こうか。」
「はい!あ、部長、その、ドレスに着替えてきても…」
「ああ。」
部長といっしょに踊れたり、するのかな…?
精いっぱいのおめかしをして、会場へ。…部長、かっこいいなぁ…
「やはり案ずるより蒸すが旨し、って感じだね。しかし気になるのは、この学園で一番舌が肥えてる方々かな…?」
「来賓のみなさま?学園長ですか?」
「いや…今年は留学生のフロックス姉妹がいるじゃないか。君とぼくのカレーにリアクションが薄かったと聞いているから、リベンジしないとね。」
…それは、連れの女の子のことを気にしてたからじゃないかなぁ…あの子、カレーを口にしたら泣き出しちゃったし…
それにカグヤさんは凄腕のトレーナー、旅をしたことあるなら舌肥えてはないんじゃ…
「ちょうどいい。ハイペリオン生徒会長にレプトシフォンさんとミクロステリスくんまで相席してるな。セレブの集まりだ…」
「部長、なんか、口つけてもらえてないですよ…」
「そうだな。というか険悪そうな…」
あっ…
…手袋投げた!?
ー「ハイペリオン・アトラスタル生徒会長。
わたくし、貴方に決闘を挑みますわ。」
ー*ー
「わたくし、貴方に決闘を挑みますわ。」
その一言で、夜会の場は静まり返った。
「決闘…
…僕がキミの提案に乗る理由は?
婚約の件なら、あれは大人のビジネスの問題だ。軽々しく決闘などというお遊びでくつがえすつもりなら」「わたくしは、わたくし自身を賭けますわ。」
「お姉ちゃん!?」
2人のやり取りを聞いた誰もが激震する。フロックス本家の令嬢が、自分自身をベットした決闘…世界経済すら揺らぎかねない。
「アトラスタルはサメハダーのごとく、新たなビジネスと出資なくしては息絶える…ならばそれは、分家ではなく本家、このフロックス家長アオバでも良いのではなくって?」
婚約者の奪い取りーそうだ。これが大人のビジネスならば、ハイペリオンに許される選択肢はひとつ、ここでアオバに勝ち、アオバの身柄を手に入れ、婿としてフロックス本家を手に入れることだ。それでアトラスタルはフロックスの世界的商圏と信用と資本を得て、GCM社の魔の手からも逃れられる。
「アオバさんキミは、自分を餌にして僕を釣って、負けても分家のレプトシフォンさんから婚約者である僕を引きはがせる、と…!?馬鹿なことは」「あら、逃げるんですの?生徒会長、いえ、『パーシモンの王子様』ともあろう方が、乙女が身を投げ打ってする決闘から逃げるんですかしら?」
そうでなくともハイペリオン生徒会長は、決闘から逃れられない。フロックス本家家長、いたいけな令嬢が、その身を、つまり純潔を賭けて挑んできたというのに、決闘を足蹴にするーそれはビジネス界から総スカンされても文句を言えない行為だ。特にアトラスタルはしょせん新興ベンチャーなのだから。
「…僕に、何を賭けさせるつもりだい?」
アオバ・フロックスの身柄に見合うものを、提示しなければならない。
「わたくしが性懲りもなく出歯亀するために、貴方にひとつ、命令をする権利ですわ。」
ー*ー
…ま、このバトルは余興みたいなもんだけどな。
「アトラスタルってのは
…出でよ、レジギガス!」
パーシモン・ゼミナール生徒会長の責を裏打ちする、学園最強の呼び名。けどそれは、俺とアオバちゃんがただの令嬢であればこそ、なんだよな。
「わたくしも、家名を賭するにふさわしき手札を切ると致しますわね。
出番ですわ、ディアンシー。」
「賭けを持ちかけてくるからには勝算があるのかと思ったが…ディアンシーは耐久型ポケモンだろう?スロースタートが解除されるまでに、僕のレジギガスを倒せるかい?
レジギガス、まもれ。」
...まもる、かげぶんしん、ねむる…それをこの学園の生徒は突破できずに、レジギガスにフリーハンドを許してしまう。けれど、俺は、俺とアオバちゃんはそうじゃない。
世が世ならJOJOのラスボスを張れる手札、公式バトルに出すなんてとてもできない手札だけど、切らせてもらう!
「俺と/わたくしは、自省も自重もしませんし、スロースタートの終わりまで待ちも/しないさ、今の俺たちはなんてったって「悪役/令嬢」ですもの!
誇り高き俺達の燦然、誰にも超えられはしないさ!/直視すること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏すのですわ!
ディアンシー、デュアルメガシンカッ!」
仕方がない、そう、(仕方がないですわよね。大人の世界だからこそ、圧倒的な力でねじ伏せるこの大人げなさも!)
「な、なんだ、その姿は...レジギガス、かげぶんしん!」
「ディアンシー、ディセラレーション・トリックルーム!」
さあレジギガス!この時間が減速したトリックルームの中で、お前は何時間スロースタートの解除を待てる?何分耐えられる?
「終わりだレジギガス!ラディアント・レイピア・アクセラレーション!」
悪いが俺たちは時間加速で減速を相殺させてもらうけどな!
ー*-
実際、レジギガスはよく耐えた。
伝説ポケモンを相手どり、時間操作という反則能力を使うデュアルメガディアンシーは、チートそのものである。それを学園の決闘に持ち出した蒼玻/アオバに対して、レジギガスは本当によく健闘した。
だが、ディセラレーションに巻き込まれてスロースタート解除が超絶に遅延された中で、時間加速した光の細剣に幾度となく斬りつけられては、どうにもならなかった。
ばったり倒れたレジギガスを、ハイペリオン生徒会長は無言でボールに回収する。
「それでは、命令させてもらいますわね。」
「ははっ...なるほどね。これだけのことができるなら、勝算があるわけだ...
キミが決闘を仕掛けた時点で、僕にはどうしようもなかった、仕方がなかったというわけだね。」
「ええ。ですからここでわたくしが、貴方にレプトシフォン・フロックスさんとの婚約破棄を命じても、それは仕方のないこと、ですわよね?」
「ここで断ればキミにも僕自身にも泥を塗ることになるからね。いまさら退けはしない...
...だがいいのかい?僕の会社はともかく、レプトシフォンくんの家はキミの分家だ。
救済合併騒動、どう片を付けるんだい?」
「あら...
悪役令嬢というものは...
/舞台裏ですべての段取りを済ませておくのが相場でな。」
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「僥倖だよね。貴方のことを思い出せて。
エーテル財団代表代理、グラジオさん。」
ー「…フロックス家次女、カグヤか。オレになんの用だ?」
「これはビジネスだから単刀直入にお願いするね。
私とお姉ちゃんは、ある会社を救済したい。ただ、立場的にできないの。」
ー「…シンオウ総合開発。分家か。」
「アトラスタル・テクノロジーによるシンオウ総合開発の買収を阻止するために、協力してほしい。」
ー「…オレたちに買収しろって?それは外聞が悪すぎる。エーテル財団が悪に手を染めてたのは知ってる奴は知ってるんだからな。」
「うん。でも会社を買収しなくても、株式をいくらか持っておくことはできるでしょ?
ホワイトナイトに、なってほしいの。
今、シンオウのベルリッツ家にも、デボン・コーポレーションにも、マクロコスモスにも、私とつながるあっちこっちに同じお願いを持ち込んでる。」
ー「…シンオウ総合開発グループの株を、オマエの息がかかった連中が50%以上取得すれば、アトラスタルによる買収を株主総会で否決できる...ってことか。
でも、誰も造反しないって保証はあるか?それにベルリッツなんてお金持ちではあるが学者だろ。」
「同じことをみんなに聞かれてるよ。STEAグループは株価低迷してもなお大企業、過半数の株取得はそこまで簡単なことでもないし、私たち姉妹の人助けの手伝いでポンと出せる金額じゃないもんね。
だから、お金はウチが出すよ。貴方たちは名義だけ貸してくれればいい。」
ー「何?」
「エーテル『財団』なんだから、私が預けたお金の資産運用・投資信託もしてくれるはずだよね?あとは、新しい投資事業のために第三者割当増資をフロックス・グループに対して出してもいい。あるいはそう、株運用のコンサルタントとかもね。
全額ウチで出す。私たちフロックスは、ラスト団に関わっちゃって大っぴらにはヒスイ分家とSTEAグループを救済できないから。だからみんなに分担してSTEAの株主議決権を掌握してもらう。そのための資金は全額ウチで出すけど、カネを出す代わりに株の使い方に口も出させてもらう。」
ー「どうして、どこまでするのか、聞いていいか?」
「…そうだよね。気にするよね。苦労してきたもんね。」
-「ああ。ザオボーみたいに悪だくみしてるって疑ってるわけじゃないが、オレは納得しておきたい。しなきゃこの話には噛めない。」
「うん。じゃあ、私の理由を聞いたら、納得してくれると思うよ。
ミクロステリスくんがレプトシフォンさんのことを心配してるのを見て思ったんだ...
私さ、シスコンは応援したいんだよね。」
-「…はっはっは、姉妹はお互い、大切にしないとな。
わかった。財団の金融運用部門の投資事業で、黄金株を発行する。購入分だけは話を聞いてやるよ。」
「お姉ちゃんの個人口座から入金するから、よろしくね。」
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「こういうわけですわ。」
蒼玻/アオバは、金融ニュースを突きつけた。
ー「ギャラクシー・キャピタル・マネジメント社、株価暴落!」
ー「カントー銀行、キンセツ信金、ミアレ中銀、エーテル財団、GCM社への預託資金引き上げを発表!」
ー「財界有志連合、経営難のシンオウ総合開発グループ救済に乗り出す アトラスタル社による買収は失敗か?」
ー「ワカナエ銀行、ユキコシ正金銀行、デボン・フィナンシャルグループの3社は本日、アトラスタル・テクノロジーに対する
ー「『腐った機関投資家にメスを!』ユキコシ検察、イッシュ検察、パルデア検察、国際投資ファンドGCM社を金融市場不正操作等の疑いで告訴。匿名の告発に基づき強制捜査に踏み切ったか。」
ー「#ポケちゃんまとめ シンオウ総合開発グループ漂流譚(78スレ目)決着?」
ハイペリオン・アトラスタル生徒会長は呆然絶句した。
いつの間にか、アトラスタル社の資金源であったはずの投資ファンドGCM社が崩壊し始めている。”財界有志”とやらによってアトラスタル社によるSTEAグループの買収を阻止され、それどころかあべこべにアトラスタル社がフロックス系金融会社によって買収されそうになっている。
すべて、覆されてしまったのだ。GCM社によるアトラスタル社への融資と指示の関係も、アトラスタル社によるシンオウ総合開発買収計画も、すべて。
「キミたち...」
「うん、私とお姉ちゃんが、裏で糸を引いたよ。
蒼玻く...じゃない、お姉ちゃんに聞いたけど、経済のドラマでこういうセリフがあるんだって。『やられたらやり返す、倍返しだ!』」
「仕方がない、でしたわよね?でしたら、ヒスイ分家というミニリュウの尾を掴んだつもりで、フロックス本家というカイリューの尾を踏んづけたのですから、やり返されても仕方ありませんわよね?
ビジネス三方よし、でしたらよね?STEAは政略結婚を回避してアトラスタル以外の救済をつかみ、アトラスタルは子会社化されるとはいえ資金源を得て、わたくしたちはあかいくさりをアトラスタルとGCMではなくわたくしたちに頂けるようにヒスイ分家に恩を売りましたわよ?」
チェックメイトだった。
「それで、どこかで見ているのですわよね?黒幕さん。」
でてこいクワズ...そんな想いで、蒼玻/アオバは告げた。
「もはやGCM社はおしまいですわ。それで、アトラスタル御曹司のハイペリオン生徒会長を監視するために誰かがGCMから学園に潜入していると思いますけれど、年貢の納め時ですから出てきた方がよろしくってよ。」
ガヤガヤ...
...バトルコートの周りをうろうろしていた十数名の事務員が、ボールを投げる。
「我々はゴフク屋加盟、ギンガ団残党!あかいくさり、ちょうだいする!
生徒たちの身柄が惜しければ、おとなしく従ってもらおうか!」
Q:いくら蒼玻と2人で決めてるとはいえ、アオバ嬢が自分の身体を他人との賭けに使ったりする?
A:「心理的優位、戦力的優位、戦術的優位」、デュアルメガディアンシーで粉砕できるという戦力とレジギガスのスロースタートを時間操作で引き延ばして完封するという戦術が用意されていたのでもう勝ちは決まってて、あとは賭けに引きずり込む心理的優位だけだった。
しなくちゃいけないと思ったら覚悟ガンギマリで自分すらベットする転生者×賭けをするなら最初から勝ちを確定させて挑もうとする令嬢が組んでいるので、蒼玻/アオバが賭けを挑んできたらもうおしまい。
次回、ヒスイ分家の物語、決着です。