お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
#74 果てより来たりて希望の残照
ー*-
ユキコシ地方、4月。
蒼玻がこの世界に転生してからもう1年が経過している。
冬の間をパルデア沖の学園島グランデ・コンティネントのパーシモン・ゼミナールで修練した蒼玻/アオバとカグヤは、アイゼンで雪を踏みしめ、はてやま山頂に来ていた。
今、はてやま連峰はホープ団の占拠下にある。けれどもたった2人の登山を見つけるのは容易ではないしホープ団はそれを予期してすらいないだろう...しかもホープ団が気づいて姉妹を攻撃するとしても、下手をすれば簡単に雪崩を誘発して自分たちも巻き込まれることになる。
もちろんフロックス姉妹も、雪深い冬のはてやま連峰でホープ団に挑むつもりはない。伝説4体への勝算以前に、遭難するのが関の山だからだ。だが、ホープ団のふいをついてはてやま冬期登山に挑むのには、別の理由がある。
ヒスイ分家からもらった、「あかいくさり」3つ。伝説ポケモンを鎮めあるいは封じることができる神器を持ち、はてやまおみやに挑むのだ。
はてやま山頂のはてやまおみやには、ぐうじはいない。その代わり、おみやから望むカルデラ湖「かへらずの湖」には、ユクシー、アグノム、エムリットの「心を司る三体」が眠っている。
この3体に祈りを捧げて味方につけ...伝承通り3体が荒神で味方になってくれそうもなければ、その時はあかいくさりによって従える。そして3体によってホープ団を倒す。
もしあかいくさりを3体に使わずに済めば、ホープ団のホウオウ、ルギア、ゼルネアス、イベルタルのうち3体をあかいくさりで封じれるからいいなぁ…などと、蒼玻/アオバとカグヤは考えながら、雪を必死に踏みしめ、ときおり現れるこおりタイプポケモンをー雪崩が起きぬように慎重にー追い払いながら、山頂への最後の0.5合を1時間かけてよじ登り。
そして見た。はてやまおみやに、4人の人影があるのを。
ー*ー
「いいところに来るじゃねぇか。
だが、一足遅かったな。」
常ならぬ輝きを放つかへらずの湖の凍結湖面をバックに、はてやま火口尾根の上で、ホープ団海軍中将ウキクサは、両手を大きく広げ、因縁の相手であるフロックス姉妹を出迎えた。
「心を司るポケモンは、あたしたちがいただくわ。」
ホープ団陸軍中将ハッカが、得意満面に宣言する。
「あなたがたはある意味特別ですからね。私たちを煩わせた勲章として、遺言だけでも聞いておいてあげましょう。
私たちが全ユキコシ人から自我を奪い取る前にね。」
ホープ団空軍中将アルソミトラは、心を司る3体の神をホープ団が掌握することで発生する最悪のシナリオを宣告した。
だが、蒼玻/アオバもカグヤも、ホープ団3幹部の方を見てはいない。そのとなりのもう1人を見ている。
「コンフリー…貴方...貴方は!」
悪びれもせず、手足から機械音を鳴らし、その青年はシニカルな笑みを浮かべた。
「いやー...キミたちが襲来する期待値が0ではないと思い、準備を急いで本当に良かった。
実にすばらしい効率だ。上の上。理論値をはじき出したと言ってもいい。なにしろ、せっかくならキミたちにも、見てほしかったからね、この光景を。」
元ラスト団ナンバーツーにして、現ホープ団科学者、コンフリー。彼が指さす先で、火口湖の凍結湖面が音もなく割れて、3つの光がふわりと浮かび上がる。
光が、どろりと黒く濁って割れ。
中から、ユクシー、アグノム、エムリットが姿を顕した。
シンオウ地方に伝わる姿ではない。白いはずの部分が純黒に染まっており、「こわれている」と呼ばれるユキコシのありさまを象徴するかのようだ。
「さあ、俺たちに従ってもらおうか!」
ウキクサがなにがしかの装置のスイッチを入れる...
「させるかーーッ!」
…寸前、一瞬前、カグヤは人生最大の力を込めて、ポケットに入れていた手を引き抜き、中のモノを放り投げた。
はてやまおみやを飛び越え、放り投げられた3つの物体が宙を舞い、きれいな放物線を描きそれらはすっぽりとユクシー、アグノム、エムリットの身体にはまった。
あかいくさりは、過たず、ユキコシ3神を封じたのであった。
「なんてことをしやがる…!」
あかいくさりに縛られた3体が空中でじたばたもがくのを見て、ウキクサは声を荒げた。
「あんた、最後の最後で…!」
「そんなに死に急ぐなら、永遠に苦しませてやりましょう!」
ハッカが激昂と絶句がないまぜになった叫びを出し、アルソミトラが憤怒の声とともにゼルネアスとイベルタルをボールから出す。
しかしただ一人、怒りも困りもせず、そしてふいに嗤い出した。
「あっはっはっは…!
やはり本日は上の上…すべてが理論値を達成するッ!」
コンフリー、彼だけが、悦びに満ちていた。
「な、に、が…」
フロックス姉妹が、想像の埒外の事象に呆然と、ホープ団3幹部の背後を指差す。
「あん、何をそんな」「驚いて…」「いるので、す、か…」
様子のおかしさに、ウキクサ、ハッカ、アルソミトラが背後を振り返る。
3幹部もまた、ぽかんと口を開け、目だけをキョロキョロと、はてやま連峰の尾根に彷徨わせることになった。
コンフリーの嗤い声だけが響く山嶺に、無数の石造りの建築物が、マチュピチュもかくやとばかりに出現していた。
ー*ー
なんです、なんですかしらこれは!?
はてやまの尾根という尾根に、さっきまで影も形もなかった、白亜の建物が…!
「あっはっはっは、確率と期待値の計算を怠るからだよ!
2000年前、心を司る3神は破壊神と三日三晩戦ってこれを鎮めた!
では3体を封じれば、どうなるか?…さあお出ましだ、闇から顕れし破壊神…」
―ギゴガゴビシャーン!
キラキラ輝いていたかへらずの湖が真黒に染まって、あのおぞましい触手は…
「ギラティナ!」
灰色の身体、金色の頭蓋、赤い爪。そして、数え切れない、黒い影のような触手。
ワカナエ大乱でクワズがギリギリ喚び出せなかったという、伝説の破壊神…!
「おいコンフリー、あんた何をしたの!?何を企んでるのか教えなさい!あたしらホープ団を謀ったの!?」
ハッカが、コンフリーを締めようとしているのが見える。…そうか、これはホープ団にとっても想定外ですのね…?
「てめぇ言ったよな?今の俺たちなら3神を制御できるって!それがなんだこりゃ!?なんで3神を封じられて破壊神が降臨してやがる!?」
「あれ?あれは期待値を高めるための、嘘も方便だよ。
心を司る神、しかもエスパータイプだよ?機械で精神を操れる確率は0%だよ。何を今さら。」
「OK、コンフリー、貴様を殺します。」
「アルソミトラ、上司のくせに気が短いな。
ホープ団、これはきみらが望んだことでもあるんだよ。」
…なんですって?
「ホープ団の目標は、古代ユキコシ文明の末裔として、その栄華を取り戻すこと、では?」
…まさか、この白亜の建物は…
「文明が一夜にして消え失せる?いくつかの遺跡と伝承を残して、まるで或る日突然人だけが消失したかのように?
そんなことはありえない。彼らは退避したんだ。計画的にね。
そして、今日まで、現世への復活の日を待っていたんだ。」
なんてこと…闇から顕れてユキコシを破壊し再創造したギラティナと、消えた謎の古代文明が、同時に復活するなんて…
「明察のとおりだ、現生人類よ。」
その時、パチパチパチ…わたくしの耳に、拍手が聞こえてきたのでした。
ー*ー
ユクシー・エムリット・アグノムがあかいくさりで封じられると同時に、突如出現してはてやま連峰の高標高帯を埋め尽くした、白亜の石造高山都市。
そのもっとも荘厳なひとつから、音もなく、男は2000年ぶりの現世へ下り立った。
神官たちが石段の両脇で平伏するその中央を歩いていく。
割れたまぼろしモモンを跨ぎ、テラパゴス像を蹴りつけ、バドレックス像につばを吐き、Zクリスタルを踏み砕き、キュレムの幻灯を消灯する。
聞こえてくるコンフリーの大笑に耳を傾けることを忘れない。
いつしか男は、パチパチパチ、拍手を始めていた。
「明察のとおりだ、現生人類よ。」
今ここに、世界に冠たる
「ギラティナの創りし反転世界で、こなたらはずいぶん待ったぞ。」
よもや外では2000年も経過しているとは思わなかったが、男にとっては反転世界の中との1980年分のギャップは大したことではない。その程度の年数、偉大なる
「そなたら、大儀であった。
この筆頭神官
無数の黒い影を空間に沿って這わせる、不気味で不吉で、そして冒涜的な姿のギラティナ。その真下に、
果たしてギラティナは、
コンフリーの頭脳が高速で回転する。
(まさか、ギラティナによる2000年前の破壊って…)
はてやま連峰に突如出現した白亜の高山都市に、そこから現れた謎の男…ホープ団3幹部はやっと脳が追いつき、慌てて跪く。
渉外担当のアルソミトラが、ひれ伏したままに訴えかける。
「古代ユキコシ文明のみなさま!とっくに滅亡し、その威風を伝えるのは私達ホープ団のみかと思っておりました!
復活なされまして重畳の至り、是非私達が確保せし橋頭保を以て、再びユキコシの地に栄華を!」
「ほう?
2000年もすると、ずいぶん生意気な口を聞くようになるのだな?」
「は…?」
「こちらこそ生き残っているとは思わなかったぞ、見捨てたのだがな。
奴婢の子孫風情が、威風を伝えるぅぅぅ?
分をわきまえよ下郎どもがっ!」
地天のすべてに触手を這わすような、ぬめっとした黒光ー
ーギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト!
雲が引き裂かれ、山がきしむ。木々が焦げ、土が空へと落ちる。
「なん...で」
アルソミトラの胴体に大穴が開き、四肢が服ごと血の塊となり、首が落ちてゴロリと転がり、物言わぬ骸となった。
「悦べ。そなたを生贄にしてやった。奴婢如きには身に余る光栄だろう?」
その声を、アルソミトラはもはや聞くことはできない。想像を超えた事態にウキクサ、ハッカ、コンフリーの思考は完全にフリーズし、蚊帳の外となって傍観していた蒼玻/アオバとカグヤさえも絶句した。
「さて
…『失墜』の、時である…ッ!」
無数のアンノーンが、白亜の神殿から浮かび上がって空に文字を描く。
アルソミトラの肉体が、さらさらと灰となって消えていく。
ボールから出されていた、アルソミトラのゼルネアスとイベルタル。2体がくるりと、ウキクサとハッカへ向き直る。
「チッ、俺の読み間違いだよ、下の下!
アブソルッ!」
ピンチになってやっと、コンフリーが最初に対応に成功する。メガアブソルを出し、「まもる」を展開する。
-ゼルネアスの ムーンフォース!
-イベルタルの デスウィング!
2体の伝説が出したビームが「まもる」のバリアとぶつかって起こした爆発が、ウキクサとハッカの思考を再起動させた。
「…どうして!どうしてアルソミトラを殺したァ!」
「あたしたちは、ただ、ユキコシを取り戻したかっただけなのに…」
激昂と悲嘆。それは、2000年拠り所としてきたものに裏切られた者に、唯一できることで。
「しっかりしろウキクサ、ハッカ!期待値が低すぎる、いったん山麓に下りるぞ!
にしても、どうやってギラティナとゼルネアスとイベルタルを制御して…?」
いや、ギラティナはわかるー2000年前、ギラティナをおぞましいフォルムにチェンジさせてユキコシ地方をめちゃくちゃにし、自らは反転世界に退避していたのが古代ユキコシ文明であるのなら、ギラティナを鎮静させていたユクシー・エムリット・アグノムがあかいくさりで封じられた今、その制御は古代ユキコシ文明に戻るのだ。しかし、コンフリーには、アルソミトラを殺して「生贄」にすることでゼルネアスとイベルタルを従えるその仕組みがわからなかった。
「サンドスローイングですわ!」「てんらいのへきれきっ!」
ーギラティナを、地上から巻き上がった砂柱が呑み、青空から降り落ちた紫電が砂柱ごと貫く。
「コンフリー、おそらくそれは違いますわ!
ギラティナから古代ユキコシ文明が退避したからには、2000年前の
生贄という言葉が文字通りなら、彼らは生贄を捧げることで神格を無理やり従わせるのですわ!今回は主であるアルソミトラの命でゼルネアスとイベルタルを、そして2000年前は…」
とてもアオバに、続く言葉は口にできない。
「ユキコシ地方を破壊させることで、それを、生贄に…」
コンフリーはそれに思い至って、鳥肌で身体を覆った。だってそれは、ユキコシ全土を犠牲にしてギラティナを従えてまで行いたい大それた望みが目の前の男にあるということで。
「これよりこなたは、神に、世界に、復讐する!」
ーギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト!
黒い閃光ーそして、青空が歪んで星空を映し、氷河がマグマに置換され、大地から空へと流星が降り注ぐ。
世の道理の通らぬ反転世界に棲まい反秩序を司る、まつろわぬ神ギラティナ。その真骨頂と言うべき、天地の定めをないがしろとする攻撃ー
ーだが、それは、すんでのところで登場したデュアルメガディアンシー、そのピンクの輝きを浴びている蒼玻/アオバ、カグヤ、そしてウキクサとハッカとコンフリーには通じなかった。
「思い出しましたわ。
クワズがギラティナを喚び出しかけた時、わたくし一度、それを防いでおりますの。
それにそもそも、ギラティナによる
「おお…その輝き…その青き瞳…!
シバザクラの君よ…こなたと、こなたの愛しのシバザクラの君の、子孫であったか…!」
狂気に満ちた、満面の笑み。
気色悪い視線に晒され、蒼玻/アオバが一歩また一歩後退る。
「そなた、祖先と子孫で積もる話もあろうに…何を怖がる?」
「わたくしには話などありませんわ。狂ってらっしゃるのではなくって?」
その通り。
最愛の人のためにギラティナを使って儀式を行い、ユキコシ地方を生贄にした。しかし肝心の最愛の人は直前で去ってしまい、20年が経つ…そして時間の進みが違う反転世界の外では少なくとも1000年が経過するだろうと理解していた
「ほう…
…ならば邪魔者を消し、改めて席を設けよう。
どのみち我が
それは、ユキコシ地方への宣戦布告…否、絶滅戦争の宣戦で。
ーギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト!
「お姉ちゃん私達あんなのと血繋がってたの!?
グレイシア、ぜったいれいど!」
「誇りは繋がってないから大丈夫ですわカグヤ!」
”「ディセラレーション、です!」”
再び天逆の攻撃を繰り出そうとしたギラティナが、一撃必殺ワザを受けてはたまらぬと一旦避けたその隙に、デュアルメガディアンシーがトリックルームで
「時間減速もすぐに破られますわ!早く下山を!」
蒼玻/アオバ、カグヤ、ウキクサ、ハッカ、コンフリーの5人は、転がるようにはてやま山頂から逃げ出した。
というわけで、1章からずっと主人公たちを悩ませ、ラスボスとして戦争を引き起こしたホープ団ですが、信じていたものにあっさり裏切られて幹部を殺されました。暫しの証明(捌章)→消えゆく残照(什章)ということです。
そして真のラスボス、古代ユキコシ文明(
| HP | 攻撃 | 特攻 | 防御 | 特防 | すばやさ | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ギラティナ(アナザー) | 150 | 100 | 100 | 120 | 120 | 90 | 680 |
| ギラティナ(オリジン) | 150 | 120 | 120 | 100 | 100 | 90 | 680 |
| ギラティナ(冒涜されしすがた) | 150i | 120i | 120i | 120i | 120i | 90i | 720i |
ギラティナ(冒涜されしすがた) ドラゴン/ゴースト 特性:かたやぶり・プレッシャー
古代ユキコシ文明の影響力が及ぶ地でギラティナが変化している姿。身体からわずかに分離した無数の影のごとき触手、色を失ったかのような灰色の胴体、金色の頭蓋と胸鎧、赤く輝く目と爪が特徴。すべての数値的パラメータが虚数を取る。
ロストインパクト(冒涜ギラティナの専用ワザ)
黒い閃光を照射し、天地の定めを無視し時空の秩序すらないがしろにするような天変地異を発生させるワザ。