お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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 いよいよ外伝読んでいただかないとわからないかもですねになってきました…

 ~これまでの転生ポケモン令嬢~

 現代日本から転生憑依した青年、蒼玻。意識を失ったものの蒼玻と協力して復活しあい、同じ身体を蒼玻と共有することになったフロックス家令嬢、アオバ。姉のことが大好きな令嬢、カグヤ。3人はユキコシ地方に迫るいくつもの危機を乗り越えて7おみや巡りをクリアし、聖山はてやま連峰を占拠するホープ団に立ち向かった。

 しかし、ホープ団がはてやま3神を掌握するのを阻止したその瞬間、反転世界に隠れ潜んでいた古代ユキコシ文明がギラティナの完全な掌握に成功し、現世に復活した!

 世界への復讐と征服を掲げ、古代ユキコシ文明は進撃。7ぐうじ全員が玉砕しユキコシ地方は滅亡する。続けて古代ユキコシ文明は、2000年前に準備していた、伝説ポケモンの権能を捻じ曲げる儀式「失墜」により、アルセウスを含め何体もの伝説ポケモンに完全勝利。ここに至り、全世界はもはや、古代ユキコシ文明への従属するしかなくなっていた。

 一方そのころ、ガラル地方では、かつて蒼玻/アオバとカグヤを苦しめたラスト団ボス、クワズが、姉妹に接触する。彼は「この宇宙は同じ宇宙をループしている」「ムゲンダイナの無限のエネルギーで宇宙の時を加速し、宇宙の終焉を越えて次の宇宙に行くことで、この宇宙の過去へ到達し、運命を変えろ」と告げた。

 世界を救うための、ガラルチャンピオン、ユウリからの、ムゲンダイナの強奪…転生者たちの最期の戦いが、始まる…!


#79 少女たちの夢現天路_Summer&Revolution

ー*ー

 

 「そっか、そういうことだったんだね。」

 

 「そう、そういうことだったのですわね。」

 

 ユウリと蒼玻/アオバは、同時にそれぞれ、ポケットと袖に、手を突っ込んだ。

 

 「お姉ちゃん、蒼玻くん」「いえカグヤ、黙って見ていなさいな/これは俺とアオバちゃんだけでやるべきことだ。」

 

 一対一、サシの勝負に、世界の命運を賭ける…ユウリと蒼玻/アオバの気迫に、カグヤが数歩下がり、祈りの手をあわせる。

 

 「来て、インテレオン」「おいでなさい、ブロスター。」

 

 ここに、蒼玻/アオバ・フロックスがやり直すための、最後のポケモンバトルが、幕を開ける。

 

ー*-

 

 バウタウン郊外。大地を舐めるように低空飛行してきたその影に、コンフリーは予測通りだと複雑な表情をした。

 

 「…来るんだね。

 

 『大儀であるぞ』と一度言ったんだ。一度だけ見逃してくれたりはしないかい?

 

 …あぁ、しないのか、効率が悪いものな。」

 

 「コンフリー、そなたが何をたくらんでいるのか、吐かせてもらう。

 

 いけ、イベルタルよ。」

 

 「アトランティス、時間効率の計算の大切さを知れるだけの時間は、稼がせてもらえるかな?

 

 メガシンカだ、アブソル。」

 

ー*ー

 

 猛スピードで飛び回る、アクアジェット中のブロスター。ユウリのインテレオンは冷静沈着に狙いを定め、タイミングを確信した瞬間に水弾を放ち、ながら、敗北をも確信した。

 

 正対したブロスターもまた、水弾を放っていたからだ。そして、同じ右利きであるこの2体の水弾は交わることなく、正確にお互いの左側に着弾した。

 

 ブロスターが吹き飛ばされ、インテレオンがコンクリートにめり込む。当然2体とも気絶。

 

 「ありがと、インテレオン。行って、カマスジョー。」

 

 「お疲れさまですわブロスター/クリムガン、やるぞ。」

 

 何の変哲もない、獰猛そうな魚…みずタイプ相手にほのおタイプのシャンデラやいわタイプのオリセクトは出せないなと、クリムガンを出し、接近戦を指示する。

 

 「殴り飛ばせ、クリムガン!」

 

 龍脚が地面を蹴り、龍腕が大きく振りかぶられる。

 

 ヒュン!風切り音がして、カマスジョーの姿が消えた。

 

 「なっ…どこに!?」

 

 「ドリルライナー!」

 

 弾丸のように、カマスジョーがクリムガンの真左に突進、張り飛ばす。

 

 「もう一度ドリルライナー!」

 

 「っ、りゅうのはどう!」

 

 膨大なドラゴンエネルギーを、風切り音のほうへ放出する…ところが、カマスジョーはりゅうのはどうを切り裂くように突っ切り、クリムガンの額へと突っ込んだ。

 

 クリムガンの身体が大きく突き飛ばされ、海へ落下してぷかりと浮かぶ。

 

 (…は、速すぎる…!/わかりましたわ、さかなポケモンなのに系列の水産企業の資料で見なかったわけが…アレ、速すぎて生簀養殖困難でしたミガルーサよりも速いのですわね…!)

 

 /アオバちゃん、バトンタッチいいか?/よろしくってよ!)

 

 「おいでになって、シャンデラ!」

 

 霊火が灯る。カマスジョーは身をくねらせ、突進姿勢を取った。

 

 「アクアブレイク!」

 

 「トリックルームですわ!」

 

 水をまとったカマスジョーが、勢いよく突進…したその瞬間、すばやさが逆転する不思議な空間が展開され、カマスジョーの動きがスローモーションとなる。

 

 「そのまま燃やしてしまいなさいな!」

 

 オーバーヒートが、トリックルーム空間のすべてを燃やし尽くす。

 

 「あまごい!火を消してっ!」

 

 雲が湧き、トリックルーム空間の中に霧が満ちる。火は消えたが、それは、カマスジョーが特性「すいすい」でさらに速く…トリックルーム内では遅くなる、ということで。

 

 「シャドーボール!」

 

 避けることなどできはしなかった。霊力がカマスジョーを爆発で包む。

 

 「戻って、カマスジョー。

 

 …ストリンダー、奏でて」

 

 ストリンダーが、電撃とともに重低音をかき鳴らす。「オーバードライブ」だ。

 

 音の進みは平等に全方位へと伝わり、トリックルームだろうがなんだろうが、回避は不可能だ。重低音に耳(?)を塞ごうとしてか、シャンデラが燃える腕を上げて胴体の横に添え…そしてそのまま、ぽとりと落下する。戦闘不能だった。

 

 「…シャンデラ、サンキューな。

 

 音には音だ。行くぞ、オリセクト!」

 

 原始の虫ポケモンオリセクトが、むしのさざめきを放つ。ストリンダーのオーバードライブと重なり合って、神経に障る怪音が響き渡った。

 

 「知ってる?ストリンダーの特性はパンクロック…音技勝負は効かないよ。」

 

 オリセクトの身体が、あたかも音圧に屈するかのようにうつむいていき…そして、跳び上がるかのように姿勢をガクンと立ち上げた。その背のアームの先の甲羅の砲口から、無数の石礫が投射される。

 

 「何を…」

 

 細かい石礫は、ストリンダーに降りかかりながら、爆発した。ステルスロックが音波に誘爆したのだ。

 

 無数に連続する爆発が砂塵を上げる…その中を、古代の狩人オリセクトが音もなく駆けた。

 

 「じごくづき!」

 

 「っ、どくづき!」

 

 煙の中からぬっと出現したオリセクトに、かすかな音を察してストリンダーが手を差し返し、手と手がぶつかりあう。衝撃…2体ともによろめいた。

 

 パンチの反動で、バックに何度も滑り、そして次の一撃のために身体を逸らす。

 

 「ダストシュート!」「いわなだれですわ!」

 

ー*-

 

 下半身と前足を石化させられ、メガアブソルはいくら身体を捻ろうが動けなくなっていた。

 

 「大したことはなかったな、現生人類。

 

 イベルタル、殺れ。」

 

 「ふん…古代人ごときが、俺たちを、理解できるとでも?」

 

 イベルタルが翼をY字に大きく広げ、そのダークオーラを集束させている。メガアブソルは一歩も踏み出すことができず…しかしそこで、コンフリーが、回路で覆われたキューブを掲げた。

 

 「ヘルリアライザー改…コイツで世界を救うのを助けるってんだから、最ッ高に皮肉だよなァ!」

 

 濃密な擬似BREAK力場が展開され、金と黒の粒子が散らばる。…しかし、今までの擬似BREAK力場はムゲンダイナやらに空間蓄積BREAKオーラを出させていたが、今回はどうしたのだろうか?

 

 「覚えているかい?

 

 全部、キミのしたことの報いだよ。身から出た(Rust)だ。なにせ、本来はたかだかジムリーダーのエースポケモンだったものに、伝説に比肩してしまうほど『厄災』というバフを与えたんだからね。

 

 今回オーラを授けてくれたのは…」

 

 巨大な翼が、イベルタルを受け止め迎え撃つかのようにどこまでも広がる。それは白かったが、まごうかたなくメガアブソルのもので…

 

 ーその厄禍は迂転するー

 

 イベルタルの絶死ビームが消える。その災厄はガラルの空を包む白き幻影と化して、イベルタルを襲い、地へと叩きつけた。

 

 「第二幕だ、始めよう…

 

 再びディザスターウィング!」

 

 「包み返してやれ、わざわいのよる。」

 

 厄禍を吸い込んだ巨大な白翼と、死と厄を本能に訴えかける「夜」が、空をまだらに染めて交錯した。

 

ー*ー

 

 相打ち…これで、蒼玻/アオバはブロスター、クリムガン、シャンデラ、オリセクトを、ユウリはインテレオン、カマスジョー、ストリンダーをやられたことになる。

 

 「…あたしがこんなに追い詰められるなんてね。

 

 おいで、ウーラオス。」

 

 「あら、わたくしたちを見くびっていらして?

 

 /まだまだ俺達はこんなもんじゃないぜ。イーブイ!」

 

 「キョダイマックス!」「はつげんちょうせい、カハリヤツカゲ!」

 

 ウーラオスの姿が見上げるほどに大きくなり、イーブイが8つの虚像を纏う。

 

 (ウーラオス、一応は伝説に列せられているポケモンですわね…/前回はデュアルメガディアンシーで負けたからな…/あの時とは違いますわ。わたくしたちも、ユウリさんも。)

 

 (ムゲン)ダイマックスなどというドーピングじみたチートは封じられた。それに、ウーラオスは伝説とはいえダクマが鍛えて到達した進化系に過ぎず、それならば古文書に伝わるユキコシ在来イーブイの極致たるカハリヤツカゲにも勝機はある。

 

 「キョダイレンゲキ!」「スピードスター!」

 

 水流を纏いし、目にも留まらぬラッシュ。

 

 9つのタイプを帯びた、無数の星屑。

 

 水と光の粒が無数に飛び散り、霧状に広がっていく。そうなれば、姿が小さいイーブイのほうが有利。

 

 「飛び移れイーブイ!」

 

 霧の中から、イーブイと8つの虚像が思い思いに飛び出す。キョダイウーラオスは目で追い攻撃をくらわせようとするが、素早くあっちこっちへと駆けるイーブイ&進化系虚像たちを捉えることはできない。

 

 ブースターが、グレイシアが、エーフィーが、ブラッキーが、キョダイウーラオスの身体に飛び乗って、筋骨隆々な肢体の上を跳ね上る。

 

 シャワーズが、キョダイウーラオスの纏う水流に飛び込み、溶けた。

 

 ニンフィアがリボンを伸ばし回し、キョダイウーラオスの苛立ちを誘う。グレイシアは足元にじゃれつくように冷気をかけ、凍らせていく。

 

 「サンダース、ほっぺすりすり。シャワーズ、バブルこうせん。」

 

 キョダイウーラオスが泡に包まれ、電撃で震える。煩わしそうに腕を振るうが、進化系の虚像たちはうろちょろと死角に入り、腕が届かない。

 

 「地面に向かってキョダイレンゲキ!」

 

 泡を纏う連撃ラッシュが、コンクリートの地面を粉砕する。砂ぼこり。そして、キョダイウーラオスは砕け散った地面に高速の足蹴りを繰り返し、反動で高く高く跳び上がった。

 

 乗り移っていた虚像たちが、振り落とされる。ニンフィア、グレイシアの虚像に至っては地面もろとも粉砕されて消滅した。

 

 「アクアジェット!」

 

 水流と渾然一体となり、キョダイウーラオスが空高くから突っ込む。

 

 「とっておきBREAK(ブイブイブレイク)!」

 

 ブースター、シャワーズ、サンダース、リーフィア、エーフィー、ブラッキーの虚像が、光の球となって次々とビームのように飛ぶ。

 

 「勝って、キョダイレンゲキ!」「イーブイ、いけッ!/決めるのですわッ!」

 

 水に包まれ逆落としに突っ込むキョダイウーラオスが、6つの光球がぶつかって大爆発しながら、2つの拳で残像しか見えない猛速ラッシュを繰り出す。

 

 6つの光球から少し遅れ、9つのタイプのパワーを受け継いだイーブイが跳び、無数の拳の残像の中へ飛び込んでいく。

 

 エネルギーの塊となったイーブイへ、残像そのものと化したキョダイウーラオスのラッシュが叩き込まれ…

 

 キョダイウーラオスとカハリヤツカゲのフルパワー、空中でぶつかりあったそれは、果てしなく幾度も幾度も爆発を起こし、ウーラオスを青空の彼方へ、イーブイを砕け散った地面へ叩きつけた。

 

ー*-

 

 首元から下がすべて石化した姿で、アブソルの石像にもたれかかり、コンフリーは笑った。

 

 「調べてごらんよ、俺と、クワズさんの計画を。」

 

 アトランティスが、地面に落ちていた画面バキバキのタブレット端末を拾う。

 

 「…宇宙一巡計画…だと!?」

 

 「キミは一手ミスったことになるね。

 

 もはや間に合わないよ、時の加速が始まれば、キミがする何もかもは光陰矢の如く過ぎ去り、彼女にとっての一瞬のうちにキミの一生が終わってしまう。

 

 ましてフロックスのメガディアンシーは時間操作をできる。自らの時間減速を掛け合わせるんだ。彼女のまばたきのうちに俺達の星の寿命すら訪れるほど時間軸が異なる相手に、何ができる?」

 

 「…ならばこなたらも、共に同じ宇宙に行けば良い。」

 

 「どうやって?ムゲンダイナの無限大のエネルギーなくして、全宇宙の時間加速なんて途方もないことを?」

 

 「…ならば、宇宙の終焉で、こなたらが次のループへ越えれば…!」

 

 「期待値は激低じゃないかな。

 

 今はいい。けれど世界征服を達成したコーシーの国のその狂気的体制はいつまで続く?キミが寿命を延ばそうが延ばすまいが、綻びは中と外から蝕んでいく。 

 キミらの狂騒はいつまで保つ?伝説のポケモンすべてを下し、この星のすべてを征服し、およそ人品の叶えうる最上を達成したキミらのその暴走は、目標を失った先でいつまで続く?

 

 王位の継承?隣の星の征服?隣の星系?銀河?それは何万年保つんだい?

 

 クーデター、内乱、人口構造の変化、人権主義の芽生え、革命、天災、疫病、陰謀、政治腐敗…

 

 …キミら古代ユキコシ文明は、宇宙が終わるまでの数十、数百億年、文明レベルをさらに上げ続けながら、滅びずにいられるのかな?」

 

 永遠に続くものなどない。今でこそ絶頂にあるコーシーの国にも盛者必衰栄枯盛衰は必ずある。時の加速なしでは、宇宙の終焉まで存続し次のループへたどり着くことはできないーコンフリーの言葉に、アトランティスは地団駄を踏む。

 

 アトランティスとてわかっていた。奴隷制と神権政治でなりたち、帝国主義政策を旗印に彼の全体主義独裁を駆動させる今の繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)の体制は、あくまで彼が「すべての神を下し世界を征服することで、神と世界に報復する」ために作り上げたもの。今ですら、古代文明の数百万の人口規模では全世界への覇権を長期的に維持できる見込みがないから、伝説ポケモンで荒らしまわって恐怖による支配を確立させているのだ。長続きするわけがない。

 

 「ならば、ならば...!

 

 『時の加速』が『宇宙の終焉(臨界)』に達する前に、否、加速が始まる前に、ムゲンダイナの『失墜』を行えばいい…!」

 

 アトランティスが、イベルタルの背に乗る。イベルタルが翼を大きく羽ばたかせ、飛び立とうとする。

 

 「待てよ。」

 

 「なんだ…?」

 

 「待てよ。時間稼ぎはまだ終わっちゃいないぞ?

 

 これが一番『効率的』で『期待値が高い』だろ…!

 

 自爆コマンド、起動!」

 

 閃光。

 

 「こっ、この下郎現生人類がァッ!」

 

 半ば石化したサイボーグの大爆発で、アトランティスはイベルタルもろとも、盛大に爆風に巻き込まれた。

 

ー*-

 

 郊外でアトランティスがコンフリーの自爆特攻に一杯食わされているころ。

 

 「…これで、最後の一体ですわね。わたくしの狙いがわかっているのなら、ムゲンダイナは出せませんもの。

 

 /負けを認めてはくれないか?ムゲンダイナの力で過去や未来に行く、ユウリちゃん、お前だって一度やろうとしたことだろ。

 

 変えたい過去、叶えたい未来、そういうものを誰よりも知ってるってんなら…」

 

 「ううん、それでもあたしは『現在(いま)』を、讓らない。

 

 ガラルチャンピオンとしての責務だよ。あなたたちには、負けられない。ガラルは、人質だから。

 

 あなたたちに負けて、ムゲンダイナを奪われる。そしたら、ガラルの現在はどうなるの?あたしは最強だけど、あのギラティナには勝てない。あなたたちの博打にも賭けられない。」

 

 ムゲン団で歴史を変えようとした人間の台詞ではない…蒼玻/アオバはそう思ったが、あえて口にはしない。

 

 「ああ、そうだろうな。俺たちに力を渡せば、アトランティスはきっと、見せしめと腹いせにガラル地方を滅ぼすか消し飛ばす。それを歴史改変でなかったことにできるエビデンスも、正直ない。

 

 /けれど、わたくしたちには、わたくしたちの過去と未来には、ムゲンダイナが、そのムゲンに命運を託すことが、必要ですわ。」

 

 「なら、あなたたちは、昔のあたしがそうだったように、ムゲン団…ガラルの、敵だね。」

 

 「そうだな。俺たちは(ムゲン団)だ。だったら悪役令嬢でもなんでも/やってみせようじゃありませんの!

 

 ディアンシー!おいでなさいな!」

 

 「勝つよ、ザシアン!」

 

 ダイヤがまばゆく輝き、剣閃がきらめく。

 

 「つるぎのまい!」

 

 「デュアルメガシンカ!」

 

 剣の王者は剣舞を踊り、宝石の姫は燦然を纏う。

 

 ザシアンが剣を横に咥えた。まるで誘っているかのように。

 

 「…そう。正々堂々ってことかしら。

 

 ディアンシー!」

 

 ”「はい、決めます!ラディアント・レイピア!」”

 

 空中をなぞる掌のピンクの輝きが、光のレイピアを形成する。

 

 「掴んで、勝利の、きょじゅうざん!」

 

 ザシアンが咥える伝説の聖剣が、その錆を振り払いながら巨大に延びていく。

 

 デュアルメガディアンシーが、正眼にレイピアを構え、そしてふいに、無造作に、宝石でできた胴体を沈めて地面を叩き、反動で跳んだ。

 

 ザシアンが、身を柔軟にしならせ、俊敏かつ獰猛に跳び上がった。その聖剣は斬り込みを横構えに受け止める。

 

 上から打ち下ろされるレイピアが、ザシアンの咥える剣に触れる瞬間。

 

 「「アクセラレーション!」」

 

 剣先の時間が加速され、圧縮された時間分、加速度が2乗で増加する。つんのめるかのような、視覚の限界を超えた速度の斬り込み。

 

 「それを、待ってた。」

 

 ザシアンが、横へすっと飛ぶ。見てから避けることは不可能な超加速なのだから、このタイミングでアクセラレーションを掛けることを読まれていたのだ。

 

 攻撃を透かされたデュアルメガディアンシーが、時間加速でついた勢いと威力のまま地面に突っ込み、手首ごとレイピアが地面に突き刺さる。

 

 「もう一度きょじゅうざん!」

 

 ザシアンが振り向きざまに、巨剣を横薙ぎに振るう…ところが、デュアルメガディアンシーは、手首が地面に突き刺さったまま身体全体を地に伏せた。巨剣が、真上すれすれを抜けていく。

 

 「こちらこそ待ってたぜ/ましたわ!

 

 「ダイヤストーム・ディセラレーション!」」

 

 時間が減速した、ダイヤの竜巻。ザシアンはそれに完全に呑み込まれ、動きが取れなくなり。

 

 「ムーンフォース!」

 

 デュアルメガディアンシーが、頭上に現出させた月光を、振り向くことなく背中の後ろへと撃ち下ろした。

 

 無数のダイヤが、ミルク色の月光を散乱して眩く輝き…

 

 …そして、時間がもとに戻った時、ザシアンは力尽き、倒れていた。

 

ー*-

 

 「…抵抗はしないよ。

 

 それで、あなたはあたしのムゲンダイナで、どうするの?

 

 あなたも、あたしの闇の部分みたいに、次の宇宙に、逃げるの?」

 

 「あれを逃げとわかるようになるのは成長ですわね…ではなくって。

 

 逃げませんわよ、わたくしたちは。それがわたくしたちの高貴なる者の義務(ノブレス・オブリージュ)なのですから。

 

 /聞けば、宇宙はループしてて、終焉のその先の次の宇宙はこの宇宙の過去かもしれないんだとさ。もしそうなら、俺たちは過去を書き換える手段を持ってることになる。」

 

 「過去を…

 

 そっか。

 

 預けるからね、あたしのムゲンダイナも、あたしたちの世界も。」

 

 「…ひとつだけ、よろしいかしら。

 

 次の宇宙がこの宇宙と同一、そのことについては、わたくしたちと、わたくしたちをそそのかしたラスト団の策謀力にフロックス家の誇りを賭けますわ。

 

 /ただ、宇宙の終焉を乗り越えられる自信。これがない。何を保証に、闇のユウリちゃんは、次の宇宙を目指せたんだ?」

 

 「…もう後が無い…ってこともあったけど。

 

 ムゲンの力は授ける者と授かる者に別れるの。

 

 ムゲンダイナのエネルギーで全宇宙の時を加速しても、授ける側のあたしだけは加速に巻き込まれない。身体は周りの影響を受けるからわからないけど、魂は、身体がある部分だけは終焉を経過しないから、次の宇宙まで続けられる、そうは思ってたよ。」

 

 「…なるほどな、ありがとう。/懸念は晴れましたわね。

 

 これで、未来を/過去を、預かれるよ。」

 

 ムゲンダイナのボールを、ユウリの手から取る。

 

 「あら、おいでなさいな(掌握すること能わざる無限の力)ムゲンダイナ(見せてくださる?)

 

 /さあ、(未来を)ブラックナイトの再来といこう(超えさせてくれ、誇りある過去のために)。」

 

 黒紫のガラル粒子が満ちて、龍骨じみたムゲンダイナが顕れ、そして巨大な手のひらのかたち…ムゲンダイマックスへと己を組み替えていく。

 

 空に湧き上がる、マゼンタの雲。ムゲンダイマックスの腕の根元が隠れるそこは、漏れ出す膨大なエネルギーで空間が歪み、ガラル中の景色を映し出す。

 

 「ムゲンダイナ、ムゲンダイビー」「ここでそなたを止めるッ、ギラティナァッ!」

 

 無限のエネルギーを時間に注入するため、時空に穴を開けようとしたその時、マゼンタのビームと黒い閃光は交錯した。

 

 ームゲンダイマックスの ムゲンダイビーム!

 

 -ギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト!

 

 ムゲンダイナの膨大なエネルギーで穴が開きかけた時空から、ギラティナのせいで秩序が失われ、時空震がビリビリとバウタウン全体を揺らしてマゼンタの雲が土や水や草や炎や鋼やらになって上下左右へと降り注ぐ。

 

 「アトランティス…貴方/お前って奴はどこまでも...!」

 

 「2000年前の繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)の君と同じだ、そなたらの血筋は常にこなたの復讐の邪魔をする...繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)の君、そなたのためなのに…

 

 …だがそれがいい!あらゆる障害を乗り越える価値がある!ああ繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)の君よ、君の子孫が2000年かけて用意した障害を克服した時、そなたはこなたの愛を、真心を、受け入れてくれるだろう!」

 

 「何を言っても響きませんわよ。わたくしたちは、最後には貴方に勝ってみせますわ。いきますわよディアン」「待ってお姉ちゃん!」”「カ、カグヤさん、どうしたんですか?」”

 

 「お姉ちゃんと蒼玻くんとディアンシーは、もうあと1回しかジオスケールを使えないはずでしょ?それも特大のだよね?

 

 私が戦う。私が、お姉ちゃんと蒼玻くんの盾になる。」

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