お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

9 / 107
#8 キンレンおみやぐうじの カンゾウが しょうぶを しかけてきた!

ー*-

 

 「おいでなさいヒトモシ!はがねタイプにはほのおワザゴーストタイプにはゴーストワザですわ!

 

 おにびっ!」

 

 サーフゴーの足元に無数のコインが湧きだし、サーフィンをするかのように地面を滑って、殺到する日の弾をスイスイ避けていく。

 

 「キンレンおみやの歴史は浅く、キンノコブシがよりしろさまとして崇められた時代もたかだか400年しかない…そのことは認めます。ですが1600年もの間深いトキトビ山地で金を掘り続け、そしてこの400年鉱山労働とともにあったよりしろさまの力、甘く見ていただいては困ります。

 

 サーフゴー、ゴールドラッシュです。」

 

 無数のコインがサーフゴーの足元に現れ、コインの波の上をサーフゴーが滑り、突撃する。

 

 (まるで津波だ、抑えられるわけがない…!)

 

 「ヒトモシ、まもる!」

 

 バリアがヒトモシを包み、サーフゴーの吶喊の前に立ちふさがる。黄金のサーフィンはバリアの上を滑り抜けていく。

 

 しかし、攻撃そのものは守り切れても、コインまで防げるわけではない。山のようなコインにうずもれて、ヒトモシはバタバタもがいていた。

 

 「どっから、こんな数のコインが…」

 

 バトルコートの半分を覆うほどの黄金のコイン。ただごとではない。

 

 「サーフゴーの身体は構成するのは霊力のこもった黄金コインなの。だから、多くの人が金に命を賭けてきたキンレン金山では、サーフゴーは望外の強さになる…」

 

 おみや巡り経験者のカグヤは知っている、これから何が起こるのかを。

 

 「よりしろさま、力をお借りいたします。」

 

 カンゾウは、二十面体の金色の結晶(カケラ)を胸ポケットから取り出した。

 

 結晶が、黒色ートキトビ金鉱脈の色に染まる。

 

 「まずっ、ヒトモシ早く抜け出すのですわ!」

 

 ヒトモシは、未だコインの山の中で身動きが取れない。

 

 キンノコブシが、その溶けた鉛の腕に力こぶを作って見せる。

 

 「キンレン400年の歴史を知るといい…

 

 …『はんえいのいしずえ』!」

 

 黒い粒子と金色の粒子が入り混じって、カンゾウの手の上のカケラから放たれ、バトルコートに満ちたオーラはサーフゴーの掌へと集まる。

 

 サーフゴーが、おもむろに足元をひたすら殴打した。サーフゴー自身が見えなくなるほどの素早い殴打が、受け継がれる歴史の力を呼びさます。

 

 まだ、ヒトモシはコインの山から抜け出せない。

 

 ヒトモシの真下の地面が、砕けた。無数のコインが派手な爆発とともにヒトモシを打ち上げ、真下の地面は真っ赤に溶ける。

 

 「ヒトモシ、おにびを撃つのです!反動で逃げ出すのですわ!」

 

 あの、コインが落ちるそばから消滅するドロドロの溶融に落下すれば、タダでは済まない。ヒトモシは必死におにびをいくつも放ち、なんとか空中での横移動を試みた。

 

 サーフゴーが、ひときわ大きく腕を振り上げ、足元を殴りつける。

 

 ヒトモシの真下、ドロドロに赤熱した地面が泡立ち、赤色が白く濁り、そして、無数の黄金のインゴットが飛び出してヒトモシを痛打した。

 

 インゴットが消え、地面が元に戻る。すべては幻であったかのようで…しかし、ヒトモシは完全に戦闘不能に陥っていた。

 

 「はんえいのいしずえ...一見バカっぽくてまどろっこしくて隙が多い大技だけど、歴史を再現してその力を借りる神事のワザなだけあって、やっぱり決まると耐えようがないよね...」

 

 「さて、どうされますか? まだBREAKフィールドは活きています。2体目で反攻は可能ですよ?」

 

 「決まっていますわ。そもそもこうするしかございませんもの。

 

 おいでなさい、イーブイ!」

 

 かわいい毛玉が、鳴いた。

 

 格上過ぎるサーフゴーを前に、イーブイも蒼玻も、引く姿勢は見せない。

 

 (普通にやれば勝てない。でも、俺たちにはあれがある…!)

 

 「イーブイ?ですが、私どものサーフゴーは、イーブイごときで倒せるポケモンではありませんよ。」

 

 カンゾウは暗に告げるー無駄だからやめておけ。

 

 「イーブイ、いけるよな?うそなき!」

 

 「…困りますね。サーフゴーは変化技を受けない。効きませんよ。この程度の実力でおみや巡り成就を認めるわけには…」

 

 甲高い泣き声が響く中、蒼玻は叫んだ。「イーブイ、はつげんちょうせい!」

 

 カンゾウは呆然とする。それはあくまで枷だ。ユキコシ在来のイーブイは遺伝子が不安定過ぎて進化を安定させることすらできないという、枷だ。それは攻撃になるわけは...

 

 (どういうことです!?こんなの研修にもマニュアルにもな...

 

 うそなきはあくタイプワザ、うそなき中に、もし、仮に、万が一、進化を発現するとすれば、あくタイプの環境が発現に影響して…!?)

 

 「まさか、ブラッキー!?」

 

 そこには、確かに、月輪浮かぶ黒き獣...ブラッキーが、座していた。

 

 「サーフゴー、マニュアル通り回避の準備をっ!」

 

 (あのサーフゴーを倒すには弱点を突いたとしてもBREAKワザを切るしかない!それにはつげんちょうせいは遺伝子の不安定さの上に成り立つ特性、ブラッキーのままでいられる時間はたぶん1分もない…!)

 

 回避を許す時間的余裕はない。サーフゴーは黄金のサーフィンで高速で逃げ回っている。

 

 「決めますわよイーブイ!BREAKですわっ!」

 

 バトルコートが、金色の光に満ちた。サーフゴーの輝きすら薄れて見える。

 

 空間に満ちる金色の粒子が、イーブイ、否、ブラッキーへと凝縮する。 

 

 (一か八かの賭けだ、試させてもらうぜBREAKワザの力!)

 

 「うそなきBREAK(ナイトクライ)!」

 

 耳がつんざけるかのような大きな啼き声が、谷間に響き渡る。

 

 金色の音波が、駆けまわるサーフゴーを吹き飛ばした。

 

 だるま落としもかくや、サーフゴーの身体から、無数のコインが衝撃波で叩き出される。

 

 細くヒョロヒョロになったサーフゴーが、耳を押さえてふらつく。

 

 「いでんしはつげん解除前に決めるっ!スピードスター!」

 

 「サーフゴー、解除まで時間を稼ぐのです!」

 

 サーフゴーが、何かをしようと足と手を動かす…またもやコインが崩れ落ちる。

 

 ブラッキーの像が揺らぎ、イーブイの姿が見え隠れする。

 

 サーフゴーの、コインをほとんど失いむき出しになった透明な霊体があわあわと震える。

 

 ほとんど消えかかったブラッキーの像から、星屑が迸った。

 

 通常のサーフゴーなら、スピードスター程度の攻撃は耐えれたであろう。しかし霊体を守るおうごんのからだを大きく削られては、どうしようもなかった。

 

 パタリ、スカスカでほとんど透明になったサーフゴーが倒れた。

 

 ブイッ。イーブイが、かわいく鳴き声をあげた。

 

ー*-

 

 「これが、キンレンおみやのおみや巡り成就のあかし、『金山のカケラ』でございます。それからこちらはキンレンジムバッジとなっております。ご査収ください。」

 

 黒と金の光を瞬かせる正二十面体の結晶と、ぱっくり割れた山をかたどった双三角のバッジを、カンゾウが慎重かつ丁寧に手渡す。

 

 「これからも、歴史、先人とポケモン達の歩み、そして他者への敬意といたわりを忘れず、御研鑽なさってください。

 

 時にお二人は、どちらに向かわれるのですか?」

 

 「ええと、ジェットフォイルでワカナエシティ、ですわよねカグヤ?」

 

 「フェリーでも数時間しか変わらないから、それでもいいんじゃないお姉ちゃん。」

 

 「…ふむ、ワカナエシティ...」

 

 「…カンゾウさんには、何か気になることがあるのかしら?」

 

 (そういやトキトビ観光協会だか振興協会だかの幹部って言ってたよな…?もう少し長く滞在してお金を落としてほしい、とか?)

 

 「…カグヤ嬢様、ですよね?貴方様は、アオバ嬢様。」

 

 「…バレてたか…」「おわかりでしたのね…受付では偽名を使ったはずですのに…」

 

 「カグヤ嬢様は前にも一度おみや巡りに来られていますからね。…2年で大きくなられましたね。」

 

 「そう?

 

 それより…私たちの身の上をわざわざ口に出すってことは...」

 

 フロックス・ホールディンクスはユキコシの多くの企業と直接または間接的につながっている。もちろんキンレン鉱業も例外ではない。

 

 「連れ戻そうというつもりなら、私は抵抗させてもらうわよ。」

 

 カグヤが、ドレスの腰に下げたボールをつかんだ。

 

 「いえ、そういうわけではございません。

 

 訳があってフロックスを離れて旅に出ているということは見ればわかります。私はたとえ関連企業から圧力を受けても、キンレン宮司として、未来あるトレーナーの邪魔は致しません。

 

 …話というのは、少々最近、フロックスの動きが怪しいのです。トップを代行している副会長は何やら私費を集めて極秘のプロジェクトを立ち上げているようですし、先日トキトビで捕まえたゴフク屋団員もフロックスと関係がありそうで…」

 

 (コンプラガバガバ…ってコト!?)

 

 「あんのカスオヤジ、やっぱり何か企んでるのね…

 

 …ってことはワカナエに向かうのは良くない?」

 

 「はい。ワカナエシティに入ってしまえば人口が多いのでなんとかなりますが、ワカナエ港で必ず改札を通らなくてはなりませんし、ゴフク屋のことですから改札係の買収や脅迫もありえます。」

 

 「…トキトビの南の方から、ミツバポートタウンへ行くカーフェリーがあったよね?」

 

 「ミツバポートタウンは寂れきっています。待ち伏せされたら逃げられないかもしれません。」

 

 (ダメだ、ユキコシについて全然付け焼刃で付いていけねえ…)「他に航路はありませんの?強行突破は避けたいですわ。」

 

 「他に航路...トキトビシティからアカマツタウンへの航路があるにはありますが廃止されて今は季節運航の観光船しか..」

 

 「それがわかれば充分。お姉ちゃん、トキトビシティに向かうよ!」

 

 「で、でも廃止されてるのではどうしようもないのではなくて!?」

 

 「大丈夫、(カネ)ならある!」

 

 カグヤ・フロックス(15)。高級な非ポケモン食品を避けて食費を削るしっかり者だが、彼女もまた、カネを使う時にはカネをばらまく、いっぱしのお嬢様であった。

 

 




「はんえいのいしずえ」(キンノコブシ専用ワザ・「キンレンおみやの祝福のカケラ」使用時のBREAKワザ)

 はがねタイプ

 腕に強力な祝福の力が宿り、それによって地面を(どこでもいい)砕くと、相手の足元の地面が溶融し、そこから重い金のインゴットがいくつも打ち上げられる。

 インゴットは霊力でできているため避けることはできない。溶融している地面に落下した場合は、ダメージだけではなく高温によるやけど状態が追加される。


 金の精錬を再現する祭事系のワザです。なお結晶が黒くなるのは仕様(キンレン金山のモデルとした佐渡相川金銀山の金鉱石は金色ではなく黒色です)。

 ミツバポートタウン=直江津 カグヤが言及している「トキトビの南の方から、ミツバポートタウンへ行くカーフェリー」は小木~直江津カーフェリーです(直江家の家紋が三つ葉をあしらっている) そして直江津のみなさん寂れてるとか言ってごめんなさい、でも実際行ったとき港は寂れてたよ…





これでチュートリアル「黄金の輝きが新たな始まりを照らすから」編は終わりです。往くはユキコシ本土、待ち受けるは強者と陰謀そしてまだ見ぬ仲間!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。