お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~ 作:十二の子
現代日本からの転生者、蒼玻。ユキコシ地方一の令嬢、アオバ。2人は命がけの紆余曲折の末に同じ身体を共有し、妹のカグヤとともに旅をしていた。
はてやま連峰を半年にわたり占拠するゲリラ組織「ホープ団」。彼らが「心を司る3神」を手に入れるのを阻止すべくカグヤが3神を封印したものの、それによってギラティナと古代ユキコシ文明が復活。古代ユキコシ文明は多くの神と呼ばれし伝説ポケモンを従えながらユキコシ地方を滅ぼし、恐怖によって世界を征服する。
蒼玻/アオバは、ラスト団ボスのクワズの「宇宙は同じ宇宙をループしている」という助言に従い、ムゲン団ボスのユウリがかつてやろうとした「ムゲンダイナによる全宇宙の時間の加速、それによる次の宇宙への到達」によって宇宙を一巡、世界の滅びを変えるべく過去を目指す。それは、転生者というイレギュラーである蒼玻とお別れになるかもしれないと知りつつのことだった...
#Re:74 果てより戻りて希望の正統
ー*-
ユキコシ地方、4月。
蒼玻がこの世界に転生してからもう1年が経過している。
冬の間をパルデア沖の学園島グランデ・コンティネントのパーシモン・ゼミナールで修練した蒼玻/アオバとカグヤは、アイゼンで雪を踏みしめ、はてやま山頂に来ていた。
今、はてやま連峰はホープ団の占拠下にある。けれどもたった2人の登山を見つけるのは容易ではないしホープ団はそれを予期してすらいないだろう...しかもホープ団が気づいて姉妹を攻撃するとしても、下手をすれば簡単に雪崩を誘発して自分たちも巻き込まれることになる。
もちろんフロックス姉妹も、雪深い冬のはてやま連峰でホープ団に挑むつもりはない。伝説4体への勝算以前に、遭難するのが関の山だからだ。だが、ホープ団のふいをついてはてやま冬期登山に挑むのには、別の理由がある。
ヒスイ分家からもらった、「あかいくさり」3つ。伝説ポケモンを鎮めあるいは封じることができる神器を持ち、はてやまおみやに挑むのだ。
はてやま山頂のはてやまおみやには、ぐうじはいない。その代わり、おみやから望むカルデラ湖「かへらずの湖」には、ユクシー、アグノム、エムリットの「心を司る三体」が眠っている。
この3体に祈りを捧げて味方につけ...伝承通り3体が荒神で味方になってくれそうもなければ、その時はあかいくさりによって従える。そして3体によってホープ団を倒す。
もしあかいくさりを3体に使わずに済めば、ホープ団のホウオウ、ルギア、ゼルネアス、イベルタルのうち3体をあかいくさりで封じれるからいいなぁ…などと、蒼玻/アオバとカグヤは考えながら、雪を必死に踏みしめ、ときおり現れるこおりタイプポケモンをー雪崩が起きぬように慎重にー追い払いながら、山頂への最後の0.5合を1時間かけてよじ登り。
そして見た。はてやまおみやに、4人の人影があるのを。
ー*ー
「いいところに来るじゃねぇか。
だが、一足遅かったな。」
常ならぬ輝きを放つかへらずの湖の凍結湖面をバックに、はてやま火口尾根の上で、ホープ団海軍中将ウキクサは、両手を大きく広げ、因縁の相手であるフロックス姉妹を出迎えた。
「心を司るポケモンは、あたしたちがいただくわ。」
ホープ団陸軍中将ハッカが、得意満面に宣言する。
「あなたがたはある意味特別ですからね。私たちを煩わせた勲章として、遺言だけでも聞いておいてあげましょう。
私たちが全ユキコシ人から自我を奪い取る前にね。」
ホープ団空軍中将アルソミトラは、心を司る3体の神をホープ団が掌握することで発生する最悪のシナリオを宣告した。
だが、蒼玻/アオバもカグヤも、ホープ団3幹部の方を見てはいない。そのとなりのもう1人を見ている。
「コンフリー…貴方...貴方は!」
悪びれもせず、手足から機械音を鳴らし、その青年はシニカルな笑みを浮かべた。
「いやー...キミたちが襲来する期待値が0ではないと思い、準備を急いで本当に良かった。
実にすばらしい効率だ。上の上。理論値をはじき出したと言ってもいい。なにしろ、せっかくならキミたちにも、見てほしかったからね、この光景を。」
元ラスト団ナンバーツーにして、現ホープ団科学者、コンフリー。彼が指さす先で、火口湖の凍結湖面が音もなく割れて、3つの光がふわりと浮かび上がる。
光が、どろりと黒く濁って割れ。
中から、ユクシー、アグノム、エムリットが姿を顕した。
シンオウ地方に伝わる姿ではない。白いはずの部分が純黒に染まっており、「こわれている」と呼ばれるユキコシのありさまを象徴するかのようだ。
「さあ、俺たちに従ってもらおうか!」
ウキクサがなにがしかの装置のスイッチを入れる...
「させるかーーッ!」
…寸前、一瞬前、カグヤは人生最大の力を込めて、ポケットに入れていた手を引き抜き、中のモノを放り投げ…
ようとし、その手を蒼玻/アオバが掴んだ。
「だめだ、そいつを使っちゃだめだカグヤ!」
ー*-
(すべて、すべて思い出した!)
(そう、そうでしたのね!未来のわたくし!)
それは、いつか中橋蒼玻とアオバ・フロックスの魂が一つに重なり結びついた時のような恍惚的な感覚と、二日酔いの酩酊を数十倍に煮詰めたような嘔吐感がいっしょになった、未曽有の気持ちの悪さ、魂への衝撃。
いつかアオバは「魂というのは、『人格』と不可分な、ある種のイデア、形而上学的概念ですわ。人格は経験を蓄積することで思考回路を醸成し、醸成された思考回路は経験するすべてに対して何らかの判断を下す…それらの回路と働きすべてをひっくるめて魂と呼ぶ、それ以上でもそれ以下でもありませんわよ。」と言ったが、それにしたって、「今から『時の加速』までの数週間の奮闘の経験と、それによって育った思考回路」が宇宙のループを一周超えてぶつかってきて魂に重複したのだ。二重魂魄状態を経験済みの人間でなければ、魂が耐えられずすぐには動けなかったかもしれない。
ともあれ、蒼玻/アオバは、未来のそして一巡前の蒼玻/アオバと一つに重なり、一つとなった。宇宙はループしておりすべては同一なのだから、別個の魂にはならず、同じものは同じものとして重なり、そしてループの因果の開始点であるこの時、古代ユキコシ文明復活直前でそれは起きたわけである。
そうして、蒼玻はカグヤの手とあかいくさりを掴んだ。
ギリギリ、ギリギリのタイミングで、運命は変わった。
ー*ー
「ちょ、ちょっと、どうしたの、お姉ちゃん…?蒼玻くん…?」
「まだ、あかいくさりを使う時ではありませんわ/後で説明する。今は任せてくれ。…
俺たちも、何から話したらいいのかわからないんだ。」
蒼玻/アオバの尋常ならぬ気迫に、カグヤがしぶしぶ手を下ろす。
「そ、そう…なら…」
「コホン。
内ゲバかなにか知りませんが、邪魔にはならなさそうですね。ウキクサ、予定通りコントロールを。」
「ああ、俺たちに従ってもらおうか、心を司る神とやら!」
ー*ー
純黒に黄青赤の三原色。瞑目するように目を閉じ浮遊していたユキコシのユクシー・エムリット・アグノムが、つかの間もだえ…目をぱっちり開け、ホープ団の面々を睨んだ。
「…え?」
ー
ー
ー
3体が手を合わせ、祈るようなポーズを取る…直後、ホープ団の3中将とコンフリー、それにアルソミトラが出した伝説のポケモンゼルネアス・イベルタルが、頭を押さえ転げ回った。
「あ、頭がいてぇ!」「あたしらが、負けるわけ…っ!」「うぐっ…こ、これが荒神のちか」「期待値どおり強烈だ、ね…っ!」
蒼玻/アオバとカグヤが、一歩後ずさる。脂汗流しのたうつホープ団と、伝説の威厳もなくばたつくゼルネアス・イベルタルは、目の前に浮遊する3神の「心を司る」という権能がどのように強力か思い知るには充分すぎた。
”「「「あなたたちも、秩序にあだなす者ですか?」」」”
「テ、テレパシー!?/それくらいできますわよね。
え、ええ。違いますわ。わたくしたちは/俺たちは、この世界を守りたいんだ。お前らが封印してる破壊神、ギラティナからな。」
「お、お姉ちゃん…?何を…」
”「「「心、確認した。
破壊神、古代文明、敗北、滅び、一巡…
安心して。その歴史は、消える。」」」”
ー*ー
(一件落着、ですわね…
/ああ、ホープ団の連中は3神を抑えられそうにない。もう古代ユキコシの復活はないんだ。
/やっぱり、まったく同じ宇宙のループですから、過去が変わればなかったことになる、ようですね。もはやあの滅亡の歴史、最悪の世界は、わたくしたちの記憶にしか存在しな)
「コントロール装置、再起動、出力過負荷運転!」
コンフリーの機械チックな叫びが、蒼玻/アオバの安堵を打ち消した。
”「「「な、魂への攻撃に、耐えられるなんて!?」」」”
「最初っからブラフでな、効いてないんだよ。お前ら心を司る神の俺への期待値は、ゼ、ロ、パ、ァ、セ、ン、ト!」
(そんな、創世のころからいる、心を創り司り操り壊す神ですわよ!?/そうか、今のコンフリーは半分人で半分機械のサイボーグ!)
魂といえど、物理的にそれを裏打ちするのは脳神経回路の電気信号がなす経験の記憶と判断の思考回路。もちろん裏打ちする脳神経回路がなくても心霊として存在しえるが、かと言って脳神経回路に直接働きかければそれに従い魂が変わることに違いはなく。
(魂への攻撃を脳へのハッキングと見なして、外部からの電気的神経操作で打ち消しやがった!?/言われてみれば機械の身体に脳を載せるならハッキング対策くらいしますわよね!迂闊でしたわ!)
”「「「うっ、ここで、封じられるわけには…!」」」”
ゴフク屋が受け継いだ、ロケット団やプラズマ団、フレア団をはじめとする各種悪の組織のポケモンコントロールテクノロジー。ラスト団が開発した、BROKEN進化へと続く技術体系の1つとしてのポケモンコントロールテクノロジー。その2つの結晶たる装置を持ってしても、コンフリーの頭脳は「そもそも心を司る神なのだから、操作できる期待値はゼロ」と弾き出していた…が、コントロールを諦めるのならその限りではない。
「意識、強制シャットダウンッ!」
「コンフリー!?」「てめぇ何を!?」「助かったけどなんのつもり!?」
3中将の目の前で、ユクシー・エムリット・アグノムが、意識を失って、かへらずの湖の湖面へ墜落していく。
「なんのつもりって、3神の封印だよ。
奴らは荒神、危険すぎる。」
「てめぇ言ったよな?今の俺たちなら3神を制御できるって!3神で簒奪者どもの心を支配して皆殺し、復讐と奪還を成就できるって!
それがなんで、封印してやがる!?」
「あれ?あれは期待値を高めるための、嘘も方便だよ。
心を司る神、しかもエスパータイプだよ?機械で精神を操れる確率は0%だよ。何を今さら。」
「OK、コンフリー、貴様を殺します。」
「アルソミトラ、上司のくせに気が短いな。
ホープ団、これはきみらが望んだことでもあるんだよ。」
「んだと?」
「ならば、ホープ団、わたくしは不承不承ながら貴方方に賛成ですわ。
/コンフリー、今をお前のラストにしてやりたいよ。
だけどそんな/場合ではなさそうですわね!後ろを御覧くださいまし!」
蒼玻/アオバが、ホープ団3中将の背後を指差す。
尾根という尾根、いや、広いはてやま連峰高標高帯のすべてを、雪とハイマツに代わって埋め尽くす、荘厳壮麗な白亜の建物。
「文明が一夜にして消え失せる?いくつかの遺跡と伝承を残して、まるで或る日突然人だけが消失したかのように?
そんなことはありえない。彼らは退避したんだ。計画的にね。
そして、今日まで、現世への復活の日を待っていたんだ。
キミたちホープ団の偉大なる祖先、古代ユキコシ文明はね!」
ー*ー
ユクシー・エムリット・アグノムがポケモンコントロール装置で封じられると同時に、一巡前どおり出現してはてやま連峰の高標高帯を埋め尽くした、白亜の石造高山都市。
そのもっとも荘厳なひとつから、音もなく、男は2000年ぶりの現世へ下り立った。
神官たちが石段の両脇で平伏するその中央を歩いていく。
割れたまぼろしモモンを跨ぎ、テラパゴス像を蹴りつけ、バドレックス像につばを吐き、Zクリスタルを踏み砕き、キュレムの幻灯を消灯する。
聞こえてくるコンフリーの大笑に耳を傾けることを忘れない。
いつしか男は、パチパチパチ、拍手を始めていた。
「明察のとおりだ、現生人類よ。」
今ここに、世界に冠たる
「ギラティナの創りし反転世界で、こなたらはずいぶん待ったぞ。」
よもや外では2000年も経過しているとは思わなかったが、男にとっては反転世界の中との1980年分のギャップは大したことではない。その程度の年数、偉大なる繧ウ繝シ繧キ繝シコーシー主義の前では些事だからだ。
「そなたら、大儀であった。
この筆頭神官
無数の黒い影を空間に沿って這わせる、不気味で不吉で、そして冒涜的な姿のギラティナ。その真下に、
果たしてギラティナは、
コンフリーの頭脳が高速で回転する。
(まさか、ギラティナによる2000年前の破壊って…)
はてやま連峰に突如出現した白亜の高山都市に、そこから現れた謎の男…ホープ団3幹部はやっと脳が追いつき、慌てて跪く。
渉外担当のアルソミトラが、ひれ伏したままに訴えかける。
「古代ユキコシ文明のみなさま!とっくに滅亡し、その威風を伝えるのは私達ホープ団のみかと思っておりました!
復活なされまして重畳の至り、是非私達が確保せし橋頭保を以て、再びユキコシの地に栄華を!」
「ほう?
2000年もすると、ずいぶん生意気な口を聞くようになるのだな?」
「は…?」
「こちらこそ生き残っているとは思わなかったぞ、見捨てたのだがな。
奴婢の子孫風情が、威風を伝えるぅぅぅ?
分をわきまえよ下郎どもがっ!」
地天のすべてに触手を這わすような、ぬめっとした黒光ー
ーギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト!
ーそして、この世の理が崩壊する。雲が引き裂かれ、山がきしむ。木々が焦げ、土が空へと落ちる。
だが、それを良しとしない、ループ令嬢がいる。すでに、ディアンシーのボールは投げられた。
”「今度は、一巡前とは違います!」”
「誇り高き俺たちの燦然、誰にも超えられはしないさ!/直視すること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏すのですわ!」
ーディアンシーは デュアルメガシンカした!
たっぷり、数十秒続く、ピンクの光輝…慈愛に満ちたそれは、
アルソミトラは、今度こそ死ななかった。
ー*ー
「おお…その輝き…その青き瞳…!
狂気に満ちた、満面の笑み。
気色悪い視線にも、蒼玻/アオバはそろそろ慣れていた。
「世界を滅ぼしたいほど愛してるってくせに、子孫を滅ぼそうとしてくるのは/解せませんけれど、わたくしは貴方のどんな感情もどのみち受け入れませんわ。」
「解せない?
わからなくてもいい!届かなくてもいい!これがこなたの、『愛』であるっ!
そなたの子孫が立ちはだかろうとも!
こなたはすべての神と世界を跪かせる!それがこなたの、
この狂った男は、きっと、もう二度と最愛の人と会えない20年ーあるいは反転世界外の2000年ーがなくとも、最初から狂っていた。
神に生贄を押し付け権能を歪み我田引水する筆頭神官は、恨んでいるクソの神よりよっぽど崇拝している
「ギラティナを防ぐとあらば、これではどうかね。
アンノーン、『MISSING』」
青空を埋め尽くしていく、膨大な文章。その言霊力がどんな破滅的な代物か、従えた神格にも劣らぬ世界征服の立役者か、一巡前で蒼玻/アオバは知っている。
「やり返しなさい、ゼルネアス、イベルタル!」「よくわからんがルギア、やべえぞ!」「ホウオウ、とりあえず攻撃!」「俺としたことが読み間違えた、アブソルっ!」
ーゼルネアスの ムーンフォース!
ーイベルタルの デスウィング!
ールギアの エアロブラスト!
ーホウオウの せいなるほのお!
ーメガアブソルの あくのはどう!
ホープ団の攻撃、そのすべてが、届かない。青空を埋め尽くすアンノーンに向けて撃ったはずの対空砲火は、奇跡的な確率で交錯し、花火で終わる。
いかなる攻撃も防御も無意味となる、アンノーンの言霊による源理改変。これを前にしては、伝説のポケモンでさえも勝ち目は薄い。
「ギラティナ。再びだ。
どのみち我が
ーギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト!
「お姉ちゃん私達あんなのと血繋がってたの!?
グレイシア、ぜったいれいど!」
天地の定めをないがしろにする攻撃ーしかもギラティナは一巡前と異なり、ぜったいれいどを避けるためにロストインパクト発動をキャンセルしたりはしなかった。アンノーンがいる今、ぜったいれいどが命中するわけがないからだ。
「幸い志はつながってませんわ!
/ディアンシー、避難するぞ!」
ーデュアルメガディアンシーの ダイヤストーム・ディセラレーション!
ーデュアルメガディアンシーの トリックルーム・アクセラレーション!
デュアルメガディアンシーの光による防御もアンノーンがいては通じない、それは一巡前でわかっているとおりで、ギラティナを襲おうとしたダイヤの竜巻は浮遊霊に、土石に、水滴に、種に置換され、なんならギラティナにはあたらず蒼玻/アオバたちの周りに停滞した…けれど、ギラティナの視界を妨げることには成功したし、時間減速領域を越えてトリックルーム内の時間加速にまで
「カグヤ!ホープ団!
今のうちに、逃げますわよ!」
「お姉ちゃん、わかった!」
「おいおいトンズラかよ」「もう何が何だか…」「言うことを聞いたほうが良さそうですね…」
蒼玻/アオバ、カグヤ、ウキクサ、ハッカ、アルソミトラ、コンフリーの6人は、転がるようにはてやま山頂から逃げ出した。
ー*ー
(言った通りでしたわね。
わたくしたち、また、会えましたわ。)
(感動してるよ。俺たち、何度だってまた会えるんだな。)
(わたくし、蒼玻くんを諦めたり、しなくってよ?)
(ああ、俺も、今度こそアオバちゃんと、ずっと生きていくよ。)
(…でも蒼玻くんったら、自分に自信がないから、またへたれるかもしれませんわね…?)
(…アオバちゃん?)
(わたくしとの運命、身体に、覚え込ませて差し上げなくっては。)
(あの…この身体の弱点を一番知ってるのは
(だーめ♪
今夜は寝かせませんわよ?なんてったって宇宙ひとつぶん御無沙汰で昂っておりますもの。
覚悟、よろしくって?)
ー*ー
「…というわけで、わたくしたちは、ここに来たのですわ。」
目の下の隈を化粧で隠した蒼玻/アオバの説明に、カグヤは、本来あるはずだったぞっとしなさずぎる未来に紅茶も喉を通らない様子だった。
一方ホープ団3中将とコンフリーは、顔が真っ青である。
「俺たちが取り戻したかった、古代ユキコシの栄光が、世界を滅ぼす…なんて…」
「あたしらが、偉大な文明の子孫じゃなく、奴隷の子孫…ずっと、ありもしない幻想を抱いてたのね…」
「あやうく生贄として死ぬところだったとは…フロックス家、感謝はします。」
「ちっ、古代文明め、
4者4様、起きるはずだった未来図に悔しさ、哀しみ、虚しさがないまぜになった表情で俯いている。
「…それで、ホープ団、貴方方はどうされるのかしら?
アルソミトラ、貴方が死んだ時のように、解散?」
「…いえ、アジトで相談はしますが、そうはならないでしょう。」
アルソミトラが、顔を上げる。
「…その、心は?」
ウキクサが、コップを呑み干しゴミ箱へ投げ込む。
「宿敵たる簒奪者どもの親玉、フロックス家が、宇宙を一巡してでも諦めずに立ち向かったってのに、偉大な祖先に裏切られて目的を失い滅びの運命をつきつけられたくらいで、俺たちホープ団が2000年の戦いを投げるわけねえだろ。」
ハッカが、両の頬を叩く。
「期待外れのアホ古代文明とは戦う、古代文明を信じて散っていった祖先と仲間の誇りは守る、両方しなくちゃいけないってのが、あたしらホープ団の辛いところよね。」
「ホープ団にはホープ団の、ノブレス・オブリージュ…というわけね。」
「悪いがそれ、俺は下りさせてもらう。」
コンフリーが、背を向けて扉へと歩き出す。
「クワズさんをインターネットからサルベージする。
ラスト団、再始動だよ。俺は俺たちの最適効率で行く。」
カグヤが、パチンと手を叩く。ドアノブにかけたコンフリーの手が止まった。
「だったら、お姉ちゃんと私も、ホープ団も、ラスト団も、古代ユキコシ文明と戦う、仲間じゃなくても共闘者ってことだよね?」
「ええ/もちろん」「うれしくねぇことにな」「クワズさんがそう望んだからね」
力を合わせる気が薄いな…?カグヤはため息を吐き、広げた手を出す。
「は?何この手。」
「手!みんなであわせるの!協力するならこういうのは大事でしょ!」
「くだらない馴れ合いですね。」「あまり効率は変わらなそうだね。」「前世陰キャだから陽のしきたりは震えが…」
「あーもう!ガタガタ言わないのこの社不たち!」
カグヤが、声を荒げながら、ウキクサの、ハッカの、アルソミトラの、コンフリーの、そして蒼玻/アオバの手を取り、自分の手に重ねる。
「はい!世界を救う同盟、えいえい、おー!」
「ネーミングなんとかなりませんの?」「同盟じゃなくて共闘だっつーの。」「こんなイニシエーションで期待値が上がるか?」
「…あー、もうっ!」
あまりにもしまりが悪いものの、こうしてフロックス家、ホープ団、ラスト団の共闘体制が成立した。
敵は古代ユキコシ文明。一巡前の世界ではユキコシ地方を滅亡させ、世界の全てを恐怖により征服した、史上最悪の悪の組織。
転生ポケモン令嬢、最後の戦いが、幕を開ける。
ー*-
「まだ遠くには逃げていないはずだ、探せ。」
「はっ、筆頭神官様。」
(…まあ、見つからんであろうな。
「筆頭神官様、これから如何なされますか?
麓に街が見えますが、やはりアレを?」
神官が、サンゴジュシティを指差す…だが、
「ギラティナならば鎧冑一触、そうかもしれぬな。
だが、できん。」
「如何なる心うちで?」
「外では2000年。現生人類どもとはいえ2000年あれば要らぬ知恵をつけようぞ。ギラティナを倒されては詰まらん。
手札を1つ、取り戻しておこうか。」
ギラティナにもまさる、手札をな…
コンフリー、アンタどっちかというと戦犯やぞ!
※ちなみに蒼玻/アオバと蒼玻/アオバ(一巡)、驚愕ハルヒのα/βみたいな統合をしています。
ー*ー
「宇宙を一巡するのと、ちょうど同じエネルギー…ムゲンダイナの無限とは、そういうものですか。」
干からびた龍の骨。蒼玻/アオバがすっかり忘れ去った…わけではないが、自分のポケモンではないから役目を果たして野生に帰っただろうと思っていた、本来なら同じ宇宙に2つ重複して存在しないはずの遺物。
「これが、次の伏線となる。
いや、ずっと見落とされていた伏線を露わにする。
ユウリさんはよく踊ってくれました。抜け殻とは言え、コレ、世界の収点を生み出してくれたのだから。」
竜の骨の、目にあたる部分。そこにそっと、手を差し伸べる。つと、ムゲン団が創りし、何にもまさる一点の無色の光点が、あたかも瞳のように龍骨に灯った。
「私は解答を用意します。あなたの回答が欲しいから。
吉報を待っていますよ、主人公…?」
ヘルメットを放り、悠々、彼か彼女かもわからない人物は発掘現場を後にした。
ムゲンダイナの龍骨がうごめき、人気のない発掘現場に、岩の擦過音が響いていた。