お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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~これまでの転生ポケモン令嬢~

 現代日本からの転生者、蒼玻。ユキコシ地方一の令嬢、アオバ。2人は命がけの紆余曲折の末に同じ身体を共有し、妹のカグヤとともに旅をしていた。

 史上最凶の帝国、古代ユキコシ文明。その復活により、ユキコシ地方は滅び、世界は征服されてしまう…だが、蒼玻/アオバはムゲンダイナのエネルギーによって宇宙のループを一巡し、運命のやり直しに挑む!



#Re:75 凶兆迫りて志の一致

ー*-

 

 「お姉ちゃん、蒼玻くん。

 

 気になったんだけどさ、なんで、はてやまでギラティナを鎮めなかったの?

 

 あそこであかいくさり使って良かったんじゃない?」

 

 「…わたくしはそう思いましたわ。ただ、蒼玻くんが止めましたの。

 

 /アンノーンがいてある程度繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)の好き勝手できるフィールドで、ギラティナを鎮めたあとで持ち出せる気もしなかった。あかいくさりを投げても暴投しそうだし、せっかく鎮めても持ち出せなきゃくさりを壊されて元の木阿弥、そう思ったらな。」

 

 「じゃあ、ギラティナは、後処理までなんとかできるところに誘い出してからあかいくさりを使うの?」

 

 「そうだ、な…

 

 /いえ、わたくしたちがまどろっこしいことをしても、あかいくさりの持ち主の下へ繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)が奥の手なくギラティナを出してくるはずありませんわ。あるいは奥の手で奪回してくるのかしら。

 

 ギラティナを封じる、アンノーンを抑える、その他の古代ユキコシの手札もすべて叩く。戦力、戦術、心理どれか1つの勝利でも後回しにすれば、すべてひっくり返されますわよ。

 

 /…決戦、か。ユキコシの総力を以てしての。」

 

ー*ー

 

 一巡前でさんざん煮え湯を飲まされたために、奥の手を危惧してフロックス姉妹が決戦思想に傾いていた頃。

 

 フロックス姉妹のラスボスたる筆頭神官繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)は、アオバの心配どおり、奥の手を用意していた。

 

 繧ウ繧キ繝弱Α繝、(コシノミヤ)シティの中央、白亜の石材で造られ、数々の神格級伝説ポケモンに捧げるべく様々の冒涜的シンボル像が並ぶ、異様な空間、「失墜の神殿」。

 

 そこで、3つの祭壇ー正三角形に並べられたーの前へ、神官が1列ずつ並び、祭壇の上、ぼんぐりの実で作られた素朴で原始的なモンスターボールに向かい、礼拝する。

 

 「天にましませ雷の鳥よ」

 

 「天にましませ焔の鳥よ」

 

 「天にましませ凍の鳥よ」

 

 無数のアンノーンが、神官たちごと祭壇を取り囲み、渦をなす。

 

 「「「地に伏せありては、地天の明たる我らに従うべし

 

 地に伏せありては、過ぎたる力我らに戻すべし

 

 地に伏せありては、三位ともに我らに傅くべし」」」

 

 祝詞というには、あまりにも呪詞。

 

 されどそれは、対抗するポケモンが他にいないがゆえにそのシンボルという冒涜的生贄によっては「失墜」させられない神格を、アンノーンによって枝を曲げる如く力を捻じ曲げ互いに三竦ませることで「失墜」させる、繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)主義の1つの芸術的到達点であった。

 

 「『失墜』」

 

 繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)が、杖を振る。3つのボールは、吸いつきあうように三祭壇の中央でぶつかり、ありえないことに互いにぐにゃりと融合した。

 

 アンノーンたちが、歓喜を表すかのように踊り狂う。

 

 「顕現せられよ、三元素を隷する天空の凶鳥!」

 

ー*ー

 

 「こうして、古代文明によってここにいる全員が玉砕、この地方は滅亡し、世界は膝を屈する…

 

 以上が、この世界が辿るかもしれない末路ですわ。」

 

 ごくり、誰かがつばを飲む音が、会議室に響く。

 

 野良のトレーナーが言えば嗤うところだ、世界が滅んだので宇宙を一巡して過去にやってきた、などと。けれどこの場に、真摯に旅をしてきた蒼玻/アオバというトレーナーを、フロックス家のすべてを背負うアオバという令嬢を、疑う愚か者にはこの席につく資格が得られるはずもない。

 

 ユキコシ7ぐうじら有力トレーナー、政財界の有力者・名士、居並ぶ歴々は、ことの深刻さを受け止め次々と手を挙げ、それからどうぞどうぞと言わんばかりに顔を見合わせた。

 

 「はいはい。

 

 カグヤ・フロックスです。私が司会をするね。

 

 まずそこの方から。」

 

 「ユキコシ通信渉外部部長の、パピルスと申します。

 

 これから我が社含め報道各社は古代文明復活にまつわる報道を行っていくわけですが、何か、フロックス家あるいは戒厳司令部トップとして、要請あるいはコメント等ありますか?」

 

 「私が宇宙を一巡してきたことは、この場限りで秘匿してください。これはこの臨時会議全員に厳守していただきますわ。宇宙のループ構造が広く周知されることは混乱を招きますし、一巡して運命をやり直す方法があることが知られれば愚者が雨後の筍をなしますわ。あくまで一巡の内容は未来予測として。

 

 報道管制についてですが、古代ユキコシ文明はインターネットに弱いものの現代語を解し、また紙面媒体や動画媒体を見られればその内容は筒抜けますわ。くれぐれも、敵を利さないようにお願いできるかしら。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 「次、そこのスーツのおじいちゃん。」

 

 「高速公団のマダケじゃ。

 

 決戦を挑むんでも漸減邀撃をするんでも、後方支援と避難が必要じゃろうと思うとる。儂ら交通インフラへの、方針というものお聞かせ願えんじゃろか?」

 

 「はい。そうですわね。

 

 断っておくと、一巡前、交通関係各社は本当によく戦いましたわ。わたくしが知る限り、遅滞のための計画的な玉砕はあっても、逃げ遅れた住民はいなかった…

 

 …それが必要であれば、ユキコシ地方全域からの避難は可能ですわ。ただし、今回はまだ、それは検討にとどめて、決戦領域からの避難と決戦のための戦力集約を行うべきではないかしら。」

 

 「うむ、そうじゃの。」

 

 「次、そちらの、ジュンサーさん。」

 

 「サンゴジュ西署です。ユキコシの全ジュンサーを代表して、また国際警察からの質問として2点、本官からお聞きします。

 

 まず1点目、ラスト団残党及びホープ団の処遇処罰について、正式にではありませんが、戒厳司令部として方針を決めるべきと考えています。

 

 2点目としまして、当会議が終わり次第『古代ユキコシ文明』を悪の組織として国際指名手配することに異論がある方はおられますか?」

 

 「それぞれお答えしますわ。

 

 わたくしフロックス家としましては、ホープ団・ラスト団ともに、休戦と共闘が結ばれたものと考えますわ。もはや両組織ともに、ユキコシ地方に組織的な敵対行動を取る理由はないのではないかしら。

 

 休戦と共闘を以て免罪することは…難しい問題ですわ。それをして収まりがつかないことも承知しておりますわ。けれど、わたくしは、2度と後悔しないためなら何でもするべきだと決めましたから。わたくしの覚悟に異議がある方々でご随意に話し合っていただければと思いますわ。どのみち適切な選択肢はそう多くはございませんが。

 

 2つ目、古代ユキコシ文明の法的地位についてですが…アレはカビの生えた古代の倫理観で動いている1つの政体であって、悪党の集団とは一線を画しますわ。法的には至急悪の組織として手配すべきですが、戦いの実態は摘発や討伐ではなく戦争と考えるべきではないかしら。」

 

 「せん、そ、う…」

 

 会議室がざわめく。ー相手は下手をすれば世界滅亡レベルの敵、それでいて悪の組織にとどまらずその実態は地方政府…もともと戦時戒厳体制であったとはいえ、あらためて戦争という言葉を突きつけられるとその重みに震えざるを得ない。

 

 「それで、私からも質問なんだよ。」

 

 「何かしら、イチシノぐうじ。」

 

 「これが戦争なら、方針は逆侵攻か防戦か漸減か決戦かだよ。でも相手の戦力の核はギラティナとアンノーン、守りは通じないしちまちま頭数を削っても意味がないし、様子も良く分からない敵の本拠地に逆侵攻なんてできない。決戦で古代ユキコシ文明を下すしかないのはわかるんだよ。

 

 …私は、どこでその決戦をするつもりなのか決めて、それをもとに戦略を立てないと話が進まないと思うんだよ。」

 

 数百年前、旧ウスベニシティのとのさまがジョウトに出陣し敗走し落城したことで、今のウスベニおみやの歴史が始まっている。ウスベニぐうじのイチシノはだから、勝ち負けとそのための手段についてのこだわりは人一倍強い。

 

 「ハテヤマタウン町長のキスゲです。ハテヤマタウンは住民避難を開始しておりまして、明日昼には空になります。決して無用な損失を許容するわけではありませんが、山麓へ下りてくる敵を迎撃することは可能です。」

 

 「サンゴジュぐうじ兼サンゴジュ地域臨時戒厳司令のチューリップです。おみやで昔から計画されてきたように、サンゴジュ平野に戦力を展開して、高台であるサンゴジュおみやを突出部(バルジ)にすれば、敵を迎え撃てるよ。」

 

 「カクミガシだ。コンジキぐうじと、コンジキ大の教授をやらせてもらってる。

 

 コンジキ以西に敵を入れたら詰むと思ってくれたまえ。半島部は分断されて孤立するし平地が多くて遅滞は無理だ。

 

 ワカナエ地域…はてやまの東側にも下りられてはならない。はてやまからワカナエ方面へ東に下りるとすぐに地溝帯があって河が流れている。翡翠を産出し、古代の遺構や遺物が見つかっている河だ。ヒスイ地方というのも…ここの翡翠を中継ぎ貿易していたことにちなむという理論もあってね。勝手知ったる外界への湊だろうしどんなアーティファクトを隠しているやらわからない。」

 

 「一巡前、古代ユキコシ文明の主攻はワカナエ方面で、地溝帯でまごまごしていたかと思えば、海伝いの広い平地を一気に横断してきましたわ。わたくしたちにとってのプラスパワーやハチマキのような強化アイテムが古代ユキコシ文明にとっては翡翠かもしれない、という可能性は高いですわね。決戦ははてやまの西側…」

 

 「そこの、はいそちらの眼鏡の方?」「はい、フィナンシャル&トレードサポート、戦略経営研究所のノグワと申します。

 

 ユキコシ地方の経済状況を鑑みるに、都市部での決戦は賢明とは言えません。戒厳による完全統制とフロックス系列会社の社内留保放出、中央銀行の相場介入でユキコシ経済は平時並の水準を保っていますが、これらの経済施策をしつつ都市復興をするとなりますと、復興以前に損害補償によってユキコシ経済が破綻いたします。」

 

 コンサルのシンクタンクとはいえ意見はもっともだ。ワカナエ大乱の復興、ホープ団サンゴジュ侵攻の復興、相次ぐ事変で景気が落ち込まないように下支え…ユキコシ経済は今ですら力を振り絞っている。もう一度街を燃やす?立ち直れまい。

 

 とはいえ背に腹は代えられないのも確か。ユキコシ地方を滅ぼしては元も子もない。

 

 「…サンゴジュの南方に、湖沼地がありましたわね。保養地として貸し出してはいますが元はと言えばわたくしたちフロックス家の別邸ですわ。」

 

 これなら如何?ー問われ、歴々は頷いた。

 

 「さて、それなら、どのようにワカナエ方面でもサンゴジュ市街でもなく、サンゴジュ南方の沼沢地に誘い込むか、だけど…」

 

 会議は進む。誰も皆真剣だった。

 

ー*ー

 

 「すまない、クワズさん。」

 

 「いや?

 

 すべてを知っていたなら、俺は確実に、コンフリー、お前にそうさせたさ。

 

 何度宇宙がループしようとな。破壊神ギラティナは、古代ユキコシ文明は、この時代に復活させなきゃならん。」

 

 電子生命になろうがなるまいが、そうさせたーラスト団のボスたる男は、そう告げた。

 

 「その先に滅びがあるとしても、か?」

 

 「俺は人とポケモンの可能性を信じている。すべての文明が滅び鉄錆と化そうとも、鉄錆の中からまた新たな文明が立ち上がり、旧文明はより正しく良きものへ代替されるだろう。

 

 …けれど、この時代を過ぎては、もう文明をやり直せても文明レベルは取り戻せないかもしれない。

 

 人類文明はちと、地上の資源を浪費しすぎた。1からすべてを取り戻すには代替不可能になりかねないほどにな。」

 

 「時空転送装置(タイムマシン)や軌道エレベーターを造り上げてから、それをなし得る文明が崩壊したとして、もう一度それらを再構築するには残り資源の期待値が悪すぎる…ってわけか。

 

 …クワズさん、もしかして、俺を誘導したか?」

 

 「ギラティナによる破壊と、そこからの正しい再構築。ラスト団の目的は最初からそれだ。最後(ラスト)までな。

 

 俺は代替可能な文明のリセット&リスタートをしたいのであって、代替不可能な文明のクラッシュは望んじゃいない。リミットは近かった。

 

 この時代にギラティナを解放し、すべてを壊し創り直さなくては、ずっと未来に自然に、あるいは何かの拍子でギラティナが蘇ったとして、その破壊は取り返しがつかないものになりかねなかった。

 

 破壊者がギラティナではなく古代文明だとしてもそれは変わらん。」

 

 「破壊の未来がいつか来るものなら、無一文からやり直せる最後の時代に、か…

 

 …なあクワズさん。なんで、そうまでして破壊と再構築にこだわり続けてきたんだ?」

 

 「…世界のすべては代替可能だ。俺も、お前も、人もポケモンも草木に水に山に空に星!それらすべて何一つとして、それである理由はない。モノであれ、コトであれ、それでなければいけない存在意義などない。

 

 すべては替えがきく。それがそこにあってその役目を果たす必然性などない。どうでもいい、詰まらないものにすぎない。この世界そのものを除いてはな。」

 

 それはある意味、転生者中橋蒼玻がかつて抱いていた想いを壮大にしたものだった。

 

 「だから俺は、許せない。BREAK力場だけじゃない。この世界にはきっともっと大きな欺瞞が、醜い偽りがある。

 

 偽られた世界を壊し、正常で、正しく、偽りのない、本性本当の世界を始めたかった。俺はそれだけだ。

 

 きっと、古代ユキコシ文明にまつわるこの最後の戦いは、俺たちに世界の真実を、欺瞞のヴェールの向こう側を、教えてくれるはずだ。」

 

 「そのわりには、浮かない合成音声だな。」

 

 「…最近…少し怖がっている俺がいてな。

 

 あのムゲンタワーの戦い、監視カメラで見ていた…アレは誰だ?闇のユウリを助け、音もなく消えたダレカは、何者だ?」

 

 この世界の存在意義は、欺瞞のヴェールの向こうの真実は、本当に暴いていいものなのだろうか?

 

ー*ー

 

 古代ユキコシ文明との決戦がサンゴジュシティ郊外南方と決まってすぐに、サンゴジュ都市圏全住民の避難が決行された。市街を破壊するつもりはないが、それはそれとして破壊されないとは言い切れない。住民は西のコンジキシティまで下げられ、一時避難施設が足りないためウスベニシティ・グンジョウポートタウンやジョウト地方のフスベシティにも受け入れられる。

 

 同時に、決戦予定地であるサンゴジュ南方保養地への、古代ユキコシ文明軍誘導作戦が行われる。

 

 はてやま連峰・フスベ山脈の山々の東では、急遽海路でサンゴジュから戻ってきたワカナエぐうじ、オリザが、ワカナエおみやのよりしろさまたる巨大8つ首カミツオロチ(カミツラオロチ)を連れてきた。

 

 カミツラオロチの龍砲は地形を変えるー伝承でそう語られ、それであるからこそ事実上の伝説(デ・ファクト・レジェンド)とされるのだ。ビーム1本で山に川を穿つ…そう言われるだけのことはあり、フスベ山脈東麓から一晩かけ放たれ続けた「きまぐレーザーBREAK」は急峻なフスベ山脈斜面をズタズタにした。山肌そのものを岩盤まで削られて溝だらけにされ…それだけなら痛々しい傷痕で済んでも、雪解けの時季の積雪斜面に無造作に横薙ぎの攻撃を加えたのだから、いっせいに雪崩して木々をなぎ倒し山肌を洗うように削り、見る影も無く剥き出しの土斜面にしてしまう。

 

 これだけ東斜面をボロボロにすれば、古代ユキコシ文明はそう安易に東へ下山して来ようとは思わないだろう…オリザはカミツラオロチを連れてワカナエシティへ帰っていった。

 

 西のサンゴジュ方面へ下山してもらうにせよ、サンゴジュシティそのものへ突っ切ってこられても困る。はてやま連峰から北西へ流れ出した川はハテヤマタウンとして知られる扇状地をなし、そのさらに北西の方角にはサンゴジュシティが広がっているが、決戦予定地はハテヤマタウン扇状地の真西(サンゴジュシティの南)、扇状地端に湧水してできた湖沼地だ。

 

 これには、ウスベニぐうじイチシノが一計を案じた。

 

 古代ユキコシ文明は呪術的なものを重んじている神権国家…ならば、呪術的要素をこれ見よがしに設置されていれば、どうするか?

 

 ハテヤマタウンとサンゴジュシティの中間の田園地帯に、氷でできたミステリーサークルが突如出現した。呪術・霊・怪異の研究を数百年してきたウスベニおみやが、氷雪を司るサンゴジュおみやよりしろさまことユキツヌシカミに作らせた、街ひとつ分ある巨大呪術陣ーただしハリボテーだ。

 

 初歩的な霊脈占術であるところの奇門遁甲・石兵八陣の類、要するに運勢操作と道迷いの呪いでしかなく、しかも氷でできている以上は2週間がせいぜいの氷陣…ただし、プロが全力で仕掛けた「それっぽさ」、例えば、いかにもな生贄の祭壇や呪い返しの陣、それらを徘徊する無数のゴーストポケモン…プロ中のプロであるところの古代ユキコシ文明が、待てば溶けて消えるそれらに軽々しく踏み込むだろうか?現代の、大災厄(カタストロフ)以来ポケモンによる人死にが起きやすく、かつ呪術体系が2000年違う陣に?

 

 「私達には、神々を思い通りに跪かせたり、文字で天運を歪める術に立ち向かうことも、それどころか理解することすらできないんだよ。

 

 でも、術が理解できなくても、術を使う人が何を考えるかは、理解できるんだよ。

 

 ゴーストタイプの弱点はゴーストタイプ。エスパータイプの弱点もゴーストタイプ。無策で掛かりにはいかないんだよ。」

 

 かくて、準備は整った。

 

 はてやま連峰の北は海、東側のフスベ山脈は東斜面大崩落、南はジョウト地方までずっと奥山、北西はサンゴジュへの道中に巨大霊陣…こうして、はてやま西麓へ下山した古代ユキコシ文明の神官たちは、無人のハテヤマタウンを占拠したのち西進を選び、サンゴジュ南方の湖沼地へと到達した。

 

 時を同じくして、湖沼地に点在する屋敷や別荘に隠れ潜んでいたトレーナーたちが姿を現し、一斉にボールを放り投げる。人気のまばらな保養地は、瞬く間に、東に豪奢な揃いの貫頭衣の神官、西に思い思いの服のトレーナーが集い対峙する戦場へと早変わりする。

 

 東の空から黒雲のように迫るのは、言霊で天運を操る、アンノーンの大群。そしてそれをバックに、三原色に輝く巨鳥と、闇の触手を世界に這わす破壊神ギラティナが飛び来る。

 

 ユキコシの、いや世界の命運を決する決戦の火蓋が、切って落とされた。

 

ー*-

 

 「三位一体ってそういう意味じゃないんですわよね。

 

 …勘違いされてますけど…」

 

 はてやま連峰から飛来せし、三つ首の巨鳥を見上げ、蒼玻は声をかけた。思わず漏れてしまった言葉であったためにアオバに伝える間もなく、蒼玻自らが久しぶりに中途半端なお嬢様言葉を使っている。

 

 巨鳥の上、金糸で装飾された貫頭衣を着た危険人物、繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)は、初登場時同様の地獄耳で聞き返す。

 

 「ほう、ではどういう意味なのかね?後学のために聞いておこうぞ。」

 

 (わたくしも気になりますわ。わたくしに喋らせるわけでもなくつい口にしてしまうほどのことなのなら。)

 

 「貴方がたらが反転世界に逃げ出した2000年前頃の宗教で、父なる神、子なる預言者キリスト、聖霊がすべてひっくるめて一つの唯一神である…みたいな...そういう教義ですわ。」

 

 よくよく考えればこのポケモン世界にキリスト教は存在しないから、むやみに他人に会話を聞かれると面倒である。この時ばかりは、わざわざ低空まで下りて話を聞きに来た繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)に感謝する蒼玻である。

 

 「唯一神か。とんだ邪教がうまれたものよな。こなたらが目を離したすきに。」

 

 「貴方にだけは、言われたくはないと思いますわよ。」

 

 繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)が騎乗するその冒涜的な巨鳥を見ては、蒼玻でなくとも、繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)が「邪教」などと揶揄するのを聞き捨てできるわけもない。

 

 赤青黄の胴体に、金色の翼、そして尾羽は赤青黄の3本。足はなく極楽鳥のようだが、それすら冒涜性を感じさせる。そして首は3つ…ホウオウの胴と翼を持ち、首はサンダー、ファイヤー、フリーザーという、とんでもない凶鳥が、そこにはいた。

 

 「ネクロズマやキュレムとも違うよね?それは、なに?」

 

 歪で冒涜的な神鳥の姿に、カグヤが会話へ口を挟む。

 

 「なにって、ポケモンを合体させただけだが?神には掛け算が成立するからな。

 

 サンダー、ファイヤー、フリーザーで、サ・ファイ・ザーであるぞ。」

 

 「んな、無茶な…

 

 ディアンシー。」

 

 ”「はい。準備はできています!」”

 

 蒼玻/アオバが、指輪を嵌めた指を、天へと突き刺すかのように掲げる。

 

 「誇り高き俺達の燦然、誰にも超えられはしないさ!/直視すること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏すのですわ!」 

 

 「サ・ファイ・ザー、その神威を見せよ!」

 

 ーディアンシーは デュアルメガシンカした!

 

 -サ・ファイ・ザーの きあいだめ・にらみつける・おいかぜ!

 

 「ワザ3つ同時使用!?なしでしょ!?」「いい加減にしてくださいまし!?」

 

 メガシンカでデュアルメガディアンシーに同調しているために「にらみつける」の精神影響を受けて側頭部を押さえた蒼玻/アオバが怒る。

 

 「時空すら破壊するギラティナに比べれば、神鳥三羽くらいなんのことはない、ホウオウとルギア以下にもならない、そうとでも思ったか?

 

 雷、炎、氷、相克せし3つの元素(タイプ)を統べし神鳥の三位一体だ。これが神力を歪め導き、矛盾と困難を超えるということだ。そしてこなたは、そなたという、芝桜の君とこなたの子孫という困難も、超えてみせよう。

 

 サ・ファイ・ザー、トリニティバーン!」

 

ー*-

 

 「神々は、フロックス家に任せるぞ。」

 

 アイツらにはその力がある…ゼルネアスとイベルタルが襲来したグンジョウ発電所襲撃で、グンジョウぐうじたるトチュウはそれを知っている。

 

 「俺たちの責務は、それを邪魔させないことだ。」

 

 「ふぉっふぉ、若いモンを裏で支えるとは、年寄り冥利に尽きるのぅ!」

 

 「お2人のグループ企業の人間としては忸怩たるものがありますけどね。」

 

 ヌレバぐうじのアテ老人とキンレンぐうじのカンゾウは、想いは逆に近かったが、目指すこととしては同じであったーともあれ蒼玻/アオバとカグヤを助けなければ。

 

 「この私を研究室からフィールドワークに引きずり出したんだ。さぞ興味深いデータを見せてくれよ?」

 

 コンジキぐうじのカクミガシ博士は、ワクワクで恐怖と緊張を隠蔽しながら、白衣からボールを取り出した。

 

 「妾にとっては武士道の花道じゃな。往くぞクチート。」「非常運行していきましょうか、シチセイノカゲ(マーシャドー)。」

 

 ナノハナキャッスルのハル姫とナノハナ鉄道のササユリ駅長が肩を並べ、武士団のサムライと交通事業者のドライバーたちの最前に立つ。

 

 エリートトレーナーに大学生、そしておみやのジムトレーナーが構えるその隣では、迷彩服の集団と、雑多な悪の組織の制服を着た集団が、いかにもな悪党面をしていた。ホープ団とゴフク屋だ。

 

 「てめえら用意はいいな!こいつァ俺たちホープ団の意地だ!」「一杯食わせるわよ!」「故郷を護るのもまた、私たちの役目です!」

 

 ウキクサのルギアが、ハッカのホウオウが、アルソミトラのイベルタルが羽ばたく。ゼルネアスはと言えば戦場の後ろに屹立しフェアリーオーラを流していた。

 

 「こんな場に居合わせて歴史に名を残すことになろうとは思いませんでしたな。」「義理と人情任侠、って奴だなぁ、ギリギリ以上ってだけにか?」

 

 ヌスビトらゴフク屋も意気揚々だ。裏社会に生きる彼らだからこそ、名誉ある戦いとなるこの決戦に士気を上げていた。

 

 数百人の全ユキコシ同盟と向かい合うのは、史上最悪最凶の悪の組織、古代ユキコシ文明ー繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)の国の軍事帝国主義を支える、揃いの貫頭衣の神官たち。

 

 「百騎隊『繝。繧ス繝昴ち繝溘い(メソポタミア)』前へ!」「百騎隊『繧、繝ウ繝?繧ケ(インダス)』投射位置!」「百騎隊『繝翫う繝ォ(ナイル)』右備えよし!」「百騎隊『鮟?イウ(コウガ)』祈祷始め!」

 

 ここに、1000年の栄華を再び…そして今度は全世界に轟かすのだと、軍勢は雄叫びを上げた。

 

 「征服せよ、カイリュー!」「圧倒の時、サザンドラ!」「帝国万歳、ジャラランガ!」「威に服せ、ブリジュラス!」

 

 「「「「りゅうせいぐん!」」」」

 

 数十もの、同時発動された流星群。空が真っ赤に燃えたかのような錯覚すら覚える。

 

 「ライチュウ、かみなり!」「ドーブル、ダストシュートじゃ!」「サーフゴー、シャドーボールです。」「アブソル、あくのはどう!」「クチート、ムーンフォースですよ!」「「「ホープ団総員…エアスラッシュ!」」」

 

 降り注ぐ流星を、暴風が空へと追放し、あるいは殺到する攻撃が空中で爆発へ追い込む。

 

 決戦はまだ、始まったばかりだ。 

 

ー*-

 

 -サ・ファイ・ザーの かみなり・だいもんじ・ふぶき(トリニティバーン) 

 

 「ディアンシー、ダイヤストーム!」「ヒヲマトウハネ、まもって!」

 

 -デュアルメガディアンシーの ダイヤストーム!

 

 -ヒヲマトウハネの まもる!

 

 サ・ファイ・ザーの3つ首が唸り、光球を発射する。

 

 硬度10、切削力耐久力ともに抜群なナノダイヤ竜巻をデュアルメガディアンシーが展開し、自ららを守る。

 

 光球がダイヤストームの目前で炸裂し、雷撃が、爆炎が、凍風が、相い入り乱れ吹き荒れた。雷は空気を紫に染め、炎は熱で周囲を焼き焦がし、そして氷柱が乱立する。

 

 ナノダイヤの竜巻は、跡形もなく蒸発させられ、ダイヤモンドダストにとってかわられていた。

 

 「ほう。

 

 続けてギラティナ、ロストインパクトであるぞ。」

 

 ーギラティナ(冒涜されしすがた)の ロストインパクト! 

 

 天地の理がきしむ、音がした。




 サ・ファイ・ザー 特性:プレッシャー/さんみいったい

 さんみいったい:同時に3つの特殊ワザを使うことができる。またかみなり・だいもんじ・ふぶきを同時に選択した場合は1つのワザ「トリニティバーン」となり、雷と炎と氷が打ち消すことなく炸裂する。


HP攻撃特攻防御特防すばやさ
サンダー90909085125100580
ファイヤー90100125908590580
フリーザー90859510012585580
サ・ファイ・ザー270275375275300901585


 トリニティバーン 威力110、命中70

 でんき、ほのお、こおりタイプの威力110特殊攻撃を1回ずつ計3連撃するワザ。命中判定は3発同時に行われる。
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