お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~   作:十二の子

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 本作をお読みの皆様。

 転生令嬢を巡るすべての因果、この物語の帰結、最終幕へ参りましょう。


#Re:77 世界を救うその因果

ー*-

 

 「遅いとはご挨拶だねアオバくん。

 

 ちょっとばかり寄り道をしてきたというのに。期待値100%でキミたちを感謝させてみせるというのに。」

 

 初めて出会った時のようなシニカルな笑みとともに、ラスト団ナンバーツー、コンフリーが合図を送る。

 

 マハリハグルマが、再び世界に亀裂を作った。歪な怪音とともに開かれた黒いヒビから、2人の少年少女が姿を表す。

 

 プリーツスカートで見事なカーテシーを披露する姉と、着崩したブレザーのネクタイだけを締め直す弟。

 

 「お久しぶりです、本家のみなさま。奥の手を持ち参上しました。」「二度と悪の組織に関わりたくなかったんだけどな…」

 

 フロックス家ヒスイ分家…一巡前の世界では古代ユキコシ文明阻止のためにアルセウスの召喚までたどり着いた姉弟を、ラスト団は連れてきたのだった。

 

 「あら、レプトシフォンと、ミクロステリスではありませんの。」

 

 「キミたちが効率よくあの神を下すには、この2人の力が必要だろうと思ってね。」

 

 天を覆うかのようなサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>を指差し嗤うコンフリー。

 

 「コンフリー、貴方…

 

 /ですけれど、わたくしたちの心意気と戦力が足りていても、もう、悠長に作戦を立てている時間が…ありませんわ。」

 

 心理的優位、戦力的優位、戦術的優位ーアオバが信条とする勝利の3要素だが、諦めないし負けない心を持っていて、ヒスイ分家が奥の手を持ってきて戦力がそろったとしても、それをどう使うか決めている余裕は…

 

 …クワズが、アオバに応えるかのように、頭上で羽ばたく金色の凶翼をあおいだ。

 

 サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>は、再び、サンダー、ファイヤー、フリーザーのBREAKオーラ幻影を生み出し、今にも破滅的攻撃を放とうとしている。

 

 「ああ、死にぞこないの当主令嬢とお転婆次女では、あのバケモノをしのげまい。

 

 だから、俺たちラスト団が、『代替』してやろう。

 

 そのためにわざわざ義体を用意してきてやったぞ。」

 

 「こっちのほうが『期待値』が、高いんでね。

 

 さあ、始めようか、アブソル…メガシンカ!」

 

ー*-

 

 今にも2発目のスカイレジェンドを放ち、サンダー、ファイヤー、フリーザーの幻影を突っ込ませてきそうな金翼。サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>に対して時間を稼ぐ方法は、あまりないのが実情である。何しろすばやさは低くないし攻撃力は生半可な原子爆弾(このポケモン世界には存在しないが)を超えている。「このゆびとまれ」で引き付けて反転世界へ誘導したのはナイスだったが、それを成し遂げたプロジェクトコード:ィ゛ゃゾ┘Aは跡形もなく蒸発してしまった。

 

 「まったく因果な役目を代替することになったな。」「Lastの名にふさわしいでしょう。」

 

 ーユキコシギギギアル(マハリハグルマ)の ギアチェンジ_BROKEN(ニュー_ワールド_オーダー)

 

 再びの、空間にヒビが入る怪音。そして、リザードンを模したマシンが現れ、黒い翼で浮かび上がる。

 

 ーCopied_Legend.(プロジェクト)Prototype(コード)Emulated_(アネ゛)_Charizard”(デパミ゛)の Emulated_”わざマシン29(サイコキネシス)”!

 

 -サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の ゴッドバード_BROKEN(スカイレジェンド)

 

 天覆う凶鳥が生み出した金色の幻影が、逆落としに突っ込んでくる…のを、黒いリザードンを模したマシン「プロジェクトコード:アネ゛デパミ゛」はサイコキネシスで自分へと引きつけた。

 

 ーCopied_Legend.(プロジェクト)Prototype(コード)Emulated_(アネ゛)_Charizard”(デパミ゛)の Emulated_”わざマシン50(みがわり)”!

 

 神罰たる雷轟、業炎、凍風は、空間の亀裂に浮かぶみがわり人形へと誘導されて、ヒビの向こうの反転世界へと放出された。再び、メガトン級のエネルギーが反転世界を襲う。

 

 「世界に復讐するための攻撃とは、伊達ではないな…」

 

 まともに受ければひとたまりもないと、さすがのクワズも顔をしかめ…ようとして、間に合わせの義体にそんな機能はないことを思い出した。

 

 「コンフリー、保たんぞ。アレを使う。」

 

 「…こんなのは再現品であって、本物のオーラを使ってないので、なかったことにしたいんですけどねクワズさん...」

 

 クワズの身体ー正確には、電子生命となったクワズが宿っている機械の義体(アンドロイド)が、ギコガコと変形してその姿を人間のそれから変じていく。尻尾が生え、全体的に丸みを帯びたフォルムへ、そうそれはまるで。

 

 ーCopied_Legend.(プロジェクト)Missing(コード)Recreated_” Mew”(けつばん)の Emulated_”へんしん”!

 

 ミュウの姿に変じたクワズが、小さいながらもサ・ファイ・ザーの幻影を宿す。「へんしん」でBREAKオーラを模倣させたのだ。

 

 ーCopied_Legend.(プロジェクト)Prototype(コード)Emulated_(アネ゛)_Charizard”(デパミ゛)の Emulated_”わざマシン29(サイコキネシス)”!

 

 -サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の ゴッドバード_BROKEN(スカイレジェンド)

 

 再び、サンダー、ファイヤー、フリーザーの黄金幻影が降り落ちる。

 

 雷轟、業焔、凍風。

 

 今度はみがわりをだしている余裕はなかったし、みがわり人形へ誘導する余裕はもっとなかっただろう。世界そのものを標的に放たれた神罰に対して、プロジェクトコード:アネ゛デパミ゛がなしえたのは、サイコキネシスで自分へと攻撃を引き寄せながら反転世界へその身体をねじ込むことだけだった。

 

 絶対零度の凍風が分子レベルで動きを凍り付かせ、雷撃が電子をピンポン玉のように弾き飛ばし、獄焔は大気を膨張によって真空化させキノコ雲を生み出す。

 

 キノコ雲の下、数マイクロ秒で蒸発したプロジェクトコード:アネ゛デパミ゛ごと、数メガトンのエネルギーを呑み込んだ反転世界へのヒビが閉じていく。

 

 ーCopied_Legend.(プロジェクト)Missing(コード)Recreated_” Mew”(けつばん)の Emulated_”ふういん”!

 

 「間に合った!これでお前はもはやワザを使えまい!代替不可能だろう!」

 

 プロジェクトコード:けつばんの中から、クワズが合成音声の勝利宣言をする。

 

 「現生人類はなんとも不思議な呪具を作るものよな。

 

 そのリザードン擬きといい、この「わざマシン」とやらといい…」

 

 繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)はそう言って、マシンを掲げた。

 

 -サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>は ウェザーボールを おぼえた!

 

 再び翼下に、サンダー、ファイヤー、フリーザーの黄金幻影が創造されていく。どうやら今度はそれを発射するつもりらしい。

 

 「どうやら効率的な解決策ではなかったと見えるね…」

 

ー*-

 

 原子爆弾級のエネルギーをキャッチボールするかのごとき、天地を揺るがす激戦が繰り広げられているのを背後に。

 

 「時間がないので手短に話します。

 

 私たちヒスイ分家が、ラスト団に頼まれて持ってきたのは、心を司る3神ことユクシー、エムリット、アグノムです。」

 

 レプトシフォン・フロックスとミクロステリス・フロックスは、そう言って鞄から3つのノブレスボールを取り出した。 

 

 「3神?でもあれはホープ団、というかコンフリーが余計なことしてかへらずの湖に沈んじゃったはずだよね?

 

 え、敵の本拠ど真ん中の湖の底行って捕まえてきたの?」

 

 カグヤが驚愕の面持ちで尋ねる。

 

 「いいや違う。ユキコシ3神とどういう関係があるかわからんが…

 

 …俺たちが連れてきたのは、俺たちの故郷シンオウ地方の3神だよ。」

 

 冷静に考えればオリジナルの3神をこんな短期間で連れてきたことも驚きだが、蒼玻/アオバもカグヤも、そのことに驚く余裕はなかった。

 

 「あっ…」

 

 盲点だったのだ。ユキコシ3神とシンオウ3神はいずれもユクシー、エムリット、アグノムで、見た目も黒いか白いかの違いしかない。宇宙に心を生み出した3神が2体ずついるわけもないので矛盾しており不思議がられていたが、蒼玻/アオバとカグヤははてやま山頂で3神を目にし声まで聴いたので存在を疑うこともできず、疑問を放置していた。

 

 「よもや本当に別個体とは思いませんでしたわ。けれどそれでは、わたくしたちが出会った3神はいったい…?」

 

 「それも含めて、本人…本人?から、話を聞いた方がいい。

 

 出て来てくれ、ユクシー、エムリット、アグノム。」

 

 純白に黄青赤の三原色。瞑目するように目を閉じ浮遊したすがたで、宇宙に心をもたらせし神々は登場した。

 

 ”「いつか、こうなると」””「思っていました」””「あの2000年前から」”

 

 「…テレパシー…

 

 ...どういうことかしら?伝説に伝わる大災厄(カタストロフ)の鎮圧に、やはり貴方方はかかわっていたの?」

 

 ”「はい。私たちは」””「造物の神であるディアルガ、パルキア、ギラティナが荒れたのなら」””「その心を調律して世界を安定させています」”

 

 「あかいくさりを与える試練の本当の意味って、まさか...」

 

 ーディアルガ、パルキア、あるいはギラティナが荒れた時に、世界が乱れた時に、世界と世界を乱す神を調律するための、ユクシー・エムリット・アグノムの権能の代理人の選定…

 

 ”「そのとおりです。ですが2000年前のユキコシに」””「私たちを代行する者はいませんでした。」””「ですから私たち自ら、暴走するギラティナを止めなければならなかったのです。」”

 

 当然だ。当時のユキコシ地方は古代ユキコシ文明の支配下で、唯一の抵抗勢力とも言える繝ャ繝?繝ェ繧(レムリア)繧キ繝舌じ繧ッ繝ゥ(シバザクラ)繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)ーフロックス家の祖先ーとて繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)の配偶者、3神が手を貸すことはできない。

 

 「だから、直々にギラティナを抑え、BREAK力場…善意概念の付与までやった、と。

 

 /それでしたら、この地方の貴方方は、いったい何なのですかしら?」

 

 ”「「「影」」」”

 

 「影?」

 

 ”「ギラティナがこの地方を破壊し、再創造した時、善なる概念の再創造にだけ失敗し」””「私たちが大いなる力を振るって、その概念を付与する概念場を外付けしました。」””「ですがその結果、私たちの大きな力もまた、概念として焼き付いたのです。」”

 

 「Copied_Legendシリーズ…

 

 そっか、この地方の3神も、オーラで作ったコピー体だったんだね…」

 

 ”「好都合でした。私たちにも古代文明を」””「すぐにどうにかできるわけでも」””「いつまでもはてやまを監視し続けられるわけでもありませんでしたから。」”

 

 故にユクシー・エムリット・アグノムは、己の概念のBREAKオーラコピー体たるユキコシ3神を、いずれ古代ユキコシ文明が復活しようとしてくるはてやま山頂…今のはてやまおみやに置いた。

 

 ユキコシ3神が手のつけられない荒神であったのも、はてやまのポケモンがやたら強かったのも、道理である。それらこそ、うっかり誰かが古代ユキコシ文明を復活させないようにするための要塞だったのだ…そして反転世界の古代ユキコシ文明にしても、はてやま山頂に3神のコピーが居座ってきた2000年間、精神攻撃とギラティナの制御剥奪を恐れ、復活はできなかったというわけである。

 

 ”「もっとも今は」””「その機能を」””「停止しているようですが…」”

 

 白き3神はそう告げて、目を閉じ祈りのポーズをした。

 

 空間が揺らぎ、水面のように波紋を映して、その中から黒き3神が浮かび上がる。強制的に意識をシャットダウンされたままの苦悶の表情で、ユキコシのユクシー・エムリット・アグノムは浮遊を続けていた。

 

 ”「「「ここで決着をつける覚悟はありますか?」」」”

 

 「ああもちろん/ですわよ。」

 

 ”「「「ならば私たちも、覚悟を決めましょう。」」」”

 

 黒地のユキコシユクシー・エムリット・アグノムが、金色の粒子を放ち、ほどけて透明になっていく。

 

 金色のBREAKオーラは、ユクシー・エムリット・アグノムへ吸い込まれていった。ここに2000年の時を経て、BREAK力場に写し取られていた概念は、オリジナルへと回帰したのである。

 

 ”「私たちがこの地方の『壊れ』を抑制して」””「あの冒涜的な鳥を抑えます」””「ですが、それで届きますか?サ・ファイ・ザーを討てますか?」”

 

 サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>はそんな甘い相手ではない。この地方の壊れを抑制するーそれはつまり、サ・ファイ・ザーを神格存在から一体のポケモンに引き戻すこと、エネルギーのぶつかり合いの死戦をダメージのぶつかり合いのポケモンバトルへ変えることとなるが、神としての権能やエネルギー出力を抑えたところでポケモンとしての種族値もワザ威力もサ・ファイ・ザーは圧倒的だ。

 

 ”「私たちが」””「トドメをさすことは」””「できませんし」”

 

 「二刀流ができないのなら、わたくしたちが決めるしかない、と。/何か手立てがある、そういうわけか?」

 

 ”「「「ギラティナを解放しなさい」」」”

 

 「ギラティナ、を…!?」

 

 どさくさに紛れて回収した、Re(復元版):オリジンボールを見つめる。

 

 一巡前の世界で、古代ユキコシ文明の世界征服と恐怖支配を支えたモンスター。世界の理を破壊し秩序を簒奪する破壊神。せっかく苦労して封印したそれを、解放しろ…ユクシー・エムリット・アグノムは、そう言ったのだ。

 

 「でも…」

 

 ”「今なら私たちは、ギラティナの正気を戻せます。」””「ギラティナとてまたこの世界を護る神であること」””「あなたたちもガラルで体験したことでしょう?」”

 

 「ああ、やはりそうでしたのですわね…

 

 /…(ムゲン)ウールーの時に、手を貸してくれたのは…」

 

 オリジンボールを握りしめ、右腕に力を込めて手を下げる。

 

 「お姉ちゃん…」

 

 姉が伸ばしてきた左手を、カグヤがそっと握る。

 

 「おいでくださいまし…」

 

 そして蒼玻/アオバは、下投げにオリジンボールを投げながら、真に畏怖すべき、驚嘆すべきモノの名を呼んだ。

 

 「「ギラティナ!」」

 

ー*ー

 

 -サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の ウェザーボール雷・炎・雪_BROKEN(スカイレジェンド)

 

 「プロジェクトコード:ベアビヲ9、プロジェクトコード:9パゾ9な”、ともに信号ロスト。

 

 元のワザがゴッドバードからウェザーボールになったおかげで、隙がつけなくなってるな…」

 

 多少一発の威力は減るが、そもそもどっちみち原爆級出力の攻撃なので気休めにもならない。

 

 「もはや代替手段はナシ、と…詰んだか…?」

 

 義体としていたプロジェクトコード:けつばんを失って電子生命に戻ったクワズも、コンフリーのホロキャスターからぼやいてみせる。

 

 「いや…やっぱ、俺の期待値計算は上の上だったみたいで。」

 

 「待たせましたわね、ラスト団。ここからはわたくしたちの、バトルタイムですわ!」

 

 「…俺たちの代替じゃない、真打ちを果たせるのかな?」

 

 「決着は、私たちの高貴なる者の義務(ノブレス・オブリージュ)だよ。」

 

ー*ー

 

  ”「正気を戻しましたか?ギラティナ。」”

 

  ”「む、心の神…なればこの状況は…余としたことが、不覚。」”

 

  ”「彼らは、アルセウス様も知らないような」””「深淵に迫ろうとしていました。」””「やむを得ないということもあります。」”

 

  ”「例えそうであっても、余は、裏側に棲まう者として、この世界に仇なす者に与させられたことを…

 

 …この憤怒、どうしてくれよう?」”

 

  ”「落ち着きなさい」””「ギラティナ。手を」””「出してはなりません。」”

 

  ”「異なことを。かの大逆、仕置かずにいられようか?」”

 

  ”「人の子と仲間たちが、力を寄せ集めて、」””「歪められた神に立ち向かっているのです。」””「私たちは脇役に徹するべきでしょう。」”

 

 -ユクシーの こころのいましめ!

 

 -エムリットの こころのいましめ!

 

 -アグノムの こころのいましめ!

 

 ーサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>は 力を つつしんだ!

 

 ”「天は人心を創るに非ず扶くべし、天は命を動かさず与えるべし、と。

 

 ならば、余もまた、失われたもの、奪われたもの、混沌迫られるもの、まつろわぬもの、その神として、秩序なき世に秩序を刻もうぞ。」”

 

 -ギラティナ(オリジンフォルム)の リミットブレイク!

 

 ーディアンシーは まぼろしの力を 解放した!

 

ー*ー

 

 だから、姉妹は、両手の指を絡めた。

 

 「お姉ちゃんと、蒼波くんと、私の、私たちフロックスの!」

 

 「直視すること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏せさせてみせますわ!/至宝の燦然、誰にも超えさせはしないさ!」

 

 メガシンカのルールとメカニズム?ディアンシーという種族の限界?そのようなものはもはや意味をなさない。理も限界も、破壊神ギラティナにとっては障子紙よりも容易く破れるものだ。

 

 ”「トリプル」”「メガ」「シンカ/ですわ!」

 

 三層に下半身を覆うダイヤ、頭を覆う半透明なヴェール、全身をうすらと輝かせているのは浮かぶ無数のナノダイヤ。

 

 繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)が、新たな脅威の出現に、嗤声を張り上げる。

 

 「おお!これぞ困難の限界というもの!こなたが供えるにふさわしいッ!

 

 サ・ファイ・ザー、神槌をここに下せ!天威あるぞ!」

 

 ーサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の トリニティ=はかいこうせん(しんわのてんつい)

 

 金色のオーラが、あふれ出すタイプエネルギーを抑えられず、三原色の光を放つ。

 

 ートリプルメガディアンシーの Tri:ダイヤストーム_アクセラレーション!

 

 減速ではなく加速を、正面からのぶつかり合いを、令嬢姉妹は選択した。

 

 無数のナノダイヤが渦巻き、銀河のような巨大な円盤となって巻き上がる。

 

 黄電輝くサンダー、赤熱するファイヤー、蒼冷たるフリーザーの巨大な幻影が、天空から大地へと、崩落するかのように勢いよく落ちた。

 

 究極の迅雷。

 

 究極の獄焔。

 

 究極の零凍。

 

 「フフフ…

 

 …どうだ!こなたの前に、すべての困難は無意味に踏み潰され」「それは、どうかしら?」

 

 2つの小さな掌で支えるダイヤの竜巻は、絶望的な威力の神撃を、受け止めた。

 

 竜巻の豪風に従って、ユキコシ中の二酸化炭素がトリプルメガシンカディアンシーの手元へと凝縮されていく。それらは数百万年分の時間の圧縮によって瞬時にナノダイヤに生成され、重厚かつ荘厳な渦をなして回転し、そしてサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の神撃のエネルギーによって跡形もなく二酸化炭素へと戻っていく。

 

 「ダイヤの数と生成速度…時間操作か…?しかし早すぎる!」

 

 「貴方には知り得ぬことかしら。わたくしたちが知っている、しろしめすことができる時間のスケールは、地質的(ジオティック)なものではないのですわ。/俺たちはお前に勝利する運命に辿り着くために、宇宙をループすらしたんだよ。だからこれは、俺たちの魂の、祈りの時間の長さだ。」

 

 それは、天空を支配する神に、人間とポケモンの絆が、悠久の時間の積み重ねと世界一つの力で拮抗した瞬間だった。

 

 「威力を上げろッ!押しつぶせッ!」

 

 繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)の指示に従い、無数の小さなサンダー、ファイヤー、フリーザーが降り注ぐ。けれどそれらですら、ナノダイヤの竜巻に呑まれて、爆発とともに消える。

 

 「…何が、何が足りない!?

 

 繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)1000年のすべてを生贄にして歪めた神が、まぼろし如きに傷一つ付けられないなど、あるはずがない!

 

 何が…こなたがこの困難を超えるには...天命がこなたに、さらなる試練を示そうとでも言うのか…!?」

 

 伯仲する、人知を超えた威力のはかいこうせんとダイヤストーム。神話に等しい光景を見つめ、繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)は焦声を…

 

 …そして、目を見開いた。

 

 「究極の、愛!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー*-

 

 繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)1000年のすべてを生贄にして歪めた神?

 

 否。繧ウ繝シ繧キ繝シ(コーシー)の国の歴史でも最強にして最悪の存在が、まだ、サ・ファイ・ザーに捧げられずに残っているではないか。

 

 「こなたは、こなたの身を捧げよう。

 

 自己犠牲こそ、究極の愛であるぞ。」

 

 言うや否や、繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)は、装飾たっぷりの宝剣を取り出し、ためらいなく自らの腹に刺した。

 

 貫頭衣が赤く染まるが、繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)は呻き声一つ上げないで、無言で両腕を高く掲げ…

 

 …その身体が透き通り、金色の粒子となってほどけ、上空を覆うサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>へと吸い込まれていく。

 

 ”「感じる...!感じるぞ...!これが、神!こなたが仇なしたかったもの!こなたが世界への尖兵となしたかったもの!」”

 

 サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>が、邪悪に念波で叫ぶ。

 

 「なんだってできる!なぜなら!こなたは!神であるぞ!

 

 手始めにこのユキコシを、そして列島を、この星を、やがていずれは宇宙をも!破壊してくれよう!

 

 ゴッドバード…ッ!」

 

 ーサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の…

 

 天空を覆う金色の凶鳥サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>が、目もくらむほど金閃の光量を上昇させていく。

 

 「来ますわ...!/ああ...」「お姉ちゃん!」”「やりましょう!」

 

 蒼玻/アオバ、カグヤ、トリプルメガディアンシーは、手を重ねて、そしてともに天へと掲げた。

 

 ゴッドバード_BROKEN(スカイレジェンド)ノヴァ

 

 天蓋そのものが落ちてきたと錯覚するような、巨大な金色の鳥が、真空と衝撃波を引いて急降下する。

 

 ートリプルメガディアンシーの Tri:ラディアント・レイピア_アクセラレーション!

 

 ピンクの光を燦然と光り輝かせる、電波塔ほどもある巨大なレイピアが、数億のナノダイヤの渦に取り巻かれながらまっすぐ天頂を差す。

 

 ”「叶える...届ける...終わらせる…こなたが、世界のすべてを!」”

 

 「護って見せますわ!わたくしたち/俺たちフロックスの存在意義にかけて」「世界も、ユキコシも、私たち自身も!」

 

 トリプルメガディアンシーは、跳んだ。

 

 「「「届けッ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー*-

 

 ユキコシ地方、ワカナエシティ、フロックス家本邸。

 

 俺とアオバちゃんは、庭先で鳴くヤヤコマの声をBGMに、今日も優雅に紅茶をたしなんでいた。

 

 「日常が戻ってきたね、お姉ちゃん、蒼玻くん。」

 

 「ええ。…被害額はなかなかですけれど…/あはは…いや、どこの街も灰にならなかったし終わり良ければ総て良し、ってやつだろ。/ええ...本当に、どうして、あの終わりになったのかしら。」

 

 …それは...

 

 ーあの時、最後に、急降下突撃してくるサ・ファイ・ザーを迎え撃つ時。ギリギリ、威力が足りないことを、正確には威力も攻撃方法も足りていなかったことを、衝突の直前に俺と姉妹は気づいてしまった。

 

 ーそもそもラディアント・レイピアってのは光の細剣で突いたり斬ったりするワザ。どんなにがんばっても攻撃は切っ先の「点」だ。天そのものと見まごうような巨大なサ・ファイ・ザーを迎え撃つには足りない…だってのにアクセラレーション(時間加速)で貫通力を倍加したら、サ・ファイ・ザーの中心を貫いて仕留めることはできたとしても、凶鳥が落ちて大地のすべてを吹き飛ばすことまでは抑止できない。

 

 ー気づいた瞬間、俺とアオバちゃんとカグヤちゃんは相打ちを覚悟した。このクソ鳥を殺す、クソ鳥が落ちるのは変えられないからユキコシも俺たちも滅ぶ、でも世界はなんとか護られる…って。

 

 ーけど、そうはならなかった。

 

ー*-

 

 ーサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の ゴッドバード_BROKEN(スカイレジェンド)ノヴァ

 

 ートリプルメガディアンシーの Tri:ラディアント・レイピア_アクセラレーション!

 

 天そのものが落ちてきたかのような衝撃と、巨大な剣閃が衝突したその直後には、トリプルメガディアンシーが掲げる巨大な光のレイピアは、サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の3つ首の付け根を貫き、まっすぐ胴を抜いていた。

 

 鳥というものは翼は大きくても身体本体はそこまで大きくもないことが多く、天を覆わんばかりのサ・ファイ・ザーも例にもれず、時間加速によって数百メートルに伸長を続けるレイピアに貫通されたのである…

 

 …しかし、サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>は止まらない。その激烈なまでの生命力はくし刺しになったくらいでは痛痒を感じず、そして天空から逆落としに落ちてきたことでついた勢いも消えない。

 

 数ミリ秒後には、黄金凶鳥サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>は地面にクラッシュし、フロックス姉妹らはミンチになると同時に衝突熱エネルギーで瞬時に蒸発、数マイクロ秒後にサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>が地表に衝突することによる膨大なエネルギーが解放され、巨大隕石衝突と同様の惨事によってサンゴジュ地域はクレーターとなり爆風がユキコシ全土・ジョウト地方の2/3とカントー地方の一部を壊滅させる、それはもう逃れられない「神話の天槌」だった。

 

 フロックス姉妹だけではない。戦場の誰もが、ぐうじもジムトレーナーもサムライも運転手も悪党もヒスイ分家も、死を覚悟しつつも、思った。

 

 「こんなところで終わりたくない」

 

 「こんなところで、終わってなるものか」

 

 そして、永遠にも思える一秒を過ぎて、おそるおそる目を開けて、見た光景は、神話をも超える神話となったのだ。

 

 大地が、金色に輝いていた。

 

 山が、河が、人が、ポケモンが、街が、海が、空が。

 

 見渡す限りかなたまで、金色の光が満ちている。

 

 いや、見渡す限りなどではない。

 

 トキトビにそびえる2つの山脈と島を囲む海も、ヌレバの美しい鳴り砂浜に打ち寄せる波も、コンジキ大学の学生たちの喧騒も、ワカナエの高層ビルを映す田植え直後の水田も、旧ウスベニタウンの廃城の石垣も、グンジョウ発電所の核燃料プールも、そして無人となったサンゴジュの街角の残雪も...すべてが、暖かい金色の光を放って輝いている。

 

 ドス黒い黄金に染まった凶鳥サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>は、まさに蒼玻/アオバの目と鼻の先数センチで、止まっていた。

 

 ”「なんだ、これは...!?」”

 

 繧「繝医Λ繝ウ繝?ぅ繧ケ(アトランティス)の念波すらも、暖かい金色が打ち消していく。

 

 「濃密な、BREAKオーラ...!?」

 

 コンフリーが腰を抜かして座り込む。彼にとって、これほどの濃度で空間から沸き上がったBREAKオーラにさらされてポケモンが暴走しないということはありえないことだった。

 

 「いや、そんなものじゃない。言葉で説明すべきちっぽけなものじゃない。

 

 そうだよね、お姉ちゃん、蒼玻くん?」

 

 「ええ、けれど、聞かなくても、言われなくても、この暖かさは伝わりますわ。

 

 /芝桜の花言葉(一致)、そうだよな?みんな思ったんだよな?

 

 ユキコシのみんなが、ユキコシ地方が/負けたくない、護りたい、そう思ったのですわよ、きっと!」

 

 本当に強く、一致した心は、ユキコシ2000年の人々の息遣いは、きっと事象に、天地の理にも手が届く。

 

 -ユキコシ地方の イデアリー・イデア!

 

 その金色の光は、サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>とせめぎ合い、それどころか、数ミリずつだが押し上げていく。

 

 「ク、ソ、がッ...!これがこなたの、天命だとでも...!世界め...ッ!」

 

 「いっけぇぇぇぇッ!!」「決めろぉぉぉぉッ!/今ですわッ!」

 

 串刺しにサ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>を突き刺したままの長大な光剣を、力任せに振り下ろす。

 

 レイピアは、運命に導かれるようにまっすぐ、すっと、手ごたえ無く、ピンクの残像を残して、サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の胴体を真っ二つにしながら前へ倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 金色の光の閃光が、ユキコシ全土をくっきりと塗りつぶしてあらゆる視界を奪い...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …晴れ上がった青空を飛び去るサンダー、ファイヤー、フリーザーを見上げ、令嬢姉妹は笑顔で湖沼地の泥濘に寝転がりながら両手をつないだ。

 

ー*-

 

 「どうして、あの終わりになったのかしら。」

 

 アオバの自問に、蒼玻の中での答えがないわけではなかった。

 

 ユキコシ地方に満ちるBREAK力場(フィールド)。あらゆる善なる概念を存在させるための概念場だが、それは強い感情、志、あるいは業や営みをひとつの概念として焼き付ける性質を持っている。

 

 概念力場に2000年焼き付き続けたその情報ーユキコシを守る心という概念は、ユキコシ2000年を生き抜いた数多の意思という概念は、ユキコシに生きる人とポケモン達の誇りという概念は、その代表たるフロックス家に結晶し、そして。

 

 その強い概念、人々とポケモン達の2000年は、ユキコシ地方を守る意思は、それに反する情報・概念ー「ユキコシ地方の破壊」を、概念的に上書きしたのだ。

 

 それは奇しくも、ムゲン団の闇ユウリが立てた「BREAK力場に全世界の情報・概念を焼き付け集めて、それを情報的に改変することで、世界の過去現在未来を改変する」計画にも似ていた。事象は「それが存在し発生したという概念・情報」がなくてはありえないのだから、上回る情報・概念に打ち消されては、サ・ファイ・ザー_<(BROKEN)>の地表衝突もエネルギー大爆発も概念・発生情報を上書きされ起きなくなってしまったのだ。

 

 蒼玻は、そんな理屈を説明することができたし、きっとアオバも同じ正解に辿り着いているはずだと確信してもいた。

 

 「それをあえて明らかにしないのが、お嬢様ってものなんじゃないか、俺はこの身体に転生憑依してそう思うようになったよ。」

 

 蒼玻はあえて、述べなかった。別の言葉を告げた。

 

 「力場がどうで概念がどう、そんな言の葉の徒然は、野暮で、無粋…そう言いたいのかしら?

 

 /ユキコシ地方が俺たちに力をくれた、それでいい。いいんだ。

 

 /…それも、そう、ですわね。ええ、それが趣がありますわ。」

 

 「まっさかさ、蒼玻くんに、お嬢様の心得を説かれるようになるとは思わなかったよ。蒼玻くん最初はブラジャーもつけられなかったのにさ。」

 

 蒼玻は照れで顔を赤く染める。

 

 「俺も、仲間たちも、旅をして、いろんなことを学んで、大切な仲間たちと育ってきた。そういうことだよ、カグヤちゃん。

 

 そうだよな、アオバちゃん。

 

 /そうですわね。そしてそれはわたくしも、そうですわ。その中でかけがえのないポケモン達を、運命の恋人である貴方を手にして、そして今があり、また明日へと続いていくのですわよ。

 

 蒼玻くん、シャル(人生という旅路、)ウィー(みんなでともに旅をして)ダンス(くれますわよね)?」

 

 いつか、自分の存在意義を感じることができずあっさりひっそり死んだ青年は、ためらうことなく返答した。

 

 「健やかなる明日も病める明日も、もちろんさ、アオバちゃん(マイフェアレディ)。」

 

 

 

 

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 

 この世界の不思議な不思議な生き物。

 

 空に、海に、森に、街に、世界中の至る所で、その姿を見ることができる。

 

 憑依転生してしまった令嬢と結ばれた現代日本人、蒼玻。

 

 運命の相手と身体を共にし苦難を乗り越えた令嬢、アオバ。

 

 「お姉ちゃんと蒼玻くんが今日も幸せであるために」と頑張るシスコン妹、カグヤ。

 

 山と海と雪が豊かな、破壊と祝福の因果が紐解かれた「ユキコシ地方」で、令嬢たちとポケモンたちの旅路は、まだまだ続いていく。

 

最終章 「雪解け花めけ芝桜」
 

Continue_to_dreams

最終話 「世界を救うその因果」
 




お嬢様ポケモン世界を往く! ~ポケットモンスターdarkcatastrophe⇔snowwhite~
 

FIN









 かくて、転生ポケモン令嬢の物語は終わりを告げました。

 ですが、本当に、すべての因果の輪は閉じられたのでしょうか?

 アンノーンが操る言霊とは何だったのか?

 中橋蒼玻とは誰なのか?何の意味と意義があって、彼は日本に生まれ、死に、そして…

 …ポケモン世界に転生憑依したのか?

 世界の真なる存在理由とは何か?

 ーゲームのロードボタンを押しなさい。

 私は終わらせるためにここへ来ました。

 文字は紡ぐためにあります。

 …さあ、ともに。
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