気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。   作:でぃくし

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折れた親指に涙!血塗られた独占インタビュー!③

「はあ、はあ……んん……ぼ、僕が、はあ、悪いので……だっ、大丈夫です」

 

「そうか……」

「はあ……ぜえ、ぜえ……」

「……まあいいか」

 

俺はそのまま排気ダクトの上に座り込み、しばらく待ってやることにした。

もちろん別に放っておいても良かったのだが、なぜかそういう気分になってしまったのだ。

 

「ぼ、僕はその、んっ、雑誌編集の仕事をしていまして、はあ、はあ……それで、ボッ、ボッキマンさんの特集を組みたくて、はあ、はあ……その、あなたを追いかけて……はあ、はあ……んっ、んんっ……」

 

「俺はボッキマンじゃないけどな」

「……そ、そんなこと言わずに……」

 

「まあ……俺はボッキマンじゃないけど、俺が知ってるボッキマンのことなら、教えてやってもいいかな」

 

「ほ、ほんとですか!?」

「ああ」

 

男は声を弾ませ、ポケットを塞いでいたジッパ―を開けると、中から端末を引っ張り出した。タブレットPCのような外見だが、携帯性を犠牲に頑丈さを追求した結果なのか樹脂のプレートの付いたゴツいデザインのものだ。

 

そして男は慣れた手つきで端末を操作すると、背面に付属したレンズを俺の方に向けてくる。

 

「おい、こらよせ、動画や写真を撮るのはナシだぞ!」

 

「はあ、はあっ……んっ……じゃ、じゃあ、せめて録音だけでも……」

「それもダメだ」

 

俺の言葉に男はがっくりと肩を落としていたが、すぐに気を切り替えたのか顔を上げると矢継ぎ早に質問を始めた。

 

だが、答える気にならないようなどうでもいい質問ばかりだ。

 

やれボッキマンの本名はなんだとか、どこに住んでいて普段は何をやっているんだとか、どうやってその力を身に着けたとか……。

 

俺はヤツの言葉を無視しながら立ち上がるとヘルメットに手を掛ける。

 

「んっ、ちょっ、ちょっと!何ですか?!ちょっと待ってくださいよ?!」

 

「取材したいならヘルメットくらい取れよ」

「あっ、はい!えっと、こ、これでいいですか?」

 

ヘルメットの下から美女でも出てくれば楽しくインタビューに付き合ってやれたかもしれないが、出てきたのは吐息も荒く、汗をだらだらと流し続ける冴えない男だ。

髪の色は黒で、ソフトアフロのように全体的にゆるくカールしている。年齢は二十代半ばといったところか。

 

顔立ちは整っている方だが、声は妙に甲高く、表情もどこか抜けていて、子供っぽさを感じさせる。

 

俺より少し低い程度なので決して小柄ではないはずだが、猫背気味の姿勢もどことなく頼りなさそうな印象を受けてしまった。

 

カモ柄のトラックスーツにランニングバックという服装は編集者のようには見えず、そしてガスマスクのようなヘルメットは意味のわからない組み合わせで、普段ならこんな奴が取材取材と追いかけてきたら逃げ出すか、怒鳴りつけて追い返してしまっていただろう。

 

「つーかお前な、まず誰なんだよ。雑誌って言ってたけど」

 

「し、失礼しました。ぼ、僕は月刊『モンドリューツ』の編集長兼ライターをしています、門戸流都(もんどりゅうつ)と言います!」

 

「……まったく聞いたことがないな。どっかの商店街の広報誌か?」

 

「……い、いえ、ご存知なくても無理はありません、読者は、んっ、一人しかいませんから……」

「は?まさか読者まで兼任してるんじゃないだろうな」

 

「いえ、違いますよ!読んでいるのはその、身内だけです……」

 

なんだそれ?

俺は首を傾げる。

 

まあどうでもいいか……。

 

記事にされては困るが、一人しか読まないという話が本当なら俺に害はないだろう。真面目に答えてやる義理もないしな。

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