気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
「んで……俺……い、いや、ボッキマンについて聞きたいことは?おっと!よく考えて質問してくれよ」
「ええと、そうですね……ええと……」
男は口元を軽く掻きながら考え込む。
「あの……ええと……う~ん……そうだ!ボッキマンさんってビルの屋上を走っていましたよね。あれはどういう理由なんでしょうか」
「ああ、それね……」
俺は腕組みをして、大げさにため息をつく。
この男、門戸(もんど)とやらがどうしてここまで俺に興味を抱いたのかは分からないが、暇潰しにはちょうど良い。
まあ、マジに答えてやろうと思っても俺はその理由が分からないんだけどな。
「えーと、それはだな。おそらく交通費を浮かせるために走ってたんだろな」
「え?」
「だから交通費が浮くんだよ。走ってる方が」
「んっ、それって捕まったり殺されるリスクを冒してまでやることなんですか……?」
「いや、だってあいつ不死身だし、無敵だしさ、負ける要素がないじゃん」
「ええと……そう、ですね……んっ……ええ……はい……」
「納得できないか?」
「え、ああ……はい……その、パトロール的な意味合いはないんですか?」
「パトロール?」
「い、いや、あの、ヒーローとして日夜街を守るという……んっ、そういう……その……」
「ないよ、そんなもん」
「そ、そうですか……」
門戸はうつむき、端末をいじくりまわしながらぶつぶつと呟いている。
「……んっ、んんっ……交通費ということは、その……ボッキマンさんはお仕事をされているということですか?」
「ああ、今は知らないけどな……働いていたはずだぞ」
「そ、それは何のお仕事ですか?」
「えーと……何だっけかな……ああ、思い出した。シケタピザの配達員だ」
「シケタピ……ええと……宅配ピザの?」
「ああ、その身体能力を活かしてあのクソ不味いことで有名なシケタピザでバイトしていたはずだ……もしかしたら今は辞めてるかもしれないがな」
「んっ、んん、で、でもボッキマンさんのこれまでの目撃情報ではピザなんて持っていませんでしたよ?!」
「うーん、それは多分だけど、ピザの方は胃袋にでも納めていたんだろ。辞めたとしたらそのせいで……」
「えっ、ちょっと!?無茶苦茶じゃないですか!真面目に答えてくださいよ!」
「そうか?なんかおかしいか?」
「んんっ!い、いや、そうでしょ!?そんなピザを食い逃げ、いや食い逃げになるのかな?わかんないですけど、そんなのヒーローとして間違ってるでしょう?!」
「おいおい、なんだよさっきからヒーローヒーローって、お前まさかボッキマンが正義の味方かなんかだと思ってたのか?」
俺はわざとらしく肩をすくめて両手を広げて見せる。門戸は納得がいかない様子で唇を尖らせている。
「んっ、えっ、でっ、でも!ボッキマンさんは、さっきも言いましたけど、その……治安部隊を単独で制圧し、拘束されようとしている無実の女性の身を守ったと、そういう話があるじゃないですか?!」
「ああ……その噂は俺も聞いたことあるな……」
俺はダクトの上で足を組み、わざとらしくうつむきながら額に指を当てる。
たしかに、それは俺がやったことだ。
あの時、治安部隊に拘束されそうになっている変な中年女を助け出した。
だが、これといった動機も理由も思いつかない。
ただ、無理やり説明をつけるならば……女がどうこうじゃなくて、ただ散歩を邪魔されてむかついて、それで治安部隊を蹴散らした、せいぜいその程度のことだろう。
そんな話に尾ひれがついて、勝手に最強のヒーロー扱いしたり、あるいは伝説の怪人のように扱おうとする想像力豊かな奴らがいるだけだ。