気がついたら無敵だった、そして勃起も止まらなくなっていた。だから俺は裏でこそこそ生きていく。 作:でぃくし
少し掘っては手を止める。
ここじゃない、雨に流されそうだ。
ああ、もっと陽の当たる方に。
例えばネズミの上にいつか花が咲くような……。
「……」
通りすがりの頭のおかしい変態が死にかけたネズミを殺して穴を掘っている。
何の意味もない、自己満足にすぎない行為。
ふと雨以外の音が聞こえ、その方に目を向ける。
さっきまではいなかったはずのドローンが俺の行動を不思議そうに見ていた。
「あなたの街の安全を守るドローンです。困っていることがあればなんでも言ってください」
少し手作り感の漂う、見たことのない型のドローンだ。
ドローンは俺を見据えると、カメラを軸に時計回りにくるりと回転する。
まあどうでもいい。
「……ネズミの死体を埋めたいだけだ。弔ってやりたい」
俺の言葉を聞くとドローンはまるで慌てたかのように俺の周りをグルグル回り始めた。
「いけません!それは議会が定める都市公園衛生管理法第二十三条の二に違反しています!」
ドローンは甲高い音声とブザーを発しながら俺に警告する。
「第二十三条の二!第十条の二の規定により、当局の許可を得ない……」
「……るせえんだよ!!」
俺は思わず怒鳴り、ドローンを掴んで湖面に向かって叩きつけていた。
ドローンそのものの爆発よりも湖面に叩きつけられた衝撃の方が遥かに大きかったのか、ドローンの機体から一瞬だけ火花が見えたがすぐに巨大な水柱が上がり、黒い湖面に飲み込まれるようにして見えなくなる。
音に驚いたのか林の中から数十羽の黒い影が慌てたように土砂降りの雨の中を飛び立っていった。
(雨が降っててよかったな……)
淀んだ泥水が降り注いで、濡れたパーカーは黒く染まる。
周囲に人通りはなく、周辺の林にも人影はない。
だがどうせ監視されているんだろうから、当局が来るのは時間の問題でしかないだろうが一般人にいちいち騒がれるのは鬱陶しかった。
しばらくすると粉々になったドローンのパーツが浮かび上がり、水面を漂いながらどこかに流れて行く。
「はあ……」
また面倒なことになりそうだな。
こんな気持ちになるのは久しぶり……いや初めてかもしれない。
ベンチにもたれかかりながら、分厚い岩に墨を塗りこめたような雨雲を見上げる。
(一体、どこの誰なんだ?)
どこの誰が……俺の許可なくこの空にドローンを飛ばしていて、それで……ネズミを埋めることを禁じていて、がらくたが人様に指図することを許しているんだ?
「来るならこいよ。相手してやるよ……」
お前らは俺のやることに不満があって力尽くでも言う事を聞かせてたいんだろうが、それに対する俺の意見が知りたいというのなら教えてやる。
そんなことを考えながら、傘などまるで役に立ちそうにもない滝のような豪雨を浴びていると、待ち望んでいたそれはやってきた。
……ただ、俺の予想とはまったく異なる形ではあったが。